ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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忙しいだけじゃなくて若干スランプになってしまい投稿が予定よりも遅くなってしまいました。スランプ状態から復帰で書いたため、変なところとかあるかもしれません。

ここ最近は心身ともに疲れることが多くて大変な思いをしました。その中で、テレビではジオウや進撃の巨人、YouTubeではキバとオーズとドラゴンナイト(龍騎のアメリカ版)を見て日々の疲れを癒してます。ジオウは、お気に入りキャラのかがみんと地獄兄弟が本人出演でテンションが上がっています。ただ影山に至ってはどうしたんだと思うほど見た目が変わってましたね(笑)。そして、グリスのVシネマの情報も明らかに。こちらも今から楽しみで仕方がないです。

今回は甘々成分は一切なく、シリアスメインとなっています。それではどうぞ。


第10話 蘇るNightmare

あの時の俺は、力を求めていた。どんなに遠くても届く俺の腕、力を……。そのためだったら、俺はどんな手段も使おうとした。例え、誰かの命を奪うことになっても、自分の命を捨てることになろうとも……。

 

 

 

2021年12月20日 第45層・巨大樹の森

 

高さが15~20メートル近くもある巨大な木によって形成されている森で、俺は1人で数体の5メートルほどある巨人型のモンスターと交戦していた。

 

1体の巨人が虫を叩き潰すかのように俺に目掛けて手を地面に叩きつけて来る。

 

俺はギリギリのところで横へと回避。すぐに隙の少ない3連撃の片手剣ソードスキル《シャープネイル》を巨人に叩き込む。喰らった巨人の腹には縦3本の獣の爪の跡が付き、

数秒後にはポリゴン片となって消滅する。

 

同時に少し遅れてやって来た2体の内1体には、投剣用のピックを顔に投げつけて怯ませる。そして、もう1体の方には、重3連撃攻撃の片手剣ソードスキル《サベージ・フルクラム》を喰らわせる。大型モンスターに有効な技で、3分の1ほど残っていたHPを全部削り取る。

 

ソードスキル使用後の硬直状態が解けたところで、顔にピックを喰らって苦痛な声を上げている巨人にゆっくりと近づく。

 

「大人しくしていろ。すぐに楽にしてやるから…」

 

そう言い残したところで、片手剣ソードスキル単発重攻撃の技《ヴォーパルストライク》を巨人の首元に叩き込む。喰らった巨人は断末魔を上げ、ポリゴン片となって消滅した。

 

《ヴォーパルストライク》は片手剣スキルの熟練度が950に達すると使用可能となる技で、俺も先日からやっと使用できるようになった。両手の重槍のスキル並の威力があり、リーチも刀身の2倍もある使い勝手のいい技で、一気にトドメを刺すにはちょうどいいものだ。

 

 

「まあ、こんなところか……」

 

最後の1体を倒したところで、左手に持つ片刃状の片手剣を右腰に吊るしている鞘へと収める。そして、ポーチから回復ポーションを1つ取り出し、栓を開けて中に入っている液体を飲む。口の中には酸味の強いレモンジュースのような味が広がり、全部飲み終えたところで空になった小瓶は消滅する。

 

HPが回復したのを確認したところで、街へと戻った。

 

 

 

 

30分ほど歩き続け、第45層の主街区へと戻ってきた。そして、街の裏通りにある少ない小さなバーへと向かった。店内に入るために扉を開けると、扉に付いているドアベルがカランと鳴る。

 

店内には、NPCのマスターがカクテルを作っており、カウンター席には鼠色のフードを被ったプレイヤーが1人座っていた。俺はそのプレイヤーの隣の席へと腰を下ろす。

 

「おお来たカ。待っていたゾ」

 

「待たせてすいません、アルゴさん」

 

鼠色のフードを被ったプレイヤーに謝り、NPCのマスターに飲み物を注文する。数分ほどで水色の液体が入ったグラスが俺の目の前に置かれる。一見するとカクテルに見えるが、これはノンアルコールの飲み物だ。それを一口飲み、グラスを置いたところで、アルゴさんが話しかけてきた。

