ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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フェアリィ・ダンス編もやっと半分まで来ました。


第11話 同盟調印式の結末

意識が朦朧とする中、聞こえてきたのはこの場にいたプレイヤーたちからの歓声と拍手だった。シルフとケットシーだけでなく、サラマンダーからもだ。

 

そして、目の前には赤いリメインライトが1つ宙に浮いていた。

 

意識を完全に取り戻し、今どういう状況となっているのかわかった。

 

「俺はユージーン将軍に勝ったのか……」

 

先ほどの激戦でダメージを負った身体をなんとか動かし、ユージーン将軍のリメインライトを回収して地上に降り立った。地上に着くとキリさんから少々手洗い祝福を受け、リーファが回復魔法でHPを回復させてくれた。ユージーン将軍もシルフの領主……サクヤさんが使用した蘇生魔法で時間ギリギリのところで復活することができた。

 

「オレに勝つとは見事な腕だ。貴様のことを侮っていたのが一番の敗因かもしれんな」

 

「いえ、俺よりもそこにいるスプリガンの人の方が強いですよ」

 

「そうか、なら是非戦ってみたいものだな。スプリガンの貴様とも戦ってみたいところだが、今回は止めておこう。貴様に負けたオレにはこのスプリガンには勝てそうにないからな。それにしても、これほど強いプレイヤーがいたとは……。世界は広いということか」

 

「なあ、将軍さん。リュウが勝ったんだから俺たちの話、信じてもらえるかな?」

 

キリさんがそう言うが、ユージーン将軍はまだ俺たちのことを疑っているかのように目を細める。

 

「ジンさん、ちょっといいか」

 

ユージーン将軍に声をかけたのは、他のサラマンダーとは異なって顔を赤い鎧で隠していないランスと盾を持った1人のサラマンダーだった。このサラマンダーの声、何処かで聞いたことがあるような……。

 

「カゲムネか、何だ?」

 

カゲムネという名前にすぐにピンと来た。コイツは昨日、リーファを襲っていたサラマンダーたちのリーダーだ。

 

「昨日、俺のパーティーが全滅させられた話をしたじゃないスか」

 

「ああ」

 

ヤバいぞ。このカゲムネというプレイヤーは俺とキリさんのことを知っている。ここでユージーン将軍にそのことを話したら……。

 

もう打つ手はないと思った時だった。

 

「その相手がジンさんが戦ったインプとそこにいるスプリガンなんですよ。確か、その2人と一緒にインプの精鋭部隊の奴らが何人かいました。この2人の護衛をしていたと思いますよ」

 

「「「っ!?」」」

 

俺とリーファは驚愕してカゲムネの方を見る。キリさんも一瞬眉をぴくりと動かしたが、

すぐにポーカーフェイスに戻る。

 

コイツはいったい何を考えているんだ……。

 

すると、ユージーン将軍は納得したかのように軽く笑みを浮かべる。

 

「そうか。そういうことにしておこう。確かに現状でインプとスプリガンまでとも事を構える気はオレにも領主でもない。この場は退こう。だが、貴様とはいずれもう一度戦うぞ。スプリガン、貴様もだ」

 

「あなたがそう望んでいるっているなら受けてやりますよ」

 

「望むところだ」

 

俺とキリさんはユージーン将軍と戦いを約束し、彼とゴツンと自分の拳を打ち付ける。

 

そして、ユージーン将軍は飛び立ってこの場を去っていく。カゲムネは飛び立つ前に俺たちの方を見て借りは返したという顔をし、他のサラマンダーたちと共にユージーン将軍に続くように飛んで帰っていく。

 

数分後にはサラマンダーの大部隊は見えなくなった。

 

「サラマンダーにも話のわかるやつがいるじゃないか」

 

「あんな大嘘バレていると思いますが……」

 

「確かにその可能性は大だな」

 

呑気にそんなことを言ってきたキリさんには本当に呆れたものだ。今回の俺たちの作戦は一か八かの博打みたいなものだったっていうのに……。

 

「すまんが、この状況を説明してもらえると助かる」

 

俺たちが話し終わったあとにサクヤさんが尋ねてきた。そして俺たちはことの成り行きをサクヤさんに説明した。

 

サクヤさんに話したことで以下のことがわかった。

 

