ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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お待たせしました。グレイブブレイドです。前回の投稿から1カ月半経ってしまいました。
リアルの方は問題の1つが解決して今は以前と比べて少し心身共にゆとりがある状態です。ですが、他の問題はまだ解決してないので再び忙しくなることは間違いなく、投稿が遅れる可能性は高いです。少なくても失踪はしないのでこれからもよろしくお願いします。

前回はリュウ君がカッコいいというコメントをいくつも頂き、凄く嬉しかったです。

今回はキリトがメインとなります。去年のゲームの追加コンテンツであのゲス野郎が出てきて、それを見たときは絶版にしてやりたいくらいでした。同じく自称「神」でゲームマスターの彼にはまだキャラとして好感は持てましたが、あのゲス野郎には嫌悪感しか抱くことができませんでした。そのため、今回の話は奴に対する敵意と私自身のストレス発散が込められていますのでご了承ください。

最後にオマケコーナーがありますが、本編には一切関係なく公式が病気レベルのものですのでスルーしても構いません。


第22話 偽りの世界の終焉

背中に突き刺さっている大剣と重力魔法によって地面に這いつくばって動けなくなっている中、須郷が俺を見下している。

 

「キリト君、今の君の姿は実にいい姿だよ」

 

「す、須郷……」

 

須郷は蛮野と同じ赤い目をした緑の鎧とマントを装着したような姿をした怪人……《オーバーロード・レデュエ》へと姿を変え、動けない俺を散々いたぶって遊んでいた。何度も顔や体を殴り蹴り、ある時は近距離で魔法を使って俺を苦しめた。しかも、奴がペイン・アブソーバを下げているせいでこの世界でも痛みが伝わってくる。

 

「システムコマンド、ペイン・アブソーバをレベル8からレベル7に変更!」

 

「っ……ぐっ……」

 

その直後、痛みがより一段強くなって伝わってくる。

 

苦しそうにしていると須郷はニヤニヤして楽しそうにする。そしてグランドクエストの時にリズから貰った剣を手に取る。

 

「この剣も刺し終わった時にはペイン・アブソーバをもう一段階低くしてやるよ」

 

「もうやめてっ!!」

 

見るに堪えなくなったアスナが叫んだ。

 

「これ以上、キリト君や他の人たちを傷つけないで!」

 

「おいおい、彼のことを心配できる状況じゃないだろう、小鳥ちゃん。焦らなくてもそろそろ君の相手もしてやるよ」

 

そう言うと須郷は剣を地面に突き刺し、アスナの方へと歩き出そうとする。俺はなんとか右手を動かし、須郷の左足を掴む。

 

「アスナに近づくな!」

 

「まったく、しつこいなっ!!」

 

足を掴んだ手は振り払われ、体を蹴られる。そして、須郷は俺の右手の甲にリズから貰った剣を突き刺す。

 

「ぐわあああああっ!!」

 

「キリト君っ!!」

 

「神である僕に歯向かおうとするからだよ。しばらくそこに這いつくばっているといるんだね。さてと……」

 

須郷はレデュエから妖精王オベイロンの姿に戻り、アスナの元へと近づく。アスナは恐怖と絶望に包まれ、目尻に涙が溜まる。その涙の雫を須郷が舌で舐めとった。

 

「ああ、甘い、甘い!」

 

「須郷、貴様……貴様ァァァァ!!貴様、殺す!!絶対に殺す!!」

 

怒りを露わにして立ち上がろうとするも俺を貫いた2本の剣は小揺るぎもしない。

 

これは報いなのか?ゲームの世界なら俺は最強の勇者で、アスナは自分の力で助け出せると思っていた。だけど、本当は俺には何の力もないのに……。俺がここまで来れたのも皆がいたからだ。皆が俺やアスナのためにと一生懸命頑張ってくれたのに、それも無駄になってしまう。

 

――ユイ、リュウ、皆、スマン。せっかく頑張ってくれたのに俺の自己満足のせいで全て無駄になりそうだ。アスナ、救えなくて本当にゴメン……。

 

