ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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今年最初の投稿になります。今年は忙しくて投稿できる回数が減るかもしれませんが、頑張っていきたいです。通常版の方もよろしくお願いします。

今年もよろしくお願いします。


第5話 3人の絆

2023年5月7日 第28層・迷宮区

 

数日前に第27層のフロアボスを倒し、現在の最前線はここ第28層である。この前の第25層のフロアボス戦で、アインクラッド解放隊が攻略組から離脱するほど痛手を負ってしまうという事態が起き、多くの攻略組プレイヤーたちに恐怖を刻み込ませることになった。

 

だが、現在は落ち着きを取り戻し、攻略は進められている。攻略組の一員である俺達も最前線の迷宮区で戦っていた。

 

今は攻略中に遭遇した複数のゴーレム型のモンスターと戦闘中である。

 

「攻撃来るぞ!」

 

1体のゴーレムが振り下ろしてきたメイスをファーランさんが盾で防ぎ、片手剣で反撃する。更に他のミイラたちが押し寄せてくる。

 

「ミラ、スイッチ!」

 

「任せて!」

 

ファーランさんと入れ替わり、ミラが前に出て片手斧で数体のゴーレムを斬りつける。攻撃を受けたゴーレムは一撃でポリゴン片となって消滅する。俺も負けずに下級の片手剣スキルを使用し、残ったゴーレムたちを倒す。

 

これで全部倒したかと思っていたところ、新たに曲刀を持ったゴーレム1体が出現し、俺に襲いかかってきた。俺はとっさに片手剣で受け止める。

 

「リュウ!」

 

ミラが叫ぶが、「大丈夫だ」と言ってゴーレムの相手をする。

 

ゴーレムが振り下ろしてくる曲刀を見切り、回避したり、剣で防御する。俺の片手剣とゴーレムの曲刀がぶつかり合い、火花が散る。隙を見て、斬りつけ、トドメに剣で貫いて倒す。

 

「ふぅ……」

 

ゴーレムを倒すと、剣を右腰にある鞘へと戻す。

 

「いい剣捌きだったな、リュウ」

 

「ありがとうございます」

 

「それにしてもリュウって元々から剣の扱いに慣れている感じがするんだよな。ソードスキルの扱いに慣れるのもあまり時間も掛からなかったしよ」

 

「昔から体を動かすことは得意で好きでしたから。それに、10歳の時からは友達に誘われて剣道もやってたんですよ」

 

「なるほど、だったら納得がいくな」

 

「それでリュウは剣道、強かったの?」

 

「いや、そうでもなかったよ。俺よりも強い人はいたからな。特に通っていた道場にいたある同い年の女の子は……。あの子には何回もコテンパンにされて負けたよ」

 

「それでその女の子には1回も勝てなかったんだ」

 

「そんなことないぞ!勝った時だってある!」

 

「ホントかな~?」

 

「本当だって!」

 

ニヤついてオレを疑ってくるミラに本当だと必死になって反論する。

 

そういえば、ミラの声質ってあの子に似ているんだよな……。今はどうしているんだろう、元気にしてるかな。でも、()()()()()()()()()()()()()()を知ったら、どう思うのか……。

 

こんなことを考えているとミラが話しかけてきた。

 

「リュウ、そろそろ行くよー」

 

「ああ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に迷宮区の攻略を進めて1時間近く経過する。その間に、マッピングもある程度進めることができた。もう少ししたら帰ろうとした時、隠し部屋を発見する。

 

「隠し部屋みたいですね。どうします?」

 

「気を付けろ、前の第27層の迷宮区みたいに何かトラップかもしれない。回復アイテムと武器の耐久値はどうだ?」

 

「回復アイテムも結晶とポーションどちらもまだ十分あります。耐久値の方も大丈夫です」

 

「アタシも」

 

「そうか。入る前に、万が一のために転移結晶をすぐに使えるように準備した方がいいな。だけど、結晶が使えないエリアもあると言われているから気を付けろよ」

 

ファーランさんに、俺とミラは頷いて返事をする。そして、俺たちは隠し部屋の中へと入る。部屋の中央まで来ると、入口が鉄格子で塞がれ、部屋の中に閉じ込められてしまう。更に、巨大な白いオトシブミ型のモンスターが出現した。

 

「隠しボスの部屋か。でも、倒せないレベルではない。俺が奴を引き付けるからリュウとミラはサイドから攻撃してくれ!」

 

「「はい!(うん!)」」

 

各自、武器を手に取ると隠しボスとの戦闘が始まった。

 

ファーランさんが盾で防除しつつ片手剣で反撃して敵を引きつけ、オレとミラで側面から反動が少ないソードスキルを使用し、攻撃する。

 

HPバーは一本しかないが、ボスモンスターと言うだけあって、通常のモンスターと比べると戦闘能力が高い。だけど、今のオレたちにとっては敵ではないレベルだ。

 