 

「その様子だと、また随分と危険なレベル上げをしてきたのカ?」

 

「ええ。今の俺には力が必要ですからね……。あの時だって、俺にもっと力があれば……」

 

俺は胸ポケットから、3枚の金縁のメダルを取り出す。メダルは赤、黄色、緑のものが1枚ずつ。赤いメダルにはタカ、黄色のメダルにはトラ、緑のメダルにはバッタが金色で描かれている。これはファーランさんとミラと一緒に手に入れた《王のメダル》。2人との絆の証でもある。

 

だけど、2人は赤い目の巨人に喰われそうになった俺を助けて死んだ。俺は2人を助けようと手を伸ばしたが、それは届くことはなかった。

 

1ヶ月半経った今でも、2人が死んだ時のことが頭から離れられずにいた。

 

ソロプレイヤーとなった俺は、攻略組から離脱。それでもレベル上げを止めようとはせず、いつも高レベルのダンジョンに潜ってはモンスターたちを狩り続けていた。このおかげもあって俺のレベルは、この間だけでも急速に上昇し、攻略組の中でもハイレベルに匹敵するくらいまでとなった。

 

「攻略組でも中位くらいだったお前が、こんなにも早くレベルを上げるなんて異常と言ってもいいくらいだゾ。もしかして、()()を狙っているからカ?」

 

本当のことを言われ、俺は黙り込む。

 

2021年12月24日。SAOで2度目のクリスマスを迎えるこの日、《背教者ニコラス》という名のクリスマスイベントボスが出現すると言われている。

 

奴を倒すことで、大量の財宝やコルが手に入り、その中には死んだプレイヤーを生き返らせることができる《蘇生アイテム》もあるらしい。しかし、蘇生アイテムはガセネタじゃないのかと多くのプレイヤーに言われており、本当に存在するかどうかわからない。それでも今の俺に残された道は、 蘇生アイテムを手に入れるしか方法はなかった。

 

「この様子だと図星だったようだナ。だけど、クリスマスイベント関連のことで新しい情報は何も入ってないゾ」

 

「いえ。今回はクリスマスイベント関連の情報を買いに来たわけじゃないんです」

 

「クリスマスイベント関連の情報じゃなかったら、何の情報ダ?」

 

「第49層にいる隠しボス《邪竜ファヴニール》のことですよ」

 

ファヴニールは、北欧神話に登場するドラゴンのことだ。元々はドワーフで、財宝を独り占めするためにドラゴンへと変身。強固な鱗と毒の吐息を持つ邪竜だったが、ジークフリートまたはシグルドに倒された。そして、ジークフリートやシグルドはファヴニールの血を浴びて不死の身体を手に入れたのだった。

 

ここSAOにもファヴニールが存在するらしい。でも、NPCが噂しているだけで、実際にファヴニールを見たプレイヤーはいない。

 

「ファヴニールのことカ。こっちもまだ有力な情報はないゾ。まだ誰もイベントの起動条件を満たしてないらしいからナ。せいぜいわかっているのは、今の最前線……第49層のサブダンジョンにいるかもしれないってことダ」

 

「そうですか……」

 

「あと、今日妙な噂を聞いてナ」

 

「今日妙な噂?」

 

「ファヴニールを倒したジークフリートやシグルドは、ファヴニールの血を浴びて不死の身体を手に入れたってなっているダロ」

 

「はい」

 

「流石に、この世界で不死の身体を手に入れるのは無理だが、ファヴニールを倒すことで何か強大な力を手に入れられるかもしれないという内容ダ。まあ、これは不確定だから本当かどうかわからないけどナ……」

 

「なるほど……」

 

俺はそう呟き、グラスに入っている飲み物を飲む。

 

「まあでも、行って確かめてみる価値はありそうですね」

 

