ドラゴンクエストⅦ エデンに舞い降りた者たち   作:愛及屋烏

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PIECE 05 秘剣×出発

過去 ダーマ地方 山道

 

 

~十年の月日が流れた~

 

 

流れる月日の中でヒスイは必死に体を鍛え、技を磨き、心を研ぎ澄ませた。

 

初級の職業の内、戦士、魔法使い、僧侶、盗賊、踊り子、吟遊詩人、笑わせ師の七種をマスターし、上級職の魔法戦士としても板についてきた。加えて、ダーマ地方のモンスター(主にスライムナイト)相手に実戦の経験も積み、ある程度のレベルにも成長した。

 

そして、修行の仕上げとしてヒスイは『ある技』の習得を目指していた。

 

「アバン流刀殺法――空裂斬!!!」

 

放たれた斬撃が眼前の泥人形を両断する。否、攻撃が当たると同時に泥人形を動かしていた核が破壊され、ただの泥へと還ったのだ。

 

「か、完成だ……長かった」

 

修練もだが、それよりも技の完成を確かめる為に魔法生物系の魔物を探す必要があったのが面倒だった。ダーマ神殿近郊に出現する「泥人形」がそうだと気づかなければ、危うく『ドラクエⅦに登場する最初のボス』を実験台にする所だった。

 

――そんな面倒な思いをして、習得した『空裂斬』とは何か?

 

この技は『ダイの大冒険』の勇者アバンが開発・完成させたアバン流殺法の一種「アバン流刀殺法」の一つで、心の眼で敵の弱点や本体を捉え、光の闘気を込めてこれを切り裂く「空の技」だ。

だが、他のドラクエシリーズでは扱いが微妙に……いや、かなり異なっている。

 

例えばDQM2では連携特技として登場。

ここでは、ギガスラッシュ×真空波=空裂斬という、トンデモ計算式が存在する。

ある意味、ギガスラッシュは逆輸入技とでも言うべき技なので、細かい設定の差異は当然なのだが、それを踏まえてもこれは可笑しい。

第一、大地・海破・空裂の段階で、こんな必殺剣を内包していたら、この三つを併せたアバンストラッシュの破壊力はどうなってしまうのか。しかも、そこにギガデインを加えたギガ(デイン)ストラッシュ(※そもそも、これがギガスラッシュの元)や時間差同時攻撃である『ストラッシュクロス』もあるのだ、既にインフレどころの騒ぎではない。

 

しかし、この奇妙な差異こそが空裂斬を習得する近道となった。

ポイントになるのは『光の闘気』である。

ギガスラッシュは大半のドラクエでは『デイン系必殺剣』とされているが、中には『光の闘気の必殺剣』としている作品が存在する。

 

つまり、『ギガスラッシュ(光の闘気)』×『真空波(空の技)』の剣技という事になる。

故に風や空の技の習得に関しては、かなりのアドバンテージを持っているヒスイであれば、光の闘気を扱う方法さえ確立させれば空裂斬の習得へ至るのは容易であった。

 

「まさか、『力溜め』でチャージしているエネルギーが闘気だったとは」

 

気合溜めでも似たような力が体を覆っているのを感じていたのだが、より効果が高いのは力溜めの方だった。ちなみに光と闇に関しては使用者の心や肉体がどちらに属しているかの問題なのでヒスイが闘気を使用すれば自動的に光の闘気、という事になる。

 

――だが、全てが順調という訳でも無かった。

 

空裂斬の前段階である大地斬と海破斬に対して、ヒスイは適正が無かったのだ。

恐らく、長い時間を要すれば習得自体は可能だろうが、若い時分にそれを成し遂げるのは不可能だという確信があった。

 

「(というか、剣技に『岩石落とし』や『津波』を組み合わせるってのが理解出来ない)」

 

ゲーム上の計算なら別だが現実の修行で考えると、どうしてもイメージするのが難しいのだ。

 

「まぁ、アバンストラッシュは無理でも勇者に転職すればギガスラッシュは使える訳で」

 

まだ上級職は一つ目の半ば、という段階だが後は旅の中で鍛えて行けば良いだろう。

 

「――帰るか」

 

そう言いながらも、やはりアバンストラッシュを使ってみたかったのかヒスイの呟きには落胆の色が混じっていた。

 

 

それから数日後、旅立ちの日が来た。

 

 

◇◆◇◆

 

 

現代 グランエスタード

 

 

幼い頃はヒスイの鍛錬を微笑ましく見守っていた『爺ちゃん』も十歳を過ぎた頃にはヒスイの鍛錬が真剣な物であり、既に城の兵士達とは比べ物にならない程に強くなったのにも関わらず、それでも『足りない』性質のモノなのだと理解していた。

多くを語らずとも「何かに備えている」のだと感じ取っていたからこそ、実の孫以上に愛しく思う家族からの別れの言葉を受け入れる覚悟が出来ていた。

 

「……行くのか」

「うん」

 

