ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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キリト「天っ才ゲーマーにして黒の剣士ことキリトは、青龍の剣士ことリュウガと一緒に菊岡から死銃(デス・ガン)事件の調査の依頼を受け、GGOにログインへのログインを果たすのだった!」

リュウ「そこで俺たちは第3回BoBに参加することとなり、俺たちの仲間の1人カイトさんや女性プレイヤーのシノンさんと出会うことになった。って、どうして俺たちこんなことしているんですかっ!?」

キリト「作者の気まぐれで、急遽あらすじ紹介することになったんだよ。一応ここではメタ発言とかもギリギリOKらしいぞ」

リュウ「第1回目から既に嫌な予感しかしない……」

キリト「それではGGO第8話どうぞ!」


第8話 それぞれの覚悟

殺人ギルド《ラフィン・コフィン》、通称《ラフコフ》。元SAOプレイヤーなら誰でも一度は聞いたことがあるギルド名だろう。

 

SAOは、ログアウト不可能の状況に加え、ゲームの中で死ねば現実世界でも本当に死ぬというデスゲームだった。そのため、プレイヤーたちの間で《HP全損だけはさせない》という不文律ができ、プレイヤーがプレイヤーを殺害するということだけは絶対になかった。

 

しかし、それはある2人の男によって破られることになった。

 

2人の男の名前は《PoH》と《アビス》。

 

攻略組のプレイヤーですら恐れるほどの実力に加え、悪人としてのカリスマ性を持ち、奴らは徐々に自分たちを慕う仲間を集めていった。

 

奴らが本格的に活動を開始したのは2023年の大晦日の夜だった。30人近くまでの規模に膨らんだPoHとアビスの一味は、フィールドの観光スポットで野外パーティーを楽しんでいた小規模なギルドを襲撃し、全員を殺害した。翌日には、自らをシステム上には存在しない《レッドプレイヤー》を名乗り、殺人ギルド《ラフィン・コフィン》の結成が、情報屋を通じて多くのプレイヤーに知られるようになった。

 

それから奴らは、次々に新しいPKの手口を開発し、100人を超えるプレイヤーを殺害していった。殺害されたプレイヤーの中には、カイトさんとザックさんが結成した《ナイツオブバロン》のメンバーたち、そして俺の仲間……ファーランさんとミラもいた。

 

最終的に ラフコフを壊滅させるのに結成から8ヶ月もかかった。こんなにも時間がかかってしまったのは、ラフコフのアジトを発見できなかったからだ。傘下のオレンジプレイヤーたちを捕えても、肝心のラフコフに関する有力な情報を得ることはできずにいた。

 

こんな状況で大きな動きがあったのは、2024年の8月に、罪の意識に耐え切れなくなった2人のメンバーが攻略組に密告してからだ。攻略組は、念入りに調査を行い、ついにラフコフのアジトだと断定され、《血盟騎士団》と《聖竜連合》を筆頭に50人規模の討伐部隊が結成した。これには俺とキリさん、アスナさん、クラインさん、カイトさん、ザックさんも参加した。

 

人数もレベルもラフコフより討伐隊の方が上回っており、すぐに決着がつくだろうと誰もが思っていた。しかし、討伐隊の情報が奴らに漏れており、血みどろの地獄と化した戦いとなった。この戦いにより、討伐隊から11人、ラフコフから21人の死者が出た。幹部の1人《ジョニー・ブラック》の逃走は確認されたが、リーダーとサブリーダーのPoHとアビスだけは確認できなかった。

 

この戦いで、俺は1人のラフコフのプレイヤーを殺しそうになったが、キリさんに止められて1人も殺さずに済んだ。だけど、キリさんとカイトさんとザックさんの3人は何人かのラフコフのプレイヤーの命を奪ってしまった。

 

最悪な結果で終えた討伐戦の後も、奴らとの戦いは何度か続いた。ザックさんとリズさんを襲ったジョニー・ブラックを含めた残党組たちを捕え、俺は討伐戦の時にいなかったアビスと再び対決することとなった。

