ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》 作:グレイブブレイド
この間、ビルドは次回で最終回を迎えることに。ここ最近は本当に衝撃を受けるようなものでした。夏の映画にカズミンや玄さんが出ているから大丈夫かと思っていたので、その分ショックが大きかったです。ですが、9月に発売されるビルドのCDが待ち遠しいです。昨年のエグゼイドの時もこんな感じでした(笑)。「Burning My Soul」と「Law of the Victory」が早く聞きたいです。そして、SAOは10月からはアリシゼーション編のアニメがスタート。こちらも待ち遠しいです。
無駄話のこの辺りにしておいて今回から新章のスタートです。今回は待ちに待った旧版では恒例だったあの話になります。念のためにブラックコーヒーや壁を用意しておくことをお勧めします。
「Kaito」さんが前回の挿絵に背景と色を付けてくれました。本当にありがとうございます。色付きのやつは前回の話の挿絵にも利用せていただいております。
【挿絵表示】
第1話 初デート(ALO内)
今俺がいるのは、シルフ領から1地番近いところにある中立域にある村。この村の広間にあるベンチに腰掛け、ある人が来るのを待っている。俺は待ち合わせ時間より30分も前から来るほど、今日という日を凄く楽しみにしていた。
ソワソワして待っていると、誰かが声をかけてくる。
「リュウくーん!」
振り向くと、1人のシルフの女性プレイヤーが金髪のポニーテールを風でなびかせながら、緑の四枚翅を広げてこちらに飛んできた。
「リーファ」
リーファは翅を閉じて俺のとなりに降り立った。彼女こそが俺と待ち合わせをしていた人だ。
「遅れてごめんね。もしかして待たせちゃった?」
「全然待ってないよ。俺もついさっき来たところだから」
リーファが来たのは待ち合わせ時間の20分前。こうなると30分前に来てて本当によかったと思う。
「えっと、楽しみだな……」
「う、うん。そうだね……」
少々照れながら短く会話を交わす俺とリーファ。恥ずかしさのあまり、目を中々合わせられずにいた。
こうなったのは、数日前に俺とリーファの関係が変わったからだ。俺たちは幼馴染や異性の友達という関係だったが、今では現実とALOで恋人という関係となった。
5年間ずっと抱いていた俺の初恋。片想いで実ることはないだろうと諦めかけている中、玉砕覚悟で思い切って告白。するとリーファ/スグも5年前から俺のことがずっと好きで、要するに俺たちは両片想いだったことが判明した。こういうのは、フィクションの世界の話だけだと思っていたから、嬉しいと共に驚きでいっぱいだった。
そして、今日はシルフ領のスイルベーンでデートしようということに決まった。本当は現実世界でもしたかったが、ゲームとは違ってそう簡単にスケジュールを合わせられるわけでもないので、そうはいかなかった。だけど、現実では今度の土曜日にすることが決まってそっちの方も楽しみにしている。
「待ち合わせの時間までまだ時間あるけど、もう行こうか」
「うん。今日は前に案内できなかったところとかも案内するよ」
「それは楽しみだな」
会話しながら、俺たちは翅を広げて飛び立った。
10分ほど飛び続けていると、タワーが何本も建っている翡翠の街《スイルベーン》が見えてきた。
俺たちは速度を落とし、真ん中の塔の根元に着陸する。前に来た時はALOをやり始めたばかりで上手くは着陸できなかったが、今は上手く着陸することはできるようになった。
「ここに来るのも久しぶりだな」
「リュウ君が前にここに来たのは、アスナさんを助けに来た時だから4カ月ぶりだよね」
「ああ。確かキリさんは初めて来た時、塔に激突したんだよな」
「フフ、そんなこともあったね」