「おいおい。まさか、 背教者ニコラスだけじゃなくてファヴニールも狙うつもりカ?」

 

「ええ、もちろん」

 

そう言った途端、アルゴさんは血相を変えて言ってきた。

 

「悪いことは言わない。もしもファヴニールを見つけても戦うナ。いくら赤い目の巨人を1人で倒したからって言っても、ファヴニールクラスのモンスターとなると高ステータスに設定されているはずダ」

 

「でしょうね。でも、ファヴニールを倒させないようじゃ、背教者ニコラスを倒すことはできない。さっきも言いましたけど、今の俺にはもっと力が必要なんです」

 

最後にそう言い残し、グラスの中に残っていた飲み物を全て飲み干す。そして、席を立ち、会計を済ませる。

 

店から出ようとした時、アルゴさんは俺に何か言いたそうな様子だったが、俺は特に気に留めることなく、この場を後にする。

 

 

 

 

 

 

翌日、俺は第49層のサブダンジョンへと来ていた。古代遺跡のような構造となっており、通路の両脇に等間隔に設置されている松明の炎が内部を薄暗く照らしていた。

 

遺跡内には、武器を持ったリザードマン系のモンスターが出現し、すでに何回も戦闘を繰り広げていた。やはり最前線の層にあるサブダンジョンだということもあり、モンスターのステータスも高めとなっている。だが、攻略組から離脱したとはいえ、しっかりレベリングをしていた俺には敵ではなかった。

 

しかし、ファヴニールは未だに発見できていない。NPCが噂しているだけで、実際に見たプレイヤーが誰もいないから、簡単に見つけられないのは当たり前だろう。

 

更に1時間ほどが経過し、遺跡の奥へと進み続けていた。奥に進むにつれて生息するモンスターのステータスは上がっていく。途中、10体近くのモンスターが一度に出てきたこともあったが、俺はそれを突破。ついに遺跡の奥へと進むこと最深部のエリアへと到達した。

 

「ここも特に変わりはないな……」

 

現在俺がいるのは、最深部にある翼竜の壁画が描かれてある小部屋だ。部屋の中には、宝箱はなく、モンスターが出てくる気配もない。

 

何か仕掛けがないか部屋の中を確かめる。そんな中、翼竜が描かれている壁画へと手を触れた途端、壁画が青白く光りだした。

 

「な、何だっ!?」

 

放たれた光は薄暗かったを明るく照らし、俺は眩しさのあまり一瞬目を閉じる。光が消えて目を覚ますと、先ほどまで翼竜が描かれている壁画があったところには奥へと続く通路があった。

 

俺は何かに導かれるかのように通路へと足を進める。

 

通路を抜けて出たのは迷宮区のボス部屋のように広い部屋だった。そして、部屋に入った途端、端にあったいくつもの燭台に次々と青白い炎が灯っていく。

 

そして、前方に巨大な何かがあることに気が付いた。

 

巨大な何かは全身を黒い鱗に覆われており、手足には鋭利な爪がある。背中には翼竜の翼が2枚生えており、胴体からは長い首が伸びている。その先にある頭部には2本の角が生え、俺を睨みつける金色の瞳、巨大な岩さえも噛み砕いてしまいそうな牙がある。その全体を簡単に言ってしまえば、巨大な翼竜の姿そのものだ。

 

巨大な翼竜が雄たけびを上げた瞬間、4本のHPゲージが出現する。

 

あまりの迫力に、身体の内側から湧き上がる恐怖心を抑えることができなくなる。しかし、表示されたカーソルの文字を見たところで、ついに今回のお目当ての奴と対面したことがわかって冷静さを取り戻す。

 

「ついに見つけたぞ。 邪竜ファヴニール」

 

そう言い、左手で右腰にある鞘から剣を抜き取る。

 

流石にジークフリートのバルムンクやシグルドのグラムのような剣じゃないが、モンスタードロップで手に入る片手剣ではそれなりに性能がいいものだ。

 

「お前を倒して強大な力を頂こうか」

 

