ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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お待たせしました。最新話になります。

今回はリーファとリュウ君の話になります。本当はザックとリズの話にする予定でしたが、2人のイチャイチャを書きたいなと思い、予定を変更しました。それではどうぞ。


第3話 ウェディングイベント

2025年6月。今年もとうとう梅雨の時期に入り、ジメジメとした日が続くようになった。この時期は本当に雨の日が多く、湿度が高いこともあってあまり快適に暮らせるとは言えない。

 

あまりいい印象がない月に思われるが、6月は梅雨の時期だけはなく、ジューンブライドの時期もある。

 

ジューンブライドとは、『6月の結婚式』や『6月の花嫁』などを意味し、この月に結婚する花嫁は幸せになれるという言い伝えがある。起源となったのはヨーロッパの方で、ジューンブライドの由来として、ローマ神話の女神ユノを由来となっている説、ヨーロッパでは6月が1番結婚式に適している時期であるという説、6月が結婚の解禁の月であったという説など、様々な説が存在する。ジューンブライドは世界中に知られており、多くの女性が憧れているものとなっている。

 

その影響なのか、6月に入ってからALOではウェディング関連のイベントがいくつも行われていた。シルフの領主……サクヤもこれに便乗してあるイベントを企画していたのだった。

 

あたしは気になって何なのかと聞いてみると、サクヤは1つのウィンドウを見せてきた。その見出しには『シルフにてベストカップル ウェディングの撮影コンテスト』と書かれており、その下には純白のタキシードとウェディングドレスを着たシルフの男女のプレイヤーが2人写っていた。

 

「サクヤ、これって?」

 

「ウェディング姿をしたカップルのベストショットを応募して一番を決めようという領主主催のイベントだ。今は6月……ジューンブライドの時期で、ALOでも今はウェディング関連のイベントやクエストで盛り上がっているだろ。せっかくだからこんなイベントをシルフ内で開催してみるのも面白そうだなと思ってな。ははは……」

 

「へぇ……そうなんだぁ……」

 

話を聞いている内に、このイベントに凄く興味が湧いてきた。

 

ベストカップルということは、参加するには男女のペアであることが条件であるのは間違いない。こうなると、あたしのパートナーにはリュウ君しか考えられない。だってあたしとリュウ君は付き合っているんだから当たり前だよね。

 

いつの間にか、ウェディングドレスを着たあたし自身と白いタキシードを着たリュウ君と2人だけでいるところを妄想してしまう。この姿で写真撮影をするだけであったが、リュウ君があたしの顎をクイっと軽く持ち上げ、顔を自分の方に向けるという顎クイをしてきた。

 

『りゅ、リュウ君……?』

 

『リーファ、ただ写真撮影するにはだけじゃなくて、ここで本当に結婚式を挙げてこの世界で俺と幸せな家庭を築いてくれないか?』

 

『も、もちろん!あたしなんかでよければ……』

 

『君しか考えられないよ』

 

そして、お互いに見つめ合い、唇を重ねようと顔を近づけようとして……。

 

「リーファ」

 

突然サクヤがあたしを呼ぶ声が耳に入ってきてビクっとし、元の世界へと戻る。同時に顔が一気に熱くなる。

 

「どうかしたのか?」

 

「なな何でもないっ!」

 

「そ、そうか……」

 

慌ててそう言い、見ていたサクヤもこれ以上尋ねようとはしてこなかった。

 

落ち着きを取り戻したところで、咳払いをしてサクヤに「あたしもこのイベントに参加したいんだけど」と言った。

 

これを聞いたサクヤは「いいぞ」の一言を口にし、メニューウィンドウを操作して参加者のリストにあたしの名前を登録してくれた。

 

これでリュウ君とイベントに参加できるとすっかり浮かれてしまう。しかし、後でこのイベントのことで大きな見落としをしていることに気が付き、あたしは一気に天国から地獄に落とされたかのような気分を味わうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、()()()()()()()()()()()()()()()()だなんて……」

 

翌日、カップルコンテストの詳細のところをよく見てみるたら、参加条件として男女のペアであることに加え、種族がシルフであるということが書いていたことに気が付いた。つまり、カップルコンテストにはインプのリュウ君は参加することはできない。

