ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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SAO第3期のアリシゼーション編とオルタナティブ ガンゲイル・オンラインがアニメ化決定。ユージオとアリスをアニメで見られる日がついにやってくるとは……。この時を待っていました。私の方でも早くアリシゼーション編をやりたいなと思いました

無駄話が長くなってしまいましたが、今回の話になります。


第4話 翡翠の都《スイルベーン》

「どうする?あんたも戦う?」

 

「いや、やめておくよ。もうすぐで魔法スキルが900なんだ。デスペナが惜しい。今回のところはここら辺で引き上げておくよ」

 

スプリガンの少年の言葉に残ったリーダーのサラマンダーはそう答えて、この場から去って行った。数十秒後には残っていた4つの赤い炎も消えてしまう。

 

俺はどうしてもスプリガンの少年が何者なのか気になり、彼の元へと行く。俺の考えが正しければあの人しか考えられない。

 

「あの、あなたってもしかしてキリさんですか?」

 

「その呼び方、お前もしかしてリュウか?」

 

「あ、はい」

 

思っていたとおりだ。キリさんも俺と同様にSAOの面影を残した姿をしていた。

 

「やっぱりリュウだったか。よかった、無事に合流できて。お前はどうしてここに?」

 

「インプ領のホームタウンから開始されるはずだったんですが、何故か急にここに転送されて……。キリさんは?」

 

「俺もそんなところだよ」

 

どうしてああなったのかわからないが、とりあえずキリさんと無事に合流できてよかった。

 

会話している俺たちの元に先ほどのシルフの少女が近づいてきた。

 

「ねえ君たち、あたしはどうすればいいのかしら?お礼を言えばいいの?逃げればいいの?それとも戦う?」

 

「いや、女の子と戦うのはあまり好きじゃないから俺たちのことも見逃してもらえると助かるんだけど……」

 

敵意を見せないようにするため、剣を右腰の鞘にしまう。

 

同じく、背中の鞘に片手剣をしまったキリさんは何か考え事をしている。

 

「俺的には正義の騎士が悪者からお姫様を助けたって場面なんだけどな」

 

「「は?」」

 

俺とシルフの少女はキリさんの言葉に唖然とするしかなかった。

 

「普通ならお姫様が涙ながらに抱きついて来る的な……」

 

「ば、バッカじゃないの!それなら戦ったほうがマシだわ!!」

 

シルフの少女は顔を真っ赤にしてキリさんに剣を向けてきた。剣を向けられたキリさんは俺の後ろに逃げ込んだ。

 

「何で俺の後ろに逃げるんですかっ!?」

 

「リュウ、助けてくれよっ!」

 

「こればかりは俺も聞いて呆れますよ。斬られて許してもらうしかないかなと……」

 

「そんなぁっ!!冗談で言っただけのに!!」

 

「自業自得ですよ」

 

「その通りですよ!」

 

不意に何処かから幼い女の子の声がする。

 

「あ、コラ!出てくるな!」

 

キリさんの胸ポケットがゴソゴソ動きだし、中から出てきて彼の肩に乗ったのは、ファンタジーものによく出てくる10センチほどの大きさをしたピクシーだった。

 

「パパに抱きついていいのはママとわたしだけです!」

 

「「パ、パパ!?」」

 

俺とシルフの少女はキリさんがパパと呼ばれたことに驚いてしまう。あの娘はいったい何なんだ?

 

「ねえ、それってプライベート・ピクシーだよね?プレオープンの販促キャンペーンで抽選配布されたっていう……。へえー、初めてみるなぁ」

 

「ま、まあ。そんなところだ。俺クジ運いいんだよ」

 

キリさんはシルフの少女に慌てて説明し、俺に耳打ちして「このことは後で詳しく説明する」と言ってきた。

 

「でも、変な人たちだなぁ。2人ともプレオープンから参加してるわりにはバリバリの初期装備でやたら強いし」

 

「ええーと、あれだ、俺たち昔アカウントだけは作ったんだけど、他のVRMMOやってて始めたのはつい最近なんだよっ!」

 

「そ、そうっ!」

 

「へえー」

 

どうも腑に落ちない様子を見せるシルフの少女。多分このことを説明するとかなり長くなりそうだし、SAO関連のことも話すことになりそうだから誤魔化しておかないと。

 

「でも、どうしてインプとスプリガンがこんなところをウロウロしてるのよ。インプ領はサラマンダー領を挟んで東側で、スプリガン領はウンディーネ領を挟んでインプ領の北にあるのに」