 

そして、ファーランさんとミラを死なせた張本人がアビスだったことを知った。怒りにとらわれた俺は奴と死闘を繰り広げるも、奴が仕掛けたトラップにかかって取り逃がしてしまった。それからアビスを見つけることはなく、SAOがクリアされた。

 

俺たち3人にとってはラフコフとは因縁が深い。奴らの生き残りの誰かが死銃(デス・ガン)として活動しているとしたら、俺たちはまたSAOにいた時みたいに奴らと本当の殺し合いをする覚悟をしないといけないのか……。それに死銃(デス・ガン)の正体がアビスだったら……。

 

「どうかしたの?」

 

ふと声をかけられて我に返って振り向くと、シノンさんがいた。

 

「し、シノンさん……」

 

「あんた達3人揃って深刻な顔してたけど、ギリギリの試合だったの?リュウとキリトはともかく、カイトがそんな顔するなんて珍しいわね」

 

「まあ、俺もキリさんもGGOでプレイヤーと戦闘するのはこれが初めてでしたからね……」

 

「戦った相手がちょっと厄介な相手だったからな…。気にするな」

 

俺とカイトさんはシノンさんに、死銃(デス・ガン)やラフコフのことを話さないようにとそう答える。

 

こんな状況でも、俺とキリさんとカイトさんは次の対戦相手が決まり、フィールドへと転送される。

 

 

 

 

 

死銃(デス・ガン)やラフコフのことが気になるが、俺は少しでも気を紛らわせようとただがむしゃらに戦い続けた。対戦相手のプレイヤーたちは、1回戦で戦ったシザースと同じように俺のワイヤーアクションやガンブレードによる接近戦などGGOでほとんど見ない戦い方に驚き、俺は彼らを次々と倒していった。そしてついに予選大会の決勝戦まで来た。

 

決勝戦の準備空間へと飛ばされ、ホロウインドウに表示された対戦相手の名前を見る。表示されていたのは、俺の予想通り《Kirito》というプレイヤーネームだった。

 

対戦のフィールドは荒廃したスタジアムという現実にあるスタジアムがボロボロとなったようなところだった。このフィールドも特撮番組でよく戦闘シーンが描かれていたところみたいだった。

 

俺たちの目的は明日の本戦に出場すること。この戦いはあまり意味のないことかもしれない。だけど、明日の本戦で死銃(デス・ガン)たちと戦う可能性がある以上、キリさんと戦って本当に奴らと戦う覚悟があるのか確かめたかった。

 

キリさんを探そうとフィールドを探し回ること1、2分。スタジアムの外にある階段付近のところで、俺が来るのが待っているかのように仁王立ちしていた。

 

俺が来たことに気が付くと、キリさんは振り向いて近づいてきた。

 

「なあ、リュウ。今ここで俺と戦ってくれないか?俺に奴らと戦う資格があるのか確かめさせてくれ!」

 

やはりキリさんも俺と同じ考えだった。今のキリさんは、SAOのフロアボス戦の時やALOでのグランドクエストの時のようなゲームがただの遊びじゃなくなったときに見せる真剣な表情をしている。

 

「いいですよ。《制限時間モード》みたいに制限時間3分以内に相手にダメージを多く与えた方が勝ちっていうルールでやりませんか?銃の世界ですけど、俺たちの得意な剣で」

 

「ああ」

 

俺はイクサカリバーをガンモードからカリバーモードにし、キリさんはフォトンソードのスイッチを入れる。

 

そしてキリさんが持っていた弾丸を1発だけ取り出し、コイントスするように弾く。弾丸が地面に落ちた瞬間、まず先に動いたのは俺の方だった。

 

左手に持つイクサカリバーを水平に構えて地面を蹴り、キリさんに一撃与えようと一撃振るおうとする。イクサカリバーが弧を描いて捉えようとしたが、キリさんはバックジャンプして回避してお返しにと フォトンソードで突きを放ってきた。俺は寸前のところで身体を横にずらして回避する。

