ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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今回も番外編で、主役はカイトとザックの2人になります。

仮面ライダーネタもいくつか登場します。


番外編5 《ナイツオブバロン》

2024年6月20日

 

今ここで、赤と黒をベースとした装備をしているプレイヤーがモンスターたちと戦闘中である。

 

プレイヤーは全員が中高生の少年で人数は5人。前衛には刀使い1人、片手剣や片手棍といった片手用の武器と盾を持つプレイヤーが2人。後衛には槍と両手斧を持つプレイヤーがそれぞれ1人ずつ。少人数だが、攻守ともにバランスが取れたパーティーである。この中にはカイトとザックの姿もある。

 

対する敵は《シカインベス》という鹿をモチーフとした怪人。青をベースとした体に頭部と背中に大きな枝角、手足には硬い(ひづめ)の様な外骨格を持っているのが特徴だ。数は全部で10体近くもいる。

 

だけど、プレイヤーたちの実力は高く、善戦している。《シカインベス》も1体2体と着々と倒していく。残りが最後の1体だけとなった時だった。最後の残った《シカインベス》は非常に筋肉質で巨大な姿となり、枝角も全身を覆う装甲のようになった。

 

「コイツはどうやら最後の1体になると強化体になるっていう仕組みみたいだな」

 

「問題ない、いつも通りに行くぞ!」

 

『おう!』

 

ザックの後にカイトがそう言うと、ザックを含めた4人が返事をする。

 

カイトは赤と銀をベースとした刃となっている《フレイムセイバー》を持って構える。

 

《フレイムセイバー》は第60のフロアボスのラストアタックボーナスで手に入れた、モンスタードロップの中では魔剣クラスのステータスを持つ刀。高レベルの刀スキルを持つカイトだからこそ扱うことができる刀である。

 

強化体になった《シカインベス》は拳を振り下ろしてきた。

 

「攻撃来るぞ!防御用意!」

 

「ああ!」

 

「任せろ!」

 

盾持ちの2人が前に出て《シカインベス》が振り下ろしてきた拳を盾で受け止める。強化体になった《シカインベス》は巨体にも関わらず、動きは身軽の方で何度も拳を振り下ろす。

 

この隙にカイトは刀スキルの《浮舟》を使って《シカインベス》を斬り裂く。すると、敵はターゲットをカイトへと換える。

 

「オレたちのことも忘れてないか?」

 

ザックはそう言うと槍スキルの《トリプル・スラスト》を放ち、ザックに続いて両手斧を持つプレイヤーは両手斧スキルの《ワール・ウィンド》を放つ。更に盾持ちの2人も片手剣と片手棍で同時に攻撃する。

 

5人の攻撃を受けた《シカインベス》のHPは削られていく。だが、奴もただでやられるわけにはいかず、咆哮をあげて強化前の《シカインベス》を5体呼び出す。

 

「また出て来たか。オレとカイトでデカい方を相手するから皆はその間に小さい方を倒してくれ!」

 

「2人だけで大丈夫なのかっ!?」

 

「心配ない!」

 

心配してきた両手斧使いにザックはそう言い残すとカイトと共に強化体の《シカインベス》へ向かって走っていく。

 

2人は二手に分かれて刀で斬り付け、槍で薙ぎ払う。攻撃は回避して避け、敵が一方に集中している間にもう1人が攻撃する。これを何度も繰り返す。HPは3分の1近くとなる。

 

「コイツ、最初と比べると大分体力を消耗しているな」

 

「今なら押し切れる!」

 

ザックがタゲを取り、回避しながら槍で攻撃する。カイトも加わって刀で斬り付ける。

 

攻撃を受けた強化体の《シカインベス》は怯み、その間にカイトとザックは反動が少ないソードスキルを使用しながら何度もスイッチを繰り返し、攻撃していく。奴には反撃する隙もなく、更に他の3人の仲間も加わり、HPを削られていく。最後はカイトの刀スキル《緋扇》を喰らって消滅した。

 

直後、カイトを除いた4人から歓声が沸き上がった。

 

「流石うちのリーダーとサブリーダーだな」

 

「いや、皆が後から出てきたモンスターの相手をしてくれたっていうのもあるぜ。そうだろ、カイト」

 

「ああ」

 

カイトとザックを含めた5人のギルドの名前は《ナイツオブバロン》。直訳すると男爵の騎士団という。

 

このギルドが結成されるきっかけとなったのは最前線が第10層の時だった。

 

 

 

第1層のフロアボス戦以降、カイトとザックはコンビを組み、他のプレイヤーとは一切パーティーを組まずに行動していた。そんなある日、カイトとザックは最前線の迷宮区でモンスターに襲われている3人組みのプレイヤーを助けた。この3人がカイトとザックとギルドを組むことになるプレイヤーたちだった。