悔しさのあまり目からは涙がこぼれ落ち、この状況から逃れようと思考を放棄することにした。

 

 

 

 

 

『逃げ出すのか?』

 

――そうじゃない…現実を認識するんだ。

 

『屈服するのか?かつて否定したシステムの力に?』

 

――仕方ないじゃないか。俺はプレイヤーで奴はゲームマスターなんだよ。

 

『それはあの戦いを汚す言葉だ。私にシステムを上回る人間の力を知らしめ、未来の可能性を悟らせた、我々の戦いを』

 

――だけど俺は、誰かに与えられただけの力に、無邪気にはしゃいでいた子供なんだぞ。

 

『そうかもしれない。だが、君はあの世界で魔王を倒す2人の勇者の内の1人だったことには変わりない。()は……もう1人の勇者は自分が今持っている悪の力を支配し、己の力にして立ち上がった』

 

――お前は……。

 

『だから君も立ちたまえ、キリト君!』

 

その声は雷鳴のように轟き、俺の意識を呼び起こした。意識を取り戻す時、一瞬だけだったが1人の白衣を着た30台前半くらいの男性が見えた気がした。

 

遠ざかっていた感覚が一気に繋がれ、俺は目を大きく見開いた。

 

「う、うおおおぉ……!!」

 

須郷がアスナのワンピースの襟元を飾っていた赤いリボンを掴んで手にかけようとした寸前で、瀕死の獣にも似た声で唸りながら右手の甲に突き刺さっていた剣を左手で抜き取る。そして、重い体を無理やり起き上がらせようとする。

 

「こんな魂のない攻撃に屈服するわけにはいかない。あの世界の刃はもっと重かった、もっと痛かった!!」

 

全身全霊の力を込めて体を起こした。その拍子に俺の背中に突き刺さっていた大剣は抜け落ちて地面に転がった。

 

この光景を見た須郷は、アスナのワンピースの襟元を飾っていた赤いリボンから手を離し、俺の方を見ると再びオベイロンからレデュエへと姿を変えた。

 

「やれやれ、妙なバグが残っているなぁ!!」

 

そう言いながら俺の前まで歩いてくると、右拳を振り上げて俺を殴ろうとした。俺は左手でそれを掴み取る。

 

「システムログイン、ID《ヒースクリフ》」

 

更にパスワードも言った途端、俺の周りにはいくつものメニューウインドウが広がる。須郷は驚いて俺の左手を振り払い、すぐに離れる。

 

「な、何?何なんだそのIDはっ!?」

 

「システムコマンド、管理者権限変更。ID《オベイロン》をレベル1に」

 

すると、須郷の目の前に管理者権限が変更されたことを知らせるメニューウインドウが表示される。

 

「な、僕より高位のIDだと?ありえない!僕は支配者、創造者だぞ!この世界の王、神!」

 

これには流石の須郷も動揺を隠せずにいた。

 

「そうじゃないだろ、お前は盗んだんだ!世界を、そこの住人を。盗み出した玉座の上で1人踊っていた泥棒の王だ!!」

 

「こ、このガキ……僕に……この僕に向かって!まだ完全の状態じゃないが蛮野が手に入れたっていう新たな実験体を使って始末してやる!!システムコマンド、モンスターID《オーバーロード・ロシュオ》をジェネレート!!」

 

須郷は何か強力なモンスターを呼び出そうとしているのか、そのモンスターの名前だと思うものを叫ぶ。だが、何も起きなかった。

 

「反応がない、まだ使える状況じゃないのか。だったらシステムコマンド、オブジェクトID《エクスキャリバー》をジェネレート!!」

 

違う方法も試してみるが、先ほどと同様に何も起きることはなかった。

 

「言うことを聞けぇ!ポンコツがぁっ!神の……神の命令だぞ!!」

 

須郷が怒りを露わにして叫ぶ中、アスナと目が合う。

 

