ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》 作:グレイブブレイド
今回はリュウ君とリーファの甘々回ですが、ちょっとR15的なところもありますので、ご注意ください。
「ここかな、アルゴさんが言っていた場所は」
「座標もここであっているから間違いない」
洞窟ダンジョンとなると普通はトラップがあってモンスターの住処となっていているが、ここは違う。この洞窟ダンジョンにはトラップどころかモンスターすらいない。あるのは木製の小屋と竹で作られた塀。洞窟内も照明があって明るい状態となっている。
「まさかこんなところに温泉があるなんて思ってもいなかったよ」
「ALOの運営者の中に温泉が好きな人でもいたりしてな」
そう、俺とリーファがやって来たのは温泉だ。
ここを知ったのはついさっきのことだった。
いつものように皆と一緒に狩りやクエストをやった後、俺とリーファはイグドラシル・シティにあるカフェでお茶をすることにした。その最中、たまたまアルゴさんがやって来て、俺たちに最近、インプ領付近にある隠しダンジョンで発見した秘湯のことを教えてくれた。アルゴさんが発見した秘湯がある隠しダンジョンは見つかりにくいところにあって、そこを知っている人はまだいないらしい。
このことを知った俺とリーファは早速行こうと決め、ここまでやって来たのだった。
「温泉ってなると現実世界では疲労回復や美容効果とかあるけど、ALOの温泉だとやっぱりHPや状態異常回復とかかな」
「あたしは、現実世界の温泉みたいに美容効果もあった方が嬉しいかなぁ」
「仮想世界で美容効果があるかなぁ…まあ、どんな効果があるにしろ、近頃ALOも少しずつ寒くなってきたから、温泉で温まれるのはいいよな」
「そうだね」
今は10月下旬。あれだけ暑かった夏もすっかり終わり、季節は秋へとなって紅葉が見頃のシーズン真っ最中だ。そして、現実世界と季節が同機しているALOもすっかり季節は秋へと移り変わっていた。
どちらの世界も日を追うごとに肌寒くなってきて、近頃は夏の暑さが懐かしく思えるほどだ。そのため、こうやって温泉に浸かって温まるのも悪くない。
「とにかく早く温泉に入ってみよっか」
「そうだな」
洞窟内にある小屋に入ると旅館の女将さんらしく和服を着た女性のNPCが迎えてくれ、その人に入場料を払うとタオルや桶といった温泉に入るのに必要な道具を一式渡してきた。そして、俺たちを脱衣所の前まで案内するのだった。
目の前には二つの垂れ幕があり、1つは青い垂れ幕に白い字で男と、もう1つは赤い垂れ幕に白い字で女と書かれていた。
「じゃあ、後でね」
「うん。もしもリュウ君の方が早かったらここで待ってて」
「ああ」
軽く会話を交わし、それぞれ脱衣所へと向かう。
「それにしてもリーファと2人きりで温泉に来られるなんて思ってもいなかったな」
メニューウインドウを操作し、いつもの服装から腰にタオルを巻いた状態へと変え、温泉に入るスタイルとなる。
「リーファはもう入ったのかな……」
一瞬、タオル姿のリーファを想像してしまう。
「何考えてんだ俺は……」
いくら自分の彼女だからってあんな姿を想像するなんて良くないよな……。今まで水着姿や事故で下着姿は何回かあるんだけどな……ってまた俺は何考えてんだよ。
健全な男子高校生が想像してしまうことに葛藤し、なんとか心を落ち着かせたところで浴場へと向かった。
「湯気が凄いな……」
浴場は湯気が立っていて視界があまりよくない状態となっている。辺りを見渡してみると湯気の向こうに人影らしいものが見えた。
「あれ?先客でもいるのかな?」
だけど、アルゴさんの話ではここを知っているプレイヤーは俺たちの他にいないはずだ。温泉に動物が入っているパターンがあるけど、ここは洞窟の中だからそれはあり得ない。
気になった俺は、人影らしきものが映った方へと歩いていく。近づいてみると人影がはっきりと見え、その瞬間俺はフリーズしてしまう。
人影の正体はプレイヤーであったが、男性プレイヤーではない。
金色の長い髪をポニーテールにし、胸の辺りには2つの膨らみがあり、胸から太ももの辺りまで白いタオルで体を覆っている。明らかに女性プレイヤー……っていうか、俺のよく知っている人だ。
「へ?リーファ?」
「りゅ、リュウ君っ!?」
俺だけでなく、リーファもこちらを見て驚いてフリーズする。そして、リーファは今の自分の姿を見ると一気に頬を赤く染める。
