ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》 作:グレイブブレイド
この間にSAOのアニメとジオウは結構話が進みましたね。
SAOのアニメを見て、リーナ先輩は美しい、ロニエとティーゼは可愛いなと思いました。一方であの悪徳貴族2人には、顔面にゴリラモンドのパンチを喰らわせてやりたいくらいです。即死することもありますが別にいいでしょう。
そして、ジオウは渡部秀さんをはじめ歴代の登場人物が毎回出て、次は誰が出るのか毎週楽しみにしています。オーズ編は見てて、この作品で再現したいなと思いました(笑)。
今回はリュウ君ではなく、男の娘のオトヤ君が主役となっています。今の時系列はALO編終了後となっていますが、今回は大部分がSAO編の時の内容となっています。
それではどうぞ。
2024年になってからもう半年近くが経過しようとしている。本来ならこの年は高校受験で勉強に追われて大変な日々を過ごしていたはずだ。しかし、僕が今いるのはSAOの中。高校受験や勉強なんてものは存在しない。
一見するといいことに見えるが、実際はそうでもない。SAOはゲームの中で死ぬと現実でも死ぬというデスゲーム。しかも、現実へ帰還するには第100層まで辿り着き、そこにいるラスボスを倒さなければならない。
こんな絶望的な状況の中でも、現実に帰るためにゲームクリアを目指して最前線で戦い続けている攻略組というプレイヤーたちがいる。彼らは今日も危険を覚悟の上で、高レベルのモンスターが徘徊する未知の領域を冒険しているのだった。
その一方で中層プレイヤーは、最前線から離れている階層で活動をしていた。SAOプレイヤーの大多数を占めており、攻略組を目指す者、逆に攻略を諦めた者、商人や職人として攻略をサポートする者などいろいろな人がいる。僕もその中の1人だ。
いつものもなら攻略済みの階層にあるフィールドで狩りをするが、ここ数日の狩りでそれなりのお金を手に入れたこともあって、今日は街でゆっくり過ごすことにした。回復ポーションなど冒険に欠かせないアイテムから、食料品など日常生活に必要なものを買いに行こうと市場に向かっていた時だった。
道を歩いていると、赤をベースとした服を身に纏い、ツインテールの髪をした小柄な女の子の後ろ姿を見かけた。見覚えがある女の子だったから、声をかけてみた。
「もしかしてシリカ?」
僕に声をかけられて女の子は振り返る。顔を見てみると思っていた通りシリカだった。しかし、今のシリカは若干涙目になっていた。
「オトヤ君……お願い助けて!ピナが……」
シリカは僕に気が付いた途端、泣きついてきた。僕は多少戸惑いながらもどうしたのか尋ねた。
「ど、どうしたの?ピナに何かあったの?」
「ピナがいなくなったの……」
そういえば、いつもシリカのそばにいるはずのピナの姿が見えない。
そして、泣き続けるシリカを落ち着かせてからどうしてピナがいなくなったのか聞いてみた。
話によると、シリカはピナと一緒にこの街の外にある森でモンスターに襲われ、HPも回復アイテムも少なくなっていたこともあって大事を取って逃げることにした。しかし、途中でピナとはぐれてしまった。すぐに引き返して探そうとしたけど、違うモンスターに襲われて更にHPや回復アイテムが減ってしまい、一度立て直すために街に戻ってきたらしい。
話終わって、再びシリカの目に涙が浮かぶ。
「もしもピナが見つからなかったら……ピナに何かあったらどうしよう……。あの時から何も変わらない……何一つ成長してない……」
ピナは前にシリカを庇って一度死んでしまったことがある。だけど、最終的にリュウとキリトさんの協力もあってピナを生き返らせることができた。
