ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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ついにアリシゼーション編のアニメがスタートしましたね。まだ1話だけですが、面白かったです。アニメオリジナルシーンにはクラインやMORE DEBANの2人、更にはゲームオリジナルのクレハまでも出ていたことに驚きました。そして、ユージオとアリスをアニメで見ることができる日が来るなんて。見ててこの作品でも2人を登場させたいなと思いました。特にリュウ君とユージオは結構気が合うと思うんですよね。

無駄話はここまでにしておいて今回の話になります。今回は甘々よりもギャグが多めとなっています。


番外編1 尾行と妹を心配する兄と非リア充

ALOの運営が再開されてから新たに誕生した世界樹の上に存在する街《イグドラシル・シティ》。俺は今ここである2人のプレイヤーを尾行している。

 

建物や看板、樽などの陰に身を潜め、バレないように尾行を続け、すでに10分が経過した。そんな時だった。

 

「キリト、こんなところで何やっているんだ?」

 

急に後ろから声をかけられ、ビクっとして振り向く。そこにいたのはクールで大人びた感じのサラマンダーの男性プレイヤー……カイトだった。隣には同じくサラマンダーで悪趣味なバンダナを頭に巻いた男性プレイヤー……クラインもいた。

 

「何だ、カイトとクラインか。驚かせるなよ」

 

「驚いたのはオメーだろうが。こんな街中でコソコソ何しているんだよ?」

 

「まあ、ちょっと色々あってな……」

 

「色々って何だ。明らかに怪しい感じだぞ。んっ?あれって……」

 

カイトは俺に話しかけていると、俺が尾行している2人のプレイヤーに気が付いて顔を向ける。クラインもその方を見る。

 

「おい、あそこにいるのってリュウとリーファちゃんじゃねえか?」

 

カイトとクラインに気が付かれてしまったか。そう、俺が尾行していた2人のプレイヤーはリュウとリーファだ。

 

どうしてリュウとリーファを尾行しているのかというと、リーファ……妹のことが心配だからだ。もう知っていると思うが、リュウとリーファは付き合い始めて今ではすっかり恋人関係となっている。

 

リーファ/スグにいつか好きな人ができて付き合う日が来るのではないかと思っていたが、本当に来てしまうとは思ってもいなかった。このことを知った時は本当にショックを受けてアスナとユイに慰められたりもした。

 

ショックを受けた反面、リーファ/スグの相手がリュウでよかったとも思った。話によれば2人は5年間もお互いに想いを寄せあった末、やっと結ばれたらしい。それにリュウはボロボロになりながらも蛮野たちからリーファを守ってくれたこともある。これらのこともあって、俺はリュウ以外にリーファ/スグを任せられると思い、2人が付き合うことを認めたのだった。

 

今のリュウとリーファの様子を見ていると、今日はALOでデートの日なのだろう。2人が付き合っていることを知っているカイトは、今の2人を見てそういうことかという表情をする。一方で、2人が付き合っていることを知らないクラインは、どういうことだという表情をして黙って見ていた。

 

「今日はイグドラシル・シティでデートしようって言っていたけど、何処か行きたいところでもあるの?」

 

「うん。シャルモンっていうケーキ屋でね、前にアスナさんたちと行ったんだけど凄く美味しかったの。リュウ君もきっと気に入ってくれるよ」

 

「へえ、それは今から楽しみだな」

 

楽しそうに会話を交わすリュウとリーファ。誰がどう見ても仲良しカップルだと思っても仕方がないだろう。もしかして俺とアスナもあんな感じなんだろうか。

 

クラインの方を見てみると、クラインの目からすっかり光が消えて何かブツブツ呟いていた。

 

「リュウの野郎、随分と楽しそうにイチャつきやがって。オレを……非リア充同盟を裏切ったな……」

 

「クライン、落ち着けって」

 

「リュウは非リア充でいてくれるだろうって思っていたのによ、いつの間にか彼女持ちになりやがったんだぞ!落ち着いてられるか!」

 

クラインを落ち着かせようとするが、すでに手遅れみたいだった。この調子だとどんどんヒートアップしていきそうだな。リュウが前に「俺がリーファと付き合うってことは、クラインさんだけには絶対に言わないで下さい」って言ったのが今ならわかる気がする。

 

どうしたらいいのかと思っていると、俺たちと同様に物陰に隠れてリュウとリーファの様子を見ているシルフのプレイヤーがいた。何処かで見覚えのある奴だな。

 