シグルドはキャラクターの数値的能力だけでなく、プレイヤーとしての権力をも深く求めているプレイヤー。そういう奴だからこそ、このまま最大勢力のサラマンダーがグランド・クエストをクリアしてアルフになることが許せずにいた。そんな中、今度のアップデートで《転生システム》が実装されると噂となっていた。このことに目を付けたサラマンダーの領主《モーティマー》が、シルフとケットシーの領主の首を差し出すことでサラマンダーに転生させてやるとシグルドに話を持ちかけてきた。この一連の出来事が、シグルドがシルフを裏切ることになったらしい。

 

「それで、どうするの?サクヤ」

 

「あとは私に任せてくれ。ルー、シグルドに《月光鏡》を頼む」

 

サクヤさんはケットシーの領主……アリシャ・ルーさんの月光鏡という聞いたことがない魔法をお願いする。

 

アリシャさんが詠唱を終えると周囲は闇に包まれ、巨大な鏡が出現する。そして、巨大な鏡にはシグルドが映し出される。どうやら月光鏡は遠くにいるプレイヤーとテレビ電話のように連絡を取り合うことができる魔法みたいだ。

 

シグルドはサクヤさんが生きていたことに驚き、更に俺とキリさん、リーファに気が付くと敵意を剥き出しにして睨む。そんなシグルドをサクヤさんはシルフ領から追放。つまりシグルドはレネゲイドとなった。

 

「まさか、自分がレネゲイドになるとは……。哀れな結末となりましたね」

 

「そうだな。自分の野望のために力を追い求めた結果、自分から自滅するなんて。本当に果物や木の実が描かれた錠前を売っていた奴と同じだな」

 

俺とキリさんが一言ずつコメントした。

 

月光鏡の効果がなくなると、サクヤさんはリーファの方を見る。

 

「私の判断が間違っていたのか、正しかったのかは次の領主投票で問われるだろう。礼を言うよ、リーファ。君が救援に来てくれて助かったよ」

 

「あたしは何もしてないもの。お礼ならそこのリュウ君とキリト君に言って」

 

「そうだ。そういえば、君たちはいったい……」

 

「ねぇ、キミたち。スプリガンとインプの大使って……ホントなの?インプの領主とは知り合いなんだけどそんなこと聞いたことないヨ」

 

「確かに私もそんなことは聞いてないな。仮に私たちに秘密にしていたことであってもかなり無理がありそうだ」

 

サクヤさんとアリシャさんは疑問符を浮かべながら俺とキリさんの方を見る。

 

覚悟していたがこの2人にはサラマンダーたちのようにごまかしは通用しない。困ってキリさんのほうを見ると、彼は『後は全部俺に任せろ』と爽やかな笑顔を見せる。そして、キリさんは胸を張って答える。

 

「もちろん大嘘だ。ブラフ、ハッタリ、ネゴシエーション」

 

キリさんが笑顔で自信満々に言った。俺は呆れてよろけそうになり、この場にいた全員は絶句した。

 

「まさか、あの状況でそんな大ボラを吹くとは……」

 

「手札がショボイ時はとりあえず掛け金をレイズする主義なんだ」

 

「だけど、それに付き合う人の気持ちも考えてくださいよ。話に合わせるのに苦労しましたし、おかげで寿命が軽く10年は縮まりましたよ」

 

「いやぁ、悪い悪い。でも、リュウもナイスアドリブだったぞ。おかげで俺も助かったぜ」

 

相変わらず能天気でいるキリさんにジト目を向ける。俺がどれだけ苦労したのか、この人は知っているのか……。

 

俺とキリさんのやり取りを見ていたアリシャさんは猫のようにいたずらっぽい笑みを浮かべ、数歩進み出て俺の顔を至近距離から覗き込んだ。

 

「でも、おーウソつき君に付き合ったキミは強かったネ。ユージーン将軍はALO最強のプレイヤーと言われているんだヨ。それにあんな見たこともない力を使って勝っちゃうなんて。インプの秘密兵器だったりするのかな?」

 

「いや、俺は普通のプレイヤーですよ。あの力だって次は使えるかわかりませんし、今回ユージーン将軍に勝ったのは運がよかったからですよ」

 

「ぷっ、にゃははは!謙遜だネ。気に入ったヨ」

 

アリシャさんは笑うと、俺の顔をジロジロ見てきて俺の右腕を取って胸に抱いた。

 

「フリーなら、ケットシー領で傭兵やらない?三食おやつに昼寝つきだヨ」

 

「え……?」

 

いきなり過ぎる誘いにフリーズしていると、左側からサクヤさんの声がする。

 

「おいおいルー、抜け駆けはよくないぞ」

 

