ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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お待たせしました。最新話の投稿になります。

先日、YouTubeで公式サイトが配信しているシノビと龍騎のvシネマを見ました。どちらも面白くて続きが気になる内容でした。「Go! Now! ~Alive A life neo」がカッコよくて、早くfullで聞いてみたいなと思ったほどです。エグゼイドとビルドの挿入歌の時も同じことを言ったような。

ジオウは前回のブレイド編も結果的に剣崎と始が救われてよかったと思い、最新話ではアギトが登場してテンションが上がりました。ディケイドの時は違う人がアギトだったので、翔一本人の登場は嬉しかったです。

無駄話が長くなってしまいましたが、今回の話になります。今回は公式が病気と言ってもいいほどライダーネタが盛りだくさんで、ゲストキャラが何人も登場します。


第8話 恐怖?妖精界の肝試し大会

2025年7月30日。

 

夏と言えば、何なのかと聞かれたとき、皆はどんなものを思い浮かべるだろう。 バーベキューに花火大会に海水浴などの遊びやイベント。スイカにかき氷といった食べ物。挙げれば、片手で足りないくらいだ。

 

そして今回、俺たちが体験するのは、夏の定番だと言われているあのイベントだ。

 

 

 

 

「ここが開催場所か」

 

「はい。ここで間違いないです」

 

キリさんと話をしながら、メニューウインドウを開いて場所の確認をしていた。

 

今俺がいるのは、インプ領内にある巨大な城。建築年数も何十年と言ってもいいほど年期が入ったもので、その周りを薄暗い光でライトアップされている。付近には飲食物やグッツを販売している屋台がいくつも並び、大勢のプレイヤーたちで賑わっていた。一言で表すとテーマパーク内にあるアトラクションみたいなところだ。

 

ここにいる多くのプレイヤーたちは楽しそうにしているが、その中で唯一アスナさんだけは不安そうな顔をし、口を開いた。

 

「ねえ、ここで行われるの?」

 

彼女の近くにいたザックさんが聞き、説明をする。

 

「ああ。オレとリュウに送られてきた招待状にはそう書いてあったぜ。ここで肝試し大会が行われているってな」

 

ザックさんの言う通り、今目の前にある城で肝試し大会が行われているのだった。

 

ここに来ることになったのは、先日俺とザックさんの元に送られてきた1通のメッセージが届いたのがきっかけだった。

 

送り主は、インプの領主であるジャンヌさんからだった。

 

前に行われたインプの武闘大会の時に、ジャンヌさんから腕を見込まれてインプの精鋭部隊に入らないかと誘われたことが、彼女と知り合うきっかけとなった。領主さん直々の誘いではあったが、俺とザックさんは精鋭部隊に入ると任務とかで忙しくて、皆と会える機会が減ることもあって、誘いを断った。それでもジャンヌさんとは友人関係となり、連絡先も交換している。

 

そして、昨日ジャンヌさんから届いたメッセージには、『今インプ主催の肝試し大会が開催されているので、よかったら友人の方々と一緒に参加してみませんか』と書かれていた。

 

ということで、俺とザックさんは皆に声をかけて、インプ主催の肝試し大会に参加することとなった。来ることになったのは、いつもの学生組のメンバーに、会社員のクラインさん、喫茶店兼バーを運営するエギルさん、シルフ領主館スタッフとなったレコンだった。オバケや怪談が大の苦手なアスナさんは、最初こそ嫌がっていたが、皆が参加するということで「自分だけ仲間外れにされるのは嫌だ」となって、結局参加することに。

 

皆と話をしながら待っていると、黒紫をベースとした服に軽装の金属鎧を身に纏った長い金髪を後ろで三つ編みにまとめた女性がこちらに近づいてきた。

 

「あ、リュウガ君。ザック君」

 

「「ジャンヌさん」」

 

俺とザックさんに声をかけてきた彼女が、インプ領主のジャンヌさんだ。

 

「初めましての方も沢山いますね。初めまして、私は今のインプ領主を務めているジャンヌです。今日は来てくれてありがとうございます」

 

ジャンヌさんは、初めて会ったキリさんたちに軽く自己紹介する。すると、クラインさんはジャンヌさんに近づいて話しかける。

 

何だか嫌な予感しかしないな。

 

「ジャンヌさんと申しましたね。私は女性を守る武人、クラインと言います」

 

俺の予想は見事に的中し、クラインさんはジャンヌさんに紳士的な感じで話す。

 

「私もあなたに会えて光栄です。もしよろしければ、今度お茶でも……」

 

「は、はぁ……」

 