俺はシルフのプレイヤーに近づく。

 

「あれ……レコン?」

 

「あ、キリトさん……」

 

レコンは俺の方に顔を向けるが、顔は涙と鼻水で凄いことになっていた。これには俺もビクっとしてしまう。

 

「ど、どうしたんだ……?」

 

「うっ……うぅ……リーファちゃん……」

 

そういえばレコンってリーファに気があるって感じだったな。まあ、当の本人は眼中にないって感じだったけど。この様子だとレコンもリュウとリーファが付き合っているってことを知っているみたいだ。

 

見ているとなんか可哀想になってきて、レコンを励まそうとする。

 

「元気出せよ、レコン。リーファとリュウは想いを寄せ合っていたんだからさ。この恋は諦めて新しい恋を見つけた方がいいと思うぜ」

 

「じゃあキリトさんはリーファちゃんの相手が本当にあんな奴でいいんですかっ!?」

 

「ま、まあ……。リュウのことはよく知っているし、アイツならリーファを任せてもいいかなって……」

 

「まさかお兄さん公認カップルになっていたなんて……。あんな奴、『嫌いじゃないわ!』を連呼するオカマのおっさんでいいのに……」

 

なんか傷口に塩を塗ってしまうことみたいになってしまった。まあ……フラれた相手の兄にもそう言われると余計に落ち込むよな。

 

するとそこへクラインがレコンに歩み寄る。

 

「どうだレコン、お前もオレたち非リア充同盟の一員にならないか?」

 

レコンは俯いてわなわなと震えており、顔が見えない。

 

「レコン……?」

 

泣いているのかと思った時だった。

 

「ハハハ……フハハハハハハハッ!!ならばァ、答えはひとつだァ!!」

 

突如レコン狂ったように笑い出し、何処からか木製の杖を出して両手で持つ。そして杖を膝蹴りで叩き折る。

 

「あなたにィ……忠誠をォ……誓おォォオオっ!!」

 

レコンの絵に描いたような壊れぶりに、クラインも腹を抱えて笑い出す。

 

「フハハハ!だから人間は面白い!レコン、お前はもう非リア充同盟の立派な一員だ!」

 

「クラインさん!」

 

完全にどこかの火星を亡ぼした地球外生命体みたいになるクラインと、どこかの内海さんっぽくなるレコン。2人は握手する。

 

この光景に俺は唖然とし、カイトは憐れむようにクラインとレコンを見ていた。

 

「キリトどうするんだ?リュウとリーファを尾行するのを止めるんだったら今の内だぞ。いやそれ以前に、2人が付き合うことには賛成したんじゃないのか?」

 

「そうだけど、それとこれとは別だ。俺はただ兄として妹が心配なだけで……」

 

「シスコンか、お前は」

 

「俺はシスコンじゃない!」

 

カイトにシスコンと言われ、全力で否定する。

 

「「ワハハハハハハハハ!!」」

 

突然クラインとレコンが俺の方を指さして大爆笑する。しかも何故かクラインは中華帽を被っていた。

 

「何笑ってんだよっ!」

 

俺にそう言われてクラインとレコンは黙る。

 

「それでいいんだよ」

 

すると、クラインは被っていた中華帽を俺に被せ、2人してまた大爆笑する。その後もレコンに中華帽を被せると俺とクラインは大爆笑、再びクラインが被るとレコンと共に大爆笑という流れになる。更にはカイトにも被せて、俺たちは大爆笑していた。

 

「「「ワハハハハハハハハ!!」」」

 

あまりの悪ふざけに、ついにカイトはキレて中華帽を投げつけ、俺たち3人の頭にゲンコツ叩き込んだ。

 

なんてやり取りを終えてリュウとリーファを追いかける。ちなみにカイトは無理やり連れて行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルモンに着いた俺たちは窓際の奥にある席に座った。俺はリーファがオススメだという特性モンブラン、リーファはオススメの1つのミルフィーユ、そして紅茶を2つ頼んだ。

 

談笑するほど数分後、ウェイトレスがやってきて頼んだものをテーブルに並べる。

 

「これがリーファのオススメのケーキか」

 

「うん。この前アスナさんたちと来た時はそのモンブラン食べたけど、すっごく美味しかったんだよ」

 

「そうか。じゃあ、早速食べてみようか」

 

フォークを手に取り、モンブランをフォークに乗せて口に運ぶ。口の中に入ると栗とクリームの甘さが口のなかに広がる。

 