そして、リーファに連れられて風の塔から大通りの方へと歩いていく。スイルベーンはシルフ領の首都だということもあって、相変わらず周りはシルフのプレイヤーばかりだ。インプである俺はどうしても目立ってしまう。
「相変わらず、スイルベーンだと目立つな」
「仕方ないよ。リュウ君はインプなんだから」
話しながら街を歩いていると、誰かがリーファに声をかけてきた。
「あれ?リーファじゃん」
振り返ると、両手剣を背負ったシルフの女プレイヤーがリーファの元へとやって来た。
「あ、フカさん。お久しぶりです」
「おう、久しぶりだな」
見たところ、リーファの知り合いらしい。まあ、元々リーファはシルフ領を拠点にしてALOをやっていたから、レコンやサクヤさん以外にもシルフのプレイヤーで知り合いがいてもおかしくないだろう。
「最近、シルフ領にいなくて中々会えないから寂しかったよ」
「ALOの運営が再開されてから、リアルで知り合いの人たちも他の種族でALOをやり始めて、最近はずっとイグドラシル・シティの方にいましたからね」
「そうだったのか。とりあえず引退してなくて安心したよ。今度また一緒に狩りしたりデュエルでもやろうぜ」
「はい」
フカさんと呼ばれているプレイヤーは、リーファと話していると俺に気が付いて顔をこちらに向ける。
「ところで、リーファの隣にいるインプは誰なんだ?」
「あ、初めまして。リュウガって言います。リュウって呼んでください」
「よろしくなリュウ。私はフカ次郎、気軽にフカって呼んでくれ」
「はい、よろしくお願いします」
フカ次郎という名前を聞いて随分と変わった名前だなと思いつつも、フカさんと軽く自己紹介をして挨拶を交わす。すると、フカさんは俺のことをジロジロ見てくる。
「あの、どうかしました……?」
「にしても、あどけなさがちょっと残るけど中々のイケメンだね~。ちょっと結婚して欲しいんだけどさぁ、この後ヒマ?」
「ええええっ!?」
「フカさん何言っているのっ!?」
突然のナンパに俺とリーファは驚いて声をあげる。
「ちょっとした挨拶だよ。で、どうなの?」
あまりにも自由過ぎるフカさんに呆れてしまう。彼女はなんか、キリさんやアルゴさんみたいに俺を散々振り回しそうな人だな。
早く何とかしないと厄介なことになりそうだから、ちゃんと話しておこうか。
「あの、すいません。俺にはリーファがいますので……」
「えっ!?2人って付き合っているのっ!?」
「は、はい。最近付き合い初めまして……」
「あちゃー。リーファに先を越されちゃったとは」
ちょっと残念そうにするフカさん。
「でも、リーファってグリドン……じゃなくてレコンっていう子とよく行動してたけど、彼とはそういう関係じゃなかったんだ」
「ち、違いますよ!レコンとはただのパーティーメンバーで、リアルでは学校のクラスメイトでALOのことを教えてくれたからですよ!」
「そうかそうか。まあ、私も間違いなくレコンよりもリュウの方を選ぶかな~」
「もう、フカさんったら。リュウ君は絶対に誰にも渡しませんからね!」
「わかっているよ、冗談冗談。デート中みたいだったから、お邪魔虫はこの辺りで失礼するよ。リーファ、今度またデュエルでもやろうぜ。もちろんリュウともな。じゃね」
フカさんはそう言って俺たちが来た道を歩いて、この場から去っていった。
「なんか嵐みたいな人だったな」
「フカさんはよく人をからかったり、トラブルメーカーっぽいところはあるけど、いい人には違いないからね」
「彼女と話して、そんな感じはしたよ」
歩いているうちにやってきたのは、前にも来た店《すずらん亭》だった。
「今回もここでいいかな?どうしてもリュウ君と食べてみたいものがあって……」
「俺と食べたいもの?もちろんいいよ」
何なのかと思いつつ、リーファと一緒に店中へ入る。