クラインさんに突然のナンパされ、ジャンヌさんも困って苦笑いするしかできずにいた。

 

この様子を見ていた俺たちも、クラインさんに呆れたり、苦笑いしていた。ただ唯一レコンだけは、「流石です」という感じでクラインさんを見ていた。

 

「お前はいい加減にしろ!」

 

カイトさんは見ていられなくなり、クラインさんの後頭部に軽くゲンコツする。殴られたクラインさんは後頭部を手で抑えて、カイトさんを睨み付ける。

 

「何すんだよカイト!せっかくジャンヌさんと話してたのによっ!」

 

「いきなり領主をナンパする奴がいるか」

 

「少しは自重しなさいよ」

 

カイトさんに続くように、リズさんも呆れた顔をしてクラインさんにそう言い放つ。

 

とりあえず、クラインさんの方は放っておき、ジャンヌさんから今回行われる肝試し大会の詳細を聞いた。

 

ルールは、二人一組となって古城の中を進んでゴールにたどり着くというシンプルなものだ。もちろん、肝試しなので途中にオバケに変装している人が待ち伏せ、トラップが仕掛けられているから、ゴールするのは容易ではない。途中でリタイアすることもできるが、ゴールすることができると記念のバッチを貰えるという。

 

俺たちは話し合い、ペアを決めた。話し合いは数分ほどで完了し、俺とリーファ、キリさんとアスナさん、ザックさんとリズさん、オトヤとシリカ、クラインさんとレコン、カイトさんとエギルさんのペアに決まった。女性陣たちは満足な様子で、彼女たちと一緒になった男性陣たちも同じだった。男性同士のペアとなったカイトさんとエギルさんは特に不満そうな様子は一切なかったが、クラインさんとレコンはかなり不満を抱いていた。

 

「くっそ~!オレは男同士のペアだっていうのに、どうしてアイツらは女子と……自分の彼女と組んでいるんだよ!」

 

「クライン、オレもオトヤも別に彼女持ちってわけじゃないんだぜ」

 

「そ、そうですよ!」

 

不平不満を言うクラインさんを何とか宥めようとするザックさんとオトヤだったが……。

 

「黙れぇえええええっ!!」

 

返って逆効果となってしまい、クラインさんは何処かのゲーム会社の2代目社長のように逆切れする。まあ、ザックさんもオトヤも早く付き合えばいいのにっていうくらいまで、リズさんやシリカと関係が進展しているからな。

 

「リ、リーファちゃん、僕とペアになってくれないの!?」

 

「どうして彼氏のリュウ君がいるのに、アンタとペアにならなきゃいけないのよ。いい加減諦めなさい!」

 

「そ、そんなぁ~!」

 

見事にリーファに断られて、ショックを受けるレコン。リーファが俺を選んでくれて嬉しい反面、何だかレコンがちょっと可哀そうにもなって複雑な気分となってしまう。

 

そして、俺たちは入る順番を決めて列に並ぶ。俺たちの中で一番最初に入ることになったのは、オトヤとシリカのペアだった。

 

「何だか怖そうだなぁ……」

 

「ぼ、僕がいるから……だ、大丈夫だよっ!」

 

怖がるシリカに、オトヤは安心させようと声を震わせてそう言う。オトヤもシリカと同様に怖そうにしているのが見てわかる。でも、怖いと言わないところが、オトヤらしいな。

 

その後ろにいるのが、ザックさんとリズさんのペア。

 

「ザック、ビビったりあたしを置いて逃げたりするんじゃないわよ」

 

「誰がするか!リズこそ、驚いて耳元でデカい悲鳴上げるんじゃないぞ」

 

「絶対にそんなことないから安心しなさい」

 

「言ったな。泣いても知らないからな」

 

相変わらず軽口を叩く2人だが、仲はよさそうだな。2人ともああは言っているけど、リズさんはザックさんに抱き着いたり泣きついたりして、ザックさんも何だかんだでリズさんを助けるだろう。

 

「キリト君!絶対にわたしから離れないでねっ!!」

 

「わ、わかったって!ちょっと強く抱き着きすぎじゃないかっ!」

 

アスナさんは本当に怪談やお化けが苦手なんだな。まあ、SAOでホラー系フロアの攻略をサボってしまうほどだったとキリさんが言っていたしな。今回はキリさんもいるから大丈夫だと思うけど、ゴールにたどり着く前にキリさんがアスナさんにKOさせられないか心配だな。

 

すると、キリさんの腕に抱き着くアスナさんを見ていたリーファが、いきなり俺の右腕に抱き着いてきた。

 

「あの、リーファ?」

 