 

更にお互いに剣を振るい、イクサカリバーの刃とフォトンソードのエネルギーの刃がぶつかり合って火花を散らす。撃剣は二合、三合と続き、止む気配はなかった。

 

同時に一旦バックジャンプして距離を取り、武器を構える。そして俺はSAO時代から何度も使用している片手剣スキル《シャープネイル》、キリさんは片手剣スキル《ホリゾンタル・アーク》を繰り出し、お互いに僅かながらもダメージを与える。

 

フォトンソードが青紫色の弧を描いて俺に迫ってくると、俺はこの場でジャンプして空中で一回転してキリさんの後ろに回り込んですぐにイクサカリバーを振り下ろす。しかし、キリさんは俺の動きを予測していたようで、フォトンソードで受け止めて攻撃を軽減させる。更に片手剣スキル《バーチカル・アーク》を繰り出して俺に2連撃の斬撃を与える。

 

「ぐっ…やりますね…!」

 

「そう簡単にお前に勝ちは譲らないぞ」

 

真剣勝負と同時に、俺たちは心のどこかで戦いを楽しんでおり、自然と笑みがこぼれる。

 

時間が来るまで何度もお互いの武器がぶつかり合って火花を散らし、相手のHPを少しずつ削っていく。両者共に一歩も譲らない状況だったが、キリさんの方が俺よりも僅かに多く残っていた。

 

「はぁ……俺の負けですね……。ここでもまだキリさんには勝てなかったか……」

 

「いや、お前も中々だったぜ。もう少し時間が残っていたら俺の方が負けていたかもしれなかったよ」

 

「次は俺が勝たせてもらいますよ」

 

「悪いけど、次も勝ちは譲る気はないぜ」

 

最後に俺たちはもう一度笑みを浮かべる。そして俺はリザインと宣言し、直後に現れた【降参しますか?】と表示しているウインドウの承認ボタンに手を触れた。

 

試合を終え、戻ってくるとカイトさんとシノンさんの姿はなかった。どうやら2人の試合も始まったようだ。

 

「おい、あのモニターにカイトとシノンの戦いの様子が映し出されているぞ」

 

キリさんが指さした方には、カイトさんとシノンさんの試合中継の映像が映し出されていた。

 

俺たちよりGGO歴が長い2人はどんな試合をするのか、楽しみだ。

 

だが、俺達は2人の戦いに…特にカイトさんに驚くことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予選大会決勝戦の相手は、予想通りカイトだった。彼とは今まで一緒に戦ってきたけど、1対1で戦うのは今回が初めてだ。

 

カイトの戦いを待機ドームで見てきたけど、 彼の戦いっぷりには驚きを隠せなかった。アサルトライフルやサブマシンガンで撃ってくる相手に、無双セイバーとベレッタ 92の銃撃で応戦しながら接近。更には無双セイバーで致命傷になる弾丸を防ぎ、相手を切り裂いて倒すという捨て身の特効戦法と言ってもいいものだった。しかし、この戦法でカイトは前回の大会で上位入賞したスカルさえも倒したほどだ。接近されたらまず勝ち目はないと言ってもいいだろう。

 

予選大会決勝戦のフィールドとなったのは《大陸間高速道》。広さはこれまでと同じく1キロ四方だが、中央を東西に貫く幅100メートルのハイウェイからは降りる事は出来ないため、ただ細長いだけのフィールドとなっている。道路上には古くなって使われなくなった自動車や墜落したヘリコプターが遺棄され、あちこちで舗装面が斜めに飛び出したりしているので、端から端までを見通すことはできない。

 

今私がいるのはほぼ東端だから、カイトはここから500m離れた地点にいるはずだ。今回は M4カービンじゃなくて 無双セイバーをメインアームにしているため、間違いなくこっちに接近してくるだろう。

 

周囲を見回し、壊れた二階建ての大型バスを見つけた。このフィールドで狙撃に最適なところだと思い、すぐにバスの2階席へと移動し、中央の床に身体を投げ出すように腹ばいになり、へカートⅡの二脚を展開して狙撃体制へと入る。

