ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》 作:グレイブブレイド
今回は前半はギャグ、後半はシリアスにしてみました。そして、最後にはオマケがあります。
デスゲームが開始して二ヵ月近くが経過しようとしていた。現在、攻略は、キバオウの派閥によって結成された《アインクラッド解放隊》、亡きディアベルさんの派閥によって結成された《ドラゴンナイツ・ブリゲード》が中心になって進められている。今の最前線は第5層となっている。
俺たち3人は第一層フロアボスでのあの一件以降、一時的に最前線から少し距離を取り、活動をしている。3人だけでも攻略を進められるように、スキル熟練度やレベル上げに励み、再び最前線に戻ることを目標にしている。
今日はアルゴさんと一緒に彼女オススメのクエストに挑戦するため、第1層へと来ている。
挑戦しているクエストの内容とは、川に大量発生した《ピラニアヤミー》という50センチほどの大きさのピラニアのせいで、漁ができない漁師たちのために、ピラニアたちを倒すというものである。
そして、今はそのピラニアたちと戦闘中だが……。
「アルゴさん、敵の数がちょっと……いや、かなり多くないですかっ!?」
「このクエストは経験値を早く稼げるケド、それだけが欠点だからナ。辛抱してくれヨ」
今現在、俺たちが相手しているピラニアヤミーはざっと見たところ100匹近くはいる。このクエストを開始してからこれまで4人で50匹も倒しても、この結果だ。
「ねえ、リュウが緑色の3枚のメダルを使って、50人に分身して一気に倒すことができれば楽だよ!」
「無茶言うな!それにSAOにそんなシステムないだろ!」
戦闘中に無茶苦茶なことを言うミラにツッコミを入れる。だけど、ツッコミを入れられた当の本人は片手斧を振るってピラニアヤミーを次々と倒していく。
「数は多いけど、弱いから問題ないね!」
敵が思った以上に強くなく余裕を見せているミラ。しまいには調子になって、硬直時間が長めの片手斧のスキルを発動させてしまい、動けなくなってしまう。
「バカ、何やってるんだ!」
ファーランさんは盾で攻撃を防ぎ、片手剣で敵を倒しながら、ミラの元へと急ぐ。ミラに一匹のピラニアヤミーが襲い掛かろうとするが、ファーランさんが倒す。
「ありがと、ファーラン」
「まったく、余計な心配かけさせるな!」
何事もなかったかのようにしているミラをしかるファーランさん。
こんなことがありながらも1時間後には全てのピラニアヤミーを倒し、クエストはクリアした。その間、4人で倒したピアニアヤミーの総数は200匹だ。
ピラニアヤミーを全て倒したことを依頼してきた漁師に報告すると、クエスト報酬としてコルといくつかのアイテムをもらった。
「結構大変でしたけど、思った以上に経験値も稼ぐことができましたね」
「オレッちが言った通りダロ。あと、このクエスト報酬も中々のレアものダ。本当は料理スキルでもあれば食えるんだケド、売ってもそれなりのコルを手に入れることができるんダヨ」
そう言いながらアルゴさんはクエスト報酬をオブジェクト化し、俺に見せてきた。
アルゴさんの手元に現れたのは、細長くてウネウネしたもの……。これを見た瞬間、俺は一気に青ざめる。
「うわあああああああっ!!へへへへ蛇ぃっ!!」
蛇?らしきものに驚いて腰を抜かす。
「コイツは蛇じゃなくてウナギに決まっているダロ」
「う、ウナギっ!?」
ウナギとわかって一安心する。
この光景を見たファーランさんは俺にあることを聞いてきた。
「なあ、リュウって蛇が苦手なのか?」
「は、はい……」
