ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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お久しぶりです。約半年ぶりだけでなく今年初めての投稿になります。

今回から、待ちに待った『マザーズ・ロザリオ編』に突入です!


マザーズ・ロザリオ編
第1話 森の家


2026年1月6日 新生アインクラッド22層

 

アルヴヘイムの上空を浮遊している新生アインクラッドは、現在1年中真冬日が続くノーム領にいる。そのため、凍えるほどの冷たい空気に包まれ、白い雪が降り積もっていた。

 

今俺がいるのはそんな極寒世界ではなく、新生アインクラッド22層の森にあるキリさんとアスナさんのホームのログハウスの中だ。部屋の中は暖炉の火で暖められ、快適な空間となっている。

 

しかし、俺たちはそこに集まって呑気に過ごしているのではなくて、冬休みの課題をやっていた。

 

集まったのは、俺、リーファ、ザックさん、オトヤ、リズさん、シリカ、このログハウスの家主のキリさんとアスナさんだった。ちなみに、シノンさんは実家に帰省、カイトさんは家族旅行に行っているため、ここにはいない。

 

最後に残った古文漢文の課題に苦戦しつつも何とか終えて一息ついたところ、シリカが眠そうな顔をして、隣にいるアスナさんの肩に頭を預けたのがのが目に留まった。

 

アスナさんは思わず微笑みながら、左手の人差し指でシリカの猫耳をくすぐった。

 

「こーら、今寝ちゃうと 夜、眠れなくなっちゃうよ?」

 

「うにゅ……むにゃ……」

 

「冬休みもあと3日しかないんだよ。宿題がんばらないと。シノのんとカイト君は、帰省前や旅行前に全部終わらせたって言ってたよ」

 

「う……うう……ねむいです」

 

「部屋あったかすぎるかな?  温度下げようか?」

 

すると、俺の隣にいたリーファが笑いを含んだ声で言った。

 

「いえ、そーじゃなくて、アレのせいだと思いますよー」

 

リーファが指さした方を見る。そこには、火が灯っている暖炉の前にある揺り椅子に座りながら寝ているキリさんの姿があった。彼のお腹の上ではピナが丸くなって寝ており、更にその上にピクシーモードのユイちゃんが気持ちよさそうに寝ていた。

 

それを見た俺たちは「そういうことか」と納得した顔をする。

 

「GGOから戻って来てから、ずっと頑張ってるみたい」

 

「あれでしょ、この前エギルの店で見たユイちゃんの……」

 

アスナさんに続いてリズさんがそう言いかけていたところ……。

 

「なんとかニクス!」

 

「《メカトロニクス》な」

 

自信満々に答えたリーファに対して、俺は苦笑いを浮かべながらツッコミを入れる。

 

「キリトさん、本当に気持ちよく寝てますよね……」

 

「おかげでこっちまで眠くなってきたけどな……」

 

オトヤとザックさんがそう会話を交わしていたのだったが……。

 

「オトヤ、お前まで釣られて寝てどうするんだよ! ああ、ザックさんも!」

 

「アスナさん、リズさん起きてください! シリカちゃんも!」

 

俺とリーファは眠気に負けてしまった皆を起こす。だけど、俺たちも眠気を堪えるのに限界を迎えようとしていた。

 

このままでは全員仲良く寝落ちしてしまうと思ったアスナさんの案で、ここで一旦休憩ということになった。

 

眠気を覚ますため、俺たちは外に出た。リーファとシリカとオトヤは雪遊びを始め、俺はザックさんと一緒に軽くストレッチをしていた。その最中、何か思い出してリズさんが俺とアスナさんに声をかけた。

 

「あ、そういえばさ。アスナとリュウはもう聞いた? 《ゼッケン》の話」

 

「ゼッケン? 運動会やマラソンで使うあの……?」

 

それを聞いた俺は苦笑いを浮かべながら答えた。

 

「そのゼッケンじゃなくて、最近噂になっている凄腕プレイヤーの通り名ですよ、アスナさん。絶対の絶に、ソードを漢字で剣と書いて、《絶剣》。由来は多分、絶対無敵の剣、空前絶後の剣とかだと思いますが……」

 

「やっぱり、リュウも《絶剣》のことは知っていたんだな」

 

「噂で軽く聞いた程度ですけどね」

 

ザックさんとそう話していると、アスナさんはリズさんに尋ねた。

 