 

「み、道に迷って……」

 

「俺もそんなところかな……?」

 

そう言うとシルフの少女は笑い出す。

 

「方向音痴にも程があるよ!君たち変すぎ!!」

 

シルフの少女は笑いがおさまると長刀を腰の鞘に収める。

 

「まあ、ともかくお礼を言うわ。助けてくれてありがとう。あたしはリーファっていうの」

 

「俺はキリト。この子はユイ。リュウもユイに会うのは初めてだったよな」

 

「そうですね。俺はリュウガ、リュウで構わないよ。よろしく」

 

「ねえ、キリト君、リュウ……君。このあとはどうするの?よかったらそのお礼に1杯奢るわ」

 

「それは嬉しいな。実は俺たち、色々教えてくれる人を探してたんだ。特にあの樹について」

 

「あの樹?世界樹?いいよ、あたしこう見えても結構古参なのよ。じゃあ、ちょっと遠いけど北の方に中立の村があるから、そこまで飛びましょう」

 

「あれ?《スイルベーン》って街の方が近いんじゃないのか?」

 

「本当に何も知らないのね。あそこはシルフ領だよ。シルフ領の街の圏内だとインプとスプリンガンの君たちはシルフを攻撃できないけど、逆はアリなんだよ」

 

「そ、そうなんだ。だったら中立の村に行った方がよさそうだな……」

 

「全員がすぐに襲ってくるわけじゃないんだから大丈夫だろ。リーファさんもいるしさ」

 

この人はどうしてこんな呑気なことを言えるんだろうか。シルフのプレイヤーからリンチにされる可能性もあるっていうのに。

 

「リーファでいいわよ。そういうことならあたしは構わないけど命の保障まではできないわよ。じゃあ、飛ぼっか」

 

これはもう行く羽目になったってことか。でも、当の本人でさえ、命の保障まではできないと言うとなんか不安だ。

 

リーファは薄緑色の4枚の翅を背中に出現させると、コントローラーなしで宙に浮く。それを見て俺はリーファに尋ねた。

 

「リーファってコントローラーなしで飛ぶ方法知ってるの?」

 

「まあね、随意飛行にはちょっとコツが必要だけど」

 

「じゃあ、俺に随意飛行のコツを教えてくれるかな?どうしてもコントローラーなしで飛べるようにしたいからさ……」

 

「それなら俺にも教えてくれ」

 

俺だけでなく、キリさんも随意飛行で飛べるようにしておきたいようだ。

 

「念のために試してみようか。2人ともコントローラーなしで翅を出して、ちょっと後ろ向いてくれるかな」

 

リーファに言われるがまま後ろを向くと、リーファは俺たちの背中に手を触れてきた。

 

「今触ってるの、わかる?」

 

「「ああ」」

 

「いい?まずここから仮想の骨と筋肉があると想定して、それを動かすの」

 

仮想の骨と筋肉、そしてそれを動かす……。集中してそうイメージする。翅が小刻みに動く音がする。

 

「その調子!今だよ!」

 

その瞬間、リーファに背中をドンッと押される。

 

「うわっ!」

 

バランス崩しながら宙に浮き、なんとかバランスを立て直した。

 

「やった!できた!」

 

「リュウ君上手いね。キリト君の方はどうかな?あれ?」

 

俺とリーファはキリさんの方を見るが、姿が見えない。何処にいるんだろうと思った矢先、上空の方でキリさんの悲鳴が聞こえる。

 

「あの悲鳴ってまさかキリさんのだよな……」

 

「うん、間違いないと思うよ……」

 

「やっぱりそうか……ってそう言うことしている場合じゃなかった!」

 

リーファとコント的なことをやり、急いで上空へと飛翔する。

 

上空で俺たちが見たのは、コントロールできなくなって夜空を飛び廻っているキリさんの姿を見かけた。

 

「うわあああああぁぁぁぁぁ!!止めてくれええええぇぇぇぇぇ!!」

 

それを見て俺とリーファとユイちゃんは顔を見合せると同時に吹き出した。

 

「あはははははは!!!」

 

「ご、ごめんなさい、パパ!面白くて!」

 

「何かウケでも狙っているんですか!」

 

笑っていると、何故かキリさんが俺のほうへ突っ込んでくる。

 

「何でこっちに来るんですかっ!?」

 

