ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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再構成前の方もよろしくお願いします


第2話 第1層フロアボス攻略会議

2022年12月2日 第1層・トールバーナ

 

このデスゲームが始まり、1ヶ月が経過した。しかし、未だに第2層には到達できず、その間に2000人のプレイヤーが死んだ。こんな絶望的な状況の中、やっと第1層フロアボス攻略会議が行われることとなった。

 

俺とファーランさんとミラもこの会議に参加するということで、現在トールバーナの噴水広場へとやってきた。

 

広場には俺たちを含め、44人のプレイヤーが集まっていた。

 

「結構集まっているな」

 

「もう少し人数は欲しいけど、自分の命が懸っていると考えると多い方だな」

 

呟いたことにファーランさんが答えた。

 

確かに普通のゲームならともかく死と隣り合わせのゲームとなると、ここに来ただけでも十分覚悟がある人たちってことだ。

 

時間になるとやや長めの青い髪をした青年が前に出てくる。

 

「あれ、SAOって現実と同じ容姿なのにどうしてあの人の髪の毛は青になってるんだ?」

 

「SAOには髪染めのアイテムが存在するんだ。だけど、第1層だと店では売ってないからモンスターからのレアドロップを狙うしかないんだよ」

 

「なるほど」

 

「髪染めのアイテムか。なんか面白そうだね」

 

隣にファーランさんが髪染めのアイテムのことを教えてくれ、それを聞いたミラは興味津々な様子を見せる。

 

前に出た青年が話し始める。

 

「はーい!それじゃあそろそろ始めさせてもらいます!今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。俺は《ディアベル》。職業は気持ち的に《ナイト》やってます!」

 

すると、周りから笑い声やヤジを飛ばす声があがり、殺伐とした空気は一気に和む。

 

ディアベルさんはブロンズ系の防具を身に付け、左腰には片手剣、背中にカイトシールドを背負っている。確かにこのような装備からナイトと言ってもおかしくないだろう。

 

そして、ディアベルさんは真剣な表情となり、話を始める。

 

「今日俺たちのパーティーがついにあの塔の最上階でボスの部屋を発見した」

 

この場にいたプレイヤーたちはざわめく。

 

「俺たちはボスを倒し、第2層に到達して、このデスゲームにいつかきっとクリア出来るってことを《はじまりの街》で待ってるみんなに伝えなきゃならない。それが今、この場所にいる俺たちの義務なんだ!! そうだろみんな!!」

 

ディアベルさんはこの場にいる全員に問う。

 

1人のプレイヤーが拍手をすると周りにいたプレイヤーたちからも拍手が上がった。

 

「よし、早速だけど攻略会議を始めていきたいと……」

 

「ちょお待ってんか」

 

ディアベルさんが話を進めようとすると後ろの方から声がする。

 

その声の主だと思われる小柄ながらがっちりとした体格で、サボテンのような髪型が特徴な男がディアベルさんの前にたった。

 

「わいは《キバオウ》ってもんや。最初に言わせてもらいたいことがある。こん中に今まで死んでいった2000人に詫び入れなれなあかん奴がおるはずや」

 

「キバオウさん、君のいう奴らとは元βテスターの人たちのことかな?」

 

「決まってるやないか!β上がりどもはこんクソゲームが始まったその日にビギナーを見捨てて消えおった。奴らはうまい狩場やらボロいクエストを独り占めして自分らだけポンポン強なってその後もずーっと知らんぷりや。こんなかにもおるはずやで!β上がりの奴らがっ!そいつらに土下座さして、溜め込んだ金やアイテムを吐き出してもらわんと、パーティーメンバーとして命は預けられんし、預かれん!」

 

キバオウの言い分はわかるが、どうしても納得がいかなかった。

 

ファーランさんも元βテスターだけど、ミラはともかく知り合ったばかりの俺も助けてくれた。それにファーランさんは他のプレイヤーたちも助けようともしていた。

 