シリカは今回も自分のせいだと思って悩んでいるんだろう。今も涙を流しているシリカを見ていられなくなり、僕は彼女に声をかけた。
「大丈夫。ピナは絶対に無事だし、必ず見つかるよ。僕も一緒にピナを探してあげるから泣かないで」
僕の言葉を聞いて、シリカは少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「オトヤ君……ありがとう……」
「すぐに準備するからちょっと待ってて」
シリカにそう言い、メニューウインドウを操作して戦闘時にいつも着る緑のコートへと着替え、背中にいつも愛用しているクォータースタッフ……《クローバースタッフ》を背負う。回復ポーションをはじめ冒険に使用するアイテムはさっき買ってきたばかりだから十分あった。その内の何割かシリカに渡し、シリカと一緒に街の外にある森へと向かった。
この街の外にある森は、第35層の《迷いの森》や第45層の《巨大樹の森》と並ぶくらいの広さだ。しかし、《迷いの森》のように隣接エリアが1分でランダムに入れ替わる仕組みになってるわけでもなく、《巨大樹の森》のよいに巨人モンスター並みに強力なモンスターが徘徊しているわけではない。それらと比べると難易度が低いフィールドと言ってもいいだろう。
加えて僕とシリカのレベルに問題はないし、前にリュウとキリトさんから貰った装備品があるから大丈夫だろう。それでも、なるべく戦闘は避けて早くピナを探した方が最善の方法だ。
本当なら知り合いの攻略組……リュウたちがいた方がもっとよかったが、今日はボス攻略があって最前線に行くって言っていたから、それは不可能なことだ。だからここはシリカのためにも僕が頑張るしかない。
「まずはピナがいなくなったのに気が付いた辺りに行ってみようか。シリカ、案内してくれる?」
「うん。こっちだよ」
シリカがその場所に走っていこうとした途端、落ちている石に足を取られてバランスを崩してしまう。
「わわっ!?」
「危ない!」
僕はシリカが転びそうになり、すぐに彼女の手を掴んだ。
「シリカ大丈夫?」
「うん、ありがとう……」
シリカは僕にお礼を言った後、落ち込んで言葉を続ける。
「ゴメンね、オトヤ君。せっかくピナを探すの手伝ってもらっているのに、余計に迷惑かけちゃって……」
「あまり気にしてないから謝らなくていいよ」
今のシリカを見ていると、気が散漫になっていることがわかる。やっぱりピナを早く探さないといけないって焦っているんだ。
そんなシリカの顔を見て声をかける。
「シリカ、ピナを早く探さないといけないって気持ちは僕もわかるよ。でも、焦ってしまうと注意力も散漫になって返って危ないから落ち着いてピナを探そう」
「オトヤ君……」
ジッと僕を見つめてくるシリカ。その様子があまりにも可愛くて思わずドキッとしてしまう。そして、今もシリカの手を握っていることに気が付き、顔が熱くなって慌てて手を離す。
「ご、ゴメンっ!偉そうなこと言っちゃって。それにさっきからずっと手握ったままだったよね!」
「ううん、そんなことないよ。おかげで落ち着くこともできたしね」
「シリカ」
笑顔になったシリカを見てホッとする。
「よし、ピナを探しに行こうか」
「うん」
ピナを探しに行こうと僕たちは再び森の奥へと進み始める。
――オトヤ君手離しちゃったけど、本当はあのまま握っててもらいたかったな……。だからって『このまま手握ってて』って言うのも恥ずかしいし……。
進んでいると途中で何度もモンスターと遭遇し、その度に戦闘を繰り返していた。遭遇したモンスターたちは幸いにもこの森で弱い部類に入るモンスターばかりで苦戦することなく、倒し続けている。
しかし、この森には第35層最強クラスの猿人のモンスター《ドランクエイプ》の上位互換のモンスター《ハード・ドランクエイプ》も存在する。ソイツが5,6体の群れで現れるとかなり危険だ。