「もう少し待っていてくれ。すぐに終わらせるから」

 

「うん……」

 

聞こえるかどうかわからないくらいの小さな声で言ったはずだが、アスナは俺が何を言ったのか悟って軽く笑みを見せて頷いた。

 

そして俺は視線をわずかに上に向けて叫んだ。

 

「システムコマンド!オブジェクトID《エクスキャリバー》をジェネレート!!」

 

すると、俺の微細な数字が猛烈な勢いで流れ、1本の剣を作り上げる。金色に輝く刀身を持つ、美麗な装飾を施されたロングソード……《聖剣エクスキャリバー》だ。

 

「コマンド1つで伝説の武器を召喚か……」

 

この剣はヨツンヘイム中心部のダンジョンの最深部にあった伝説の剣だ。それをコマンド1つで召喚できてしまうことに不快感を覚える。《エクスキャリバー》の柄を掴んだ瞬間、自分の力で手に入れて、初めて手に収めたかったと思ってしまうほどだ。

 

俺は《エクスキャリバー》を、目を丸くしている須郷に投げ渡す。須郷が危うい手つきでそれを持ったのを見てから、俺は地面に転がっている大剣を右手にリズから貰った剣を左手に持つ。そして、2本の剣を構えて言った。

 

「決着を付ける時だ、泥棒の王。お前はここで倒される運命なんだ、鍍金の勇者によってな。システムコマンド、ペイン・アブソーバをレベル0に!!」

 

「くっ!蛮野……パックはどうしたっ!?早く僕を助けろ!お前はこの世界で僕に使える妖精なんだろっ!!」

 

「蛮野はお前を助けには来ないぜ」

 

蛮野に助けを求めようと叫ぶ須郷に誰かが答える。声がした方を見ると見おぼえがある9人のプレイヤーたちがいた。

 

「リュウ、リーファ!それに皆も!」

 

俺とユイをアスナの元へ向かわせようと蛮野と戦っていたはずのリュウとリーファ、更にはグランドクエストの時に俺たちのことを見送ったカイト、ザック、オトヤ、リズ、シリカ、クライン、エギルまでもいた。リュウはカイトとザックに支えられて何とか立っている状態だったが、自力で立って数歩前に出る。

 

「悪いが蛮野たちは倒させてもらったぜ。今は多分、現実世界で気絶でもして寝ているんじゃないかな?何せペイン・アブソーバが0の状態で攻撃をまともに喰らったんだからな」

 

「蛮野たちが……。そんなの嘘だっ!お前はオーバーロード……醜い怪物になろうとしていただろっ!!」

 

「蛮野たちにも教えたけどお前も知らないようだから教えてやるよ。例え悪と同じ存在から生まれたり悪と同じ力を持っていても、守りたいもののために戦う者が現れるんだよ」

 

「何だとっ!?」

 

リュウが言ったことに須郷は困惑を隠せないでいた。そんな中、俺はカイトたちに問いかける。

 

「でも、カイトたちはどうやってここまで来たんだ?ガーディアンは沢山いたし、ゲートだって閉じていたはずじゃ……」

 

「お前たちの帰りを外に出て待っていたところ、ゲートが勝手に開いてガーディアンも出現しなくなったからだ」

 

「いざ突入したら研究施設みたいなところに辿り着いて、そこでリュウとリーファと合流してここまで来たんだよ」

 

「最初は蛮野たちの仲間なんじゃないかってヒヤヒヤしましたが、カイトさんたちで本当によかったですよ」

 

「お前たちが頑張っている中、オレたちは何もしてないわけにはいかねえだろ」

 

「オレたちがいるってことを忘れちゃ困るぜ」

 

「リュウたちには僕たちがいるんだよ」

 

カイトに続き、ザック、リュウ、エギル、クライン、オトヤが言う。

 

「そこのアンタ、見たところあたしの親友に手を出してくれたみたいだね。ただで済むと思わない方がいいわよ」

 

「アスナさんを酷い目に合わせるなんて……。あなたを絶対に許さない!」

 