 

このことを知ってからあたしはずっと落ち込み、この状態でサクヤがいるシルフ領主館に歩いて向かっていた。

 

その途中、聞き覚えのある声があたしの名前を呼んだ。

 

「り、リーファちゃん!」

 

声がした方を振り向くと、黄緑色のおかっぱヘアーをしたシルフの少年……レコンの姿があった。

 

「レコン、どうしたの?」

 

「さっきサクヤさんから聞いたんだけど、リーファちゃんってシルフ主催のカップルコンテストに出ようとしているんだよね?」

 

「ま、まあ……」

 

サクヤったらどうしてレコンに教えるのよ。レコンにこのことを知られたら絶対に面倒なことになるっていうのに。

 

早くこの場から去ろうとしたら、レコンが「待って」と呼び止めてきた。

 

「あ、あのさリーファちゃん。もし相手をまだ決めてないなら、ぼ、ぼ、僕なんて……」

 

「ああ、ゴメンねレコン。あたし、カップルコンテストへの参加は止めようと思っているの」

 

言い終える前に、そう言ってレコンの誘いを断ろうとする。すると、レコンは驚いた表情をして声を上げる。

 

「ええええっっ!?何でっ!?」

 

「ちょっと色々とあってね……」

 

「も、もしかして……あのインプと参加できないから?」

 

「うっ……」

 

図星をつかれ、言葉が詰まってしまう。

 

「その反応はやっぱり!リーファちゃん、あのインプと参加つもりだったんだ!リーファちゃんに近づく悪い虫は今のうちに削除するっ!」

 

レコンは、あたしがリュウ君と参加しようとわかった途端、自分のことを神だと言っているゲーム会社の2代目社長みたいに暴走し始める。

 

レコンのウザさとリュウ君とカップルコンテストに参加できないストレスから、イラついて糸切りバサミを取り出して左手に持つ。そして……。

 

「刻むよ」

 

何処かのネットアイドルのように殺気を出して言い、糸切りバサミを数回開閉させる。

 

すると、レコンは一気に青ざめた顔をして黙り込んだ。

 

「そういうことだから、カップルコンテストに参加したかったら他を当たって。じゃあね!」

 

そう言い残し、これ以上面倒なことにならない内に、この場を逃げるように去っていく。

 

「ええっ!?ちょ、ちょっと待ってよ、リーファちゃぁんっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルフ領主館に着き、サクヤにカップルコンテストへの参加は止めるということを伝えた。

 

「そうか。カップルコンテストへの参加は止めるのか……」

 

「うん、ゴメンねサクヤ。せっかくエントリーの手続きをしてくれたのに……」

 

「気にしないでくれ。最初にシルフのカップルでないと参加できないっていうことを教えるのを忘れた私にも責任があるからな」

 

サクヤは軽く笑みを浮かべてそう言い、数秒ほど間をおいて更に言葉を続けた。

 

「だが所詮これはプレイヤーが決めた軽い戯れのような行事だ。ルールも領主である私が決めたわけだし、厳密なものではない」

 

「えっ!?じゃあ……リュウ君に出てもらってもいいの!?」

 

「そうだな。ダメとは言わないが、シルフのイベントという建前はある。カスタマイズとかでリュウガ君をインプからシルフのようにアレンジできるなら……だが」

 

「ええっ!?で、できるかなぁ……」

 

リュウ君の種族はインプ。髪の毛と瞳は紺色で、服装も紺色と黒というクローズカラーとなっている。ウンディーネかスプリガンなら何とかできそうだけど、シルフの場合はかなり難しそうだ。

 

それに主催者のサクヤがそんなことしちゃっていいのかと思ってきた。

 

「ねえサクヤ、主催者自らがそんなルール違反を見過ごすようなこと言ちゃってもいいの?」

 

「はは、それもそうだな」

 

あたしの言葉にサクヤは笑い、言葉を続ける。

 

「ルールを変更できないか、もしくは特例を設けられないか、他の主催者たちと話してみよう。それなら参加を止める必要もないだろう?」

 

「うん、ありがとうサクヤ!早速リュウ君に聞いてみるよ!」

 