「これは美味しいな」

 

「でしょ。そのモンブランの栗もケットシー領で手に入るものを使っているんだって。あ、このミルフィーユも美味しい」

 

リーファも解説しながら、ミルフィーユを食べる。なんかそっちも美味しそうに見えてきたな。

 

「リュウ君もミルフィーユ食べてみる?」

 

「いいのか?」

 

「リュウ君ならいいよ」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

フォークを伸ばし、リーファのミルフィーユを少しだけもらって食べる。

 

「お、このミルフィーユも結構いけるな。俺だけもらうのも悪いし、リーファも俺のやつ食べてもいいよ」

 

「それじゃ、あたしもリュウ君の一口もらっちゃおうと!」

 

リーファも俺と同様にフォークを伸ばし、モンブランを一口分もらって食べる。

 

「やっぱりこのモンブランも美味しい!」

 

そう言って食べると、今度はミルフィーユをフォークに乗せてこちらに向けてくる。

 

「はい、あ~ん」

 

「あ、あーん」

 

場の空気と勢いでしたけど、やっぱり恥ずかしいな。

 

そして、俺もお返しにと食べていたモンブランをフォークに乗せてリーファに食べさせてあげる。そうしてお互いに食べさせ合っていると、店内にガンッと何かが落ちた音がした。

 

「何だ今の音は?」

 

「誰かがお皿でも落としたんじゃないのかな」

 

「いや、なんかお皿っていうよりもタライが落ちたっていう音だったんだけど」

 

「こんなところにタライなんてあるわけないじゃん」

 

「そうだな」

 

このことは気にせず、俺とリーファはティータイムを満喫するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

数分前……

 

 

 

 

 

 

シャルモンに入った俺たちはリュウたちから離れた席に座り、2人の様子をうかがっていた。リュウとリーファはお互いに相手が食べていたものを貰ったり、「あーん」と食べさせ合っており、ピンク色の空気に包まれて幸せムード全開となっている。その証拠に周りにいた客たちはブラックコーヒーを飲んでいる人で溢れていた。

 

そして、俺の向かい側に座っているクラインとレコンはどす黒いオーラを放ってリュウを睨みつけている。

 

「リュウの野郎、楽しそうにイチャつきやがって!」

 

「リーファちゃんとあんなことするなんて羨ましい!」

 

俺の隣に座って紅茶を飲んでいるカイトもこれには見かねて、カップを置くとクラインとレコンに注意する。

 

「みっともないぞ、お前ら。もう少し静かにしろ」

 

「何言っているんだよカイト!お前だって非リア充同盟の仲間だろうが!」

 

「俺はそんな下らんものに入った覚えはない!お前ら2人でそんなバカなことやっていろ!」

 

「だったらオレたちだけでなんとかするぞ!」

 

「はい!あのインプは絶版にしてやる!」

 

暴走するクラインとレコン。

 

これはちょっとヤバイ感じがしてきたな。俺はドングリが描かれている錠前型のアイテムを2つ取り出してクラインとレコンの足元に気づかれないように転がす。すると『ロックオン!』という音声がする。

 

『テケテンテンテンテンテンテンテンテ~ン!』

 

更におっさんがファンファーレ風のBGMを歌ったものが流れ始める。

 

『テ~ンテケテンテンテンテンテンテケテテ~ン!テ~ンテケテンテンテンテンテンテケテテ~ン!』

 

BGMが終わると同時に試合開始のときに鳴らすゴングの音がする。

 

『バッカモォォーン!!恥を知りなさぁぁ~い!!』

 

この音声と共にクラインとレコンの頭上にはタライが振ってきて、同時に2人の頭にクリティカルヒット。

 

『ネバ~ギ~ブア~ップ!!』

 

最後にそう流れると、クラインとレコンは頭上に星とヒヨコを回しながら面に倒れて気絶した。

 

「ふう、どうやらバレずに済んだな」

 

「つーか、お前は今使ったそれは何なんだよ……」

 

カイトがそうコメントするも、俺は気にせずに紅茶とケーキを味わいながらリュウとリーファの方を見ていた。

 

暫くするとリュウとリーファは店から出ようとして、俺たちもクラインとレコンを起こして2人の後を追う。

 

その後もリュウとリーファは、アルンにある店を周ってウインドウショッピングしながらデートを続ける。初々しさ全開のカップルとなっているが、ちょっとベタベタしすぎなんじゃないのか思った。

 