「それで……、その絶剣さんはどんな人なの?」

 

「噂を聞くようになったのは、ちょうど年末年始のあたりだから……1週間前くらいからかなぁ。そっか。アスナが知らないのは当然か。アンタ、年末からずっと京都の本家にいたもんね」

 

「もー、こっちにいるときに嫌なことを思い出させないでよ……」

 

うんざりとした顔をするアスナさん。

 

「いやー、イイトコのお嬢さんも大変だね~」

 

「ほんと大変だったわよ。着物で1日中正座して挨拶ばっかりで……。夜にこっそりダイブしようにも泊まった部屋にはいまどき無線LAN も入ってないんだよ。わざわざアミュスフィアもってったのに無駄になっちゃった……」

 

アスナさんの話を聞いて、リズさんだけでなく、俺とザックさんも苦笑いするしかなかった。

 

「ところで、その強いっていう絶剣さんはプレイヤー狩りなの?」

 

「ううん、デュエル専門よ」

 

「大会とか出てた人?」

 

「いや、 全くの新顔らしいのよ。でも、スキル数値は相当高そうだから、どっか他のゲームからのコンバートじゃないかな。24層の主街区のちょっと北にさ、でっかい樹が生えた観光スポットの小島があるじゃない。あそこの樹の根元に、毎日午後3時になると現れて、立ち合い希望プレイヤーと1人ずつ対戦すんの」

 

「確か、最初はMMO トゥデイの掲示板に『対戦者募集』って書き込みがあってな。『ALO 初心者のくせにナマイキだ』、『いっちょへこましたろう』、って奴らが30人くらい押しかけたらしいんだけど、全員綺麗に返り討ちにされたんだよ。その日はHP を3割以上削れた奴は1人もいなかった、って言われているから相当だよな」

 

「なんか俺が噂で聞いていた以上ですね……」

 

絶剣のことを全く知らないアスナさんだけでなく、ある程度知っていた俺も驚きの表情をする。

 

「ちょっと信じられませんよね……」

 

話に割って入ってきたのは、リーファやオトヤと雪遊びしていたシリカだった。

 

「コンバートしたてで、あの飛びっぷりですもんね。あたしなんか、空中戦闘出来るようになるまで半年くらいかかったんですよ……」

 

「シリカちゃんも対戦したの?」

 

「まさか! デュエルを観戦しただけで勝てないのは確信しましたもん。ま、リズさんとリーファさんとザックさんはそれでも立ち合ったんですけどね。ほんと、ちゃれんじゃーですよね」

 

「うっさいなあ」

「何事も経験だもん」

 

リズさんとリーファが口を尖らせて言って、ザックさんは「そうかもな」と笑いながら一言。

 

「なんだ、皆もう絶剣に挑戦しに行ったんだ……」

 

俺の呟きに答えたのはオトヤだった。

 

「うん。あ、そうか。ちょうど皆で行った日、リュウは用事あるって言ってログインしてなかったからね」

 

「あの時か。オトヤは戦わなかったのか?」

 

「うん、シリカと同じ理由でね。その時、シノンさんもいたけど、『剣士には興味ないからパス』って言って戦わなかったんだ」

 

「まあ、剣士と弓使いの戦いになっちゃうからなぁ」

 

皆と会話を交わしていると、再び雪が降り始めてきたため、俺たちはログハウスに戻ることにした。中に入ると、アスナさんが紅茶とフルーツタルトを用意してくれ、ティータイムを過ごしていた。

 

「さっきの絶剣の話だけど、そんだけ強さを見せつけちゃうと、もう対戦希望者なんていなくなっちゃったんじゃないの?」

 

「確かに。もしも死んだらデスペナを食らうか、蘇生アイテム代がぶっ飛ぶかの二択になりますからね……」

 

まだ絶剣を見たことがないアスナさんと俺がそう疑問に思っていると、シリカが答えてくれた。

 

「それがそうでもないんです。賭けネタがとんでもないんですよ」

 

「何か凄いレアアイテムでも賭けているのか?」

 

「アイテムじゃないんです。なんと《オリジナル・ソードスキル》を賭けてるんですよ。それも、すっごい強い必殺技級のやつを!」

 

「必殺技級のやつ? 何系で何連撃なのか、分かるか?」

 

シリカは口に入れたケーキを食べ終えると同時に答えた。

 

「えーと、見たトコ片手剣系汎用ですね。なんとびっくり11連撃ですよ!」

 

「「じゅ、11連撃!?」」

 

俺とアスナさんは思わず声を上げてしまった。

 

――俺が11連撃のオリジナル・ソードスキル《ドラゴニック・ノヴァ》を登録するのに半年以上はかかった。それなのに、絶剣はこんな短期間で11連撃の登録に成功したっていうのか?