「何だかちょっと怖くなってきちゃって……」

 

「でも、これはちょっと密着しすぎじゃないかな?」

 

右腕に当たる柔らかい感触がどうしても気になってしまい、遠回しに離れるように言う。

 

「えー、何で?あたしたち付き合っているんだし、このくらいいいじゃない。それともリュウ君はあたしに抱き着かれるのは嫌だ?」

 

ワザと小悪魔みたいに笑みを浮かべてそう聞いてくるリーファ。ヤバい、これは可愛すぎるだろ。

 

リーファのことだから、俺の反応を見て楽しんでいるに違いない。だけど、俺もこのままでいかないぞと思い、お返しにリーファをからかってみることにした。

 

「わかった。じゃあ、俺から離れないでね」

 

そう言い、空いている左手でリーファの頭を撫でる。

 

見事に俺のカウンターを喰らったリーファは、頬を赤く染めて黙り込んでしまう。そして、実行した俺自身も何だか恥ずかしくなってリーファと同じようになってしまう。このまま2人だけの世界に入ろうとした時だった。

 

「よくも、僕の目の前でリーファちゃんとイチャイチャして……」

 

突然、後ろから殺気が籠った声がする。恐る恐る後ろをチラッと見てみると、ドス黒いオーラを放って右手にドングリを模した小型のハンマーを持っているレコンがいた。

 

怖くなった俺はすぐに前を向いて後ろを見ないようにする。

 

「クラインさん、後ろから目の前にいるインプにグリドンインパクトを決めてやってもいいですか?」

 

「ああ。リア充は全員敵だからな」

 

クラインさんまでも物騒なことを言う始末だ。お化けよりも後ろの2人が滅茶苦茶怖い。

 

これを見ていたリーファは、俺から離れてレコンの方を見る。

 

「コラ!レコン止めなさい!」

 

「邪魔しないでリーファちゃん!今すぐこのインプにグリドンインパクトを……」

 

リーファは、止めようとしないレコンに、ドス黒いオーラと殺気を放ってじりじりと迫る。しかも、左手には鞘に収まっている長刀が握られていた。

 

「いいから。いい加減止めないと……」

 

そう言いながら、右手で長刀の柄を握り、シュッと長刀を半分だけ抜き取る。そして……。

 

「き・ざ・む・よ?」

 

何処かのネットアイドルみたいに黒い笑みを浮かべて言い放つ。

 

危険を察知したレコンは顔を青ざめ、大人しくなる。

 

「サーセン……」

 

最後にそう言い残し、後ろへと下がる。

 

リーファは一旦長刀を鞘に収め、それを持ったまま唖然としているクラインさんに近づく。

 

「クラインさんも大人しくしないと刻みますよ!」

 

もう一度、鞘から半分ほど長刀を抜き取り、クラインさんの目の前で勢いよく収める。

 

クラインさんも危険を察知し、一気に顔を青ざめる。

 

「す、すいません!レコン、肝試し楽しみだなぁっ!」

 

リーファに頭を下げて謝り、逃げるようにレコンのところへと行く。

 

この一部始終を後ろの方で見ていたカイトさんとエギルさんは呆れていた。

 

そんなこともあったが、とうとう俺とリーファの番となって古城の中へと入っていく。

 

 

 

 

古城の中は、床には赤いカーペットが敷かれ、燭台に立てられているロウソクの小さな火で薄暗く中を照らしている。長い間、人の手が付けられていないこともあって中は荒れており、より一層不気味な雰囲気が伝わってくる。

 

リーファは聴覚が優れているシルフだということもあって、ちょっとした音でも敏感に反応して怖がっている。

 

「今、誰かの悲鳴が聞こえた!」

 

「多分、前にいるペアの人たちの声だから大丈夫だよ」

 

アスナさんほどではないが、リーファも女の子だということもあって、お化けを怖がるのも無理はないだろう。

 

そんなことを思いながら歩いていると、大きな鏡があるところにたどり着いた。

 

ふと鏡を見てみると一瞬黒いドレスを着た髪の長い女性がスーッと通り過ぎていくのが見えた。

 

「何か鏡に映ってなかったような……」

 

「き、気のせいだよ!気のせいに決まってるよ!鏡に映った黒いドレスを着た髪の長い女性なんて絶対見てない!」

 

ーーいや、それは明らかに見たって言っているのと同じなような気がするんだけど……。

 

そうツッコミたくなるも、下手に言ってリーファがパニックになると困るため、心の中に収めておいた。

 

「きっと気のせい……」

 

リーファが言いかけていると、目の前に黒いドレスを着た髪の長い女性がいきなり現れた。

 