「参加はまだ保留にしておくから、後日改めて返事を聞かせてくれ」

 

サクヤの計らいのおかげで、あたしのカップルコンテストへの参加はとりあえず保留という結果となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

場所はシルフ領主館から移って、あたしがスイルベーンにある所持しているプレイヤーホーム。貝殻様の光沢を持つ壁に囲まれた円形の部屋の中央には、パールホワイトのテーブルといくつかのイスがあり、今は2つのイスが使用され、テーブルには紅茶が入ったカップが2つ置かれている。

 

あたしは目の前に座っているリュウ君に、カップルコンテストのことを説明していた。

 

「というワケなの。シルフのイベントを盛り上げたいから、リュウ君があたしとカップルになって」

 

「ああ、いいよ」

 

OKだという返事を聞き、心の中でガッツポーズをする。

 

リュウ君は自分の目の前に置かれているカップを左手で取り、紅茶を一口飲み、カップをテーブルに置いて、話しかけてきた。

 

「でも、俺の場合、何処までシルフみたいになれるか正直わからないぞ。服ならともかく、髪の毛とか目はかなり難しいと思うし……」

 

「平気平気!撮影したもので判断するだけだから、そこまで細かくカスタマイズする必要ないよ。髪の毛と目が緑色のリュウ君もどういうものなのか見てみたいしね」

 

「今だって髪の毛と目が紺色になっただけでもかなり印象が変わったと思うけど、緑系統にしたら本当にどうなるんだか……」

 

自分がシルフになった姿をイメージしたのか苦笑いを浮かべるリュウ君。正直言うと、あたし自身もリュウ君がシルフになった姿はあまり想像ができないでいた。

 

すると、リュウ君はちょっと真剣な顔へと変えた。

 

「ところでサクヤさんの方は本当に大丈夫なのか?」

 

「本人もそう言っていたから大丈夫だと思うよ」

 

「でも、別の種族を特例で参加できるようにするって、口で言うのは簡単だし、領主の権限でなんとかなりそうだけど、実際にそういうルールにするのはかなり面倒なことになると思うよ。他のシルフの参加者からも苦情が出そうだしな……」

 

「そ、そうだよね……」

 

リュウ君の言う通りだ。一見簡単そうに見えるが、かなり面倒なことになるのは間違いない。

 

それにこの特例は、サクヤがリュウ君と一緒に参加したいというあたしの願いを叶えるために設けてくれたものだ。あの時はリュウ君と一緒に参加できることに喜んでいて、そんなことは気にも留めていなかった。なんだかサクヤに申し訳ない気持ちでいっぱいになってきた。

 

「サクヤに迷惑かけちゃってるのかな?」

 

「いやまぁ、サクヤさん本人がやってみるって言ってくれているなら、こっちから言うのも失礼かもしれないけど……」

 

リュウ君がフォローしてくれるが、やっぱりあたしのワガママのせいでサクヤに迷惑はかけられない。

 

数分間考え込み、あたしの中で答えが出た。

 

「リュウ君、あたしイベントに参加するのやっぱり止めた!」

 

これを聞いたリュウ君は当然驚いた。

 

「えっ!?本当にいいのか?」

 

「うん、サクヤに迷惑かけるのも悪いしね」

 

すると、リュウ君から笑みがこぼれる。

 

「リーファらしい答えだな。俺は君が参加するのを止めるっていうなら、別にそれでも構わないよ。まあ、リーファと撮影できないのは残念だけど……」

 

「何言っているの?撮影の方は止めないよ」

 

「……へっ?」

 

 

 

 

 

 

数日後……

 

アルヴヘイムの中立域にひっそりと存在している小さな村。そこにある教会の前にあたしとリュウ君はいた。

 

今のあたしたちの恰好はいつものものではない。あたしは白と薄い緑をベースとしたウェディングドレス姿、リュウ君は白いタキシード姿というウェディング姿だ。

 

この姿で《スクリーンショット撮影クリスタル》を用意し、リュウ君の腕に抱き着こうとする。しかし、リュウ君は頬を少し赤く染めて恥ずかしがっている。

 

「ほら、もっと近づいてくれないと!」

 

「い、いやぁ……さ、流石に近すぎないか?」

 

