ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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お待たせしました。2か月ぶりの更新になります。

この間に、ジオウが終わって初の令和ライダーのゼロワンがスタートしましたね。そして、SAOアニメ第3期の後編もあと1ヶ月に。時間が経つのが早いですね。そのため、クロノスのポーズやオーディンのタイムベントを使いたいなと思うくらいです(笑)。

SAO10周年のイベントに行ってきましたが、あれは「行ってよかった!」と思うほど最高のイベントでした。そこで色々とお金を使ってしまいましたが、後悔はないです。

それでは今回の話になります。マズイですがエボルト特製コーヒーを用意しておくことをお勧めします。


第4話 放課後デート

2025年12月12日 

 

とあるショッピングモールの入口前。

 

俺は入り口付近にあるベンチに腰掛け、ある人が来るのを待っていた。

 

「いよいよ明日か……」

 

待ち続けている中、5日前に菊岡さんから聞いたことをどうしても考えてしまっていた。

 

菊岡さんの話に出てきた死銃(デス・ガン)と名乗るプレイヤー。奴は、GGO内でプレイヤーに向けて発砲し、なんらかの方法で本当に殺害しているかもしれない。実際に撃たれたプレイヤーは自宅で亡くなっているのが発見されている。それも3件だ。

 

最初こそは偶然だろうと思っていたが、何件も発生していたとなると確実にそうとは言えない。この3件の事件に、死銃(デス・ガン)と名乗るプレイヤーが何らかで関わっているのは間違いないだろう。しかし、奴はどうやってゲーム内で撃ったプレイヤーを現実でも殺害できるのかはまだわかっていない。

 

俺とカズさんは、この事件の真相を確かめるために依頼を受けることにした。そして、一昨日の夜に菊岡さんから「今週の土日にはダイブする場所の準備ができる」と連絡が来た。

 

菊岡さんは最大限の安全措置は取るとは言っていたが、殺害方法がはっきりとわからない以上、俺やカズさんだって亡くなった3人と同じように殺される可能性だってある。正直、不安で仕方がなかった。

 

この依頼のことは、家族にはカズさんに誘われてバイトすることになったとしか伝えてない。父さんは今年の4月から他地方に単身赴任になって月に1度しか家に帰って来なく、母さんはこの1週間は仕事が忙しいため、誤魔化すことはそう難しくなかった。だけど、()()には簡単に誤魔化すことはできないだろう。

 

そんなことを考えていると、誰かが後ろから手で目を隠してきて、目の前が真っ暗になった。

 

「だ~れだ?」

 

聞き慣れた女の子の声。誰なのかすぐにわかり、笑みがこぼれる。

 

「スグだろ、バレバレだよ」

 

「やっぱりリュウ君には簡単だったみたいだね」

 

後ろから俺に目隠ししてきたのは、俺の彼女……桐ヶ谷直葉だった。学校帰りだということもあって、制服姿だ。

 

スグが通う高校は、さいたま市にある剣道の強豪女子高。彼女はそこで1年生でありながら、インターハイと玉竜旗のレギュラー選手に選ばれる腕前で、剣道に関しては俺もすっかり敵わなくなっている。

 

「難しそうな顔してたけど何かあったの?」

 

「いや、何でもないよ」

 

スグに死銃(デス・ガン)のことで悩んでいたことを誤魔化そうと笑みを浮かべる。

 

「時間ももったいないし、早速行こうか」

 

立ち上がってスグの手を取ってモールの中へと足を踏み入れる。スグも俺にいきなり手を握られて初めは頬を少し赤くして驚いたが、すぐに嬉しそうにして俺の手を握り返してきた。

 

 

 

 

2週間後はクリスマス。その影響もあって、モール内はイルミネーションやクリスマスツリーなどで装飾され、クリスマスらしい恰好をしてビラ配りや呼び込みのバイトをしている人たちもいる。

 

「メリークリスマス!ただいまクリスマスセール中でございます!チラシどーぞ!クリスマス限定商品もいっぱいございます!」

 

雑貨屋の前でサンタクロースの格好をした男子大学生が元気よく呼び込みしている。しかし、その一方で……。

 

「メリークリスマス…」

 

「年に一度の大特価〜。安いよー安いよー」

 

別のところではトナカイの着ぐるみ姿の2人の男子大学生が、『クリスマス特別セール』と書かれているプラカードを持ちながら、やる気のない声で呼び込みをしていた。挙句の果てに、通りかかった小さい子供に『変なトナカイ』と指差されて言われる始末だ。

 

「世間はもう完全にクリスマスシーズンだな」

 

「今年のクリスマスももうそろそろだしね。クリスマスはこうしてリュウ君と出かけたいな」

 