俺たちのパーティーは、盾と片手剣を使うファーランさんが主に防御や敵を引き付ける役割を受け持ち、攻撃力が高い片手斧を使うミラと機動性重視の構成にしている俺が攻撃するというのが、主な戦術となっている。今回もこの戦術で戦っている。

 

戦いは順調に進んで行き、モンスターのHPはどんどん減っていく。だが、ボスモンスターはHPがレッドゾーンに突入すると、先ほどより攻撃力と素早さが少し上がった。そして、ソードスキルを使用したばかりのファーランさんとミラに反撃する。

 

「ぐっ!」

 

「きゃっ!」

 

「ファーランさん!ミラ!」

 

2人のHPが残り半分近くまでになる。更にモンスターは2人を攻撃しようとする。

 

「させるかぁっ!」

 

ボスモンスターが攻撃する直前、片手剣スキルの《スラント》を放つ。すると、ボスモンスターは俺の方を攻撃しようとしてきた。

 

俺は軽業のスキルを使用し、攻撃を回避する。そして、片手剣ソードスキル《シャープネイル》を使用し、モンスターを斬り付ける。これを喰らったモンスターは怯み、隙が出来た。

 

そこへ体制立て直したファーランさんとミラが、それぞれ今の自分が持つ一番強力な片手剣スキルと片手斧スキルを叩き込む。これで、あと一撃で倒せる。最初に硬直から解放された俺は、大型モンスターに有効な片手剣ソードスキル《サベージ・フルクラム》を発動させ、三連撃の攻撃を与え、ボスモンスターにトドメを刺す。

 

ボスモンスターはポリゴン片となって消滅した。

 

その直後、ファーランさんとミラが俺の方にやってきた。

 

「ナイスファイトだ、リュウ」

 

「あれは凄かったよ!」

 

「でも、あのボスモンスターはオレだけじゃなくて、2人がいたから倒せたんだよ」

 

ボスモンスターを倒したことに喜んでいると、部屋の奥にトレジャーボックスが出現する。それを開けてみると、中には赤、黄色、緑のメダル1枚ずつと計3枚入っていた。赤いメダルにはタカ、黄色のメダルにはトラ、緑のメダルにはバッタが金色で描かれている。

 

「たったのメダル3枚っ!?もう少し、入っていてもいいじゃん!」

 

メダル3枚ということに不満がある様子のミラ。

 

このメダルに何かあるのかと、ファーランさんがメニューウインドウを開いて確認する。

 

「この3枚のメダルは《王のメダル》という名前で、売るとかなりの値段で取り引きされるくらいの価値があるみたいだぞ。レアアイテムって言ってもいいくらいのものだ。それにこのメダル、前の持ち主だったという王が戦場に行く際にお守りとして持っていっていたものらしいぜ」

 

「そうなんですか?でも、俺たちあまりお金には困ってもいませんし、これは記念に取っておくっていうことにしませんか?現実でも記念に作られた硬貨もありますし」

 

「確かにそれも悪くないな」

 

「うん。それなら納得がいくよ」

 

「じゃあ決まりだな。メダルもちょうど3枚あるし、1枚ずつわけるか。リュウはどれにする?」

 

「俺からでいいんですか?」

 

「あのボスモンスターはリュウがトドメを刺しただろ。だから最初に選ぶ権利があってもいいと思うぜ」

 

「アタシもそれに賛成だよ」

 

2人がそうだって言ってくるなら、お言葉に甘えて選ばせてもらおうか。

 

「じゃあ、このタカが描いてある赤いメダルでお願いします」

 

「赤いメダルはリュウだな。ミラはどっちにする?」

 

「アタシは黄色のメダルがいいな」

 

「となると俺はこの緑色のメダルだな」

 

赤いメダルは俺、黄色のメダルはミラ、緑のメダルはファーランさんと3枚のメダルは分配された。

 

「このメダルは、アタシたちはずっと仲間だっていう証だよね。今までもアイテムの分配は沢山してきたけど、今回のは特別な感じがするよ」

 

「俺もそう思うよ」

 

「仲間の証か。そう言ってもいいな」

 

ミラが言ったことに俺とファーランさんも賛同し、笑みを浮かべる。このメダルは、大事にしないといけないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷宮区から出た時にはすっかり日が暮れていたため、今日はここから一番近い村にある宿屋に泊まることになった。夕食を済ませ、雑談を終えると、明日の攻略のために自分の部屋で休むことにした。

 

だけど今日は眠れず、気が付けば午前12時を回っていた。気晴らしにと宿から出て少し歩いたところにある崩れた石壁の上に座り、夜空を見ることにした。外にはプレイヤーもNPCも一人もいなく、静まり返っている。

 

アインクラッドの外に広がる夜空は沢山の星屑が輝き、幻想的な光景だ。本当に仮想世界のデータが作り出したものとは思えないくらいのものだ。

 

