ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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今回の話は待ちに待ったこの作品のヒロインが登場します。


第3話 妖精たちの国

何処の世界に存在するのかわからない研究施設のような場所。今ここには誰もいない。

 

無人となっている研究施設にあるテーブルの上には、直径10センチ程の石造りの円盤が置かれていた。東洋龍の顔を催した紋章が描かれている円盤のふたは開けられており、その中には黒、藍色、紫のメダルがそれぞれ1枚ずつ、計3枚のメダルが入っていた。3枚とも金色の縁となっていて、円盤のふたと同じ東洋龍の顔を催した紋章が描かれている。

 

突如、3枚のメダルは光だし、動き出す。そして、何処かへ向かって飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アルヴヘイム・オンラインへようこそ。最初に性別とキャラクターの名前を入力してください』

 

アナウンスが入り、キーボードが出現する。

 

性別は男、名前はSAOで名乗っていたあの名前《Ryuga》と入力した。

 

『それでは種族を決めましょう。9つの種族から1つ選択してください』

 

妖精は全部で9つの種族がある。

 

火妖精のサラマンダー。

水妖精のウンディーネ。

風妖精のシルフ。

土妖精のノーム。

闇妖精のインプ。

影妖精のスプリガン。

猫妖精のケットシー。

鍛冶妖精のレプラコーン。

音楽妖精のプーカ。

 

前半の5つは漫画やゲームとかで聞いたことはあるけど、後半の4つはあまり聞いたことがないな。

 

種族にはそれぞれ特徴があるみたいだ。後に後悔しないようにするためにもこれは慎重に選んだ方がよさそうだな。

 

まずはパワーファイターの《サラマンダー》と《ノーム》は論外だな。体格がいいからスピード重視の俺の戦闘スタイルにはまず合わない。《スプリガン》と《レプラコーン》と《プーカ》は戦闘面では優れたものに秀でてないから、この3種族も候補から外そう。

 

残った種族の中で真っ先に目に止まったのは敏捷性に長けている《ケットシー》だった。これにしようかと思ったが、アバターに猫耳や尻尾が付いていることに抵抗を感じ、保留にしておいた。《シルフ》も能力がいいが、イメージカラーが緑なのが何かしっくりこなくてケットシーと同様に保留にした。

 

残っているのは《ウンディーネ》と《インプ》。ウンディーネは回復魔法と水中活動に長け、水属性魔法が得意。そしてインプは暗視と暗中飛行に長け、闇属性魔法が得意なのか。ウンディーネは水の妖精だから間違いなく水色とか青は間違いなく似合うし、インプも黒や紫の他に藍色や紺色といった暗い青系統も似合いそうだな。

 

「こっちにするか」

 

考えた結果、俺はインプを選んだ。インプって妖精じゃなくて悪魔だったと思うけど、今は気にしないでおこう。

 

『インプですね?キャラクターの容姿はランダムで生成されます、よろしいですか?』

 

OKボタンを押す。

 

『それでは、インプ領のホームタウンに転送します。幸運を祈ります』

 

それが終わると同時に光に包まれる。

 

光りが消えると俺は空中にいて、地上にあるインプ領のホームタウンへと落下していた。

 

「あれがインプ領のホームタウンか」

 

闇妖精だということもあって、インプ領のホームタウンは夜をイメージした街だ。

 

徐々にインプ領のホームタウンに近づいていく。

 

その時だった。

 

遠くの方から俺の方に目がけて黒と藍色と紫に光るメダルみたいなものが飛んできた。

 

「あれは何なんだ?メダル……?」

 

光る3枚のメダルは俺の周りを旋回すると身体に入り込む。

 

「ぐわっ!!」

 

一瞬、身体に電撃が走るような感覚が襲い掛かってくる。

 

そして、いきなり全ての映像がフリーズする。辺り一面のポリゴンが欠け、雷光のノイズが走り、徐々に辺り一面は何もない暗闇に包まれ、その中に落ちていく。

 

「うわぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、ここは……」

 

意識を取り戻し、目を開ける。

 

起き上がって辺りを見渡してみるとここは森の中だった。プレイヤーは1人もいなく、建物らしいものも1つも見当たらない。

 

「あれ、インプ領のホームタウンじゃない。ここは何処なんだ?」

 

普通、ゲームを始めるとなると街や自宅からのスタートとなるのが当たり前だ。今の俺のようにフィールドからスタートするなんて絶対にありえない。

 