するとサクヤさんは空いている左腕に絡みつく。

 

「彼はリーファと一緒に来たんだから優先交渉権はこっちにあると思うな。リュウガ君と言ったかな。どうかな、個人的な興味もあるので礼を兼ねてこの後スイルベーンで酒でも……」

 

「ずるいヨ、サクヤちゃん。色仕掛けはんたーい」

 

「人のこと言えた義理か!密着しすぎだお前は!」

 

――アンタたちどっちも人のこと言えませんよ……。

 

呆れて内心でそう突っ込んでしまう。2人の美人領主さんにぴたっと挟まれて、身動きが取れない状態となっている。キリさんに助けを求めようと視線を送る。だが、彼はニヤニヤと俺の方を見てこの光景を楽しんでいた。

 

「リュウにモテ期が来たようだな」

 

――後であの黒い人に文句を言ってやるだけじゃなくて、ホントに一発殴ってやろうか。

 

そう思った時、後ろから誰かがマントをぐいっと引っ張る。マントを引っ張ったのはリーファだった。

 

「だめです!リュウ君はあたしの……」

 

リーファの声にアリシャさんとサクヤさんもリーファの方を見る。

 

「ええと……あ、あたしの……」

 

すると、リーファは言葉を詰まらせ、頬を赤く染める。その様子が可愛くてドキッとしてしまう。

 

不思議そうにリーファを見ているサクヤさんとアリシャさん。この隙に抜け出して2人に言う。

 

「すいません。俺たち、リーファに世界樹があるところまで案内してもらう約束をしているんです」

 

「そうか、それは残念」

 

「むぅ、それなら仕方がないネ」

 

2人の領主さん……特にアリシャさんは残念そうにして言う。

 

すると、この場に2人のシルフとケットシーのプレイヤーがやって来て俺とキリさんに近づいてきた。

 

「もしかしてリュウとキリトさんっ!?」

 

シルフのプレイヤーは小柄で中性的な顔立ちをしており、錫杖を背負っている。そして、ケットシーは頭に水色の小さなドラゴンを乗せた小柄な少女だ。

 

どうしてこの2人は俺とキリさんのことを知っているんだ。それに、シルフのプレイヤーの方が俺の愛称である「リュウ」と呼んでいた。

 

俺とキリさんはこの2人には見覚えがある気がした。もしも、それが当たっていれば、このシルフとケットシーのプレイヤーは()()2()()だ。

 

恐る恐る聞いてみる。

 

「俺はリュウガだけどよくリュウって呼ばれているし、このスプリガンの人はキリトっていう名前で合っているよ。君たちってもしかしてオトヤとシリカか?」

 

「そうだよ。僕たちで合っているよ、リュウ!」

 

「お久しぶりです。リュウさん、キリトさん!」

 

「きゅる」

 

「「オトヤ、シリカっ!?それにピナもっ!」」

 

SAOで出会ったオトヤとシリカとこのALOで再会したことに驚きながらも喜ぶ。

 

「何だ、君たちはオトヤ君とシリカ君と知り合いなのか?」

 

「はい。オトヤとシリカとは前やっていたゲームで知り合って」

 

2人から聞いたが、オトヤとシリカは俺たちが帰った後にエギルさんがALOにアスナさんがいることや俺たちがALOにダイブしたことを教えてくれ、ALOにログインしたらしい。2人の他にもカイトさんとザックさん、リズさんにクラインさんもここに来ていて、エギルさんも準備が整い次第、ALOにログインすると言っていたとのことだ。

 

オトヤとシリカは世界樹に向かっている途中、オトヤはサクヤさん、シリカはアリシャさんと出会って途中まで道を案内され、そこで2人は合流。2人で世界樹を目指すことになったが、サラマンダーの大部隊が見えて、サクヤさんとアリシャさん……シルフとケットシーの人たちが心配になり、引き返して来て現在に至ったという。

 

オトヤとシリカから話を聞いている間、リーファはサクヤさんとアリシャさんにあることを聞いていた。

 

「ねえ、サクヤ、アリシャさん。今度の同盟って、世界樹攻略のためなんでしょ?その攻略にあたしたちも同行させて欲しいの。それも可能な限り早く」

 

「……同行は構わない、と言うよりこちらから頼みたいほどだよ。時期的なことはまだ何とも言えないが……。君たちはどうして世界樹を目指しているのだ?」

 

キリさんが答える。

 

「俺がこの世界に来たのは、世界樹の上に行きたいからなんだ。そこにいるかもしれない、

ある人に会うために……」

 