 

簡単にお互いの自己紹介をすると両手斧使いのハントはカイトとザックにあることを言った。

 

「なあ、オレたちをカイトとザックの仲間に入れてくれないか!?」

 

「悪いが俺たちは元βテスターだ。前ほどじゃないが、俺たちのことをよく思っていない連中もまだ多い」

 

「どうしてまたオレたちの仲間になりたいんだ?」

 

 

ザックが言ったことに片手棍使いのダイチと片手剣使いのリクが答えた。

 

「オレたちも2人のように強くなって攻略組に入りたいんだよ」

 

「ゲームクリアを目指して現実に戻るのが夢なんだ。だから頼む!」

 

2人の言葉を聞き、カイトとザックは考え、結論を出す。

 

「そこまで言うならオレはいいと思うが、カイトはどうだ?」

 

「俺もそれで構わない」

 

「そういうことだ。これからよろしくな」

 

ザックが手を差し出すと3人は彼と握手し、その後にカイトとも握手を交わす。

 

「それでリーダーはどうするんだ?この状態だと俺かザックがやることになるだろ。ここは俺より年上で人をまとめるのが得意なザックがやるべきだと思うが」

 

「いや、リーダーはカイトの方が適任だろ。オレよりも強いし、お前にはどんなに自分に不利な状況でもどんなに恐ろしい敵でも屈服することなく、全力で戦おうとする強い精神力の持ち主だ。この世界で皆を引っ張っていくにはその方がいいじゃないのか?」

 

「いいだろ。だけど、ギルド名は俺が決めるぞ」

 

「いいぜ。皆はどうだ?」

 

「もちろん賛成だ」

 

「カイトがリーダーをやるからギルド名はカイトが決めた方がいいと思うぜ」

 

「なるべくカッコいい奴にしてくれよ」

 

ザックに続き、他の3人も賛成した。すると、カイトはすでにギルド名を決めていたらしく、すぐにギルド名を言った。

 

「《ナイツオブバロン》……要するに男爵の騎士団だ。意味は、貴族のように誇り高くこの世界で戦う。だが、貴族の中では最下層……一番下だ。俺たちはそこから這い上がって強くなり、ゲームクリアを目指すぞ」

 

バロン……男爵は貴族としては最下層の爵位である。最高位の爵位であるデューク……公爵の方がいいかもしれないが、今の自分たちは最高位のデュークを得られる権利はないとカイトが判断したからだ。現状、第1層の時から攻略をしていた《アインクラッド解放隊》や《ドラゴンナイツ・ブリゲード》と比べると規模は小さく、カイトとザック以外の3人の実力も低い方のため、ギルドとしての実力は攻略組でも最下層に位置すると言ってもよい。

 

カイトはこれから強くなるのだという意図を込め、敢えてバロンを選んだのだ。

 

現在は5人という小規模のギルドにもかかわらず、攻略組として問題なく活動できるまでのレベルとなった。

 

 

 

攻略を終えたカイトたちはギルドホームがある第57層のマーテンに戻り、カイトとザックの2人は市場に夕食の買い出し、他の3人はギルドホームへ戻った。

 

「カイト、食材は十分あっただろ。それでなんとかならないのか?」

 

「無理だな。いくら材料があっても調味料となるものがないと不味くなるだけだ。SAOに醤油もマヨネーズとかはないからその代用となるものはどうしても必要だ」

 

カイトは戦闘に必要なスキルの他に料理スキルもかなりあげている。その腕はザックも美味いと評価するほどのものだ。カイトが料理スキルを上げているのには、SAOの飯は美味いと思えるものが少ないからだという理由らしい。ちなみに、前に食べた第50層のアルゲードで食べたラーメンみたいなものはあまり美味しくないと評価していた。

 

「あれ?カイト君とザック君?」

 

2人に声をかけてきたのは、血盟騎士団の副団長を務めているアスナだった。

 

「アスナか、この前の攻略会議だな。ここにいるってことはオレたちと同様に夕食の買い出しか?」

 

「そうだね。毎日NPCのお店で食べるわけにもいかないし、料理スキルだけはカイト君にだけは負けたくないしね」

 

「いつかお前を追い抜いてみせる……」

 

カイトとアスナの2人は最近では料理のライバルといってもいいくらいのものとなっている。

 

「そういえば、アスナは数か月前と比べて随分と変わったな。キリトと何かあったのか?」

 

ザックの言葉にアスナは一気に頬を赤く染めて慌て出した。

 

「ちょっとザック君!どうしてここでキリト君が出てくるのよっ!」

 

「だってよ、オレとカイトにキリトのことをよく聞いてくるからさ」

 