すぐ近くに小川が流れていることに気が付き、ALOの俺はいったいどのような姿をしているのか気になって確認しに行った。

 

流れている小川を覗き込むと水面には、髪の毛と瞳が紺色の1人の少年の顔が映っていた。そして、耳は妖精らしく尖っている。服装は紺色と黒をベースとした初期装備のものだ。

 

間違いなくALOの俺の姿だ。だが、それを見た瞬間、驚きを隠せなかった。

 

「こ、これがALOの俺の姿か……。容姿はランダムで生成されるって言っていたのにどうして……」

 

ヘアスタイルや髪の毛と瞳の色、エルフ耳を除くと現実やSAOの俺に近い姿をしている。

 

「まさか、ここはSAOじゃ……」

 

慌てて左手でメニューウインドウを急いで開く。ちゃんとログアウトボタンがあることに安心し、ついでに今のステータスを確かめることにした。だが、それを見て驚いてしまう。

 

種族はインプ、HPとMPはそれぞれ400と80と初期ステータスと特に問題はない。だが、問題なのはその下にある所持スキルとその熟練度だった。

 

スキル

・片手剣:1000

・体術:648

・投剣:739

・武器防御:921

・戦闘時回復:906

・応急回復:784

・索敵:879

・隠蔽:857

・軽業:1000

・疾走:1000

・限界重量拡張:713

・?????????

 

「HPとMPは初期ステータスなのに、どうして所持スキルは上級者レベルのステータスなんだ?」

 

これはどう考えてもデータがバグっている。でも、このスキルのステータスは何処かで見たことがあるような……ってこれはSAOで俺が習得したスキルとその熟練度だ。

 

この所持スキルで特に気になるのは一番下にある『?????????』と表示されているところだ。SAOで最終的に所持していたスキルは上の11個のはずだ。じゃあ、一番下のやつはいったい何なんだ。

 

色々考えてみるが、心当たりがあるものは何1つなかった。

 

「容姿にスキル熟練度、どうしてSAOのものと共通するものがこんなにもあるんだ?だったら、アイテムの方は……うわっ……」

 

今度はアイテムウインドウを開くが、それを見て絶句してしまう。アイテムは文字化けしていて、使えそうなアイテムは《王のメダル》しか残っていなかった。

 

「ダメだ、使えそうなアイテムが《王のメダル》しか残ってない……。SAOで愛用していた《ドラゴナイト・レガシー》とかがあれば、なんとかなったのに……」

 

色々試してみるが、使うことができないことが判明。持っていても意味がないため、《王のメダル》以外のアイテムは全て破棄することにした。あの中には、俺の愛剣《ドラグエッジ》や黒猫団から貰った青いフード付きマントなど思い入れのあるものもたくさんあって、少し悲しかった。でも、《王のメダル》はファーランさんとミラとの思い出があるから、これだけあっただけでもよかったと思った方がいいか。

 

所持金も確かめてみたが、明らかにゲームをやり始めたプレイヤーが持っているがおかしいと思うほど多額だった。街に行って店があったら片刃状の片手剣と青系のフード付きマントでも買おうか。売っているといいな。

 

とりあえず今は初期装備の片手剣を右腰に装備することにした。

 

「あっ……そういえば、飛ぶことができるんだったな」

 

飛ぼうとしたら背中をコウモリの羽みたいな形をした黒い翅が4枚現れた。

 

「これが翅か。インプだから悪魔っぽい形をした翅だな」

 

確かダイブする前に読んだマニュアルには、左手を握るようにすると補助コントローラーが現れて飛べるって書いていたことを思い出す。実際にやってみるとジョイスティック状の補助コントローラーが現れた。

 

「手前に引くと上昇、押し倒すと下降、左右で旋回……」

 

マニュアルにあった操作方法を思い出しながら補助コントローラーを使用しながら、練習を始める。

 

それから数分後にはコントローラーありでなんとか飛べるようになった。

 

「これが飛行機能か。なんかいいな」

 

すっかり飛行機能に魅了されてしまった。(あん)ちゃんと同じように、俺にもゲーマーの血が流れているのだと確信した。

 

「これで飛行は大丈夫と……。このまま、ここに留まっていても何も解決しないし、近くに街か村がないか探しながら移動するか」

 