「もしかして妖精王オベイロンのことか?」

 

「いや、違うと思う。リアルで連絡が取れないんだけど、どうしてもそこに行って会わなきゃいけないんだ」

 

「へえェ、世界樹の上ってことは運営サイドの人? なんだかミステリアスな話だネ?」

 

興味を引かれたらしく、アリシャさんはそう聞いてくる。だけど、彼女の話によると世界樹攻略の装備を備えるため、攻略メンバー全員の装備を整えるのにかなりの時間とお金がかかるらしい。

 

世界樹の上に一刻も早く行きたいキリさんは何かを思いつき、メニューウインドウを操作する。出てきたのはかなり大きな革袋だった。

 

「これ、資金の足しにしてくれ」

 

そう言って、差し出した袋には多額の手持ち金が入っていた。

 

「少ないのですが、俺のも使って下さい」

 

俺もキリさんほどじゃないが、持っていた分の半分をあげることにした。俺はアイテムや宿代などのことを考えて半分残しておいたが、キリさんは見る限り全額渡したようだった。後で後悔することになりそうだが……。とりあえず資金の方はこれで解決した。

 

「大至急装備をそろえて、準備が出来たら我々もすぐに世界樹に向かう」

 

「サクヤ、いつになるかわからないけど必ずスイルベーンに戻ってくるから。だから安心して」

 

「そうか。ほっとしたよ。必ず戻ってきてくれよ」

 

サクヤさんはリーファと軽く会話を交わし、握手をすると俺たちの方に歩み寄ってきた。

 

「何から何まで世話になったな。君たちの希望に極力添えるよう努力することを約束するよ」

 

「アリガト!また会おうネ!」

 

俺とキリさんはサクヤさんとアリシャさんと握手を交わす。

 

「リュウさん、キリトさん。あたしとオトヤ君は皆さんの手伝いのために一旦ケットシー領に向かいますので」

 

「僕たちもすぐに追いかけるので先に行っててください」

 

オトヤとシリカと別れのあいさつをすると、2人はシルフとケットシーのプレイヤーたちと一緒にケットシー領がある方へと飛んで行った。16人のシルフとケットシーのプレイヤーたちは、夕焼けに染まる空へと消えて行く。俺たちはそれを無言で見送る。

 

やがて周囲は先ほどまでの出来事が幻だったかのように静まり返る。

 

「あのオトヤ君とシリカちゃんって2人の知り合いだったの?」

 

「まあな。あの2人とは前やっていたゲームで知り合ったんだ。でも、オトヤとシリカ……他の皆がALOをやり始めたことには驚いたよ」

 

「今度、皆にちゃんとお礼言わないといけないな」

 

3人でそう会話を交わす。すると、キリさんは何か思い出し、俺に言ってきた。

 

「そう言えば、リュウが将軍と戦っていた時に使ったあの技は何なんだ?」

 

「あたしもそれ聞こうと思っていたんだ。あんな技、今までALOをやって来たけど一度も見たことないけど、何なの?」

 

「リュウさんとユージーン将軍の戦いを見てましたが、リュウさんが使ったあの技はわたしのデータにもありませんでした」

 

不思議そうに聞いてくる3人。だけど、あの技のことをどのように説明すればいいのか困っている。

 

「実はユージーン将軍の攻撃をまともに喰らって崖に激突した辺りからあまり記憶がなくて……。あの技も何ていうか……急に頭に入ってきた感じで……。ハッキリ覚えているのはシルフとケットシーを助けたいとか、ユージーン将軍に負けるわけにはいかないって思っていたくらいしか……」

 

結局、曖昧な回答しかできなかった。

 

ユージーン将軍を倒したあのソードスキルみたいな技。

 

SAOでも1度だけ……キリさんがヒースクリフ団長……茅場晶彦とゲームクリアをかけて戦っていた時に今回のと同類の技を使ったことがある。あの時は確かキリさんを助けようとして……。

 

あの時と今回使ったのは何かのソードスキルだと思う。俺はそれを無意識のうちに発動させたんだろう。だけど、あんなソードスキルは見たことも聞いたこともない。第一ALOにはソードスキルは存在しないから、ソードスキルの動きを再現することはできても実際に発動させることは不可能だ。だったら俺はどうしてそんなものを使うことができたんだ……。

 

色々考えてみたが、俺自身も何もわからなかった。

 

「覚えてないか。まあ、俺も人のこと言えないけど、リュウは戦闘中にブチギレると記憶がほとんど飛んで驚異的な力を発揮するようなタイプだからな……」

 