「えー、何で?このくらいしないと、ちゃんとしたものが撮れないでしょ。あたしたち付き合っているんだし、別にいいじゃない」

 

「でもなぁ……」

 

当惑しているリュウ君を見ている内に、あたしの中でちょっとイタズラ心が湧いて出てきた。そして、上目遣いでリュウ君を見て言ってみた。

 

「それともリュウ君はあたしとじゃ嫌だ?」

 

「い、嫌じゃないよ!ただ、好きな人とこうすると……ドキドキが止まらないっていうか、恥ずかしくて……」

 

あたしから目線をそらして少々慌てた様子でリュウ君は言った。

 

見てわかると思うが、リュウ君は恋愛事においては結構奥手な方で草食系に分類されている。もう少しグイグイ来てほしいと思うこともあるが、あたしはリュウ君のそういうところが可愛くて嫌いではないし、そんな彼を見ているとたまにちょっとイタズラもしたくなる。だが、草食系のリュウ君もたまに積極的なところを見せてきて、あたしはその度にドキドキさせられている(直後にリュウ君がよく顔を真っ赤にして黙り込んで自滅しているが)

 

落ち着きを取り戻したリュウ君が咳払いをした。

 

「結局シルフのイベントには参加しないんだろ?なのにどうして撮影だけするんだ?」

 

「あたし、別に撮影して人に見せたいわけじゃなかったんだよ。女の子なら好きな人とウェディング姿をして、こうやって記念に残すのは誰もが夢見ることでしょ」

 

「リーファ」

 

あたしが本当にしたかったのは、リュウ君とこうしてウェディング衣装を着て、2人の思い出を作ることだ。それがいつの間にか、カップルコンテストに参加することになってしまっていた。

 

リュウ君と話し合った後、あたしはすぐにシルフ領主館に行ってサクヤにカップルコンテストには参加しないことを伝えて謝った。

 

すると、サクヤは「そういうことなら仕方がないな」と笑いながら言い、そして参加しない代わりに、あたしたちのウェディング姿を撮影したかったものを自分にも見せるという条件を出してきたのだった。

 

サクヤにも見せなきゃいけないからちゃんと撮らないとね。

 

「ほらほら!別に誰に見られているわけでもないんだし、リュウ君もさっさとくっついて!」

 

「あ、ああ……」

 

「じゃあ行くよ~」

 

リュウ君の腕に抱き着いたところで、タイマーをセットして写真を撮る。

 

この時撮った写真は、あたしたちの部屋にそれぞれ飾ることになり、思い出の一つとなった。

 

これは余談だが、将来この2人は本当に現実世界の方でウェディング姿を披露することになるのだが、それはまだ2人にとっては未来の話…




今は12月ですが、この作品では6月となっているので、ジューンブライドにちなんだ話をやろうと思ってやりました。私はプレイしてませんが、動画サイトの方でメモデフにこんな感じの話があったのを偶然見かけ、それを元にしました。

リーファ視点にしても甘々全開となり、ブラックコーヒーが欲しくなるほどでした。

リーファがまたしても美空の「刻むよ」ネタを披露。この調子でいくと「刻むよ」ネタをコンプリートしそうだなと思いました(笑)。そして、レコンは一瞬ですが檀黎斗になりかけるという。この調子だと「レコン王」と名乗ってリュウ君を監禁するのではないのかと心配になってきました。


前回の投稿から、SAOのアニメは2話しか進んでいませんが本当に色々とありましたね。あのクズ貴族共には本当に殺意を抱きました。前回の前書きではゴリラモンドのパンチを喰らわせたいと書きましたが、放送中はクローズマグマになってマグマナックルやブリザードナックルであのクズ共を何十回も殴りたくなるほどでした。これはさておき、ついに幼少期の頃ではないアリスも登場しましたね。本当に毎度目が離せない状態となっています。

ジオウの方もソウゴがオーマジオウと対面。オーマジオウの配下のカッシーンは声が津田さんでしたので、一瞬レデュエみたいになるのではと思ってしまいました。そして、ここ数年仮面ライダーでお馴染みとなっているクリスマスの惨劇が起こらないことを祈っています。

次回もよろしくお願いします

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