今は森を抜けようと辺りを広く見渡せるところまで上昇する。上空から辺り周辺を見渡すが街や村はなく、森が広がっているだけ。妖精の世界の星空は幻想的でとても綺麗だ。

 

とりあえず、世界樹が見える方へ行ってみることにする。

 

「早くキリさんを探さないと。でも、どうやってキリさんを探せばいいんだっけ?しかもどんな姿になっているか、何処にいるのかも分からないしな。それに今敵が襲ってきたらヤバいぞ」

 

俺は左利きのため、剣は左手で持つ。だけど、今はコントローラーがあるため、剣は使うことはできない。コントローラーなしでも飛べるらしいけど、どうやったらできるのかはよくわからない。

 

後ろの方から何か音がし、振り返って見ると俺に目がけて炎の玉が勢いよく飛んでくる。

 

「危なっ!!何だ!?」

 

間一髪のところでなんとか回避し、当たらずに済んだ。初期装備であんなの喰らったら大ダメージを受けていたところだ。

 

すると、赤い重装甲で身を纏い、ランスを持った大柄のプレイヤーが2人こっちに近づいてきた。カラーリングと体格がいいことからこの2人はサラマンダーに間違いない。

 

「シルフの残党を探してたが、こんなところにインプの初心者(ニュービー)がいやがったとは驚いたぜ」

 

「ちょっといきなり何するんだ!危ないだろ!」

 

初心者(ニュービー)のお前にこの世界の厳しさを教えてやろうと思ってな」

 

「それにこの前、サラマンダー領とインプ領との中立域でお前と同じインプのプレイヤーにやられたんだよ」

 

これがPK推奨のゲームか。初心者狩りとかもあるんだな。ていうか、俺と同じインプのプレイヤーにやられたからって完全に逆恨みじゃないか。

 

「ここは戦うしかないか……」

 

「やる気か?」

 

いざ、戦闘開始となるが、左手は補助コントローラーを使っているから剣を使うことができないことに気が付く。右手だと剣の扱いが左手ほど上手くない。ここは逃げるしかない。

 

補助コントローラーのボタンを押し、全速力で飛んで逃げる。

 

「おい待てっ!!」

 

予想通り、2人のサラマンダーは俺を追ってきた。

 

ダイブしたらよくわからないところに出て、挙句の果てプレイヤーに襲われることになるとは……。

 

2人のサラマンダーが何かを詠唱して先ほどと同じく炎の玉を俺に目がけて飛ばしてきた。

 

「ヤバっ!!」

 

ギリギリのところでかわすが、その際にバランスを崩して地面へと勢いよく落下する。

 

「嘘だろぉぉぉぉっ!!」

 

焦った俺は急いで補助コントローラーを使って着陸態勢に入る。あと10メートルほどで地面に激突しようとしたところで落下速度を落とすことに成功し、地面に着地する。

 

「ふぅ……なんとか助かっ……」

 

着地したところを見て俺は絶句してしまう。目の前には3人の重装備のサラマンダーと金髪のロングヘアーをポニーテールにした緑と白をベースとした服装の女の子がいた。女の子の方は見たところシルフのようだ。

 

これは明らかにかなりヤバいところに着地してしまったみたいだ。しかも俺を追ってきた2人のサラマンダーもやってきた。

 

ALOにダイブして、どうしてこうも早くトラブルが連続して起きるんだよ……。

 

「おい、そのインプは何なんだ?」

 

リーダーらしき男が俺を追ってきたサラマンダーたちに尋ねる。

 

「あ、カゲムネさん!シルフの残党を探してたらインプの初心者(ニュービー)がいたんですよ。俺たち、インプに恨みがあるんでコイツは狩ってもいいですか!?」

 

「まあいいだろう、そのインプはお前たち2人にやる。俺たちはこの女をやるぞ」

 

「どわぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

剣を取ろうとすると上から悲鳴が聞こえ、目の前に人が勢いよく落ちてくる。

 

突然の乱入者にこの場にいた全員が唖然として、落下してきたプレイヤーに注目する。

 

落下してきたプレイヤーは浅黒い肌で逆立った黒髪で、やんちゃな感じの少年だ。

 

全体的に黒い服装をしていたため、俺と同じインプかなと思ったが、翅の色はクリアグレーで形も異なっていた。確かあれはスプリガンだったような。でも、見たところ俺と同じ初心者(ニュービー)の装備となっている。

 