「キャァァァァ!!」

 

これにはリーファも驚いて悲鳴を上げて、俺に強く抱き着いてきた。

 

「ちょっとリーファ!痛い痛い!」

 

すぐに黒いドレスを着た髪の長い女性はスッと姿を消し、見えなくなった。もしかすると、隠密魔法で姿を消して待ち伏せしていた人なのだろう。こうやって魔法とかがあるとなると、現実世界にあるお化け屋敷よりも厄介そうだな。

 

「いなくなったよ」

 

「よかった……」

 

なんとかリーファを落ち着かせ、先に進もうとした時だった。突然、前方に小さな白い煙がポンッと出る。

 

「今度は何っ!?」

 

不安そうにするリーファ。だが、煙の中から現れたものを見て俺もリーファも目を丸くした。

 

「もう俺様の出番か。全く人使いが荒いぜ」

 

現れて1人で愚痴っているのは、オレンジ色の体に白いマントを羽織った大きな目玉の頭が特徴の1匹の小さいお化けだった。何だかてるてる坊主にも見えると言ってもいい。

 

「な、何だこれは……」

 

「そこの青っぽい奴!俺様のことを『これ』って言うんじゃねえよ!初対面で失礼な奴だな~」

 

「俺のことを青っぽい奴とか言っている奴に言われたくないんだけど……。ていうか、誰?」

 

「俺様の名前はユルセン。と~ってもこわ~いオバケなんだぞ~」

 

ユルセンとか名乗るお化けは、怖いお化けだと自負する。だが、俺たちには全くそうは思えなかった。

 

「いや、怖いというよりも……」

 

「むしろ可愛いオバケだね」

 

「か、可愛いっ!?そう言われると照れるじゃないか~」

 

リーファの「可愛い」という一言にユルセンはデレデレした様子を見せる。なんか、女の子に弱い小生意気で調子に乗りやすい奴だな。

 

「おっと、忘れるところだった。お前たちに言っておくけど、本当の恐怖はここからだぞ~。じゃ、俺様はこれで」

 

そう言い残し、ユルセンは白い煙に包まれて消えていなくなってしまう。

 

「何だか今のはあまり怖くなかったね」

 

「ああ」

 

先に進もうとした途端、後ろから急に誰かが声をかけてきた。

 

「おい、映司。こんなところで何してる?」

 

声がした方に顔を向けると、赤い怪人の右腕だけが宙に浮いているのが目に飛び込んできた。

 

「「………………」」

 

「うわぁぁ!!」「キャァァ!!」

 

俺はリーファと一緒に驚き、その拍子に右腕だけの化け物を強く払いのける。

 

「いってぇなぁ!!おい、エージィィィィ!!何しやがる!!」

 

「俺、映司って人じゃないからっ!!」

 

怒った右腕は俺の胸倉を掴んできた。

 

「あっ?お前、よく見たら映司じゃないな。人違いだ」

 

そう言って俺を話すと何処かに行ってしまう。

 

「さっきからある意味凄いものばかり登場しているな」

 

「うん。更に今みたいなものが登場したりしてね」

 

「ハハハハ。そうかもな」

 

今度こそ、俺たちは先へと進むことにした。

 

途中、長い廊下が続いているところでは両脇に置いてある甲冑鎧がいきなり動き出し、書斎では本がいきなり飛んで来るというなどのトラップがいくつもあった。更には、何人ものプレイヤーたちが待ち伏せ、俺たちが来ると驚かせてきた。

 

進み続けている内にたどり着いたのは1つの部屋だった。その部屋には、髪の毛がない不気味な人形がいくつもあり、中には変身ポーズみたいなことをしているものや太い眉毛が付いたものもあった。しかも、タキシードやTシャツといった着替えまでもが。

 

「この部屋何なの?」

 

「同じ人形がいくつもあるな……」

 

恐る恐る部屋の中を進む。突如、物陰から黒いスーツを着て丸メガネをかけた男性が、この部屋に沢山あるのと同じ人形を1体突き出して見せてきた。

 

「イヤァァァァ!!」

 

俺はビクッとした程度だったが、リーファは悲鳴をあげて拳を振う。すると、拳は人形に命中してメガネの男性の手から落ちてしまう。

 

「あ"あ"ああああぁぁぁ!!」

 

人形が手から離れたことに気付いたメガネの男性は、パニックになって激しく取り乱す。何か危険な感じしかしなくて、メガネの男性から逃げようとする。

 

「と、とりあえず逃げよう!」

 

「う、うん!」

 