森に入って1時間が経過したが、未だにピナを見つけられずにいた。
「ピナ――っ!!聞こえたら返事して――っ!!」
シリカが叫び続けるも、ピナの鳴き声はない。
「これだけ探しても見つからないなんて……。もし、見つからなかったら……」
またしても不安になって目尻に涙を浮かべるシリカ。それを見た僕はなんとか慰めようとする。
「だ、大丈夫だよ。この森は広いし、探していないところも沢山さんあるから、見つからないって決めつけるのはまだ早いよ。もう少し森の奥に行ってみよう」
更に森の奥へ進んでいくと、数メートル前にあるいくつかの大きめの木の陰から低いうなり声が聞こえてきた。明らかにピナのものではない。数秒後、3体の大柄な猿人が姿を見せる。右手に大きな手作り製の棍棒を持ち、左手にはヒモを付けた酒壺を下げている。猿人の名前は《ハード・ドランクエイプ》だ。
「オトヤ君……」
「まさか一番で会いたくない奴に出会うことになるなんて。でも、僕たちのレベルでも倒せない敵じゃない。シリカ、行くよ」
「うん!」
僕たちは武器を構える。先頭にいたハード・ドランクエイプが棍棒を振り上げて一気に振り下ろす。その瞬間、僕たちは地面を蹴り、同時にソードスキルを使用して攻撃する。
ハード・ドランクエイプも棍棒を振るって攻撃してくる。僕たちはそれを交わし、再びソードスキルを叩き込む。そうしているうちに奴のHPは残りわずかとなる。
これでいけるとなった時、別のハード・ドランクエイプが前に出てきて前にいる仲間を守ろうと僕たちを攻撃してきた。そして、HPが残りわずかとなった奴は酒壺に入っている酒を飲もうとする。
「させるか!」
僕は地面を蹴り、ソイツに《クローバースタッフ》で重い一撃を叩き込んだ。すると、初めに戦っていたハード・ドランクエイプはHPを全て失い、ポリゴン片となって消滅。
ハード・ドランクエイプは、ドランクエイプと同様に、HPが減ると他の仲間が助けに入ってきてその隙に酒壺に入っている酒を飲んでHPを回復しようとする。だけど、回復を阻止すれば簡単に倒すことができる。これは前にリュウから聞いたことだ。
そして、シリカが相手しているハード・ドランクエイプの後頭部を《クローバースタッフ》で叩き込む。たまたまクリティカルヒットしたのか奴はフラ付いていた。この隙に僕たちは片方がソードスキルを放つと、もう片方が前に出てソードスキルを放つという動きを繰り返して2体目のハード・ドランクエイプを倒す。
このままでいけばいけると思った時だった。
突如、最後に残っていたハード・ドランクエイプが雄叫びを上げた。その数秒後だった。新たに3体のハード・ドランクエイプが姿を現した。
「どうしよう、仲間を呼ばれちゃったよ!」
「落ち着いてシリカ!1体ずつ数を減らしていけば大丈夫だよ!」
《クローバースタッフ》を強く握りしめ、4体のハード・ドランクエイプたちと交戦。だが、1体のハード・ドランクエイプが振り下ろしてきた棍棒を避けきれず、強い衝撃が襲った。
「ぐわっ!」
強力な衝撃に耐えきれず、よろけて地面に右ひざを付く。HPを確認してみるとイエローゾーンへと到達していた。
「オトヤ君!」
シリカが僕を叫んで呼ぶ声がする。
その瞬間、前にドランクエイプに負けたことを思い出す。その時にピナはシリカを助けようとして代わりに死んでしまった。ピナは無事に生き返らせられたけど、あの時何もできなかったことは今でも後悔している。だからあの時と同じことを二度と起こさせないと誓ったんだ。
「平気、このくらい…」
そう言いながら、《クローバースタッフ》を地面に突き刺し、杖代わりにして何とか立ち上がる。
「あの時の僕とは違うんだ、なめるなよっ!」
この場に僕の叫びが響き渡る。