「きゃああぁぁぁぁぁっ!?」
悲鳴を上げ、持っていた桶を俺の顔面に勢いよく投げてきた。
「グハッ!!」
リーファが投げた桶が顔面にクリティカルヒット。俺はこの場へと倒れ込んだ。
「イテテテテ……」
鼻に手を当てなんとか起き上がろうとする。ゲームの中のため、本当の痛みはないが衝撃はある。さっきのリーファが投げてきた桶は投剣スキル級並みに強力なものだった。
前の方を見るとリーファが顔を真っ赤にして俺を睨んでいた。
「女湯に入ってくるなんて!リュウ君のエッチっ!!」
「女湯っ!?でも、俺たち分かれて脱衣所に入ったよな!だったら何でリーファがここにいるんだ!? 」
「あたしだって知らないよっ!!」
「「っ!?」」
ふと俺たちが目に止まったのは浴場にある木製の看板。それには『ここは混浴です』と書かれていた。
「「ええええええええっ!?混浴っ!?」」
看板を見た瞬間、俺とリーファは同時に声をあげて驚いた。
「ここって混浴だったのかっ!?」
「だけどアルゴさん、一言もそんなこと言ってなかったよ!」
このとき、俺はあることを忘れていたことに気が付く。アルゴさんはよく俺とリーファのことを弄って楽しんでいる。つまり、アルゴさんがここが混浴だっていうことを隠していてもおかしくない。
――謀ったな、アルゴさん!!
内心でそう叫び、悪巧みをしてニャハハと笑っているアルゴさんを思い浮かべる。腹が立った俺は、今度会った時に必ず文句を言ってやろうと決心した。
「混浴とわかった以上、付き合っているとは言っても一緒に入るのはマズイよな……。俺は後でいいからリーファが先に入ってきていいよ」
「い、一緒でいいよ…」
「え……?」
「他の男の人がいるんだったら嫌だけど……、りゅ……リュウ君と2人きりだったら……い、一緒でもいいかな……。そ、そうした方が、時間とかもあまりかからないし……」
「で、でも……」
「リュウ君はあたしとじゃ嫌?」
リーファは頬を赤く染めて恥ずかしそうにして俺の方を見る。そんなリーファが可愛くてドキッとしてしまう。いつも思っているけど、これは絶対に反則だろ。
結局、リーファの可愛さに圧倒されてしまい、一緒に入ることとなった。恥ずかしさもあったが、俺も男なので内心リーファと一緒に温泉に入ることになって喜んでいたりもした。だが……。
「「……………………」」
「りゅ、リュウ君。い、いい湯だね……」
「あ、ああ……」
広い湯船の中、俺たちは隣り合ってお湯に浸かっている。しかし、恥ずかしさのあまり、俺たちは無言になってしまう。たまにどちらかが話しかけたりもするが、会話があまり長続きしない。
広い湯船だから離れて入ればいいのではないかと思うが、下手に離れて入るとリーファに自分は嫌われているんじゃないのかと勘違いさせてしまうかもしれない。
リーファ/スグとは付き合って5か月ほど経つが、リーファ/スグへの想いは今でも付き合った時のまま…いやそれ以上に好きになっている。
たまにリーファの方をチラッと見るが、その時にタオルの隙間から覗く谷間が視界に入ってしまう。リアルでも言えるが、スグ/リーファは俺の周りにいる女性陣の中で胸は一番大きくてスタイルも抜群だ。間違いなく、大抵の男たちを釘付けにできるだろう。俺もその1人だが……。
それもあってか、俺の理性が段々危なくなってきた。
俺は皆(特にリズさん)からよく草食系だとか言われてからかわれている。だけど、俺だって男だからそういう欲くらいある。今はまだ大丈夫だが、その内リーファのことが欲しいという気持ちを抑えられなくなるかもしれない。
「リュウ君」
「うわっ!」
こんなことを考えている最中、突然リーファに話しかけられ、驚いてしまう。
「ど、どうしたのっ!?いきなり声なんか上げて……」
「ちょ、ちょっと考え事をしている時に急に話しかけられたから驚いちゃって……」
「そうなんだ。何考えていたの?」
「べ、別に!大したことないことだから気にしないでくれ!」
「ふーん。まあ、いいや。それよりも他にも色々お風呂があるから、行ってみない?」
リーファの言う通り、ここには『柚子湯』、『炭酸風呂』、『電気風呂』など様々なお風呂がある。現実世界にあるスパリゾート以上の充実した設備だ。
「ああ、そうだな。じゃあ、まず最初は何処に行ってみる?」
「果物が浮かんでいるお風呂に興味あるから、柚子湯に入ってみたいな」