「俺に聞くなぁぁぁぁぁ!!」

 

この数秒後には俺とキリさんは激突し、ギャグ漫画のような効果音を立てながら木に激突し、地面に落下した。

 

「随意飛行ってかなり難しいんだな……」

 

「そ、そうですね……」

 

 

 

 

 

それから10分間リーファのレクチャーを受け、俺とキリさんはコントローラーなしで完璧に飛べるようになった。

 

「おお、これはいいな」

 

「そうですね。今まで空を飛ぶことなんて夢の出来事だと思っていたのに、こうやって飛べるなんて。このままずっと飛んでいたいですよ」

 

「その気持ち、あたしもわかるよ。それじゃあ、このままスイルベーンまで飛ぼう。ついてきて!」

 

リーファが先導し、スイルベーンに向かって飛行し始めた。リーファは初心者の俺たちのことを考慮してくれ、速度をあまり出さずにいた。そんな中、キリさんがリーファにこう言い出した。

 

「もっとスピード出してもいいぜ」

 

「ほほう。リュウ君は?」

 

「俺もそれでいいよ」

 

リーファは俺に確認するとにやっと笑い、一気にスピードを出した。

 

キリさんの一言で完全にリーファに火が付いたな。

 

キリさんもリーファに追いつこうとスピードを出し、俺もそれに続くようにスピードを出した。

 

俺たちが追い付いてきたことにリーファは驚きを見せ、ユイちゃんは途中で限界が来てキリさんの胸ポケットに飛び込んだ。

 

俺とキリさん、リーファは顔を見合わせ、笑う。

 

そうしている内に抜けるといつものタワーがある緑色に光る街が見えてきた。地上には緑系統の服装をしたシルフのプレイヤーが沢山いる。

 

「あれがシルフ領の首都《スイルベーン》だよ。真ん中の塔の根元に着陸するけど、リュウ君とキリト君はライティングのやり方ってわかる?」

 

ライティングか。前に鷲が鷲使いの腕に止まるのを見たことがあったけど、確か減速して着地してたな。あんな感じでいいのかな。

 

「俺はなんとなくだけどわかるかな……。成功するかどうかわからないけど……」

 

「俺は全くわかりません」

 

キリさんのわからないという返答に俺とリーファは冷や汗をかく。その間にも目の前に塔に接近していた。

 

「えーと……ゴメン、もう遅いや。幸運を祈るよ……」

 

「ど、どうか御無事で……」

 

俺とリーファはそう言い残して急減速に入り、真ん中の塔の根元に着陸しようとする。

 

「そ、そんなバカなぁぁぁぁぁぁ!!」

 

キリさんの絶叫が聞こえる中、俺とリーファは着陸する。リーファは慣れていてしっかり着陸ができていたが、俺は初めてということもあってあまり上手く着陸はできなかった。それでも着陸できたことに一安心した。

 

数秒後に上の方で、ドガアアアアン!!と激突した音が響き、俺とリーファの目の前にキリさんが落ちてきた。

 

「あの、大丈夫ですか……?」

 

「大丈夫じゃねえよ。2人して俺を見捨てて……」

 

キリさんが恨みがましい顔で言ってきた。

 

「まあまあ、ヒールしてあげるから」

 

リーファは右手をキリさんに向けると何かの呪文を唱えた。すると、キリさんの体が光ってHPが回復した。

 

「凄いな、これが魔法か」

 

キリさんは先ほどとは違って興味津々という表情になる。

 

「高位の治癒魔法はウンディーネじゃないと使えないんだけどね。だけど、必須スペルだから2人も覚えたほうがいいよ」

 

「種族によって補正があるのか。スプリガンは何が得意なんだ?」

 

「トレジャーハント魔法と幻惑魔法かな。どっちも戦闘には不向きだから不人気種族ナンバーワンなんだよね」

 

「うっ……。じゃあ、リュウが選んだインプはどうなんだ?」

 

「インプは暗視と暗中飛行、闇属性魔法に長けている。まあ、ようするに暗闇が得意ってことですね」

 

「何で俺はインプじゃなくてスプリガンなんか選んだんだよ。インプも黒っぽいし。ちゃんと下調べしておけばよかった……」

 

キリさんはショックを受けながらも身体を起こし、周囲を見渡す。

 

「ここがスイルベーンかぁ。綺麗な所だなぁ」

 

「こういうことなら、インプじゃなくてシルフで始めてもよかったかな」

 