だから、元βテスター全員が他のプレイヤーを見捨てたのだというキバオウの主張は許せなかった。

 

「あのサボテン頭ムカつく」

 

ファーランさんを挟んで左隣にいるミラがキバオウに対して愚痴を言う。まあ、ミラの気持ちはよくわかるけど。

 

すると前の方から別のプレイヤーの声があがった。

 

「おい、そこのサボテン頭」

 

新たに前に出てきたのは、曲刀を左腰の鞘に納めた明るめの茶髪の髪をした高校生くらいの男性だった。

 

曲刀使いに続くように、槍を背負った黒髪で身長が175cmほどある男性も出てきた。年齢は見たところ彼と同じくらいだ。

 

曲刀使いが話し始める。

 

「俺は《カイト》。さっきからお前の話を聞いているが、随分と自分勝手だな」

 

カイトさんをキバオウは睨み付けるように見る。

 

「お前が言っているのは、2000人のプレイヤーが死んだのも攻略が進まないのも一方的に元βテスターたちのせいにしたいだけだろ?俺からしたら、お前みたいに一方的に元βテスターたちのせいするような奴とは組みたくないな」

 

「なんやとこのガキっ!!」

 

キバオウは怒りを含んだ声を上げ、今すぐにカイトさんと取っ組み合いのケンカを始めそうな雰囲気となる。

 

「カイト言い過ぎだぞ!」

 

カイトさんと一緒に出てきた槍使いの男性がカイトさんを止める。キバオウの方もディアベルさんを始め、前の方にいた数人のプレイヤーが止めに入った。

 

それが治まると両手用戦斧を背負った色黒の肌でスキンヘッドの男性が前に出てきた。体格もよく身長は190cmほどある。外国人のプレイヤーだろう。

 

「発言いいか?オレの名前は《エギル》だ。キバオウさん、元βテスター全員が他のプレイヤーを見捨てたというのは違うぞ」

 

エギルさんは一冊の本を取り出した。

 

「あんたもこの道具屋で無料配布してるこのガイドブックは持っているだろ」

 

「貰たで。それがなんや!?」

 

「これを配布していたのは、元βテスターたちだ」

 

この場にいた全員がざわつく。

 

エギルさんの言う通り、ガイドブックを配布していたのは元βテスターたちだ。俺たちも《アルゴ》さんという情報屋の女性プレイヤーからタダで貰った。ファーランさんの話によると彼女も元βテスターらしい。

 

「いいか。情報は誰にでも手に入れられたんだ。なのにたくさんのプレイヤーが死んだ。その失敗を踏まえて俺たちはどうボスに挑むべきなのか、この場で論議されるとオレは思っていたのだがな」

 

エギルさんが話し終え、数秒ほどするとディアベルさん以外の人たちは元居た場所まで戻った。そして、再び攻略会議を始めることになった。

 

「それじゃ、攻略会議を再開したいと思う。まずは6人のパーティーを組んでみてくれ。フロアボスは単なるパーティーじゃ対抗出来ない。パーティーを束ねたレイドを作るんだ」

 

「6人パーティーって言っても俺たち3人しか……」

 

「もしも6人いなかったら、アタシたちはボス攻略に参加できないってことなの?」

 

「いや、ボス攻略に参加できないってことはないと思う。けど、3人だけじゃ足りないから俺たちとパーティーを組んでくれるプレイヤーを3人見つけないといけないな」

 

まだパーティーを組んでいない3人のプレイヤーを探そうと立ち上がろうとしたとき、誰かが俺たちに話しかけてきた。

 

「君たち、よかったら私たちとパーティーを組んでくれないか?」

 

話しかけてきた男性は細剣を持ったさっぱりとしたダンディな容姿の30歳近くの人だ。彼の他に先ほどキバオウともめていたカイトさんとその仲間の槍使いの男性もいた。

 