リーファの手を引き、急いで部屋から出る。

 

「無いよ!?無いよ!?あっ、あったよ!!」

 

メガネの男性は人形を慌てながらも拾い、人形を突き出して追掛けてきた。

 

「うわぁっ!追掛けてきたぁぁっ!!」

 

「キャァァァァ!!」

 

あまりにも色々な意味で怖い光景で、俺もリーファも悲鳴を上げて全速力で廊下をダッシュする。

 

「ドクターどこ行くの!?戻っておいでっ!!」

 

すると、別の男性が慌てた様子で叫ぶ声がした瞬間、人形を持って追いかけてきたメガネの男性は、車がUターンするように方向転換して元々いたところに戻っていく。

 

「ぜぇ……ぜぇ……なんとか逃げ切った……」

 

「今のは本当に怖かったよ……」

 

全速力で逃げたこともあって、俺たちは息を切らして地面に座り込んでいた。呼吸を整えてから顔を上げてみると、目の前に牢屋があることに気が付いた。

 

「これって牢屋か?」

 

「そうみたいだね……」

 

辺りには燭台に立てられたロウソクが1本しかなく、他のところと比べて暗くて視界が悪い。しかし、インプである俺は暗視能力が優れていることもあって、特に問題はなかった。

 

牢屋の中を目を凝らして見てみると、1人の人影らしい姿を捉えた。

 

「牢屋の中に誰かいる……」

 

「ええええっ!?リュウ君確かめてよっ!」

 

リーファはそれを聞いた途端、俺の後ろに隠れて背中を押し始めた。

 

「ちょっ!リーファ、何するんだよっ!」

 

「リュウ君、確かめてよ!」

 

「わかったから、押さないで!」

 

リーファに言われるがまま、恐る恐る牢屋に近づいてみる。牢屋の中には、俺に背を向けた男性が1人いて、何かぶつぶつと呟いているのが見えた。耳を傾けて何を言っているのか、聞き取る。

 

「私は、不滅だ。私は、不滅だ……」

 

牢屋にいた男性は、壊れたレコーダーのように延々とそう呟いていた。試しに、1分ほど黙って待ってみるが、相変わらず「私は不滅だ」としか呟いていなかった。

 

「これって無視してもいいのかな?」

 

「特に仕掛けらしいものは見当たらないから、大丈夫だろう」

 

ここを後にしようと場を離れようとした時だった。突如、牢屋にいた男性が俯いたまま鉄格子のところまできた。

 

俺たちは何なのかと思い、男性の方を見る。

 

「私は……不滅だぁあああああ!!」

 

「うわっ!」「きゃあっ!」

 

いきなり先ほどとは異なってハイテンションで叫び、俺たちは思わずビクッとする。

 

「何なの、この人?」

 

「早くここから出よう」

 

リーファの手を引いて、牢屋の前から急いで離れていく。

 

それから10分ほど、古城の中を歩き続けている内に、ついにゴールへと辿り着いた。

 

すでに俺たちより先に入ったキリさんたちは出て待っていた。

 

そして、俺たちより後に入ったカイトさんたちの帰りを待つことにした。彼らが来るまで間、皆にどうだったか聞いてみると、まちまちだが皆も怖い思いや大変な思いをしたらしい。それでも皆揃って楽しかったと言っていた。

 

待ち続けること15分後。クラインさんとレコンのペア、更にはカイトさんとエギルさんのペアも出てきて、全員揃った後、俺たちはジャンヌさんから記念のバッチを受け取った。

 

 

 

いきなり参加することになった肝試し大会だったが、こうして皆でイベントに参加するのも面白かった。また皆でイベントに参加するのも悪くないと思った。




今回は、仮面ライダーシリーズから、ゴーストのユルセン、オーズのアンクとドクター真木、エグゼイドの檀黎斗がほんの僅かですが登場しました。肝試し回なのに何をやっていたんだろうと、執筆を終えてから思いました(笑)

以前の番外編でザックの話に出てきたインプ領主のジャンヌさんが正式に登場しました。出番は少ないですが、マザーズロザリオ編などに登場させたいなと思っています。余談ですが、彼女にはそっくりな双子の妹と年の離れた妹がいる設定です。

相変わらずクラインは女好きと非リア充を暴走させ、レコンはリュウ君を妬むという。そして、リーファは鉄板ネタとなっている美空の「刻むよ」を披露。今回はクマテレビの時のものをモデルにしました。美空の「刻むよ」ネタは、7つのベストマッチやプライムローグのものがまだ残っているので、そちらもいつかやりたいなと思っています(笑)

次回もよろしくお願いします。

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