そう言い残し、剣を片手に地面を蹴った。

 

ファヴニールは左側の前足で俺を叩き潰そうと振り下ろしてきた。俺はギリギリのところで横に回避する。

 

直後、大きな衝撃音と地響きが伝わる。ファヴニールが前足を振り下ろしたところを見ると、地面が陥没していた。

 

「足を振り下ろしただけでもあんなに威力があるのかよ」

 

これにゾッとするも、俺はファヴニールの腹に斬撃を一撃入れてみた。だが、強固な鱗に遮られてまともにダメージは入っていなかった。

 

「攻撃力だけじゃなくて防御力もかなりだな……っ!?」

 

ファヴニールはお返しにと言わんばかりに、口から青い炎の玉を俺に目掛けて吐き出して攻撃する。これも何とか回避しするも、羽織っていたフード付きマントの一部が少し焦げてしまった。

 

「ブレス攻撃まであるのかよ……」

 

俺の予想以上にファヴニールは高ステータスに設定されていた。ソロで奴に挑むのは自殺行為と言ってもいいくらいのほどだ。

 

圧倒的に絶望的な状況だが、俺は退こうとはせず、剣を強く握りしめて構える。

 

刃に青白い光が纏ったところで、地面を蹴ってファヴニールに突進し、片手の剣で突きを叩き込む。 片手剣の基本技の1つ《レイジスパイク》だ。威力自体はあまり高くないが、基本技ということもあってディレイはそう長くはない。

 

ファヴニールも反撃にと、虫を振り払うかのように前足で何度も攻撃してくる。俺は軽業のスキルを利用し、それを全て回避する。

 

最中、ファヴニールのHPを確認してみると先ほどよりも僅かではあるが多くダメージが減っていた。どうやら、ソードスキルでは奴にまともにダメージを与えられるみたいだ。

 

「攻撃パターンと動きさえわかれば、こっちのものだ……」

 

 

 

そこから俺とファヴニールの激しい戦いは長時間に渡って続いた。

 

ファヴニールの攻撃は、序盤こそは前足による攻撃、口から吐く青い炎のブレス攻撃だけだった。だが、HPゲージを削っていく毎に、攻撃力が強化されたり、炎のブレスが広範囲に渡るくらいまで威力がアップしたり、更には毒のブレスも使って来るようになったりと俺を大いに苦しめてきた。

 

この中で唯一幸いだったのは、奴は巨体だということもあって動きが遅かったということだった。

 

元々敏捷性にステータスを振っていた俺は、ファヴニールの攻撃を回避しながら隙を見てソードスキルを叩き込んでいった。

 

途中、何度もHPがレッドゾーンに突入し、その度に回復系のポーションやクリスタルを使って体力を回復させる。ポーションやクリスタルは、かつてないほど物凄い勢いでアイテムストレージから減っていき、ファヴニールを倒す前に全部使いきってしまうかもしれない。

 

使用していた片手剣も何度か折れたが、予備の片手剣をすぐに持ち替えて戦い続けた。

 

しかし、何時間にも渡って戦いを繰り広げている内に、どのくらいの間ファヴニールと戦い続けたのか考えられなくなるほど、肉体的にも精神的も疲弊していった。

 

「はぁはぁ……」

ファヴニールのHPゲージを確認してみると、HPは残り僅かだ。

 

アイテムストレージを開いて確認してみたところ、回復アイテムも予備の剣も残りわずかだった。剣に至っては、あと1本しか残っていない。

 

意識がもうろうとする中、ファヴニールの口から巨大な青い炎の玉が俺に目掛けて吐き出される。これも回避しようとするが、反応が遅れて爆炎に巻き込まれてしまう。

 

俺は宙を舞い、勢いよく地面を転がっていく。

 

「ぐわああああっ!!」

 

強烈な衝撃をまともに受けたことで、地面に倒れ込んでしまう。自分のHPを確認してみるとレッドゾーンにまで突入していた。そして、持っていた剣はポリゴン片となって消滅する。