「まだ名乗っていなかったな、私はフラゴン。彼らとパーティーを組むことになったんだが、周りにいたプレイヤーたちはすぐにパーティーが決まってしまって困ってたんだ。君たちがパーティーを組んでくれるとちょうど6人となるけど、どうかな?」

 

「ファーランさん、俺はこの人たちとパーティーを組むことに賛成ですけど、どうします?」

 

「アタシもリュウに賛成するよ」

 

「2人がそう言うなら。じゃあ、よろしく頼むよ」

 

俺たち3人の中でパーティーリーダーをしているファーランさんが承諾し、彼らとパーティーを組むことにした。

 

すると、槍使いの男性はオレたちに自分の名前を名乗った。

 

「オレは《ザック》。知っているかもしれないけど一応名乗っておくよ。コイツはカイト。コイツは無愛想で口が悪いけど根はいい奴なんだ。よろしくな」

 

初対面の俺たちもフレンドリーに接する好青年のザックさん。クールで大人びて気が強いカイトさんとはいいコンビに思える。

 

俺たちも自分の名前を名乗って彼らと握手をする。カイトさんは少し怖そうな感じだったけど、ザックさんとフラゴンさんと同様にちゃんとオレたちと握手をしてくれた。

 

ちなみにパーティーリーダーはフラゴンさんが引き受けてくれることとなった。

 

パーティーを組み終えるとディアベルさんはボスについて説明する。

 

「よしじゃあ、再開していいかな。ボスの情報だが先ほど例のガイドブックの最新版が配布された。それによるとボスの名前は、《イルファング・ザ・コボルドロード》、それと、《ルイン・コボルドセンチネル》という取り巻きがいる。ボスの武器は斧とバックラー。4段あるHPバーの最後の1段が赤くなると曲刀武器のタルワールに攻撃パターンが変わるということだ」

 

出来上がったパーティーは6人パーティーが7つ、2人パーティーが1つだ。重装甲の壁部隊が2つ、高機動高火力の攻撃部隊が3つ、長モノ装備の支援部隊2つに編成された。

 

俺たちのパーティーは3つある高機動高火力の攻撃部隊の内の1つで、もう1つの攻撃部隊のパーティーと一緒にボスの相手をすることに決まった。

 

「攻略会議は以上だ。アイテム分配は、金は全員で均等割、経験値はモンスターを倒したパーティーのもの、アイテムはゲットした人のものとする。異存はないかな?」

 

全員がディアベルさんの意見に賛同する。そして、明日は朝10時に出発することになり、解散となった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「まさか、このパーティーに3人も元βテスターがいたとはな……」

 

攻略会議の後、カイトさんとザックさんが話しておくことがあると言い、トールバーナの裏通りにある酒場にやってきた俺たち。

 

そこで、カイトさんとザックさんが自分たちは元βテスターだということを告白。ファーランさんも自分だけ元βテスターであることを隠すわけにはいかないと皆に話した。一時的にパーティーを組むことになっただけだが、明日はボスと戦う中で命を預けることになる仲間だ。それを隠すわけにはいかなかったのだろう。

 

俺やミラはともかくフラゴンさんは元βテスターが3人もいたことに驚きを隠せないでいた。だけど、彼は元βテスターを拒むことはなかった。

 

「3人も元βテスターがいるのは心強い。明日はよろしく頼む、君たちもだ」

 

フラゴンさんは元βテスターのファーランさんとカイトさんとザックさんを見た後、俺とミラの方にも期待しているぞという表情で顔を向ける。キバオウと違って随分と大人らしい対応だな。

 

「だけど、他のパーティーの者には君たちが元βテスターであることは隠した方がいい。会議中に乱入してきたキバオウのように元βテスターを敵視する者もいるかもしれないからな」

 

元βテスターのファーランさん達は頷く。

 

そして、明日のフロアボス攻略の確認と共に第1層フロアボス攻略の前祝をすることに。最後には全員で第1層フロアボスに勝つぞと意気込み、明日に備えることとなった。


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