「キリト、もういいだろ。特に問題はなさそうだぞ」

 

「何言っているんだよ。俺は2人のデートが終わるまで続けるつもりだ。もしもリュウがリーファを宿屋とかに連れ込んだ時はぶった切ってやる」

 

「ったく、お前は……」

 

カイトはジト目で俺を見てため息をつく。そして、クラインとレコン(特にレコン)は敵意を剥き出しにしてリュウを睨みつけている。

 

「リーファちゃん、すっごく楽しそうにしている。僕にはあんな穏やかな表情見せたことなんてないのに……。あのインプが憎い!」

 

「レコンってリュウのことが嫌いなのか?」

 

「はい、嫌いです!」

 

「即答ですか……」

 

俺がそう聞いてから、レコンは1秒もしないうちに答えた。そんなにリュウのことが嫌いなんだ。この様子だとリュウは蛇が大の苦手だっていうことは言わない方がよさそうだな。あとレコンには申し訳ないが、心のどこかでリーファ/スグの選んだ相手がレコンじゃなくて本当によかったとも思ってしまった。

 

なんてやり取りをしている内にリュウとリーファは移動を開始し、街の中を歩きだす。俺たちもあとを追っている中、曲がり角を曲がったところで2人を見失ってしまう。

 

「あれ?どこ行ったんだ?」

 

辺りを見るが、リュウとリーファの姿はない。

 

「やっぱり俺たちを付けていたんですね」

 

「バレバレだよ、お兄ちゃんたち」

 

「「「えっ!?」」」

 

すると突然リュウとリーファが何もないところから姿を現す。これに俺とクラインとレコンは驚いて声をあげる。

 

「お前たち何処から現れたんだよ!?」

 

「隠密魔法を使って姿を消してたんですよ。キリさんたちが俺たちを尾行していますからね」

 

「カイトさんから連絡が来たからね」

 

「どういうことだ、カイト!」

 

「シャルモンにいた時にコッソリ連絡したんだよ。人のデートを付けるとか、見苦しいことはするな。知り合いとして恥ずかしい」

 

「見苦しいとはなんだ!見苦しいって!俺はただリーファが心配で付けてただけだ!」

 

「オレたち非リア充同盟を裏切ったリュウにそんなことしも何も問題はないだろうが!」

 

「そうだそうだ!」

 

俺とクラインとレコンがカイトに反論している時だった。

 

突如俺たちをかすめて何かが飛んできて後ろにある木に突き刺さる。何なのか見るとそれはノコギリだった。ノコギリが飛んできた方を恐る恐る見ると、どす黒いオーラを放って満面の笑みを浮かべるリーファがいた。

 

「刻むよ?」

 

笑みを崩さず首を傾げながら、手に持ったハンカチをねじるリーファ。

 

「「「す、すいません……」」」

 

あまりの恐ろしさに俺とクラインとレコンは謝る。ちなみにリーファの隣にいたリュウもリーファにビクビクしている。

 

「バカか、コイツらは」

 

カイトは呆れてこの光景を黙って見ていた。

 

その後、俺たち3人はデートを台無しにしてということでリーファから3時間説教を喰らい、俺に至ってはリアルでもリーファ……スグから2時間説教を喰らって計5時間も怒られる羽目になった。ちなみにカイトは密告してくれたため、2人からの説教は受けずに済んだ。

 

それから3日ほどスグ/リーファにはリアルとALOで口を全く聞いてもらえなかった。俺はカイトの言う通り2人の尾行止めておけばよかったと後悔するのだった。

 




今回は全体的にキリトのシスコン、クラインとレコンの非リア充を暴走させるという話になりました。

気づいた方もいると思いますが、ビルドネタが満載となりました(笑)
レコンが内海さんみたいに狂いだしたところは、書いてて頭の中でビルドのOPが流れました(笑)。でも、レコンがマッドローグに変身してもハイスペック過ぎて使いこなせなく、通常のクローズに変身したリュウ君に負けそうな。
中華帽はキリトも加わって大爆笑する始末。
更にはリーファが美空の「刻むよ」をまたしてもやることに。今回は第3話のやつを元にしました。このネタはこれからもやることになるでしょう(笑)

そして、旧版ではお馴染みであったタライアームズも今回初めてリメイク版でも披露しました。

クラインとレコンはもう完全にこの作品の檀黎斗や玄さんみたいな立場に。この2人がライダーのギャグネタを披露するのはこれからも続きます(笑)

次回もよろしくお願いします。

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