この世界に来て、ファーランさんとミラと出会って7ヶ月が過ぎようとしているのか。早いって言えばいいのか、まだまだと言えばいいのか。今日、あのメダルを手に入れ、ミラが「これからもずっと仲間だ」と言っていたが、本当にこれからも2人と一緒にいられるのかと考えてしまう。もしも、()()()のようになったら……。

 

そんなことを考えていると誰かが近付いてくる気配がする。人数は2人だ。

 

「おーい、何やっているんだ?」

 

近付いて声をかけてきたのはファーランさんだ。その隣にはジュース瓶を3本持ったミラもいる。

 

「ファーランさん、ミラ」

 

「俺たちも今日は何だか眠れずにいてな。リュウも眠れずに星でも見ていたのか。俺たちも一緒にいいか?」

 

「1人で見るより、3人で見た方が楽しいよ」

 

俺が「いいよ」と言うと2人はオレの隣に座る。すると、ミラはオレとファーランさんにジュース瓶を1本ずつ渡してきた。

 

「これは?」

 

「この前、アルゴさんと一緒に挑んだクエストで偶然手に入れた飲み物だよ。何かサイダーみたいで美味しかったから味は保障するよ」

 

ミラが渡してきたジュース瓶に入っていた飲み物は、甘くてシュワシュワ感があり、本当にサイダーみたいなものだった。SAOに捕らわれてからずっと飲んでいなかったから、とても懐かい味だ。

 

「どう?美味しいでしょ?」

 

「ああ、サイダーみたいな感じで美味しいよ」

 

「SAOでもここまで美味いものは数少ないからな、いいと思うぜ」

 

「よかった。あまり難しくないクエストだったから今度は3人で挑戦しようよ!」

 

俺とファーランさんはOKすると、ミラは喜んだ。

 

それから3人で話しをしながら星空を見ていた。

 

「あ、流れ星!」

 

「流れ星?どこにあったんだ?」

 

「あっちだよ。あ、まただ!」

 

ミラは流れ星を見つけ、それがあったと思われる方を指差す。ファーランさんが探している間にもミラはもう一つ流れ星を見つける。

 

「どこだ?全然見つけられないぞ」

 

「ファーラン見つけるの下手過ぎだよ」

 

「うるさいな。ほっといてくれよ」

 

ファーランさんを小馬鹿にするミラと、拗ねるファーランさん。2人のやり取りを見て俺は笑う。

 

この2人と一緒に居ると楽しいな。だけど、そんなことを思うと同時に不安に思ってしまうこともある。

 

そんな俺のことに気が付いたファーランさんが話しかけてきた。

 

「なあ、リュウ。何悩んでいたんだ?」

 

「え?別に悩んでなんか……」

 

「そうか?ここ最近何か悩んでいるようにも見えるんだけどな」

 

どうやらファーランさんにはわかっていたようだ。隠しても無駄だと思い、話すことにした。

 

「怖いんです。俺の周りにいる人がいなくなるっていうのが……。ファーランさんとミラもそうなるんじゃないかって……」

 

「何だ、そんなこと心配してたのか。俺たちはリュウの前からはいなくならない。俺たちは仲間だろ。このゲームがクリアしてもさ」

 

ファーランさんに続き、ミラも話しかける。

 

「心配ないよ。いつでも3人でどんな困難だって乗り切ったじゃん。アタシたち3人なら絶対にこれからどんなに強い敵が出てきても困難に遭遇しても大丈夫だよ。アタシたちはリュウの前から絶対にいなくならない」

 

「ミラの言う通りだ。リュウ、俺たちを信じてくれ」

 

無邪気に笑うミラ、真剣な眼差しでオレを見るファーランさん。

 

俺はデスゲームが開始してから2人と一緒に行動してきて何を見てきたんだ。苦楽を共に過ごしてきた仲間じゃないか。それにファーランさんとミラと一緒に行くと決めたときだって、2人を信じようって決めただろ。

 

「わかった、信じるよ」

 

そう答えるとミラとファーランさんは嬉しそうにする。

 

「やったぁっ!」

 

「リュウ、ありがとな」

 

2人の喜ぶ姿を見て、笑みがこぼれる。

 

絶対に3人そろってゲームをクリアして現実に戻ることだってできるよな。今日、手に入れたタカが描かれた赤いメダルを見てそう思うのだった。




再構成版ではリュウ君は10歳から剣道をやっていたということになっています。そして、リュウ君の話に少し出てきたミラと声質が似ている女の子は……。ミラのイメージキャラボイスは第1話の後書きにも公開してますが、今ここで言ってしまうとわかってしまう方が多いので伏せておきます。

ちなみに、今回リュウ君たちが手に入れたメダルはオーズがスーパータトバに変身する際に使用するメダルみたいなものとなっています。このメダルは今後の展開に重要になるかもしれません(ならない場合もあります)

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