ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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忙しくて予定よりも投稿が遅れてしまいました。これからもこんな状態が続いたり、もっと遅れる可能性が高いと思います。それでも今後ともよろしくお願いします。

なんかこの前まではシリアスとギャグ含めてエグゼイドのネタが多かったのですが、なんか前回のラストからいきなり鎧武のネタが多くなったような……。ちなみに蛮野/パックの第二形態ともいえる《オーバーロード・レデュエ》ですが、仮面ライダー鎧武に登場したレデュエです。前回の後書きでも書きましたが、この作品のレデュエは男ですので。

それでは今回の話になります。


第20話 オーバーロード

俺はリーファと協力して蛮野/パックを倒したはずだった。だが、奴はゾンビのようにゆっくりと立ち上がり、《オーバーロード・レデュエ》という赤い目をした緑の鎧とマントを装着したような姿をした緑色のハルバードを持つ怪人へと変貌を遂げた。

 

「オーバーロード?それって今度のアップロードで新たに登場する世界樹攻略のカギを握ると言われている人型モンスターの名前のはずじゃ……」

 

リーファが呟く。

 

オーバーロードって確か、リーファが世界樹のことを教えた時に少し話していたモンスターのことだ。世界樹攻略のカギを握っているかもしれないと聞き、俺も気になってオーバーロードのことを調べてみたが、有力な情報がなかったから特に気に留めなかったが……。まさか、それがこんな形で登場することになるなんて……。

 

レデュエ/蛮野はリーファが言ったことに答えるかのように語り始める。

 

「世界樹攻略のカギを握る?確かプレイヤーたちの間でそんな噂が流れていたな。まあ、正式にはグランドクエストで一定の距離にたどり着くと出現して、ここまで来ようとする妖精たちを排除する最強のボスモンスターっていう設定なんだけどね」

 

「要するに、お前や妖精の王の正体は、異世界から妖精の世界を支配しに来た怪人だと言った方がよさそうだな。お前には蛮野卓郎や妖精パックよりもその醜い姿の方がお似合いだよ」

 

「うん。リュウ君の言う通り、あたしも最低な運営者にはピッタリな姿だと思うよ」

 

「このガキ共っ!!お前たちもクリムと同様に現実世界からこの世界に追放してやるっ!!」

 

俺とリーファがそう言った直後、レデュエは怒りを露わにして俺たちに向かってきてハルバードを振り下ろす。先ほどよりも早いレデュエの攻撃は止まる気配はなく、俺たちは攻撃をかわしていく。

 

隙を見てリーファと同時にレデュエに剣を振り下ろすもレデュエはハルバードを使って受け止める。そして、レデュエの目が赤く光ると、奴は俺たちを巻き込むように回転しながら飛び上がり、天井を突き破る。回転が弱くなったところで、レデュエは俺たちの攻撃を弾く。

 

「お前たちを特別な場所へ案内してやる」

 

蛮野がそう言うと、周りの風景はALOの世界観から離れた構造をした通路から何処かの森のようなところへと変わった。不気味な極彩色の植物が生えており、森の木には紫色をした見たことのない果物がなっている。シルフ領の近くにあった森とは異なり、不穏な感じしかしなかった。

 

「ようこそ、第1戦闘訓練室へ。ここは森のフィールドをベースとした私のお気に入りのところなんだ。いいだろ?」

 

余裕そうにしているレデュエ。俺とリーファは剣を振り下ろすが、レデュエはハルバードで的確に受け止めて反撃してくる。

 

「ぐわっ!」

 

「このっ!」

 

リーファは魔法スペルを詠唱し、風属性の魔法をレデュエに放つ。だが、レデュエが姿を消したことで魔法は奴に当たることはなかった。更にレデュエは俺の後ろに現れてハルバードを振り下ろす。

 

「ぐわぁっ!」

 

「リュウ君っ!」

 

「お前にはさっきのお返しをくれてやろう」

 

レデュエが左手をかざすと緑色に光る弾が放たれてリーファに命中する。

 

「きゃあっ!」

 

「リーファっ!」

 

さらに、起き上がろうとしている俺たちに植物のつるが巻き付く。

 

「何っ!?」

 

「この魔法は何なのっ!?今までこんなの見たことない!」

 

「私だけが使える植物属性の魔法だ。お前たちにもこの魔法の力を見せてやるよ」

 

レデュエがそう言うと、植物のつるを操って俺たちを振り回し、近くにあった木に叩きつける。「ぐわぁ!!」「きゃああ!!」

 