「キリト君とは何でもないわよっ!ただいつもソロ活動しているから前にコンビを組んでいた者として心配しているだけよっ!私、そろそろ行くね!」

 

アスナはそう言い残してこの場を後にした。

 

「あの様子だとアスナは絶対にキリトのこと……」

 

「ああ。だが、キリトの奴は絶対に気が付いてないと思うが……」

 

カイトとザックはアスナがキリトに想いを寄せていることに薄々気が付いていた。しかし、キリト本人は全く気が付いていなく、2人も教えようとはしていない。

 

最近、2人の周りでは恋愛ごとに関する話をよく耳にする。この前もザックの弟子のオトヤには「もう少し2人のように男らしくなりたい」と相談を受けられたこともある。どうやらオトヤはこの世界に来て好きな異性ができたようだった。カイトは自分の恋愛事にはあまり興味を抱いていないが、ザックはそういう相手がいることを少し羨ましがっていた。

 

そんなことを話していると、新たに誰かが2人に話しかけてきた。

 

「よう、カイトにザックじゃねえか」

 

新たに2人に話しかけてきたのは、頭にバンダナを巻いた風林火山のリーダーであるカイトと同じ刀使いのクラインだった。

 

「何だ、クラインか……」

 

「何だって何だよ!それはないだろ、カイト!」

 

そっけない態度をとったカイトにクラインは文句を言い、ザックは2人の仲裁をする。

 

クラインが落ち着いたところで、他のプレイヤーたちの通行の邪魔にならないところに移動して立ち話をすることになった。

 

「えっと、お前たちのナイツオブ……バナナだっけ?」

 

「バロンだ!」

 

カイトは、自分が考えたギルド名をバナナだと言ってきたクラインを睨み、若干キレ気味の声で返す。そして、ザックと共にギルド名に「風林火山と付けたお前にだけは言われたくない」という眼でクラインを見る。

 

「わりぃわりぃ。お前たちの《ナイツオブバロン》ってこの前の第60のフロアボス戦で活躍して、カイトは何かラストアタックボーナスで凄い刀を手に入れたって聞いたんだよ。オレ、まだどんな刀なのかちゃんと見てなかったから見せてくれよ」

 

そう言われると、カイトは左腰の鞘から《フレイムセイバー》を抜き取り、クラインに見せる。

 

「あの時、ラストアタックを決めていたらこの刀はオレが手に入れていたのによぉ」

 

「まあ待てよクライン。刀は今もいいものがあるし、これからだってもっといい刀を手に入れられるかもしれないぜ。だから元気出せよ」

 

「ザック~。お前はカイトと違ってオレ様を慰めてくれるんだな。ありがとよ」

 

カイトの持つ《フレイムセイバー》を羨ましそうにしてみるクラインの肩に、ザックは手を置いて慰める。

 

イニシャルがKで刀使いと色々と同じところがある2人だが、クールで大人びた性格のカイト、コメディリリーフが目立つクラインは、明らかに雰囲気は大きく異なっている。

 

その後クラインと別れ、カイトとザックの2人はギルドホームへと戻ることにした。

 

ギルドホームに戻ると、待ちくたびれていた3人がいてカイトはすぐに夕食の支度をする。ゲームの中のため、現実とは違い、支度して10分後にはもう食べられる状態となった。

 

「やっぱりカイトの飯は美味いな。これなら安心して嫁に行けるぜ」

 

「嫁は余計だ……」

 

「まあまあ、今は飯の最中だ。楽しもうぜカイト」

 

「ザックの言う通りだぜ」

 

「そうそう!」

 

命がけで戦っていると言ってもここにいる全員は中高生の少年。会話を楽しみながら食事をするのだった。

 

夜の12時になる頃には全員、各自の部屋に行って眠りについた。

 

この日の《ナイツオブバロン》の活動はこうして終わりを迎えた。




カイトとザックがリーダーとサブリーダーを務める《ナイツオブバロン》は、仮面ライダー鎧武のチームバロンをモデルとしているため、メンバー全員が赤と黒をベースとした服装をし、ギルド名もそれから頂きました。バナナネタもです(笑)

カイトが持つ《フレイムセイバー》は仮面ライダーアギトのフレイムフォームが使う刀《フレイムセイバー》をイメージして下さい。
ちなみに前回と前々回で書くのを忘れましたが、オトヤが持つ杖は仮面ライダーレンゲルが使用するレンゲルラウザーみたいなものとなっています。

再構成版では久しぶりにアスナ、初めてとなる?クラインが少しだけですが、登場しました。クラインは第1話で「オレ様のアンチョビピザとジンジャエールがぁぁぁぁっ!!」と叫んで、声だけ登場していましたが(笑)

次回で番外編はひとまず終了となります。

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