 

「11連撃ってなったら、対戦希望者が殺到するのも納得だね。皆はそのソードスキル、実際に見たの?」

 

アスナさんの問いに、リズさんが答える。

 

「んーん、なんでも、辻デュエルを始めた初日のいちばん最初に、演舞として披露したらしいんだけど、それっきり実戦では使ってないみたいね。……というか、そのオリジナル・ソードスキルを使わせるほど絶剣を追い詰められた人はまだ誰もいない、って言うか」

 

これを聞いて俺はザックさんとリーファの方を見る。

 

「それってもしかして、ザックさんとリーファでも……」

 

「ああ。俺が地上戦、リーファが空中戦で挑んだけどダメだった……」

 

「あたしもザックさんも、お互いHPが6割切る所までは良い勝負だったんですけど……、結局最後までデフォルト技だけで押し切られちゃいましたよね……」

 

ザックさんはSAOからの一流の槍使い、リーファは空中戦のエキスパート。この2人でも倒せないのだから、相当な実力者だと言ってもいいだろう。

 

「あ、肝心なことを聞いてなかった。絶剣の種族と武装は何だ?」

 

「リュウ君と同じ闇妖精族(インプ)だよ。武器も同じ片手剣だけど、アスナさんのレイピアに近いタイプかな。あと、ともかく速くて、動きが目でも追えないくらいだったよ。あんなこと初めてだよ、すごいショック……」

 

「スピードタイプか……。地上戦空中戦共に一切隙が無いとなると、これは倒すのに骨が折れそうだな……」

 

皆の話を聞いていたアスナさんは何か思い出して口を開いた。

 

「そう言えば、キリト君は?」

 

すると、他の皆はニヤニヤしたり、苦笑いを浮かべた。そして、リーファが代表して衝撃的なことを口にした。

 

「もう戦ったんですよ、お兄ちゃん。そりゃもう、きれーに負けました」

 

それを聞いた俺とアスナさんは数秒間唖然として固まってしまった。

 

――俺の中で中々超えられない存在でもあるキリさんが負けたっていうのか?

 

キリさんと肩を並べる実力者であるカイトさんも「二刀流を使ったキリトを倒すのは難しい」とコメントをしていた。唯一完全に彼を制することが出来たのは、血盟騎士団長にしてSAOのゲームマスターでもあったヒースクリフ/茅場晶彦だけだ。

 

「キリト君は本気だったの……?」

 

「完全に本気だったという訳じゃないと思うぜ。キリトの奴、二刀流を使った訳じゃなかったからな……。それによ……」

 

ザックさんは一旦言葉を切り、笑みを浮かべて揺り椅子に座りながら寝ているキリさんの方を見る。

 

「俺、前から思っていたんだ。多分ノーマルなゲームの中だと、キリトが二刀流を使って本気で戦うことは無いんじゃないかってな。 逆に言えば、キリトが本気になるのは、ゲームがただのゲームじゃなくなった時、バーチャルワールドがリアルワールドになった時だけ……。SAOはもちろん、ALOやGGOでもキリトが二刀流を使ったのはそういう時だったろ? だから、アイツが本気で戦わないといけないシーンは、もう来ないほうがいいんだよ……」

 

「ザックの言う通りよね……。ただでさえ、アイツ厄介な巻き込まれ体質なんだから……」

 

リズさんもザックさんに続くように言った。

 

2人の言葉を聞いたアスナさんは、こくんと頷いた。

 

「そうだね……」

 

そして、俺たちも賛同してゆっくりと首を動かした。

 

しばし訪れた沈黙を破ったのはリーファだった。

 

「……でも、あたしが感じた限りではですけど……、お兄ちゃん、真剣だったと思いますよ。少なくとも、手を抜いてたってことはまったく無いと思います」

 

「どうしてそう思ったの、リーファちゃん?」

 

アスナさんが尋ねると、リーファは語りだした。

 