ファーランさんの言う通り、俺は蛇が大の苦手だ。更にはメデューサといった蛇の怪物もダメだ。今回のようにウナギやウツボを蛇と見間違えて驚いたことも何回もある。
ウナギを蛇と見間違えたことがもの凄く恥ずかしい。
「こいつはいい情報を手に入れタ。情けないゾ、リュー坊。ウナギを蛇と見間違えたくらいで腰を抜かすなんテ。そんな状態でこの先、戦っていけるのカ?」
「うっ……」
アルゴさんの言う通りだ。確かにこの先、蛇型のモンスターだって出現するかもしれない。その時に腰を抜かして戦えなくなったなんてことになったら皆の足を引っ張ってしまう。
「ねえ、アルゴさんは何か苦手なものとか怖いものはないの?」
「オレッちに苦手なものは1つもない」
聞いてきたミラに対し、きっぱりとアルゴさんはそう答える。しかもその後に俺の方をニヤついて見てきた。明らかに俺のことを馬鹿にしている。
そんなアルゴさんに一瞬イラッとしたときだった。
「ワンワンっ!」
「にゃああああっ!!」
一匹の子犬がアルゴさんの元に近づいてきて吠えると、アルゴさんは変な悲鳴をあげてミラの後ろに逃げ込んだ。
「わあ、子犬だ。可愛い~」
「まさかSAOに子犬がいたなんてな。よしよし」
ミラは子犬を見て目をキラキラ輝かせ、ファーランさんは子犬の頭をナデナデする。俺も子犬をナデナデする。
そうしていると、アルゴさんが慌てて声をかけてきた。
「そ、そいつをどうにかしてクレ!」
「どうにかって、普通に可愛い子犬じゃないですか?」
「普通に可愛くない!」
明らかにアルゴさんの様子がおかしい。
「アルゴさん、もしかして犬が苦手なんですか?」
ジト目でアルゴさんを睨み、そう問いかける。
すると、アルゴさんは「そんなことないゾ」と冷や汗をかきながら俺から目を逸らす。
「だったら目を逸らさないで言って下さい!」
「ナハハハハ……」
さっきと変わらず、俺と目を合わせようとしない。
俺がここまでやっているのは、アルゴさんが俺の蛇嫌いの情報をネタにしようとしていたからだ。何としてもその情報が売られるのを阻止しなければならない。
その後、10分にも及ぶ取り調べの結果、アルゴさんは俺の蛇嫌いの情報を売らないと約束し、事態は解決するのだった。
そして、クエストを終えたオレたちは街へと戻ってきて、カフェで飲み物を飲みながら一息ついていた。
「ところでアルゴさん。アルゴさんが持っている情報ってクエストだけじゃなくて、美味しい食べ物が売っている店の情報とかもあるの?」
「もちろんダ。この街にはオススメの店は食べ物の他に武器や防具とか色々あるゾ」
「ホントっ!?じゃあ一緒に行こうよ!ファーランとリュウはどうするっ!?」
「俺は今日は疲れたからやめておくよ」
「俺もいいかな……」
俺とファーランさんはさっきのクエストを終えて今は休みたかったため、ミラの誘いを断った。
「なら仕方ないか。2人はまた今度ってことで。アルゴさん、アタシたちだけで行こう」
ミラは疲れた様子も見せず、アルゴさんと一緒に買い物に行こうとする。
2人がカフェを出て行こうとするとファーランさんがミラに声をかけた。
「おーい、ミラ。あんまり無駄遣いするなよ。あと、暗くならないうちに帰ってこい」
「ちょっとファーラン!アタシもう子供じゃないんだからね!」
「俺にとってはまだお前は小さい子供みたいに見えるぞ」
「ファーランのバカ!」
ミラはファーランさんに罵声をあびせると店から出て行き、ファーランさんはやれやれという表情をする。
兄と妹か父親と娘のようにも見える2人のやり取りを見て自然と笑みがこぼれてしまう。
「どうかしたのか?」
「なんかファーランさんとミラって兄妹か
「兄妹か父娘
そう言えば、ファーランさんとミラの関係っていったい……。ゲーム内で現実のことを聞くのはマナー違反だが、ダメ元で聞いてみることにした。