それにあのスプリガンのプレイヤー、なんとなく誰かと似ている気がする。

 

「今度はスプリガンっ!?2人とも早く逃げてっ!!」

 

だがスプリガンのプレイヤーは動じる気配はない。それどころか、少し余裕そうにしている。

 

「見たところ、重戦士5人で女の子1人と初心者(ニュービー)を襲っているようだけど、それはちょっと格好悪くないか?」

 

スプリガンの言葉に共感し、俺も言う。

 

「俺もそこのスプリガンの人と同感だ。それに、俺はそこの2人のサラマンダーの人に狙われているようだから、逃げるのはソイツらを倒してからかな」

 

リーダー以外のサラマンダーが怒りを露わにする。

 

「なんだとテメェらっ!!」

 

初心者(ニュービー)のくせに生意気だぞっ!」

 

「望みどおりついでに狩ってやるよっ!!」

 

「まずはスプリガンのお前からだぁっ!!」

 

1人のサラマンダーがスプリガンをランスで突き刺そうとする。

 

「危ない!逃げろっ!!」

 

そう叫んだが、俺は信じられないものを目にする。

 

スプリガンの少年は片手でランスの先端をがしっと掴んで受け止めていた。そのサラマンダーを簡単にもう1人のサラマンダーに目がけて軽く投げ飛ばし、衝突させて地面に落とす。そして、シルフの少女に向かって言った。

 

「えっと、その人たち斬ってもいいのかな?」

 

「えっ?そりゃいいんじゃないかしら?少なくとも先方はそのつもりだと思うけど……」

 

「そっか。じゃあ、そこの2人は青っぽい君に相手してもらおうか?」

 

「あ、はい……」

 

スプリガンのプレイヤーが言ってきたことに、俺とシルフの少女は戸惑いながら答える。

 

「早速失礼するぞ」

 

スプリガンの少年は背中にある鞘から右手で俺と同じ初期装備の片手剣を抜き取る。そして、剣を持って構えると姿を消す。一瞬何が起こったのかわからずにいると、1人のサラマンダーの悲鳴を上げ、赤い炎となって消滅する。

 

「おい!くそ、ならばインプのお前からだ!!」

 

俺を狙っていたうちの1人が俺にランスを突き刺そうと襲ってきた。それをSAOで鍛え上げた軽業スキルと元々の運動能力を利用して回避する。更に火炎魔法も使って攻撃してくるが、連続バク転で全て回避する。

 

火炎魔法を放ち続けたことで辺りは煙に包まれ、何も見えなくなる。だが、暗視に優れたインプの俺には普通に見えている。この隙にウォール・ランを使って木の上に駆け上る。

 

「何処だ!?」

 

サラマンダーの1人が、俺がいないことに怯んでいる。そして、俺は片手剣を逆手に持つ。

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

木の上から飛び降り、鎧の隙間を狙って奴の首を斬り落とす。

 

「嘘だろっ!?何で初心者(ニュービー)が……」

 

「いくら初心者(ニュービー)だからって甘く見ない方がいいぜ」

 

そう言い、片手剣を逆手から順手に持ち直し、もう1人のサラマンダーも鎧の隙間を狙って胴体を真っ二つにして倒した。

 

俺が倒した2人のサラマンダーは赤い炎と化す。

 

「初期装備だから最初は心配したけど、上手く倒せたな……」

 

その間にもスプリガンの少年は2人目のサラマンダーを倒していた。

 

「あの人ってまさか……」




リュウ君がALOに初ログイン。

キリトとは異なってちゃんと種族選びをしたところがリュウ君らしいです。リュウ君は最終的にインプになりましたが、実はカラーリングや能力からウンディーネかケットシーにするという案もありました。でも、主要人物にケットシーが多い、暗視と暗中飛行がリュウ君の忍者ビルドには合いそうなどという理由でインプにしたという過去があります。インプは軽量級種族に分類されてウォール・ランも使えますし。
ケットシーにした場合、リーファによく猫耳や尻尾を触られてイタズラされそうな。でも、リュウ君のケットシーの姿もみたいなと思った私がいました(笑)

そしてリーファがリメイク版で初登場となりました。ここで同時にリュウ君の初のALOでの戦闘もやりましたが、見事にデビュー戦を決めることができました。

最初の辺りでいくつか謎を残して終わりましたが、これらは後に明らかになります。

次回もよろしくお願いします。

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