前回来た時と違うのは俺たちの他に客がいることくらいだ。客の中には、1つのパフェを2人で食べている男女のシルフのプレイヤーもいる。随分と仲睦まじいカップルだな。
俺たちはNPCの店員に案内されて、窓際の席に腰を下ろした。
「そういえば、リーファが俺と食べたいものって何なんだ?」
「ALOの運営が再開されてから、メニューに追加された『トキメキフルーツパフェ』っていうパフェなの。だけど、それを頼むのに恋人同士じゃないとダメなやつで……」
恋人同士じゃないとダメだというのを聞き、先に来ていたカップルが1つのパフェを2人で食べていたのを思い出し、何なのか理解した。
「もしかして、カップル専用のやつってことか……?」
「うん……。で、でも……こういうの頼むとやっぱり迷惑だよね……。他のにしようか!」
「いや、迷惑じゃないよ。俺たち付き合って恋人同士なんだから何の問題もないと思うし……。むしろ、リーファがこういうメニューを俺と一緒に食べたいって言ってくれて嬉しいよ」
「リュウ君……」
早速NPC のウェイトレスに注文し、その数分後に果物が沢山乗っているパフェが来る。
「2人分だから多く見えるな」
「そうだね。美味しそうだし、早く食べちゃおう」
俺とリーファはスプーンを手に取り、パフェを食べ始める。口の中にはイチゴに似た果物の酸味と生クリームの甘さが広がる。
「美味しいね」
「ああ。生クリームも程よい甘さだし、フルーツも新鮮さが残っている。ベストマッチと言ってもいい組み合わせだな」
「ベストマッチなのはあたしたちもじゃない?」
「た、確かに……」
リーファがサラッとそんなことを言ってきたため、少々照れてしまう。
ふと先ほどのカップルの方を見ると、女性プレイヤーが男性プレイヤーにあーんとパエをスプーンに乗せて食べさせていた。あれはアニメやゲームなんかでラブラブなカップルや新婚夫婦がやるやつだ。まさか、あんなことを本当にやる人たちがいるとは……。
見ているこっちが恥ずかしくなり、顔を正面に向ける。すると、リーファはパフェをスプーンですくって俺の方に向けてきた。
「リュウ君、あーん」
「えっ?」
あのカップルたちがやっていたことをリーファもやってきて、フリーズしてしまう。
「あ、あの……リーファ?」
「ダメ……かな?」
戸惑う俺に対し、上目遣いで俺を見るリーファ。ヤバイ、これは反則だろ。リーファが可愛すぎる。
恥ずかしかったが、リーファの誘惑に我慢できなくなる。
「だ、ダメじゃないよ!え、えっと……じゃあいただきます」
そう言って、リーファが口元に持ってきたパフェを食べる。口の中に入ると同時に、甘酸っぱい味が口の中に広がる。気のせいかそれは先ほどよりも増していた。
「どう?」
「リーファが食べさせてくれたから、さっきよりも美味しかったよ。じゃあ、お返しにリーファもどうかな?」
今度は俺がパフェをスプーンですくって、「あーん」とリーファの口元まで持っていく。リーファは口を開けて食べた。
「どうだった?」
「うん、美味しかったよ。リュウ君が食べさせてくれたからね」
「だけど、これは恥ずかしいな……」
「そうだね……」
「「……………………」」
食べさせ合いをした俺たちだったが、恥ずかしくなって俯いて黙り込んでしまう。そして、俺たちの周りをピンク色のオーラが包み込み、周りにいた人たちは何故か全員ブラックコーヒーをオーダーしていた。
食事を終えて《すずらん亭》を後にし、リーファに連れられて次の目的地へと向かっていた。
「リーファちゃ~ん!」
またしても誰かがリーファに声をかける。でも、今度は聞き覚えのある声だ。声がした方を見ると、黄緑色のおかっぱ風の頭をした気弱な感じの少年……レコンがこちらにやって来た。
「あ、レコン」
「リーファちゃん、スイルベーンに戻ってきてくれたんだね」
「今日はちょっと用事があって来たのよ」
「そうだったんだ」