俺とリーファは一方的に振り回されて全く歯が立たない。それにアイツはパックの時よりも格段に強くなっている。パックの時のアイツは遊んでいたのかと思わせるほどの強さだ。

 

「どうした、この程度か?」

 

「この……!」

 

リーファは再び魔法スペルを詠唱し始める。さっきレデュエに放った魔法ではなく、これはパックの時のアイツを封じた一定時間封じる能力がある封雷網(サンダーウェブ)だ。

 

だが、レデュエは封雷網(サンダーウェブ)を、お返しだと言わんばかりにリーファに跳ね返す。

 

「きゃあ!」

 

「リーファ!!」

 

リーファは自分に跳ね返ってきた封雷網(サンダーウェブ)をまともに受け、地面に転がる。リーファの身体には電撃が走っていて、彼女はまともに動けるような状態ではなさそうだ。

 

「まずは1人目といこうか」

 

レデュエは動くことができないリーファにゆっくりと近づいてハルバードを振り下ろそうとする。リーファにトドメを刺そうとしたところに、俺は今使える闇属性の魔法を放ってどうにか防ぐ。

 

「フッ、悪あがきを……」

 

すると、レデュエはターゲットをリーファから俺へと変更し、ゆっくり俺へと近づいてくる。

 

レデュエが振り下ろしてきたハルバードを受け止め、反撃しようとするも防戦一方になってしまう。それでも隙を突いて奴のハルバードを弾き、一太刀浴びせる。だが、奴は効いていないぞと言うかのように不気味な笑みを浮かべながらすぐに傷口を再生させる。

 

「何っ!?」

 

「どうした、全然効かないぞ」

 

「くそっ!」

 

再び武器同士をぶつけ合い、隙を見て攻撃。深く斬り付けたが、やはり先ほどと同様に傷口は再生する。逆にレデュエは俺に何回もハルバードで斬り付け、魔法を放って攻撃してくる。

 

一方的にレデュエに翻弄されて、奴にダメージを与えることができない。仮に攻撃を与えてもすぐに傷口は再生される。

 

だが、リーファが魔法で動けない以上、俺だけでレデュエを倒すしかない。

 

すると、左手に持つ《ドラグニティ・レイ》の刃に金色の光が纏った。地面を蹴って金色の光が纏った刃でX字に切り裂く2連撃をレデュエに喰らわせる。

 

――《ガッシュクロス》!!

 

「グワッ!!」

 

やはりダメージはすぐに回復するが、この攻撃でやっとレデュエはダメージを受けたかのような反応をした。

 

「思っていたよりやるなぁ……」

 

「ここからが本番だ……ぐっ!?」

 

更に攻撃を与えようとした時、突然体中が苦しくなって立っていられなくなる。

 

「どうしたのリュウ君っ!?」

 

俺を心配して叫ぶリーファ。だが、俺はそれに答えることすらできなくなるほどもがき苦しみ、左腕が今日初めてログインしたときと同様に人間のものから怪人のようなものへと変化する。

 

自分の身に起きていることを目の当たりにした瞬間、恐怖に包まれて酷く取り乱す。

 

「何だよ、これっ!?戻れっ!戻れっ!……っ!?」

 

必死にそう念ずるが、元の腕には戻ろうとはしない。それどころか目に映るもの全ての色がくすんだものに見え、聞こえる音は雑音が混ざったものとなり、症状は悪化する一方だ。更に一段と増して体中に苦しみが襲い掛かる。

 

「ぐわっ!うあああああああっ!!」

 

絶叫と共に俺の体は青紫の光へと包まれる。そして、光が消えると近くにあった水たまりに一体の紺色や藍色をベースとした1体の怪人が映しだされる。

 

怪人は白骨化した恐竜のような頭をし、胸部にはトリケラトプスの頭部がある姿をして、ボロボロになった青いフード付きマントを羽織っている。

 

すぐに怪人は青紫の光へと包まれて消え、代わりにそこにはALOでの俺の姿が映っていた。

 

「今のって……。まさか、俺……?」

 

俺はもちろんのこと、この光景を目の当たりにしたリーファとレデュエも驚きを隠せないでいた。すぐにレデュエは何かに気が付いた表情をし、不気味な笑みを浮かべる。

 

「お前のその姿。そうか、あのメダルはお前に導かれてなくなったのか。こんなことが起こるなんて全くの想定外だよ」

 

「どういうことだ……?答えろっ!!」

 

「特別サービスとして教えてあげるよ。橘君、君は私と同じ存在……オーバーロードになるんだよ」

 

「俺がオーバーロード……お前と同じように怪人と同じように……?そんなことあるわけ……」

 