「ずっとあたしたちALOプレイヤーを騙していた罪は重いわよ!」

 

リズ、シリカ、リーファの女性陣3人は須郷に対して怒りを露わにする。奴らはアスナや大勢の人を傷つけたり、ALOプレイヤーを騙していたから無理もないだろう。

 

俺は須郷の方を見て、奴に数歩近づく。

 

「逃げるなよ。あの男はどんな場面でも臆したことはなかったぞ!あの……茅場晶彦は!!」

 

「か、かや……茅場!そうか、あのIDは……。あいつらを手助けしたのも……。な、何で……何で死んでまで僕の邪魔をするんだよ!アンタはいつもそうだ!何もかも悟ったような顔しやがって!僕の欲しいものを端からさらって!!」

 

「須郷、お前の気持ちはわからなくもない。俺もあの男に負けて家来になったからな。でも、俺はあいつになりたいと思ったことはないぜ。お前と違ってな」

 

「こ、この……ガキがぁ!この世界から消えろぉぉぉぉ!!」

 

「消えるのはお前だっ!」

 

逆上した須郷は無茶苦茶に《エクスキャリバー》を振るってくる。だが、俺はそれを全て2本の剣を使って防ぐ。最強の剣を持っていても使う奴がこうだとこんなものか思うほどだ。

 

「こんなはずはない!僕はこの世界の神なんだぞ!こんなクズどもに負けるわけがない!!」

 

須郷が突きを放ってきた瞬間、すれ違いざまに須郷の頬を斬りつける。

 

「痛ぁっ!!」

 

斬られた頬に手を当て、痛がる須郷。

 

「痛い?お前がアスナに与えた苦しみはこんなもんじゃない!!」

 

するとリーファを除く全員が光りに包まれる。俺とアスナもだ。

 

光りが消えるとリュウたちの姿がALOからSAOの時の姿へと変わっていた。俺の姿もスプリガンのキリトから《黒の剣士》と呼ばれた二刀流使いのキリトへと姿を変えた。

 

リュウが叫ぶ。

 

「俺たちの……SAOプレイヤーとALOプレイヤーの力を見せてやる!!」

 

「これであなたも終わりよ!!」

 

更に捉えられていたアスナも囚われの姫から《閃光》とも呼ばれていたアスナへと姿を変えた。

 

11人のプレイヤーたちが武器を構え、俺とリュウが叫ぶ。

 

「「ここからは、俺達のステージだ!!」」

 

「き、消えろぉぉぉぉ!!」

 

須郷はリュウたちがいる方へ手から緑色の光弾を放って攻撃する。だが、リュウたちに軽々とかわされて緑色の光弾は地面に着弾して周囲は爆炎に包まれる。

 

「うおおおおお!!」

「おりゃあああ!!」

 

リュウたちは軽々と緑色の光弾をかわし、爆炎の中からクラインとエギルが出て来て須郷の体を刀と両手斧で斬り付けた。

 

「ぐわぁぁぁぁっ!!こ、この!!」

 

2人の斬撃を受けた須郷は苦しみながら倒れるも起き上がってオトヤ、シリカ、リズの3人に目がけて炎の玉を放つ。

 

「はああああ!!」

「ていやっ!!」

「えーい!!」

 

しかし、その攻撃もかわされてオトヤの錫杖、シリカの短剣、リズのメイスによる攻撃が叩き込まれる。

 

「ぎゃああああっ!!」

 

あまりの痛みでもがき苦しむ須郷。

 

「ハァ!!!」

「そりゃあ!!」

 

カイトとザックはそれにお構いなく、すぐに自身が持つ刀と槍で同時攻撃を与える。2人の攻撃により、《エクスキャリバー》を握った須郷の右手が切り落とされた。

 

「うわああああぁぁぁぁっ!!手がああぁぁああっ!!僕の手がああぁぁああっ!!」

 

須郷はゲーム内であるが右手を失ったことでパニックになり、悲鳴をあげる。

 