 

この間にもファヴニールは俺にトドメを刺そうと、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

 

倒れている中、俺の脳裏にファーランさんとミラの姿が浮かんだ。

 

--俺が今、ここにいるのは2人を生き返らせるためだ…!そのための力を手に入れるためだ…!こんなところでまだ死ぬわけにはいかないだろ……。

 

重たい身体を無理やり起こし、ファヴニールを睨みつける。

 

「俺は誓ったんだ、どんな手段を使ってでも必ずファーランさんとミラを生き返らせると……。そのために、もっと力が……強さが必要なんだよ…!」

 

呟き、メニューウインドウを操作して回復結晶と最後の剣を取り出す。回復結晶で体力を回復させたのと同時に、剣を強く握りしめ、地面を蹴る。

 

ファヴニールが左側の前足を繰り出してきたのと同時に、左手に持つ剣に深紅色のエフェクトを纏わせる。そして、ファヴニールの攻撃をかわしつつ、7連撃の斬撃を繰り出して左側の前足をバラバラに切り刻む。片手剣スキル7連撃の《デッドリー・シンズ》だ。

 

肉片となったファヴニールの左側の前足はポリゴン片となって消滅。

 

ファヴニールは苦痛な叫びを上げつつも、俺に憎悪を向けて口から炎の玉を放とうとする。

 

「させるかっ!」

 

俺は軽業や疾走スキルを使いながらウォールランでファヴニールの身体を駆け上っていく。首元に近づいたところで、片手剣ソードスキル単発重攻撃の技《ヴォーパルストライク》をファヴニールの顎へと喰らわせて、攻撃を防ぐ。

 

地面に着地したところで、左の後ろ足に隙の少ない3連撃の《シャープネイル》を撃ち込み、続けざまに高速4連撃《ホリゾンタル・スクエア》で攻撃する。更に、重3連撃《サベージ・フルクラム》で右の後ろ足を深く斬り付ける。

 

バランスを崩したファヴニールは地面へと倒れ込んだ。

 

この隙を見逃さず、ファヴニールの後ろに回り込む。そして、5連続突き、斬り下ろし、斬り上げ、最後に全力の上段斬りを繰り出す片手剣スキル8連撃の《ハウリング・オクターブ》を撃ち込んだ。

 

最後の一撃が決定打となり、ファヴニールはポリゴン片となって消滅した。

 

「やったか……」

 

長時間の戦いが終わったとひと安心した瞬間、ドッと疲れが身体を襲う。剣を地面に突き刺して杖替わりにし、身体を支える。

 

アイテムストレージを開いてみると、新規入手欄には大量のアイテム名が並んでいた。宝石類に金塊、結晶アイテム、多額のコルなどと高ステータスモンスターのファヴニールらしい報酬だった。だが、アルゴさんが言っていた強大な力に繋がるようなアイテムは何1つ見当たらなかった。

 

だったら《体術》みたいにクエストクリアで取得できる特別なスキルでも手に入ったのか。ステータス画面へと移動し、確認してみるが特別なスキルを取得したり、レベルやステータスが上がった気配は特に見当たらなかった。

 

ファヴニールを倒したら手に入る強大な力というのは、やっぱりガセネタだったのだろうか。

 

その時、前の方から声がした。

 

「我が呼びかけに応じよ」

 

はっと顔を正面に向ける。

 

俺の正面に、青い炎が浮かび、やがて巨大な翼竜の姿を形作る。そして、現れたのは先ほど俺が倒したはずのファヴニールだった。

 

「我を倒した剣士に問おう。汝は我を倒して強大な力を手に入れた時、何のために使う?」

 

「そ、それは……」

 

ファヴニールの問いに、言葉が詰まってしまう。自分の中では既に答えが出ているはずだったが、何故かそれを口に出すことができずにいた。

 