「そうなると、最初は柚子湯に決まりだな」
俺たちは今入っているお風呂から出て、柚子湯へと向かった。名前の通り、お湯の上には大量の柚子が浮かび、柚子の香りが漂っていた。その後も様々なお風呂を回った。どのお風呂も気持ちよくて俺たちは思う存分リフレッシュする。
一通り回った後、俺たちは一番最初に入った普通のお風呂に入っていた。そんなことを考えている中、リーファが俺の顔をじっと見ていることに気が付く。
「俺の顔なんかじっと見てどうかしたんだ?」
「やっぱりリュウ君はカッコいいなって思って」
リーファの言葉に頬が熱くなるのが伝わる。
「い、いきなり何!?」
「何って本当のこと言っただけだよ。まあ、リュウ君って昔からイケメンだったからね」
「あまり買いかぶらないでくれよ。そんなこと言ったらリーファは可愛いよ。もちろんスグの方も。俺なんかいつもリーファとスグ、どっちの時でも可愛くてドキドキしてるしな」
「か、可愛いって、リュウ君……」
今度は、俺の言葉にリーファの頬が赤く染まる。さっきのお返しにというつもりで言ったが、予想以上に効果が強かったみたいだ。そして、黙り込んでいたリーファの口が開いた。
「あ、あたしだってリュウ君にドキドキしているんだからね。リュウ君って草食系だからあまり積極的になって来ないけど、たまに積極的になるときは特に……」
頬を少し赤く染めて恥ずかしそうに言うリーファ。
俺はそんなリーファにドキッとしてしまう。そして、リーファに魅了された状態になったためか、無意識にリーファの顎にそっと左手をやり、顎をクイっと軽く持ち上げる。いわゆる顎クイだ。
「リーファ……」
更にリーファに顔を近づける。
「え?りゅ、リュウ君っ!?」
リーファは頬を赤く染め、身動きが取れなくなってしまう。俺はそんなことお構いなしにそっとリーファの唇に自分の唇を重ねた。その直後、身体を一瞬ビクッとさせるリーファだったが、抵抗することなく俺のキスを黙って受け入れてくれた。10秒ほどして唇を離した。
すっかりリーファは頬を赤く染めた状態のまま、ボーっとして俺を見ていた。ここで俺は我に返り、先ほど自分がしたことを思い出し、顔が熱くなる。
そして、最初の時のように俺たちは沈黙してしまう。
「のぼせてきたからそろそろ出ようか……」
「うん……」
ぎこちない会話をし、温泉を出ることにした。
あの後、今日はもう遅いということもあって秘湯から一番近いところにある小さな町の宿で寝落ちしてログアウトすることになった。しかし、先ほどまでの出来事が頭から離れず、中々眠気が来ないでいた。
時刻はとっくに午前1時を過ぎている。そのため、辺りは静寂に包まれ、部屋の中は窓の外から月の光が差し込んで青白く照らされる。
いっそのこと、普通にログアウトしようかどうかベッドに横になって考えていると、部屋のドアをノックする音がする。
「リュウ君、いる?」
扉の向こうから聞こえてきたのはリーファの声だった。
「いるよ」
「じゃあ、入っていいかな?」
「いいよ。今開けるからちょっと待ってて」
扉を開け、リーファを中にいれる。
「まだログアウトしてなかったの?」
「中々寝落ちできなくてな。リーファは?」
「あたしもリュウ君と同じかな。リュウ君はもうログアウトしたかなって確かめてみたら、
まだログイン状態になっていたからここに来たんだよ」
「そうか。まあ、とりあえず入って」
俺たちはベッドに腰掛け、話をすることにした。ちなみに星空を見ながら話をしようということで、部屋の中は灯りを付けてない。
「温泉気持ちよかったね」
「そうだな。最近、リーファと2人きりで過ごすことがあまりなかったから本当によかったよ」
「あたしもリュウ君と2人きりで過ごせてよかったよ」
話の内容は今日の出来事などいつも通りリーファと話すようなものだった。途中リーファが俺に密着してきて、リーファの柔らかいものが当たる感触が伝わってくる。俺は必死に理性を保ち、平然でいるようにして話を続ける。しかし、温泉での出来事もあって理性を保ち続けるのに限界が近づいていた。
「リュウ君ってあたしにドキドキしていたんだよね……」
「あ、ああ……。実を言うと温泉に入っていた時から、リーファのことが好きだとかリーファのことが欲しいという気持ちが抑えられなくなってしまって……あっ!」