どうしてもレデュエが言ったことが信じられなかった。俺がこの男と同じ存在になるなんて……。

 

「本当のことだよ。ここまで症状が進んでいるっていうことは、この世界で人や動物にある視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚といった五感に何か異変が起きているはずだ。例えば、目に映る世界の色はくすんだ感じに、聞こえる音は濁った感じに、味を感じなくなるってことかな」

 

レデュエが指摘したものはどれも心当たりがあることばかりだ。

 

シルフとケットシーの同盟調印式が終わった辺りから、ALOでの俺の身体にはいくつも異変が起きていた。これらはきっとナーヴギアを使ったり、SAOのデータを引き継いでいたことで起こったバグかと思っていたが、こんなことになっていたなんて……。じゃあ、ALOに初めてログインした時にメダルみたいなものが飛んできて、俺の身体に入り込んだ時……。

 

「その様子だと心当たりがあるみたいだね。でも、クリムや何人かの被験者も君と同じようにオーバーロードになるから安心するといいよ」

 

これを聞き、俺とリーファはまたしても驚きを隠せなかった。

 

「何だってっ!?」

 

「じゃあ、オーバーロードの正体って……」

 

「そう、オーバーロードの正体は被験者となったSAOプレイヤーたちだ。姿を怪人に変え、自分たちはここに来る妖精たちを排除する存在だと記憶を改ざんさせるつもりなんだよ。ちょっとしたお遊びも含めた研究としてな。それでも信じないっていうなら、この映像を見るといいよ」

 

レデュエがメニューウインドウを操作すると、俺たちの前に何かの映像が流れ始めた。映像には、白い鎧に身を纏っている白い髪をした初老の男性が鎖に縛られて身動きが取れなくなっている姿がある。見たことがない人だったが、雰囲気からして俺はすぐに誰なのかわかった。

 

「クリムさん!」

 

彼の名前を叫ぶが、映像だということもあってもちろん反応はない。すると、クリムさんの身体が白く光り出し、一瞬だけだったが白い怪人へと姿が変わる。

 

俺とリーファはこの光景に驚愕して言葉を失ってしまう。

 

「これで信じてくれたかな?橘君、君もクリムのように人でも妖精でもなくて君が言っていた醜い姿になるんだよ。記憶を操作すれば、正真正銘の化け物になるってことだ……。私は人が……おもちゃが壊れていくさまを見るのが好きなんだよ。これほど最高の娯楽は他にはないだろ」

 

「お前、本当に人間かよ……」

 

人を物のように扱うこの男に改めて恐怖と共に怒りを抱く。本当にコイツの正体は、蛮野卓郎でも妖精パックでもなくて、このオーバーロード・レデュエなんじゃないかと思ってしまうほどだ。

 

「研究には犠牲は付き物だろう?それにお前は被験者として非常に興味深い。さっき私にダメージを与えたあの技は設定した覚えがないものだ」

 

さっきレデュエにダメージを与えたあの技っていうのは、あの見たことのないソードスキルのことか。だけど、レデュエも知らないなんてどういうことだ。あれは奴は関係がないってことなのか。それとも他に何か原因が……。

 

「まあ、お前は捕えて新たな被験者として加えて詳しく調べてみるからいいけどな。その後はクリムたちと一緒に記憶を改ざんしてやるから楽しみにしているといいよ」

 

「いいのか?俺まで未帰還のSAOプレイヤーたちと同じ状態になったら、逆に怪しまれると思うぜ」

 

「君の家族にはナーヴギアを使ったせいで未帰還のSAOプレイヤーたちと同じ状態になったことにして、そっちの女はアミュスフィアを使っているようだけど原因不明のエラーが起きたっていうことで片づけておくからね。万が一の時はお前たちを殺したり、記憶を消せばそれでいいから問題ない」

 

「お前……」

 

「抵抗は無駄だ、降伏しなよ。そうすればお前の命は保障する。私のおもちゃとなるしか道はないけど。フハハハハハハ」

 

またしても狂ったように笑い出すレデュエ。俺は奴に対する恐怖を無理やり押し殺し、《ドラグニティ・レイ》の柄を強く握りしめる。

 

「ふざけるな!誰がお前の遊び道具になるかっ!!」

 

「随分と威勢がいいな。システムコマンド、ペイン・アブソーバをレベル10からレベル4に変更!」

 

「何だっ!?」

 

「ペイン・アブソーバは仮想世界で痛みを感じなるシステムのことだ。レベル3以下にすると現実の肉体にも影響があるようだけどなぁっ!」

 