「あのファーランさん現実のことを聞くのはマナー違反なことなんですけど、ファーランさんとミラってどういう関係なんですか?2人の会話を聞いていると現実でも知り合いみたいですし、ずっと気になってて……」
「そうか、リュウにはまだ話してなかったな。いずれ話しておこうって思っていたからちょうどいいや」
ファーランさんはOKしてくれ、頼んだ飲み物を一口飲むと話し始めた。
「リュウの言う通り、ミラとは現実でも知り合い……一緒に住んでいるんだよ」
「じゃあ、ミラとは家族なんですか?」
「まあな。ミラは姉さんの子供なんだよ」
「姉さんの子供?」
姉さんの子供ってことは2人は叔父と姪ってことなのか。
「実は俺の姉さん、ミラが4歳の時に旦那さんと一緒に事故で死んだんだ」
「えっ!?」
あまりの衝撃的な発言に俺は言葉を失ってしまう。そんな中、ファーランさんは話し続ける。
「旦那さんの親族の方と話し合って、ミラは俺と両親のもとに引き取られたんだ。でも、引き取られた当時は俺たちに中々心を開いてくれず、笑ったところも見せてくれなくて……。その前にも何回か俺たちと会ったことはあったんだけど、その時には笑ったところは見せてくれたんだけどな……」
俺が知っているミラは、お転婆で元気すぎると言ってもいいくらいの女の子だ。今のミラとは想像がつかない。ミラにそんなことがあったなんて……。無理もないか、その年で親を亡くしてしまったんだからな。ミラの気持ちは痛いほどよくわかる。
「それでも俺はミラの心を開こうとずっと話しかけ続けたんだ。隙を見て逃げられたことも『うるさい』とか『バカ』とか罵声をあびせられたことも何回もあったよ。でも、俺は諦めなかった。そうしないとミラは本当に1人になってしまうからな……。だから俺はミラに『俺のことをお父さんやお兄ちゃんだと思って頼ってくれ』って言ったんだ」
ファーランさんは凄い人だ。こうやってミラと向き合って、ゲームで知り合ったばかりの俺のことも助けようとして……。
「それからミラは俺たちに心を開いてくれて元気になってくれたんだよ。だけど、ちょっと元気過ぎるなって思うんだけどな。それでもミラが元気になってくれたからよかったよ」
「ファーランさん……」
兄妹にも父娘
俺も2人のように過去を乗り越えることができるのだろうかと思うのだった。
オマケ『もしも、あの時オーズ・ガタキリバコンボに変身してたら』
「ねえ、リュウが緑色の3枚のメダルを使って、50人に分身して一気に倒すことができれば楽だよ!」
「そうか!」
俺はオーズドライバーを取り出し、腰に装着する。そして、クワガタとカマキリとバッタがそれぞれ描かれた3枚の緑色のメダルをオーズドライバーにセットし、ドライバーの右腰にあるオースキャナーを手に取り、3枚のメダルを横一線にスキャンする。
「変身!」
そう言い、変身ポーズを取る。
『クワガタ!カマキリ!バッタ!ガ~タ・ガタガタ・キリ・バ・ガタキリバッ!!』
歌が流れ、俺は仮面ライダーオーズ・ガタキリバコンボに変身する。そして、ガタキリバコンボの能力で50体の分身を作り上げる。
『よし!って、絶対おかしいだろこれ!!』
50人に増えた俺によるツッコミがアインクラッドに響くのだった。
今回はオーズネタが多かったです。最後のやつは完全に私の悪ふざけです。前半に登場したピラニアヤミーはオーズ第6話に登場した怪人で、リュウ君の蛇嫌いのネタはオーズの主人公『火野映司』のものです。
それはさておき、ファーランとミラは叔父と姪だということが判明。ユウキと同様にミラにも明るくふるまっている裏でこんなことが……。でも、今のミラにはファーラン、そしてリュウ君がいるので大丈夫です。