そして、ハード・ドランクエイプたちに向かって地面を蹴った。一番先頭にいた奴に《クローバースタッフ》で突きを放ち、更に薙ぎ払って攻撃。3度目の攻撃でソードスキルを叩き込むもHPはまだ4分の1ほど残っていた。
やっぱり僕のレベルでソードスキルを1回喰らわせただけでは倒せないか。
と、思った途端、シリカが短剣のソードスキル《ラビッドバイト》を一番先頭にいたハード・ドランクエイプに放った。攻撃を受けたハード・ドランクエイプはポリゴン片となって消滅した。
「オトヤ君が頑張っているんだから、あたしも頑張らないとね」
シリカは笑みを浮かべてチラッと僕の方を見る。これを見た僕はこっちも負けられないと思い、《クローバースタッフ》を強く握りしめて構える。
その後、15分ほど僕たちは残っていたハード・ドランクエイプ3体と戦闘を繰り広げた。2回ほど隙を見せて敵を回復させてしまったというミスもあったが、僕たちはなんとか全部倒すことに成功した。
「ふう、どうにか倒せたね」
「うん。でも、攻撃まともに受けていたけど本当に大丈夫?」
「大丈夫。HPもポーション使って回復させたからね」
これ以上シリカを心配かけさせるわけにはいかないと笑って答える。
「それよりも早くピナを探そう」
再び移動を開始しようとした時だった。
「きゅる……」
何処からか覚えのある鳴き声が微かに聞こえた。これに僕とシリカは反応する。
「オトヤ君、今のって!」
「うん、間違いない。ピナの鳴き声だよ」
僕たちは耳を澄ましてもう一度鳴き声を聞こうとする。すると、先ほどした鳴き声が再び聞こえる。
「こっちからだ!」
僕たちはすぐに鳴き声がした方へと走り出す。森の木々の間を抜けていくと、開けた場所へと出る。
そこは小さな泉だった。森の中にひっそりとあるようなところで、神秘的な雰囲気が漂っていた。そして、ここには目を疑うような光景があった。それを見た僕たちは驚きのあまり声を失ってしまう。
僕たちが目にしたのは、泉の上を静かに飛び回ったり、泉の中に浮かぶ岩に腰掛けて休んでいる水色の体をした小さな翼竜《フェザーリドラ》の群れだった。
フェザーリドラは滅多に出てこないレアモンスター。僕が今まで見たことがあるフェザーリドラはピナだけだ。なのにこんなに沢山いるなんて……。情報屋が公開している情報にも大量のフェザーリドラを見かけたなんていうものは聞いたことがない。
フェザーリドラたちは僕たちを威嚇して見ている。しかし、その中の1匹のフェザーリドラは威嚇することなく、僕たちの方へと飛んできた。
「きゅる♪」
「ピナ!?」
姿が同じとはいえ、シリカにはそのフェザーリドラはピナだっていうことがすぐに分かった。
「ピナ、ピナ……。心配したんだよ。本当に無事でよかった……」
「きゅう~」
ピナもシリカに会えてよかったみたいで、嬉しそうに鳴いてシリカに頬擦りをしていた。
すると、他のフェザーリドラたちの警戒心が緩んでいき、僕とシリカを威嚇することはなくなった。シリカに懐いているピナを見て、僕たちが自分たちに危害を加えることはないのだと思ったのかもしれない。
「それにしてもピナ以外でフェザーリドラを見たのは初めてだよ」
「人が踏み入った形跡はないから、僕たちが初めて発見したんだと思う。この場に居合わせたのは、本当に運がよかったと言ってもいいかもしれない……。ともかくピナが見つかって本当によかったよ」
「うん。ありがとう、オトヤ君。ピナもオトヤ君にちゃんとお礼しよう」
「きゅる」
シリカとピナを見て、笑みを浮かべた。
「他のフェザーリドラたちの邪魔になるといけないから、そろそろ帰ろうか」
「そうだね。あ、オトヤ君ちょっといいかな?」
帰ろうとした途端、シリカが急に僕を呼び止めた。
「どうしたの?」