レデュエはハルバードの矛先を緑色に光らせ、攻撃してくる。俺は《ドラグニティ・レイ》で応戦してなんとか防ぐ。しかし、レデュエの攻撃は止まることはなく、どんどん押されて防戦一方的になる。

 

――マズイ、このままじゃ……。

 

「トドメだぁぁぁぁっ!!」

 

そこへ防ぎきれなかったレデュエのハルバードの矛先が、俺の腹を斬り裂く。

 

「ぐわぁぁぁぁぁっ!!」

 

レデュエの渾身の一撃を受けて吹き飛ばされてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「リュウ(君)っ!!」」

 

俺とアスナは地面に這いつくばって叫ぶ。

 

須郷が俺とアスナに見せた映像は、蛮野/パックがオーバーロード・レデュエへとなり、リュウとリーファと戦っているものだった。2人はレデュエに圧倒され、更にはリュウまでもが怪人なり、最後はリュウがレデュエの渾身の一撃を受けて吹き飛ばされてしまったところで映像は終わってしまう。

 

「ちぇ、いいところで映像が途切れてしまったな。ここからが面白そうだったのになぁ。本当に残念だよ。さてと、そろそろこちらも楽しいパーティーといこうか!」

 

須郷が指をパチンと鳴らすと、上空からジャラジャラと音を立てて二本の鎖が垂れ下がってきた。鎖の先端にはリングが付いており、それをアスナの両方の手首に嵌めた。

 

すると鎖が上がり、アスナはつま先がギリギリつくかどうかというところまで吊られてしまう。更に重力が強くなって、アスナは苦しむ。

 

「いい、いいね。やっぱりNPC の女じゃあその顔はできないよね」

 

須郷は気持ち悪い笑みを浮かべ、アスナに近づいて彼女の髪を掴み匂いを嗅ぐ。

 

「うーん、いい香りだ。現実のアスナ君の香りを再現するのに苦労したんだよ。病室に解析機まで持ち込んだ、僕の努力を評価してほしいねぇ」

 

「この変態野郎っ!アスナから離れろ!!」

 

俺はなんとか重たい身体を動かし、須郷の左足を掴む。

 

「やれやれ、観客はおとなしく這いつくばってろ!!」

 

「ぐはっ!!」

 

顔を蹴られ、俺は再び床に叩き付けられた。

 

「キリト君!!」

 

アスナは叫び、涙を浮かべながら俺を見ていた。

 

「アスナの前に君を散々甚振ってやるのも悪くないな。僕も蛮野と同じものを使おうか」

 

須郷は蝶が描かれた緑色のメダルを3枚取り出し、自身の身体に取り込んだ。すると、須郷は緑色の光に包まれて奴はオベイロンから蛮野と同じオーバーロード・レデュエへと姿を変えた。

 

「システムコマンド!! ペイン・アブソーバをレベル10からレベル8に変更」

 

そして、俺の大剣を取って思い切り俺の背中に突きたてた。

 

「ぐわあああああっ!!」

 

仮想世界では痛みはなくて代わりに不快感が伝わる程度だったが、背中には現実世界のように痛みが伝わってくる。

 

「痛いだろ?ここからが本番だから楽しみにしたまえ。蛮野のように一気には下げたりはしないから安心するといいよ」

 

「須郷、貴様……」

 




本家のレデュエ以上に強くなっているんじゃないかというほど、この作品のレデュエは強い気がしました。そして、ドライブの蛮野と合わさっていることもあってより外道になっているような……。

戦いの中、リュウ君に異変が。気のせいとは言えないくらい悪化し、ついには一瞬だけですが怪人へと変貌を遂げてしまう事態に……。恐らくオーズの第46話を思い出した人もいたでしょう。仮面ライダーシリーズで主人公や主要人物が人間から怪人へとなってしまうシーンは結構トラウマとして残ってしまうんですよね(汗)。ちなみにリュウ君が一瞬だけ姿を変えた怪人体ですが、映司グリードを少し青っぽくしてボロボロの青いフード付きマントを羽織ったものをイメージして下さい。

実はカイトもアスナと同様に未帰還者となって蛮野の手によってモデルにした人物繋がりでロードバロンになるという案もありましたが、没となりました。ですが、今後何かの形でロードバロンを登場させれたらいいなと思っています。

一応、ALOに初めて登場した時のメダルやリュウ君の身に起きている異変は今回の話で明らかとなりました。ですが、あの未知のソードスキルだけは未だに謎のままとなっています。これは後に明らかになるので安心して下さい。

リュウ君の方だけでなく、キリトの方も絶体絶命に……。リュウ君たちに勝ち目はあるのか。

次回もよろしくお願いします。

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