ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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ヒロイン不在、甘々なしでシリアス要素が強いですが、再構成版のアインクラッド編始まります。


プロローグ
プロローグ 全ての始まり


2022年11月6日 埼玉県川越市

 

11月に入り、秋から冬へと変わりつつあるこの頃。日を追うごとに気温が下がっていき、今日は朝から曇り空が続いていたため、いつもより肌寒く感じた。

 

今日は日曜日で学校は休み。部活も今は休部の真っ最中だ。今日は特に出掛ける予定もなく、ある予定の時間まで自室でくつろいでいた。

 

時間を確認しようと壁にかけているデジタル時計に目を向ける。画面には現在時刻の12時55分が映し出されていた。

 

「おっと、もうこんな時間か……」

 

俺は机の上に置かれたヘルメット状の機械……《ナーヴギアを持ち、それにLANコンセントにケーブルを差し込み、ゲームソフトを入れて被る。電源を入れてベッドに横になった時には、時刻は13時ちょうどとなった。

 

――(あん)ちゃん、行ってくるよ

 

「リンクスタート」

 

そう言った直後、俺の意識は現実から切り離された。

 

『ようこそ、《ソードアート・オンライン》へ』

 

アナウンスの元、最初に出てきたのは、言語選択にキャラクターの登録といったゲームによくある簡単な初期設定だった。キャラクターネームはどうするか少し悩んだものの、最終的に《Ryuga》と打ち込んだ。元々キャラクターネームとして使っていた《Ryuki》と名前は似ているからすぐに慣れるだろう。

 

性別はもちろん男を選択。アバターは現実の俺とは違う姿になりたいと思い、ファンタジー系のRPGゲームに登場する主人公みたいなカッコいい少年アバターのものへとカスタマイズする。

 

設定を全て終え、完了ボタンを押す。

 

『では、ゲームスタート地点の《はじまりの街》へと転送します。遊城《アインクラッド》での冒険を存分にお楽しみ下さい』

 

アナウンスが終わると、光に包まれる。それが消え、目を開けると石畳の地面が広がっている大きな広場に俺は立っていた。

 

ここは《ソードアート・オンライン》通称SAOというゲームの舞台となっている巨大浮遊城《アインクラッド》。SAOとは、実現した仮想空間の中で、自分の身体を動かしてキャラクターを操作して楽しむことができるという世界初のVRMMORPGだ。

 

アインクラッド第1層《はじまりの街》にある広場は、ゲームのスタート地点ということもあり、大勢のプレイヤーがいる。

 

「ここが仮想世界か………」

 

周りを見渡していると、頭上に黄色いカーソルが浮かんでいる若い女性が声をかけてきた。

 

『ようこそ剣士様。何かお困りですか?』

 

「もしかして、この女の人ってゲームに登場する街とかによくいるNPCなのか……?」

 

開始して1分もしない内に、このゲームの凄さに圧倒されてしまう。

 

――本当にゲームというか異世界に迷い込んだみたいだな……。

 

NPCの女性から簡単な説明を聞いた後、広場から出てNPCが至るところで露店販売している通り道まで着いた。店を見て歩いている最中、すぐ近くを1人の男性プレイヤーが道に迷うことなく走り過ぎていく。

 

「あの人、道に迷うことなく走っていったけど、もしかしてβテスターの人なのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

第1層・はじまりの街・西フィールド

 

「う~ん。なんか思った以上に上手くいかないなぁ……」

 

街の中をある程度見て回った後、俺はフィールドに出て《フレイジーボア》という青い身体のイノシシ型のモンスターと戦っていた。一応、初期装備の片手剣でダメージを与えているが、ソードスキルという必殺技が上手く発動しなくて、倒すのに思っていたより手間取っていた。

 

「普通のゲームだとコントローラやボタンを操作すれば、簡単に必殺技を発動できるのになぁ……。こんなことなら、あの時走っていった人を追いかけて、レクチャーして貰えばよかったかな……」

 

既に過ぎてしまったことに後悔している最中、誰かが声をかけてきた。

 

「そこの君、もしかしてソードスキルの発動の仕方がわからないのか?」

 

声が聞こえた方を振り向くとそこには2人のプレイヤーがいた。1人は片手剣と盾を持った20歳半ば過ぎ辺りの男性で、もう1人は片手斧を持った俺と同じくらいの年頃の少女だ。

 

「あ、はい。さっきから何度か試してみているんですけど、中々発動しなくて……」

 

「ソードスキルだったら、一気に武器をビューンって振るって、ズバーンとなればいけるよ」

 

少女はジェスチャーをしながら教えてくれたが、擬音ばかりで正直言って凄く分りにくい説明だった。

 

これには俺も苦笑いするしかなかった。

 

それを見かねた青年が少女の頭に軽くチョップをして説明をする。

 

「そんな極端過ぎる説明でわかるか。ソードスキルは、少し溜めを入れてスキルが立ち上がるのを感じたら、必殺技を放つのをイメージするんだ。これはモーションっていうんだけど、それをちゃんと起こせばソードスキルが発動して、あとはシステムが命中させてくれるから大丈夫だ」

 

「必殺技を放つのをイメージするか……」

 

今教えてもらったことを思いだしながら、ソードスキルを発動させようと武器を構えて集中する。すると、左手に持っている片手剣が光る。

 

「ハァッ!!」

 

突進と共に剣で突きを繰り出し、フレイジーボアの身体を貫いた。フレイジーボアの残っていたHPは全てなくなり、ポリゴン片となって砕け散った。

 

「やった!」

 

嬉しさのあまり歓喜の声をあげる。こんな喜びを感じたのはいつ振りだろうか。

 

喜んでいると先ほどの2人がこっちに近づいてきた。

 

「初勝利おめでとう。見事な《レイジスパイク》だったぞ」

 

「ありがとうございます。あっ、まだ名前教えてませんでしたね。俺はリュウガ。リュウで構いませんので」

 

「俺はファーランだ」

 

「アタシはミラ。よろしくリュウ!」

 

武器をしまい、お互いに自分の名前を名乗って握手を交わす。

 

 

 

 

 

今にして思えば、この2人との出会いが全ての始まりだったのだろう。だけど、このときの俺はまだ何も気付いていなかった。

 

結果はどうなるのか、誰にもわからないということを。人は自分の願いのためならどこまでも残酷になれることを。そして、誰かを救うことの難しさ、その意味を……。

 

やがて始まる命を掛けた戦いの中で、俺はそれを思い知ることになる。


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