「うわ、こわっ」

 

確かにキリさんの言う通り、俺はそういうタイプだ。SAOでもモンスターやオレンジプレイヤーに対して何回かそうなったことがあるからな。でも、リーファに怖いと言われたのにはショックを受けてしまう。

 

これを見たリーファは慌てて弁解をしようとする。

 

「あっ!ご、ゴメンねっ!リュウ君はシルフやケットシーを助けるために戦ってくれたのに……あたし、酷いこと言っちゃって……」

 

「いや、別に気にしてないからいいよ。本当のことだからさ」

 

「リュウ君……」

 

叱られて落ち込む子供みたいになっているリーファを慰める。そして、リーファが元通りに戻ったところで再び世界樹を目指して翅を広げ、地を蹴った。

 

シルフ内での裏切りにサラマンダーの襲撃、昔の仲間との再会と今日だけでも色々な出来事があった。だが、世界樹の上に行くのに協力してくれる人が何人もいた。きっと世界樹が攻略される日もそう遠くはないだろう。

 

そんなことを考えながら、夕焼けに染まる空と広大な大地が広がる先に空高くまでそびえ立っている世界樹に向かって飛んでいく。

 

夕焼けに染まる空の元を飛んでいる時だった。

 

「っ!?」

 

突然、目の前の光景にノイズが走り、目に映るもの全ての色がくすんだものとなる。

 

「何だっ!?」

 

すぐに目を閉じ、目に左手を当てる。

 

「リュウ君、どうかしたの?」

 

リーファの声が聞こえ、左手を退けて目を開ける。すると、視界は元に戻っていてリーファが俺の方に顔を向けていた。

 

「いや、何でもないよ……」

 

さっきのはいったい何だったんだ。きっとナーヴギアの不調とかバグだろう。これまでも位置情報が破損してインプ領じゃないところからスタートしたり、SAOのデータを引き継いでいたから、こういうことが起こってもおかしくないからな。

 

すぐにこのことを考えるのを止め、飛行するのに集中することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

都心に立地してする1棟のオフィスビル。そのオフィスビルにはALOの運営会社《レクト・プログレス》が入っている。時刻は深夜を回っており、オフィス内には電気は付いていない状態となっている。しかし、オフィス内にある1台のパソコンに電源が入っており、1人の人物が画面に向き合ってそれを操作している。

 

「やっぱりALOの中に何か秘密がありそうだ……」

 

パソコンの画面の光がパソコンを操作している人物の姿を映し出す。歳は60半ばくらい、メガネをかけた人がよさそうな外国人の男。ファーランの父親でミラの祖父にあたるクリム・ローライトだ。

 

「管理者がログインするのに使うアカウントのデータが何処かにあるはずだ。早くログインしてALOの実態を確かめなければ」




今回で原作3巻……フェアリィ・ダンス編の半分が終了となりました。

シグルドは本当に哀れな末路を辿りましたね。仮面ライダーシグルドに変身する錠前ディーラーのシドも自分の野望のためだけに力を追い求めようとした結果、哀れな末路を辿って共通する個所もあるなと思いました(シドは死んでしまいましたが)

今回もリュウ君は色々と苦労することとなりました。その原因の半分はキリトですが。リュウ君は本当にキリトを一発殴ってやってもいいと思います (笑)

そして、リュウ君は2人の美人領主に誘いを受け、リーファがそれを引き止めることに。2人とも想いを寄せる相手のことで頬を赤く染める始末。旧版の今のリュウ君とリーファの状態で、今回みたいなことになったら絶対イチャイチャして周囲を甘い空気にしてしまうしょう(笑)

気付いていた人もいたと思いますが、前々回のラストで登場した2人はオトヤとシリカでした。更に、カイトとザック、リズ、クライン、エギル(まだログインしてないが)もアスナ救出に参戦しているということに。旧版と比べて敵が強化されていますが、味方側も強化されていますので安心して下さい。逆に味方側の戦力が凄いことになっているような……。

前回から皆様が1番気になっていたリュウ君がユージーンを倒した謎の技。今回で明らかになるかと思われましたが、まだ当分先になります。申し訳ございません。

今回の話はリュウ君の身に何か異変が起こったり、現実世界で何か動きがあるなど、不穏な空気を漂わせてシリアスな感じで終了となりました。フェアリィ・ダンス編の後半は本当にどうなっていくのか。

次回もよろしくお願いします。

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