「お願いがあるんだけど、その……街に戻ってもここのこと秘密してもらえないかな?沢山の人が来たらこの子たちは移動してしまうだろうし、こんな素敵な場所で静かに暮らしているから、そっとしておいてあげたくて……」
確かにシリカの言う通りだ。このことをアルゴさんなどの情報屋に教えたら、間違いなく大勢の人がここにやってくる。ここは荒らされ、フェザーリドラはレアモンスターだから、無理やりテイムしようとしたり、レアアイテムがドロップするかもしれないと乱獲される危険性だってある。
僕の答えは、シリカがお願いするより前からすでに出ていた。
「この場所のことも沢山のフェザーリドラがいたことは話す気は最初からないから、心配しなくていいよ。それに僕、この場所が好きみたいだから、荒らされるのはあまりいい気分じゃないんだ」
「オトヤ君」
これを聞いたシリカは安心したかのように笑みを浮かべる。
そして、僕たちはフェザーリドラたちに手を振ってこの場を後にした。
元来た道を歩いて街に戻っている中、シリカが話しかけてきた。
「あ、あの。オトヤ君に沢山迷惑かけちゃって、こんなこと言うのもなんなんだけど、オトヤ君と一緒にあんな素敵な所に行けて本当によかった。ありがとうね」
「迷惑だなんて思ってないよ。ピナを探そうとしたのは僕が勝手に決めたことだから。僕もシリカと一緒にあの場所に行けて本当によかったよ」
笑い合う僕たち。
初めはSAOなんて恐ろしい場所でしかないって思い、恐怖のあまり第1層のはじまりの街に引きこもっていた時もある。でも、今はこうして好きな人と2人きりしか知らない秘密の場所を見つけることもできた。それが出来ただけでも僕は凄く嬉しかった。
「こんなことあったよね」
「うん。ピナがいなくなった時は本当に焦ったけど、今となってはあたしにとって凄く大切な思い出だよ」
「僕もだよ」
「きゅる」
僕とシリカとシリカが今いるのはSAOではなくALO。その中にある草原のフィールドに狩りに行って、休憩中に今から1年ほど前にあったことを思い出してシリカと話していた。
話し終えると、僕たちはALOの空高くに浮かんでいる新生アインクラッドを見る。
「新生アインクラッドにもあの場所ってあるのかな?もしもあったらもう一度行ってみたいね」
「そうだね。あの場所があるのはまだ上の層だけど、そこまで到達した時は探しに行こう。もちろんリュウたちには内緒で」
「うん!」
・オマケコーナー ある日の出来事
ケットシー領の付近にある花畑のフィールド。そこであたしはオトヤ君と共に植物系のモンスターと戦闘を繰り広げていた。
「でりゃぁぁぁぁぁ!」
モンスターの懐に入り、ダガーで切り裂いてダメージを与える。しかし、モンスターもただではやられるわけには言わんというばかりに、あたしの足にツタを巻き付けてひょいと持ち上げる。
「きゃあっ!」
「シリカ!」
オトヤ君は声を上げて叫ぶが、あたしは翅を広げて体勢を整えた。
「へっへん。昔のあたしとは違いますよ」
自信満々でそう言った瞬間、モンスターは雄叫びを上げると根を集めて翅を作り上げて宙に浮いた。そして……。
「きゃああああっ!!オトヤ君助けて!見ないで助けてっ!!」
あたしはいつものように宙吊りの状態に。慌てて左手でスカートを押さえ、右手のダガーを無茶苦茶に振り回しながら、オトヤ君に助けを求める。
「んな無茶な!」
左手で目を覆ったオトヤ君が困ったように答える。その間にもダガーでツタを切ろうとするも長さが足りなくて中々届かない。これを見かねたオトヤ君は左手で目を覆いながら叫んだ。
「シリカ!僕がモンスターを倒すから両手使ってちゃんとスカート押さえててっ!!」
「うん!」
オトヤ君に言われてあたしは右手も使ってスカートを押さえる。