ついうっかり思っていたことをリーファに話してしまう。なんてことを言ってしまったんだ俺は……。ヤバい、これは完全にリーファにエッチな奴だと思われたに違いない。セーブポイントからやり直せたら本当にやり直したい。そんなことを思いながら後悔している中、リーファが頬を赤く染めて話しかけてきた。
「りゅ、リュウ君っ!あたし、そんなこと気にしてないからっ!むしろ、あたしもリュウ君と同じようなことを考えて……。オプションメニューの一番下の方にあったあるコードを解除しようかと……」
その言葉に驚きを隠せなかった。
「り、リーファもっ!?っていうかリーファってそのこと知っていたのか?」
リーファは無言のまま頷いて答える。
「リーファ……スグは俺とで後悔しない?」
リーファの耳にしか聞こえないぐらいの小さい声で言う。
「どうして好きな男の子とするのを後悔しなくちゃいけないの?あたし、リュウ君とならいいよ……」
顔を赤らめながらも俺たちは沈黙して見つめ合い、どちらからともなく唇を重ねた。いつものように唇を重ねるだけの軽めのキスを終えて唇を離す。
普段ならこの位のキスを1,2回ほどしたくらいで、俺たちは顔を真っ赤にしてお互い顔を合わせられなくなってしまう。だけど、今回は物足りなく感じ、俺はリーファを抱き寄せてもう1度唇を重ねた。
「んんっ!?」
先ほどとは違い、リーファが舌で唇をこじ開け、口の中に舌を入れてきたので、俺もお返しにと自分の舌をリーファの舌と絡ませる。
「んっ、んぅ」
リーファも初めは驚いていたが、嫌がることもなく、すぐに俺を受け入れてくれた。
お互いに相手を求めるように舌を絡ませて唾液を交換する。そのため、キス音と水音が部屋中に響く。
途中で息が続かなくなると一旦唇を離してもう一度重ねる。これを2,3回繰り返した。ディープキスを終え、ゆっくりと唇を離す。終えた時にはすでに俺たちの身体は火照っていた。
「「はぁ……はぁ……」」
リーファ/スグとディープキスをしたのは今回が初めてだ。まさか、これだけでもこんなに身体が熱くなるとは思いもしなかった。
リーファは頬を赤く染め、トロンとした目で俺の顔を間近で見つめている。俺の顔も絶対に赤くなっているに違いない。
今のリーファを見て、俺の理性は完璧に崩壊した。もう自分自身を抑えることは出来なさそうだ。
「リーファ、俺……これだけじゃ満たされないよ……」
「あたしも……。だから…来て…リュウ君…」
ついに俺たちはオプションメニューの一番下の方にあるコードを解除した。完了すると、俺はゆっくりとリーファをベッドに押し倒した。
翌日、いつものようにキリさんたちとALOで狩りやクエストをやることになった。だが……。
「「……………………」」
俺とリーファは顔を合わせるなり、頬を赤く染めて顔をそらしていた。皆は不思議そうにして俺とリーファのことを見ていた。
「何だお前たち、ケンカでもしたのか?」
「ち、違いますよ!」
「何言っているの、お兄ちゃんっ!」
「いや、だってよ。今日のお前たち顔を合わせようとしないからさ」
確かに俺とリーファが顔を合わせようとしなかったら、他の人から見ればケンカでもしたかのように見えるだろう。
しかし実際のところ、昨日の夜の俺たちはいつも以上にラブラブだった。顔を合わせられなくなっているのは、その時のことが恥ずかしいからだ。何があったのかは俺とリーファだけの秘密だ。
気づいた方もいるかもしれませんが、今回の話は旧版で最後に投稿した話を少し修正したものです。旧版ではGGO編とキャリバー編の間に起こったことになっていますが、リメイク版では10月下旬の出来事になっています。
最後辺りのところは、年齢制限で引っかかるため詳細を曖昧にさせていただきました。一応、今回の話の最後のところの詳細は《R18版》の1話目に載っています。もしも興味がある方はそちらの方をご覧ください。
急に話変わりますけど、前回から2か月ほど時間が経過していますね。実は夏休み中にの時期に、今後の話に向けてExtraEditionにあったSAO編とALO編の回想を別の形でやろうとしましたが、会話文が全くなくて地の文ばかりになってしまうなどの問題があって見落としてさせていただきました。ですが、私が気が向いたり、皆さんからぜひやって欲しいという意見がいくつも寄せられた時には、特別編としてやりたいなと考えております。
本当はもう少しこの章をやりたいのですが、次回で2,5章にあたるこの章も終了とする予定です。