「でしょ。あたしもこの街、結構気に入ってるんだ」

 

スイルベーンは緑色に光る綺麗な街で、SAOにはなかった神秘的な風景に包まれている。

 

街を歩いていると誰かがリーファに声をかけてきた。

 

「リーファちゃ~ん!無事だったの~!!」

 

そう言って、手をぶんぶん振りながらリーファの元にやって来たのは、黄緑色のおかっぱ風の頭をした気弱な感じの少年だった。

 

「あ、レコン」

 

「すごいや!流石リーファちゃん……って、インプとスプリガンっ!?」

 

レコンと呼ばれた少年は俺とキリさんを見ると一気に警戒し、腰にある鞘からダガーを取り出そうとする。

 

「ちょっと、ストップ、ストップ!俺たちは別にシルフに危害を加える気はないから!」

 

「リュウ君の言う通りだよ。この2人が助けてくれたから別にいいのよ。こいつはレコン。あたしの仲間なんだけど、君たちと出会うちょっと前にサラマンダーにやられちゃったんだ」

 

「そうだったんだ。それは災難だったな。俺はリュウガ。リュウで構わないよ」

 

「俺はキリトだ、よろしく」

 

「あ、どもども……」

 

俺たちが手を差し出すとレコンは握手し、ぺこりと頭を下げるが……。

 

「って、そうじゃなくて!この2人、スパイとかじゃないの!?」

 

再び、ダガーを取り出そうとするレコン。

 

「あたしも最初は疑ったんだけどね。キリト君はスパイにしてはちょっと天然ボケが入り過ぎているし、リュウ君はキリト君に振り回されている苦労人って感じだから悪い人には見えなくてね」

 

「あっ、俺だけひでえ!」

 

子供みたいに拗ねるキリさんを見て俺とリーファは笑い出す。

 

だけど、レコンはまだ俺たちのことを疑っている目で見ていたが、やがて咳払いして言った。

 

「シグルドたちはいつもの酒場で席取っているよ。分配はそこでやろうって」

 

「あ、そっか。う~ん……あたし今日はいいや。今日の分は預けるから4人でわけて」

 

「え!?来ないの!?」

 

「うん。この2人に1杯おごる約束しているんだ」

 

すると、レコンは嫉妬の目で睨んできた。

 

流石にちょっとヤバい感じがして恐る恐るレコンに話しかける。

 

「えっと、なんか君の仲間を借りることになってしまってゴメンね……」

 

「まあ、リュウがリーファをナンパしたんだけどな」

 

何を思ったのか、キリさんはありもないことをニヤニヤしながら言ってきた。

 

「キリさん、アンタ何言っているんですかっ!?」

 

当然、これには驚いてしまう。今までナンパなんてしたこと1度もないのに……。終いには、レコンが敵意を剥き出して俺を睨んできた。背中には冷や汗をかき、すぐにレコンから視線を逸らす。

 

この元凶ともいえる本人はニヤニヤして楽しそうにしていた。

 

「コラッ!レコン止めなさい!キリト君も何言っているのよ!」

 

「ンギャっ!」

 

「イデッ!」

 

リーファは顔を赤くし、レコンとキリさんの頭に拳骨を下す。2人は少し痛そうにして拳骨が落とされた部分を手で押さえていた。

 

「リュウ君とは何もないんだから妙な勘繰りしないでよね。じゃあ、お疲れ!」

 

メニューウインドウを操作し終え、俺の袖を引っ張ってこの場から離れる。その後ろをキリさんがついて来る。




本当はアニメ第1期の第17話にあたるところを全てやる予定でしたが、予想以上に長くなってしまい、旧版と同様に2話に分けることにしました。

キリトとゲームで再会し、ついにリーファと初対面したリュウ君。

旧版とは異なり、リーファは最初からリュウ君呼びにしました。今ではもうリーファ/直葉はリュウ君呼びじゃないと違和感がありますし、アスナも旧版リメイク版共にリュウ君呼びにしましたので(主要メンバーで1人だけリュウじゃないのはおかしいと思ったためです)。一応、ゲーム版ではセブンやレインもリュウ君呼びしようと考えています。

リメイク版でも旧版と同様にリュウ君を敵視するレコン。こっちでも相変わらずだなと書いてて思いました。今回のは明らかにキリトが原因ですけど。でも、レコンってリュウ君に勝ち目がないと思うのは私だけでしょうか……。

次回もよろしくお願いします。

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