レコンはリーファと楽しそうに話している中、俺のことに気が付くとちょっと不機嫌そうにする。
「何だ、君もいたんだ。君はいなくてもいいのに」
「俺はいちゃいけないのかよ……」
「コラ、シルフ領主館のスタッフがそんなこと言わない!もしもリュウ君に何か手出した時は刻むよ」
「ひっ!」
リーファは鞘にしまっている長刀の柄を掴み、レコンは何処からかパンダのぬいぐるみを出してそれを盾にする。ていうか、どうしてパンダのぬいぐるみなんだ。
こんなレコンだが、世界樹攻略の時に通常の倍のデスペナルティとなる自爆魔法を使って大量のガーディアンを倒して突破口を開こうとしたほどの度胸もある。その根性をシルフ領主のサクヤさんに買われ、現在はシルフ領主館のスタッフとして活動している。
まあ、今でも神の才能とか言って調子に乗るなど問題点も多少ある。シルフ領主館のスタッフになった頃は「新レコン」とか「レコン神」と名乗って、俺は「コイツ馬鹿なのか」と思ってしまったこともあった。
事態が落ち着くと、レコンはパンダのぬいぐるみをしまって、リーファと向き合う。
「リーファちゃん、この後って暇?僕今日の仕事は終わったから、久しぶりに一緒に狩りでもどうかなって……」
「ゴメンね。あたし、リュウ君とデート中だから」
「へ?デート?どういうこと?」
リーファの口から出たデートという単語に反応するも、まだ完全に理解してない様子だった。
「あたし、リュウ君と付き合うことになったの」
「ええええええええええええ――――っ!?」
やっと何なのか理解できたレコンは、驚いて街中に響き渡るほどの大声をあげる。
「どういうことなの、リーファちゃんっ!どうしてコイツなんかとっ!?」
「それは…リュウ君のことが好きだからよ、5年前からずっと。リュウ君も5年前からずっとあたしのことを好きでいてくれていたからそれで……」
頬を赤く染めて照れながら説明するリーファ。それを聞いていた俺も照れて黙り込んでしまう。
「どうした何の騒ぎだ?」
この状況の中、俺たちに近づいてきたのは数人の護衛を連れたシルフ領主のサクヤさんだった。
「何だ、レコン君にリーファとリュウガ君か。どうしたんだ?」
「サクヤさん!リーファちゃんがこのインプと付き合って恋人同士だって言うんです!他の種族との恋愛なんてダメですよねっ!?」
「いや、特にそんな決まりはないぞ。インプとカップルだっていうシルフのプレイヤーは他にもいるらしいからな」
その直後、レコンはショックのあまり真っ白になって倒れてしまう。そして、何処からか『ゲームオーバー』という音声が聞こえる。
「あれ?レコン君、どうしたんだ?」
「今はそっとしてあげた方がいいかと思います……」
「そうか……」
サクヤさんはこの状況に困惑するも、護衛の1人に指示を出して倒れたレコンを運ばせる。
「この様子だと君たちはデート中か。君たちの邪魔にならないうちに、我々もこの辺りで失礼するよ」
そう言って、護衛を連れてこの場を去る。
俺たちも移動し、やって次に辿り着いたのは、露天販売店がいくつかある広場だった。
「ここは日替わりで露天販売している店が違うの。昨日は回復アイテム専門の店で、その前は戦闘に役立つアイテムを売っている店だったかな」
「日替わりで店が変わるとなると面白そうだな」
「でしょ。たまに中々手に入らないレアアイテムも売られている時もあるんだよ」
「それは凄いな」
いくつかある露天販売店の中で、俺たちが行ったのはアクセサリーを販売しているところだ。置かれているのは髪留めやリボンなど女性プレイヤー向きのものが多いが、男性プレイヤーも身に着けるものもちゃんとある。
リーファは興味津津な様子でアクセサリーを見ていた。彼女も年頃の女の子だ。こういうのに興味持ってもおかしくないだろう。
そんな中、俺が目に止まったのは緑色のリボンだった。それを手に取り、リーファに見せる。