そして、オトヤ君は魔法のスペルを詠唱。すると、緑色に光る風のカッターが放たれてあたしの足に巻き付いていたツタを切る。更にライトグリーンに光る翅が背中に出現させて飛翔。両手でクォータースタッフを持ち、モンスターに重い一撃を叩き込む。
見事にヒットし、モンスターはポリゴンとなって消滅した。
「み、見た?」
「見てないです……。ってうわあああああっ!!」
モンスターを倒した矢先、オトヤ君の足に先ほど倒したのとは別のモンスターのツタが巻き付き、ひょいと持ち上げた。
「オトヤ君!!」
今度はオトヤ君が宙吊りの状態になってしまう。
「ううっ……まさか僕までやられちゃうことになるなんて……。頭に血が昇る……。シリカもこんな気分だったんだね……」
少し辛そうにしながらコメントするオトヤ君。クォータースタッフの柄の先にある三つ葉のクローバーの形状をしている刃でツタを切ろうとするも、宙吊り状態だということもあって中々切れず悪戦苦闘している。
「ダメだ、不安定な状態だから上手く切れない……」
「オトヤ君。あたしがそこまで飛んで行けば、すぐにオトヤ君の足に絡まったツタを切ってあげられるから大丈夫だよ」
「じゃあ、お願いするよ」
「うん、任せて」
翅を出してオトヤ君の元へと飛んでいく。その時だった。
「って!うわっ!!」
オトヤ君がいきなり声を上げて驚いた。
「どうしたの、オトヤ君?」
「シ、シリカ!そのアングルはヤバイ!」
「え?」
オトヤ君は少々慌てた様子の口調で話すが、何を言っているのかが意味がわからず唖然としていた。そんな中、オトヤ君は何故か頬を少し赤く染めて恥ずかしそうにしながら言葉を続ける。
「僕が逆さまだから、近づかれると……君のその、スカ……スカートを覗き込むことになっちゃうから!」
やっと彼が何を言いたかったのかわかると頬が熱くなるのが伝わる。
「きゃああああっ――――!!」
スカートを両手で押さえ、思わずオトヤ君の顔面に蹴りを入れてしまう。
「ぐほっ!!」
「わわっ!オトヤ君ゴメン!」
「い、いや……大丈夫……」
あたしに蹴られたところを右手で押さえて、若干涙目になって答えるオトヤ君。仮想世界では痛みを感じないとはいえ、かなりの衝撃があったのは間違いない。
こんなハプニングもあるけど、あたしたちは今日もALOで冒険をしていました。
多分気づいた方もいるかもしれませんが、今回の話はコミックアンソロジーにあったシリカがキリトとピナを探しに行く話を元にしてみました。この話は結構気に入ってまして、それをキリトではなくオトヤで再現したらどうなんだろうかという気持ちからやりました。
流石にキリトをオトヤに変えただけではオリジナル感が足りないと思い、ドランクエイプの上位互換のモンスターと戦うシーンなどを入れてみました。でも、コミックアンソロジーを元にしても大丈夫なのかという不安もございます(汗)
今回の主役となったオトヤ君は、攻略組ではなくてリズやシリカと同様に中層プレイヤーで、リュウ君たちと比べると戦闘能力は劣っているといいくらいです。でも、リュウ君たちのバックアップを行うなど弱いなりに頑張っているところもあります。また、普段は女の子だと間違えられる容姿をしているオトヤ君ですが、いざという時はfateのアストルフォみたいにイケメンな一面も見せるという感じのキャラです。リュウ君とは同い年で同姓のため、リュウ君の親友という重要な立場にもなっています。
オトヤ君はリュウ君たちと違って、特に仮面ライダーの登場人物を元にしたわけではないのですが、強いて言えば『仮面ライダーキバ』の渡をまともにした感じに近いかな?と思っています。実は元々『進撃の巨人』のアルミンや『暗殺教室』の渚をイメージしてキャラ設定を作っていたんですよね……。
シリカとの関係はまだ友達以上恋人未満となっており、これからどうなるのか見守ってて下さい。
次回もよろしくお願いします