「はああああああ!!」

「せい!!」

 

そんな中でもアスナとリーファは須郷に剣戟を浴びせる。2人の攻撃を受けた時点で須郷は蓄積されたダメージが大きくなったということもあってレデュエからオベイロンの姿へと戻った。オベイロンの姿になっても右手は失い、残った体もボロ雑巾のような状態だが、須郷もしぶとく立ち上がる。

 

「馬鹿な…どうし..て…この世界…では、僕は神の筈なのに…!」

 

「神だと…?ふざけるな!お前なんかただの悪党だ!!」

 

「これで終わりだ!須郷!!」

 

俺とリュウは地面を蹴り、俺たちの剣に光が纏う。

 

――《ドラゴニック・ノヴァ》!!

 

――《スターバースト・ストリーム》!!

 

リュウの見たことのない11連撃の連撃が叩き込まれ、それに続くように俺が放った16連撃が炸裂。

 

「グボアアアアァァァァァァ!!」

 

俺とリュウの攻撃で須郷の下半身は赤いエフェクトを散らしながら、ポリゴン片となって消滅。残った上半身はその場に落ちる。

 

俺は左手に持つ《ダークリパルサー》を地面に突き刺し、空いた左手で須郷の長い金髪を左手で掴み、持ち上げた。須郷の顔は涙を流し、口をぱくぱくと開閉していてその顔はとても醜いとしかいいようがないものだ。

 

左手をぶんと振って、須郷の上半身を垂直に放り投げる。そして、リュウと共に体を捻って直突きの構えを取り、耳障りな絶叫を上げながら落ちてきた須郷に目がけて全力の突きを放った。リュウの《ドラゴナイト・レガシー》は心臓、俺の《エリュシデータ》は右目を貫いた。

 

「ギャアアアアアアアァァァァァァ!!」

 

須郷の断末魔が響き渡り、赤いエフェクトをまき散らす。断末魔が聞こえなくなるとポリゴン片となって残っていた上半身も完全に消滅した。

 

俺は地面に突き刺さっていた《ダークリパルサー》を抜き取り、《エリュシデータ》と共に背中にあるそれぞれの鞘へとしまう。同時に右隣にいたリュウも《ドラゴナイト・レガシー》を右腰の鞘へとしまった。

 

直後、再び元SAOプレイヤーである俺たちを先ほどと同じ光が包み込む。それが消えると俺はスプリガンの姿、アスナは囚われの姫の姿と、全員が元のALOでの姿へと戻った。

 

すると、隣にいたリュウがバタンっと倒れてしまう。

 

「おい、リュウ!」

 

「リュウ君!」

 

俺とリーファはさっきのようになってしまったんじゃないかとリュウを心配する。だけど、先ほどとは異なって目は閉じていて表情も安らかに眠っているものだった。

 

「リュウの奴、オレたちが駆けつけた時にはもう立っていられるのもやっとだったんだぜ。あのに『俺も行く』って聞かなくてよ」

 

「リュウ君、あたしを守って戦ってくれたからそれで……」

 

エギルとリーファが言ったことを聞き、微笑んでリュウの顔を見る。

 

「そうだったのか。妹を守ってくれて、ここまで付き合ってくれて本当にありがとな、リュウ」

 

眠り込んでいるリュウに礼を言う。

 

「俺たちの役目はここで終わりだ」

 

「リュウのことはオレたちに任せて、今はアスナと2人だけの時間を楽しみな」

 

カイトとザックがそう言うと、皆はリュウを連れてこの場を去る。

 

すると、アスナが俺の元に駆け寄って抱きついてきた。アスナと抱き合うと目からは涙が溢れてきた。

 

「信じてた。ううん、信じてる。これまでも、これからも。君は私のヒーロー。いつでも助けに来てくれるって……」

 

手が俺の髪をそっと撫でた。

 

「違う、俺にはなんの力もないんだ……。リュウや皆の助けがあったからここまで来れたんだよ。だけど、アスナのヒーローであれるように頑張るよ。さあ、帰ろう……。現実世界はもう夜だろう。でも、すぐに君の病室に行くよ」