「この様子だと、今の汝には、我の持つ力を手にすることも使いこなすことはできないようだな。だが、汝が正しい答えを見つけた時は、きっと我の持つ力を手にして使いこなすこともできるようになるだろう」

 

ファヴニールはそう言い残すと、俺の前から姿を徐々に消していく。

 

「おい!正しい答えって何だよっ!待ってくれっ!!」

 

今にも完全に姿が消えようとしているファヴニールに左手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってくれっ!!」

 

声を上げて目を覚ますと、そこは現実世界にある俺の部屋だった。

 

部屋の中は薄暗く、ベッドサイドラックの上に置いてあるデジタル時計を見てみると、【2025年11月30日(日)午前2時40分】と表示してあった。

 

「まさか2年くらい前の夢を見るなんてな……」

 

すぐにベッドに横になるが中々眠りにつくことができず、起き上がって机の上にあるスタンドライトに灯りをつけ、イスに腰掛けた。

 

そこで俺はかつてファヴニールが俺に言ったことを思い出し、考え始めた。

 

俺はあの時、ファヴニールの問いに答えられなかった。奴を倒して手に入れた力を何のために使うのかいうことを。

 

でも、今なら答えがわかる気がする。

 

ファヴニールは邪竜と言われている凶悪なドラゴンだと言われている。そんな奴の力だとすれば、何もかも奪い破壊するような悪の力だと言ってもいい。

 

だが、俺は例えそれが悪の力だったとしても、大切な人やものを守るために使う。今の俺だったらそう答えていただろう。この答えが出たのは、あれから1年後……ALOでレデュエ/蛮野と戦った時という大分後のことだが。

 

もしかするとファヴニールは、俺がそう答えてくれるのを期待していたんじゃないだろうか…。最も悪しき力に負けない心を持つ者が手にするユニークスキル《龍刃》を、俺に与えるかどうか見極めるために……。

 

あの時の俺は、 どんなに遠くても届く俺の腕や力を求めていた。誰かの命を奪うことになっても、自分の命を捨てることになっても。でも、今の俺にはあの時と違ってかけがえのない大切なものがある。頼れる仲間、そしてどんなことがあっても絶対に守りたい大切な人が……。

 

俺は引き出しを開き、写真入れに大事に保管してある2枚の写真を見る。1枚の写真には現実世界の俺と黒髪のポブカットをした小柄な少女が、もう1枚の写真にはALOの俺と長い金髪をポニーテールにしている少女が写っている。

 

彼女がいる限り俺は……。




今回の話の時系列はアインクラッド編の第7話と第8話の間の出来事となっています。内容はざっくり言ってしまうと、リュウ君がユニークスキル《龍刃》を手に入れるきっかけになったというものです。

リュウ君が今回戦ったファヴニールはfateシリーズに登場するファヴニール、声はウィザードラゴンの大友龍三郎さんとなっています。ファヴニールではなく、グラファイトやドラグブラッカーと戦う案もありましたが、最終的にボツとなりました。

この頃のリュウ君は、今とは大分異なった雰囲気となっています。今はリーファがいるおかげで大丈夫ですが、いつか本当に闇落ちしないか心配している私がいます。ただ、今回の内容にもあった悪の力を善のために利用するというのは今後の話でも重要になってきますので。

余談ですが、「進撃の巨人」のアニメの最新話を見た影響もあってか、今回のリュウ君を見ているとリュウ君ならリヴァイみたいに獣の巨人を倒してしまいそうだなと思ってしまいました。

今回の挿入歌して貴水博之さんの『Wish in the dark』イメージソングとして、エンディングとして『Go! Now! ~Alive A life neo』を聞きながら執筆しました。一応『Wish in the dark』はリュウ君のイメージソングの1つとなっています。『Go! Now! ~Alive A life neo』は、歌詞の内容からSAOで戦うリュウ君たちをイメージしてしてしまい、アインクラッド編やゲーム版のエンディングとしてでも妄想しちゃっています(笑)

次回からGGO編に突入したいと思います。

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