 

 

近くにあった二階建ての大型バスの二階に行き、狙撃準備をする。

 

カイトに勝つには物陰から出てきた瞬間を狙って一撃で仕留めるしかない。

 

でも、私はどうしてこんなにもカイトに勝ちたいと思うのか。スカルやこの前倒したベヒモスにはここまではそんなことはなかったのに。

 

それは、私がカイトに想いを寄せているからなのかもしれない。

 

でも、私には彼にこんな感情を抱く資格なんてない。私を苦しめている暗闇をカイトが知ったら、絶対に私の元から離れていくだろう。今までだって何度も期待して裏切られてきたのだから。

 

その時だった。

 

スコープで見つめる先に、徐々にカイトの姿が鮮明に捉える。だけど、カイトは走るどころか、身を隠すことなくただこっちに歩いてきているだけだった。

 

「どういうつもりなの……?私はあなたの敵じゃないってことっ!?」

 

カイトは一向に隠れる気配はない。いや、それどころかカイトはあろうことか目を瞑っていた。これが意味しているのはつまり、カイトは私の狙撃をかわすつもりなどないということだ。

 

「…………ふ、ふ、ふざけないでよ!!」

 

私は怒りを露わにして一気にトリガーを引く。

 

すると、大型バスのフロントガラスは砕け散り、弾丸がカイトの左側の頬をかすって、後方にある横転している車に命中した。直後、車は爆炎に包まれる。

 

2発目を発射するが、また当たらず、次もその次も当たることはなかった。

 

「どうして、どうして、当てられないのよ……?」

 

――想いを寄せている相手だから?それとも他に何か理由があるから?

 

そう考えている間にも、カイトは立ち止まることなく、ゆっくりとこっちに歩いてくる。まるで私に「早く当てろ」と言っているみたいに迷いなくただ真っ直ぐに。 

 

私は堪らずヘカートⅡを持ってカイトの元へ行く。

 

「カイト、答えて!あなたから見て、私は戦う価値のないほど弱い奴だから戦う気がないのっ!?」

 

「それは違う。今の俺には、お前と戦う前にやらなければいけないことができた…それだけだ」

 

カイトは私の目を見て言う。

 

「私と戦う前にやっておかないといけないこと!?それは何なのよ!」

 

「悪いがそれは言えない。ただ俺の今の目的は本戦にある。すまないが、それが終わるまで俺はお前と本気で戦う気にはなれない」

 

「戦う気が無いなら、自分で自分を撃てばいいじゃない!それとも、弾代が惜しかったの!?」

 

いろんな感情が渦巻いているせいか私はカイトに心にもないことを言ってしまう。

 

「たかがVRゲームの、たかが1マッチ!あなたがそう思うのは勝手よ!けど…その価値観に私まで巻き込まないでよ!!」

 

「…!」

 

私は涙ぐみながらカイトに訴えた。カイトは少し黙った後に、

 

「そうだな…。たかがゲーム、たかが一勝負、だからこそ全力で戦わなければならない… そうしなければ、この仮想世界にいる意味も資格もない。俺はそれを知っていたはずなのに、我ながら情けないな…」

 

カイトはそういうと、私に向かって

 

「シノン、俺の都合で勝負を台無しにしたのはすまなかった。シノンさえよければ今からでも俺と勝負しないか?」

 

「今からって言っても、どうやってするのよ?」

 

すると、カイトは ベレッタ 92からから弾丸を1発取り出し、それを左手でキャッチする。

 

「シノン、まだヘカートⅡの弾丸は残っているよな?」

 

「1発だけだけど、残っているわ」

 

「だったら決闘スタイルでいくぞ。10メートル離れて、シノンはライフルを、俺は剣を構える。この弾丸を投げて地面に落ちたら勝負スタート。俺がお前の狙撃を防げたら俺の勝ち、防げなければお前の勝ち、それでどうだ?」