「ああ。でも、クリスマスイブの日って新生アインクラッドの第21層から第30層までアップロードされるんだったよな。だとしたら、多分その日は新生アインクラッドになるんじゃないかな?」

 

「言われてみれば……。お兄ちゃんとアスナさんにとって、第21層フロアボス攻略は凄く大事なことだって言ってたね」

 

「確かに……」

 

キリさんとアスナさんには、SAOにいた頃に2週間だけ過ごした第22層にあるログハウスをALOでも購入するという目標がある。特にアスナさんに至っては、今から第21層フロアボス攻略に向けてスキル熟練度を上げているほどだ。

 

「2人にはいつもお世話になっているから、参加しないわけにもいかないよな」

 

「うん。でも、早くボス攻略を終わらせたら、その後でALOでクリスマスデートできるよ。リアルの方は25日のクリスマスはどうかな?」

 

「クリスマスイブはALO、クリスマスはリアルっていうことか。俺はそれで構わないよ」

 

こうしてクリスマスの予定が既に決まった。去年の俺からすると、彼女ができて一緒にクリスマスを過ごせるなんて思ってもいなかったことだ。クリスマスプレゼントも考えておかないとな。

 

そんなことを話しながらやってきたのはモール街に入っている一店舗の服屋だった。店内にはコートなど、冬用の衣類が色々置かれている。

 

スグは店先にあったサンタクロースをイメージした赤と白の女性用ケープに目が止まったようで、早速それを羽織ってみた。

 

「リュウ君、どうかな?」

 

「うん、凄く似合っているよ」

 

「ホント?リュウ君も着てみる?」

 

「いや、遠慮しておくよ。これって完全に女性用のやつだろ」

 

「でも、リュウ君ってゲームの中じゃフード付きマント羽織っているよね?だから別にいいんじゃない?」

 

「あれは男女関係なく羽織ってもいいデザインになっているんだよ。っていうかあれってスグ……リーファがプレゼントしてくれたやつだろ」

 

「フフ、そうだったね」

 

軽いボケツッコミを交わす俺たち。恋人らしいやり取りだ。

 

こんな感じでモール街に入っている店を見歩く。今回はウィンドウショッピングということもあって、俺もスグも何も買うことはなかった。でも、スグへのクリスマスプレゼントを見つけることができてよかった。

 

流石にウィンドウショッピングだけというわけにもいかず、途中ゲームセンターにも立ち寄ることにした。UFOキャッチャーで景品を取ろうと奮闘したり、エアーホッケーで勝負したりする。そして今は……

 

「あの、スグ。これは密着しすぎじゃ…?」

 

「えー?別にいいでしょ?」

 

今俺たちがやっているのはプリクラ。右腕にはスグが抱きついてきて、密着している状態だ。

 

スグがこうやって密着してくるのは嫌いじゃない。だけど、密着することで腕にその……女の子の柔らかい部分が当たってしまう。それにスグ/リーファは大き目のため、どうしても毎度その感触に意識がいってしまう。そのため、俺はいつも理性を保とうと必死になる。

 

「リュウ君、撮るよー」

 

「ああ」

 

スグがそう言ってくると俺も笑みを浮かべる。

 

数秒後には撮り終わり、スグはペンタブレットを使用し、『リュウ君』、『スグ』と書き、小さいハート形のスタンプを押し、出来上がったプリクラは完全にバカップルが撮るようなラブラブ全開なものに仕上がった。

 

カズさん/キリさんとアスナさん/明日奈さんは皆にバカップルと言われているが、俺たちも人のこと言えないな。

 

 

 

 

 

ゲームセンターを後にし、モールの中を歩いている中、突然誰かがスグに声をかけてきた。

 

「あれ?直葉ちゃん?」

 

声がした方を見ると、俺と同じ年頃のひょろりと痩せたメガネの男子学生がいた。初めて見る顔だったが、何か初めて会ったような気がしなかった。隣にいたスグは誰なのか知っているような反応を見せる。

 

「何だ、長田君か」

 

「何だなんて酷いよ。こっちで久しぶりに会ったっていうのに」

 

「ゴメン、ゴメン」

 

「なあ、スグ。彼って誰なんだ?」

 

「そっか。リュウ君はこっちで彼に会うのは初めてだったね。彼は長田慎一君。中学の時のクラスメイトで、レコンでもあるんだよ」

 

「えっ?レコンなのかっ!?」

 

言われて見れば、レコンの面影があるような……。

 

「ALOでは何回も会っているけど、こっちでは初めてだったな。俺は橘龍哉。ALOの時みたいに俺のことはリュウでいいよ。よろしく」

 

軽く自己紹介し、握手しようと長田君に左手を差し出す。だが、長田君は俺の方を見ると、不機嫌そうな顔をして何故か右手の方を差し出してきた。

 

