ドラゴンクエストⅦ エデンに舞い降りた者たち   作:愛及屋烏

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序章 エデンに吹く緑風
PIECE 00 遭遇×神様


――目を覚ますと俺の目の前には真っ白な空間が広がっていた。

 

「おぉ、××××よ。死んでしまうとは情けない」

 

この時点で、自分が死んだらしい事と状況的に神様転生のテンプレ展開なのは察しがついたが、肝心の神様の姿が見えない。

そもそも、相手の第一声が普通の神様にしては少し奇妙だ。

 

「…………何処からか、王様風の台詞が聴こえるんだが」

 

キョロキョロと周囲を見渡してみるが、あるのは果てしない白、白、白。

城も玉座も見えはしない。……いや、洒落のつもりではないぞ?

 

「ここじゃよ、ここ」

「……?」

 

声の聴こえる方向をよく観察してみると、うっすらと何かの輪郭が……?

 

「うわっ!?」

 

白い空間の中に白い何か……いや、誰かがいる!

暗闇の中のアイドル事務所社長並に風景に同化していて判別がつかなかったのだ!

 

――その刹那、俺は恐ろしい事に気付いてしまった。そう、相手の正体に。

 

「……あの、もしかすると……『神さま』ですか?」

「ほほう……中々、察しの良い若者じゃな。これならば、私のワシの願いも叶うやもしれん」

 

いかん、話が通じていない。

俺の質問の意図は、そんな単純な事ではない。

 

「(ま、間違いない……この見た目……最初の某ゲームチックな台詞……!)」

 

綿菓子とサンタクロースを足して二で割ったようなビジュアル。

髭や頭髪はクルっとした巻き毛、温厚でふくよかな風貌。

 

「(ド、ドラクエⅦの裏ボスの『神さま』だ!!!!!)」

 

ドラクエの神様、とは?

 

もちろん、ゲーム開発者の某氏やスクエ二も神様と言えば神様だが、この場合は違う。

 

彼が登場するのはドラゴンクエストⅦのストーリー上とクリア後。

 

ドラクエ史上、最も部下に恵まれた魔王(しぶとさもNo.1)と称される、『オルゴ・デミーラ』と死闘を繰り広げた御仁――というか神様そのものである。

 

主人公やプレイヤーが直接、神さまと対面するのはゲームのクリア後だが、その勇姿はストーリーの合間に度々、目にする事が出来る。伝聞だったり回想だったりするけども。

 

だが勇者メルビンを後の時代の戦いの為に封印する時などの長身かつ荘厳な老賢者風の『神様っぽい』描写に比べて、実際のミルキーな容姿は多くのプレイヤーに肩透かしを食らわせたりする、芸人的にも侮れないお方である。(一発ギャグやステテコダンスを平然と使ってくる事からも間違いない)

 

ネタ的にも凄いのは確かだが、その実力は尋常ではない。

最終的に超霜降り肉量産機になる側面がある事は否定しないが、それでも裏ボスとして君臨している以上、その実力は確実に魔王を凌駕している。

 

「煉獄火炎」「凍てつく冷気」「ジゴスパーク」「かまいたち」「真空波」等の強力な属性技に加えて、お約束の「いてつく波動」等の妨害技。

一万を越えるヒットポイントに加えて異常にも思える連続行動で最高レベルのパーティを一気に追い詰めてくる。

 

まぁ、その強さは魔王に敗北した後に修行して得たものらしいのだが。

だがシナリオだけで考えても、エデンを除く全ての大地を封印した、ある意味で最も世界征服に近かった魔王と戦い、深手を与えた時点で尋常ではない。

 

その深手もあって、主人公アルスのパーティが神と戦った直後の魔王に勝つ事が出来た事を併せて考えると、やはり神様の功績は大きい。

 

ただ、魔王討伐後に神様を復活させようとしたら『神だと思った!? 残念、魔王でした!』という、衝撃の第二部(ディスク2)が始まるので、この時点で神さまのイメージは色々と台無しではある。

 

「あの……神さま?」

「なんじゃ?」

「何となく、自分が死んだ事は判っているのですが……神さまは俺に何の用が?」

 

相手がドラクエの神様ともなると、一般的な「うっかり死による謝罪を兼ねた転生」という流れは無理がある。そうなると自分の死因よりも神様の意図の方が重要だと考え、単刀直入に訊ねてみた。

 

「ふむ……お主は、わしらの世界を観測可能な世界の住人じゃろう? 故に世界を跨いで、死した魂を招いたのじゃ」

「観測……?」

「お主にも理解しやすいように説明するとじゃな――」

 

神様が言うには世界には上位関係や相互関係が存在し、時に異なる世界を『観測』する事が可能な世界が存在するとの事。

その形式は小説や漫画等の創作物であったり、人間の夢の一部であったりするらしい。

 

「つまり、『ドラゴンクエスト』というゲームとして、俺達の世界は神さまの管理している世界を観測していた、と?」

「そういう事じゃな。そして、わしはその観測者としての知識を持った異世界の住人を欲していたのじゃ」

「そこで俺に白羽の矢が当たったのは……まぁ、偶然なんでしょうけど……どうして異世界人を?」

「わしの世界を救って欲しいからじゃよ――あの『イマジン』から」

 

一瞬、時の運行を妨げる怪人を連想した俺だったが、数秒の後――神様の語る存在の正体に気付き……絶望した。

 

「異魔神!?」

 


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