「なあ。これリーファに似合うと思うんだけど、どうかな?」
「これ、いいね。試しに着けてみようかな?」
そして、リーファは店員に言った後、メニューウインドウを開いて今身に着けている髪留めを外す。すると、ポニーテールから髪を結っていないロングヘアーの状態へとなる。いつもと比べて大人っぽい雰囲気となったリーファのそんな彼女の姿にドキッと心を打たれ、見とれてしまう。
「どうかしたの?」
「リーファってポニーテールにしている姿しか見たことがなかったから、髪を下ろした姿も新鮮だなって思って……」
「そ、そう?変じゃない?」
「全然変じゃないよ。むしろ似合っている……可愛いよ……」
俺はリーファから目線をそらして照れながらも言葉を続ける。
「だから……ALOでデートする時、たまには髪下ろしてくれるかな?」
「そ、そう?リュウ君がそう言うんだったら、たまに下ろすのも悪くないかも……」
俺の言ったことに、リーファは頬を赤く染めてすっかりデレデレ状態となる。そして、目の前に店員さんがいることを忘れて、再び俺たちの周りをピンク色のオーラが包み込み、2人だけの空間を作り上げてしまう。
「とりあえず、そのリボンつけてみたらどうかな?」
「そうだね」
リボンをするといつもみたいにポニーテール姿のリーファが再び現れた。
「ど、どう?」
「似合っているよ。思った通りだ」
「そ、そう?じゃあ、これでも買おうかな」
「あ、俺が出すからいいよ」
「でも、そうなるとリュウ君に悪いよ」
「俺がそうしたいだけだから大丈夫だよ」
「うーん。あたしばかりだと悪いから、今度はあたしがリュウ君に合うものを選ぶよ」
リーファはそう言うとシートの上に並べられているアクセサリーを見始める。そして何か見つけたらしく、それを手に取って俺に見せてきた。
「リュウ君にはこれはどうかな?」
リーファが俺に見せてきたのは、ドラゴンの横顔を形どったアクアブルーのクリアパーツで出来たペンダントだった。
「青いドラゴンだからリュウ君にピッタリだって思って」
「これは中々カッコいいな。試しに付けてみようか」
店員さんに言ってからメニューウインドウを操作し、付けてみた。
「どうかな?」
「思った通りだよ、似合う似合う!」
「そうか。よく調べてみると、ほんの僅かだけど防御力が上がるみたいだし、せっかくだから買おうか」
「これはあたしが買ってあげるよ。リュウ君があたしのを買ってあげるっていうから、そのお礼にね。いいでしょ?」
「わ、わかったよ。リーファがそこまで言うなら……」
ぐいぐい来るリーファにおされて、そうすることにした。そして、俺たちはそれぞれ購入し、お互いにプレゼントした。
その後もリーファの案内の元、スイルベーンを色々と見て歩く。デートスポットとなっているところにやって来ると、ベンチに座って談笑をしていたり、手を繋いで歩いていたりと仲睦まじいカップルがいくつも見られた。
左隣を歩くリーファをチラッと見ると、彼女はそのカップルたちを羨ましそうに見ていた。
――やっぱりリーファもああやって手を繋いで歩きたいのかな……。
恥ずかしかったが、彼氏としてここは腹をくくらないとな。
リーファの右手にそっと左手を伸ばして手を繋ごうとする。すると、リーファがこちらに気が付いて俺と指を絡めて手を繋いできた。
「あの、リーファ……?」
「手繋ぐなら、こっちの方がいいかなって……。あたしたち、恋人同士だし……」
「そ、そうだな……」
リーファは恥ずかしいのか頬を赤く染めて俺と中々目を合わせてくれない。かという俺自身もリーファと同じような状態となる。ここにいる間は、どちらかが話しかけてもぎこちない感じとなり、会話が長続きしなかった。
最後にやってきたのはスイルベーンのシンボルでもある風の塔。塔の中からエレベーターに乗り、風の塔の頂上へと出る。前来た時はどこまでも青空が広がっているが、今はすっかり夕焼けで染まってオレンジ色の空となっており、上空にはアインクラッドがある。