 

「うん、待ってる。最初に会うのは、キリト君がいいもの。ついにあの世界に帰るんだね」

 

アスナはふわりと微笑んだ。

 

「ああ。色々変わっててびっくりするぞ。だから楽しみにしててくれ」

 

「うん」

 

一際強くアスナを抱きしめ、ウインドウを操作して。ログアウトボタンに触れるとアスナは白い光りに包まれ、アスナを含む300人のSAOプレイヤーはこの世界からログアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・オマケコーナー

 

オベイロン……須郷が消滅し、俺たちは自分たちの勝利を確信した時だった。

 

「フハハハハハハハハハハ!!」

 

突如、後ろの方から須郷の高笑い声がする。振り返るとカラフル文字で『CONTINUE』と書かれている紫色の土管が地面から生えていた。

 

「な、何だ……これは……?」

 

「ハハハハハハハハハ!!」

 

そしてテッテレテッテッテーというBGMと共に、腕組みをして気持ち悪い笑みを浮かべた須郷……妖精王オベイロンが土管の中から出てきた。

 

「「復活した……」」

 

リュウとリーファが同時にそう口にする。俺や他の皆はこの光景に唖然としていた。

 

「僕のアバターにはコンティニュー機能が搭載されているんだよ。ちなみに僕のライフは1つ減って残りライフは98個だ」

 

それを証明するかのように残りライフが記載されたウインドウが表示される。

 

これにはここにいる全員が不快な表情をする。特にリュウに至っては、何処かの研修医のようにチベットスナギツネみたいな表情をして嫌そうにし、須郷を見ていた。

 

「コンティニューってそんなのありかよ……」

 

「妖精王オベイロンだか知らねえけど、きたねえぞっ!」

 

エギルとクラインが言う。すると、須郷は改まった表情をする。

 

「妖精王オベイロンというという名はもう捨てた。今の僕は……」

 

一体何を言うんだと全員が固唾を呑む。

 

()()()()()()()()()だ!!」

 

自信満々にドヤ顔でそう言う須郷。ただ最初に《新》を付けただけということもあって俺たちは唖然する。そして、すぐに須郷から距離をとって小声で話し始める。

 

「何か《新》って付けてますよ」

 

「あたしもどうして《新》って付けたのか全然理解できないよ」

 

「正直これはないと思うわ」

 

「いっそのこと妖精王オベイロン(笑)の方がいいんじゃないのか?」

 

「それ以前にいい年した大人が自ら妖精王って名乗るのはどうかと思うんだけど……」

 

オトヤ、シリカ、リズ、ザック、アスナの順で言う。全員が須郷に対してディスっている内容で、思わず笑いそうになってしまいそうになっている。ポーカーフェイスのカイトさえも右手で顔を隠して笑いを必死で堪えようとしているほどだ。

 

「黙れぇえええええっ!!!」

 

今の俺たちの会話が聞こえたのか、何処かのゲーム会社の2代目社長のようにキレる須郷。

 

「神である僕に刃向かうお前たちはここで排除してくれてやるっ!」

 

「大口叩けるのも今のうちだ!」

 

「何度コンティニューしてもお前を倒してやる!!」

 

カイトとザックは地面を蹴り、須郷に攻撃を与えようと武器を振り下ろそうとする。だが、管理者権限を奪われたはずの須郷はメニューウインドウを開いて何かを操作する。

 

『アガッチャ!』

 

この音声と共に須郷は金色の光を纏った状態となり、某世界的に有名なゲームの主人公が無敵状態になった時になるBGMが流れる。

 

カイトとザックが須郷にクリティカルヒットするが、奴には一切ダメージを与えられなかった。

 

「何っ!?」

 

「攻撃が効いてない!どうなっているんだっ!?」

 

2人が驚きを隠せない中、須郷は解説をする。

 