グランエスタードの王子『キーファ・グラン』が城の宝物庫から発見した古文書。

エスタード島、通称『エデン』の謎を解明する手掛かりであろう、その古文書の内容を知るためにフィッシュベルの漁師の息子であるアルスが『崖っぷち爺さん』に解読を依頼しにきた日の晩――数日中に遺跡の封印が解かれ、石版によって過去への扉が開かれる事を知ったヒスイは、ついに旅立つ事を告げた。

 

「いつか、こんな日が来るのは分かっておった……そう、お主を拾った時からの」

 

何かしらの使命――大いなる意思の元、この子は自分の所に来たのだと。

 

「今、この島の秘密に若者達が辿り着こうとしている……何か関係があるのじゃろ?」

「うん……かつて、爺ちゃんが後一歩の所まで迫っていた島の謎。それが解き明かされる時が、世界を取り戻す旅の始まりの時でもあるから」

「あ奴らと一緒に行くのか?」

「ううん。俺と彼らは同じ道を一緒に進む訳じゃない……でも、彼らと道が重なる時は来ると思う」

出発点と到達点は同じ。だが、その道程は異なるものになるだろう。

 

「そうか……全てが終わったら、この島に帰って来るのじゃろう?」

「勿論。その時、世界は大きく変わってると思うけど……爺ちゃんが俺の家族である事は絶対に変わらない」

「――なら、行ってくるがいい。そして、遣り遂げて……帰ってくるのじゃぞ!」

 

その言葉にヒスイは頷き、背中越しに小さく「行ってきます」と呟いた。

家を出ると愛犬のハヤテが尻尾を振りながら駆けて来る。

 

「偶には顔を見せに帰ってくるから……俺が居ない間は爺ちゃんの事を頼んだぞ、ハヤテ」

「わんっ!」

 

――遂に自分自身の冒険が始まる。

 

この十数年間、ヒスイは誰を仲間にするべきか、考え続けていた。

無論、旅の中で自然と出会い共に進む事になる相手もいるかも知れない。

だが、自分が倒そうとしているのは最強の魔神。相応の才能なり、実力のある人間でないと自分から「仲間になって欲しい」と言う事すら憚られてしまう。

 

だからこそ、何かしらの『強さ』を持っている人を仲間には選びたい。

 

「コエルーラ! アルス達が到着する前の封印下のウッドパルナへ!」

 

そして、最初の仲間を得るべく、ヒスイは時を超えた。

 

 

~序章 Fin~

 

 

ヒスイ

 

性別:男

 

肩書き:風の紋章を持つ者、不敗のギャンブラー

 

LV:20

職業:魔法戦士 ☆☆☆☆☆

   戦士   ★★★★★★★★

   魔法使い ★★★★★★★★

   僧侶   ★★★★★★★★

   盗賊   ★★★★★★★★

   踊り子  ★★★★★★★★

   吟遊詩人 ★★★★★★★★

   笑わせ師 ★★★★★★★★

 

 

―――――――

装備

 

E妖精の剣

E身躱しの服

E魔法の盾

E毛皮のフード

E毛皮のマント(羽隠蔽用)

E疾風のリング(左腕)

E疾風のバンダナ(右腕)

―――――――

ステータス(標準時)

 

力      50

素早さ    98

身の守り   20

賢さ     73

かっこよさ  36

最大HP   152

最大MP   108

 

―――――――

 

呪文 ルーラ、トベルーラ、バシルーラ、リリルーラ、オクルーラ、コエルーラ

   メラ、メラミ、ギラ、ベギラマ、ヒャド、ヒャダルコ、イオ、イオラ

   バギ、バギマ、バギクロス、バギムーチョ、グランドクロス

   ピオラ、ピオリム、ボミエ、ボミオス、スカラ、ルカニ、ラリホー

   マヌーサ、マホトム、マホトーン、マフエル、メダパニ、バイキルト

   マホターン、マホカンタ、マホトラ、マホキテ

   ホイミ、ベホイミ、ベホイム、ベホイマ、ベホマ、キアリー、ザオラル

   インパス、トヘロス、レムオル、リレミト

   マジャスティス、ギガジャスティス

特技 疾風突き、峰打ち、諸刃斬り、ドラゴン斬り、魔神斬り、盗人斬り、剣の舞      

   火炎斬り、稲妻斬り、マヒャド斬り、鎌鼬、真空波

   誘う踊り、不思議な踊り、マホトラ踊り、踊り封じ、死の踊り、身躱し脚

   メダパニダンス、受け流し、気合溜め、力溜め、揺り籠の歌、目覚めの歌

   魔封じの歌、天使の歌声、呪いの歌、戦いの歌、安らぎの歌

   鷹の目、盗賊の鼻、ぱふぱふ、ボケ、ツッコミ、一発ギャグ、舐め回し

   百裂舐め、擽りの刑、砂煙、

   思い出す、もっと思い出す、深く思い出す、忘れる

 

―――――――

 

 




※職業によって上級魔法を習得すると自動的に同系統下級呪文を習得できる。
 例:中級火炎呪文(メラミ)習得→初級火炎呪文(メラ)使用可能
※グランドクロスは聖・真空系呪文、グランドクルスは無・闘気系特技扱い。

次からは『第一章・悲しき死闘』が始まります。


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