「勝負が決まる少し前、鍔迫り合いで密着して動きが止まった時、お兄ちゃん、絶剣さんと何か喋ってたような気がするんですよね……。すぐその後、2人が距離を取って、絶剣さんの突進攻撃をお兄ちゃんが回避しきれないで決着したんですけど……」

 

「何を話してたんだ?」

 

「それが、聞いても教えてくれないの。何かありそうな感じはしたんだけどね……」

 

「その様子じゃ、その絶剣さんに直接聞いてみるしかないか……」

 

「みたいだね」

 

アスナさんも同意してそう一言。

 

「お、2人とも戦う気?」

 

「一度、絶剣と戦ってみたいと思ってましたからね。ちょうどいい機会ですよ。それに、その絶剣って人、なんだか気になるんです。辻デュエルすること以外で何か目的があってALO に来たんじゃないかって……」

 

「わたしも皆の話を聞いててそう思った。キリト君が何か言っていたのもあるし、絶対に何かある筈だよ」

 

「でも、それを知ろうと思ったら、2人ともキリトと同じくらいのいい勝負しないととだよ?」

 

俺とアスナさんは笑みを浮かべて軽く頷いた。

 

すると、オトヤが何か思い出してアスナに尋ねた。

 

「そういえば、アスナさんはどっちのアバターで行くんですか?」

 

アスナさんは現在、旧SAOのプレイヤーデータをコンバートした水妖精族(ウンディーネ)の細剣使い《アスナ》の他に、新規アカウントで一から育ててる風妖精族(シルフ)の短剣使い《エリカ》というキャラを所持している。

 

「慣れてるこっちで行くよ。相手がスピード型なら、 秒間破壊力……DPSより、ぎりぎりの見切り勝負になると思うから。皆、付き合ってくれる?」

 

すると、リーファ達は同時に頷いた。

 

「じゃ、決まりね。えっと、午後3時に24層の小島に現われるんだったら、2時半にそこで……」

 

アスナさんは言いかけている最中、何かに気が付いて声を上げた。

 

「いけない! もう6時!? 晩御飯遅れちゃう!」

 

「じゃ、今日はここでお開きにしましょう」

 

「お嬢様は辛いわねー」

 

リーファ、リズさんの順に言う。そして、俺たちもカップや皿を片づけるのを手伝い、課題のデータをセーブする。

 

「ほら、お兄ちゃん起きて! 帰るよー!」

 

リーファはキリさんが寝ている揺り椅子のところまで行き、背もたれを掴んで派手に揺らした。

 

その光景を微笑んで見ていると、ふとあることに気が付いて、ザックさんの方を見る。

 

「あの、ザックさん」

 

「どうした?」

 

「さっき、リズさんが『絶剣はコンバートプレイヤーだろう』って言ってましたけど、もしかすると……元SAO プレイヤーって線もあるんじゃないんですか?」

 

すると、ザックさんは真剣な表情をして小さく頷いた。

 

「ああ。俺もまずそれを疑ったぜ。だから、キリトが絶剣と戦った後、どう思うか聞いてみたら、『 絶剣がSAO プレイヤーだった可能性は、まず無いだろう』って言ってきたんだよ……」

 

「ど、どうしてですか……?」

 

「キリト曰く、『絶剣があの世界にいたなら、二刀流スキルは、俺でなくあいつに与えられていたはずだ』ってな……」

 

それを聞いて、またしても驚愕する。

 

SAOで最大の反応速度を持っていたキリさん。彼さえも上回る反応速度を持つという絶剣。

 

――絶剣 、お前は本当に一体何者なんだ……?




今回はほぼ100パーセント、キリアスのログハウス内での会話になっちゃいました。リュウ君達を上手く話しに入れることはできたでしょうか…。


本当に大変長らくお待たせしました。
X(Twitter)の方でもお話しましたが、数か月療養を続けて何とか回復しましたけど、最近また少し体調が優れない日が続くようになるという私の健康面において大きなトラブルがあったためです。他にも、療養中に執筆以外で夢中になったことがある影響もありますが…。
まだ問題は完全に解決したわけではないので、執筆が大幅に遅れる可能性は十分にあります。しかし、執筆は気分転換になることの1つですので、これからも合間を見て続けていけたらいいなと思ってます。

次回はついにあのキャラが登場する予定です!それでは!
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