「ハイパームテキモードはあらゆる攻撃が一切効かない無敵状態!お前たちの攻撃はもはや無意味だぁ!フハハハハ!ブハハハハハハハハハハ!!」

 

自分の勝利は確定したとゲスな笑いが止まらなくなる須郷。だが……。

 

『タイムアップ!』

 

この音声と共に須郷を纏っていた金色の光はなくなり、BGMも流れなくなる。恐らくハイパームテキモードは10秒ほどで時間が切れてしまうのだろう。

 

「ギャハハハハハハハハハハ!!」

 

須郷はそのことに気が付いていないようで今も笑っている。

 

あまりにも腹立たしいもので、いっそのこと全員で残り98回分コイツを倒してやろうかと思ったりもした。だが、これ以上このゲス野郎には付き合ってはられなく、俺は管理者権限を使ってある機能を使用する。

 

「システムコマンド、《仮面ライダークロノス》をジェネレート!!」

 

俺の声に答えたかのように黒と黄緑をベースとした伝説の戦士とも言われる仮面ライダーが姿を現す。

 

クロノスは自身のベルト《バグルドライバーⅡ》のAボタンとBボタンを同時に押す。

 

『ポーズ!』

 

するとクロノス本人と管理者権限を持つ俺以外の全ての動きが停止する。これはクロノスだけが持つ伝説の力、時間停止能力だ。

 

クロノスは止まった状態の須郷の前まで来るとドライバーのBボタンを2度押す。

 

「キメワザ!クリティカル・クルセイド!」

 

この音声がすると、クロノスの足元に巨大な時計を模した魔法陣を投影し、時計の針のように反時計に回転して須郷に強烈な後ろ回し蹴りを叩き込む。

 

『終焉の一撃!』

 

「妖精王オベイロンは絶版だ」

 

クロノスは冷たくそう言い放ち、ドライバーのAボタンとBボタンを同時に押して『リ・スタート!』という音声と共に再び時が動き始める。

 

同時に須郷……妖精王オベイロンは、地面に膝をついて断末魔も上げることなくポリゴン片となって消滅する。須郷は残りライフが大量に残っているのに関わらず復活することはなかった。

 

「止まった時の中で死を迎えた者にコンティニューの道はない。死という瞬間のまま、永久に止まり続ける」

 

最後にそう言い残して消えるクロノス。ていうか、管理者権限でよくクロノスを呼び出せたなと自分で呼び出しておきながらそう思ってしまうのだった。

 




下須郷へのお仕置きは旧盤とは変わらず、仮面ライダーウィザード第53話のアマダム戦をイメージしたものとなっていますが、エギルやオリキャラのカイトとザックとオトヤ、更には囚われていたアスナも加わり、リーファ以外の全員がSAOの時の姿へとなりました。これはオーディナルスケールの最終決戦やアマダム戦で鎧武以外のライダーが最終形態になったのを見て思いつきました。11人のプレイヤーによるリンチとなってしまいましたが、あのゲス野郎にはこれくらいやってもいいかと思います。

ちなみにアニメや原作では須郷がアスナの胸元の布を引き裂きましたが、この作品ではリュウ君たちも後でやってくるため、涙を舐められるだけとなっています。そんなことになったら、リュウ君がリーファに目つぶしを喰らうなどのカオスな状態になりますので。代わりにキリトがかなり痛めつけられることとなってしまいましたが。


そして最後のオマケコーナーは前書きでも書きましたが公式が病気レベルのものとなってしまいました。須郷と神のネタはベストマッチな感じがしましたので。コンティニュー土管、自分の名前の初めに新を付ける、調子に乗って解説をするなどと書いてて笑ってしまいました(笑)。挙句の果て、絶版おじさん……仮面ライダークロノスまでも出てきて絶版にされた下須郷。書き終わって本当に私の悪ふざけがかなり含まれているなと思ってしまいました(笑)。ただ、同じく神のネタをやったレコンが下須郷のようになってしまわないか、心配になりましたが……。

次回も遅れるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

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