「僕は右利きなんだけど」

 

「あ、悪い……」

 

長田君はレコンの時のように俺に対して敵意を向きだす。これには俺も戸惑ってしまう。

 

すると、スグが殺気を出して長田君を睨む。しかも右手には糸切りバサミが握られている。

 

「長田君…。リュウ君に対してそんな態度でいると、今度こそ本当に刻むよ…」

 

いつものように、何処かのネットアイドルみたいにそう言いながら数回糸切りバサミを開閉させる。

 

「サ、サーセン……」

 

これを目にした長田君は一気に顔を青ざめ、右手を引っ込めて代わりに左手を差し出して俺と握手を交わす。

 

「こ、こっちでもよろしくね」

 

「あ、ああ……」

 

「僕、用事あるからこれで……」

 

最後はこの場から逃げるように急いで去って行く。

 

このやり取りはリアルでも健在のようだ。レコンをはじめ、キリさんやクラインさんに言っているのを何回か見たことがあるけど、これは本当に怖いな。

 

 

 

 

 

なんてこともあったが、俺たちはそれからもモール内を見て歩き、時刻はいつの間にか19時近くとなっていたため、モールに入っているファミレスで夕食を取ることにした。オーダーしたものが来るまでの間、ドリンクバーから持ってきた飲み物を飲みながら2人で談笑していた。

 

ちょうど夕飯時ということもあり、学校帰りの学生グループや家族連れなどで店内は人でいっぱいだった。近くのテーブル席に座っている小さい女の子を連れた仕事終わりの20代後半の若い夫婦の方から楽しそうな声がし、チラッと見てみる。とても微笑ましい光景で俺もスグも笑みをこぼす。

 

「なんか、ああいうのっていいよな」

 

「うん。()()()()()もいつかああなりたいね……って何言ってるんだろ、あたし!」

 

スグは思わず、心の声を口に出してしまい、恥ずかしくなって顔を真っ赤にして俺から目を逸らす。

 

「えっと……ああいうのは、ちゃんと働いて養える時になったら、もう一度考えようか……」

 

何とかスグをフォローしようとした結果、自分もスグと同じような事を言ってしまい、頬が熱くなる。

 

本当にそうなれたらいいなと思っているけど、やっぱりまだ恥ずかしいな。

 

それから10分ほどしてオーダーしたものが来る。この頃には俺たちは何とか落ち着きを取り戻し、先ほどまでのように会話を楽しんでいた。

 

「今日は楽しかったね」

 

「そう言ってもらえると誘った甲斐があってよかったよ」

 

スグは今回のデートに満足したようで、笑顔でいる。俺もスグのそういう表情を見ていると嬉しくなって笑みがこぼれる。

 

「ね、今夜はALOにログインできる?たまには2人でクエストになんてどうかなって……」

 

「ああ、今日の夜だったら大丈夫だよ。ちょうど、スグ……リーファにも会っておきたいなって思っていたからさ……」

 

「え?それってどういう意味?」

 

「あ、いや……何でもない。自分の彼女に会いたいって思うのは当たり前のことだろっ」

 

ついボロが出てしまいそうになり、少々慌てて誤魔化す。

 

結局、スグには死銃(デス・ガン)関連のことを話せなかった。カズさんはアスナさんには内容を伏せて話したらしい。仮に俺が話した場合、間違いなく俺だけじゃなくてカズさんも一緒だということまでもバレてしまい、俺たちのことを引き止めようとするだろう。

 

スグには話さないことに罪悪感を抱きつつも、絶対に無事に絶対に無事に戻って来ようと決心した。




今回の話は、旧版でこの頃を執筆していた時に、SAOアニメの再放送でちょうどリーファ/直葉の失恋する話が放送されているのを見て、その救済措置として執筆した記憶があります。そして、リメイク版ではSAO10周年のイベントにあったブースや特番でもちょっと触れていたので、それを少しでも和らげればいいなと思っています。

久しぶりにイチャイチャする2人を書いた気がしました。そして相変わらず甘々な空気に。リュウ君のイメージボイスは一応入野自由さんですが、数か月前に竹達彩奈さんと結婚した梶裕貴さんで試しにイメージしたところ、案外悪くないと思いました(笑)

内容は旧版とはほとんど変わりありませんが、リメイク版ではリュウ君がリアルのレコン……長田君と対面するシーンも入れてみました。相変わらず敵対視され、リーファ/直葉の「刻むよ」が炸裂。ちなみに今回の「刻むよ」ビルド第11話の2回目のものです(笑)

旧版を見ていた方々はわかるかもしれませんが、次回からリュウ君にある不幸が連続して降り注ぎます。

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