前のALOでは高度を稼ぐためにここから飛んでいたが、無制限に飛べるようになった今のALOではそうやる必要はない。リーファ曰く、今では景色を楽しむ観光スポットとなっているらしい。
「やっぱりここからの景色いいな」
「うん。ここからあたしたちの旅が始まったんだよね。今思うと、対空制限がある中で世界樹までたった3日で行くなんてかなりの無茶ぶりだったよ」
「確かにな。今としては懐かしく思えるよ。あの時はスグとリーファが同一人物だって言うこともわからなかったしな。」
「前から気になっていたけどリュウ君って、リアルとALOのあたし、どっちが好きなの?」
「え?」
「あたし、リュウ君たちみたいにリアルと姿がほとんど同じってわけじゃないから……。どうしても気になって……」
リーファのアバターは俺や他の皆と違ってランダムで生成されたため、スグとは異なった容姿となっている。そのことをリーファ/スグが気になってもおかしくない。
俺は少し間をおいてから、そっとリーファを抱きしめて答えた。
「あの時も言ったけど、俺はスグとリーファ……どっちも好きだよ。姿は違っていても君は俺とちゃんと向き合ってくれたからな。だから、どっちかだなんて俺には選べないかな……」
「リュウ君……」
すると、リーファも俺を抱きしめてきた。
「もう、リュウ君はいつもさらっとそういうこと言うんだから……。そんな欲張りなリュウ君にはちょっとお仕置きが必要だね」
「へ?」
リーファは急に小悪魔みたいな笑みを浮かべ、目を閉じて自分の唇を俺の唇に重ねてきた。
すぐにどういう状況なのか理解した俺はフリーズしてしまい、抵抗することもなくリーファからのキスを受け入れた。
キスは10秒ほどで終わり、俺たちの唇は離れた。
顔は熱くなっているから、間違いなく俺は顔を真っ赤にしているだろう。そして、自分からキスをしたリーファ自身も頬を赤く染めて恥ずかしそうに俺を見ていた。
「「…………」」
目が合う俺たちだったが、恥ずかしくなってまたしても目をそらして黙り込んでしまう。
俺たちはこうしてALOでの初デートを終えたのだった。
今回の話は最初から最後まで、書いている私自身もブラックコーヒーが欲しくなるほどのものとなってしまいました(笑)。
リュウ君とリーファ/直葉も、キリトとアスナに負けないくらいバカップルと言ってもいいほどラブラブですが、キリアスと違うのは初々しさがあります。一瞬リュウ君だけ爆発すればいいのにと思ったこともありましたが、リメイク版ではリュウ君にはかなり辛い思いをさせたのでリーファ/直葉と結ばれてラブラブカップルになって本当によかったです。
気づいた方が多いと思いますが、SAOAGGOで私が一番気に入っているキャラ、フカ次郎がゲスト出演しました。エムさんこと阿僧祇豪志さんに初めて会った時と同じことをリュウ君にもやりましたが、恐らくカイトやザックにも同じことをやったでしょう。オトヤの場合は百合に生きるとかヤバイことを言いそうな……。
レコンは相変わらず檀黎斗みたいな感じに。そして完全にリュウ君に敗北するという。今回ばかりは本当にドンマイだなと思いました。くれぐれも闇落ちしてレコン・オルタとかにならないことを祈ってます。
リーファが髪を下ろすシーンは、知っている方もいますがあれはゲームにあった話を元にしました。髪を下ろしたリーファは可愛いですし、リュウ君なら絶対に気にいるだろうと思ってこのシーンを入れました。ちなみにリュウ君がリーファから貰ったアクセサリーはクローズチャージの胸のクリアパーツみたいなものです。ですが、大きさは小さいものとなっています。
なんか久しぶり2人の甘々を本格的に書いた気がしました。次回もブラックコーヒーを用意しておくことをお勧めします。