 

カイトが持ち出してきた勝負内容に驚きを隠せなかった。

 

「いくらあなたでも、たった10メートルの距離からだとヘカートⅡの攻撃はどうにもできないわ。システム的に必中距離なのよ」

 

「それはやってみないとわからないだろ?」

 

いつものように冷静な様子のカイト。

 

 

(こんなに自信があるなんて、カイトには何か考えが、不利な状況を覆す強さがあるっていうの?もしそうなら、一体何なのか見たい。)

 

どうしてもそれが気になり、勝負を受けることにした。

 

「いいわ。それで決着をつけてあげる」

 

そしてカイトは10メートル後ろまで歩いて行ったところで、再びこちらの方を見る。

 

私はヘカートⅡに最後の弾丸を装填し、スコープ越しでカイトを見る。

 

この時のカイトの目は獲物を捕らえようとするオオカミやトラのように強い眼差しをし、黙って私を見ていた。そして先ほど取り出した弾丸を左手の指先に挟み、右手で左腰のホルスターに収められている無双セイバーを抜き取って構える。

 

「いくぞ」

 

左手の指で弾丸を弾く。弾丸は回転して宙を舞う。

 

そして、カイトは無双セイバーを両手で持って構え、私はヘカートⅡのトリガーに指を添える。

 

空中に舞った弾丸がゆっくりと地面に落ちてくる。弾丸がキンと小さな音を立てて落ちた瞬間、トリガーを引く。ヘカートⅡが火を噴き、弾丸を放った。

 

その瞬間、カイトは無双セイバーを目にも止まらない速さで振り下ろした。

 

すると、弾丸は真っ二つとなり、左右に別れてカイトの後方へと飛んでいく。同時に無双セイバーの刃にヒビが入った。

 

(そんな…ありえない!!)

 

「流石にコイツも無事じゃ済まなかったみたいだな……」

 

「弾丸を切ったのっ!?そんな、どうして……?左足を狙ったのに私の照準が予測できたの……?予測線は出ていなかったはずなのに…」

 

「スコープのレンズ越しで見えたお前の眼……視線から弾道を予測した。俺はどこにお前の目が向いているかを見て、そこに意識を全集中して構えていた」

 

視線で弾道を読むことができる人がいるなんて思ってもいなかった。

 

私の予想以上にカイトは強い。彼の強さはVRゲームの枠を超えたものだと言ってもいい。

 

「カイト、1つ聞いてもいい?」

 

「何だ?」

 

「どうして、アナタはそんなに強いの?」

 

「こんなの強さとは呼ばない。ただの技術の域を過ぎないものだ」

 

「う、嘘。嘘よ!ただのテクニックだけであんなことができるなんてどうやっても絶対無理よ!ねえ、どうすれば、その強さを身につけられるの?私は……私はそれを知るために……」

 

「なら聞く。シノン、もしもお前が今持っているヘカートⅡが現実世界にいるプレイヤーさえも殺せるようなものだとしたら、そして殺さなければお前やお前の家族や友人あるいは大切な人が現実で殺されそうになっていたとしたら、その時、殺そうとしている奴に向けてお前は躊躇いもなく引き金を引くことができるか?」

 

「そ、それは……」

 

カイトの突然のその問いに、私は答えることができなかった。(カイトは知っているの!?私のあの過去を…ううん…まさか、カイトも…)

 

「リュウが前にこんなことを言っていた。どんな力でも手に入れた奴次第で善にも悪にもなるってな。俺は一度、手に入れた力を間違った使い方をしたこともある。力を手にするということはそれ相応のリスクもあることも忘れるな」

 

完全に戦意喪失してしまい、両手からヘカートⅡが滑り落ちて地面に転がる。

 

「さて、どうする?まだ納得がいかないなら、今度はハンドガンを使って本格的に決闘スタイルで決着をつけるか?」

 

カイトはそんなことを提案してきたが、 この勝負はすでに決着は付いていた。

 

「ううん、私の負けよ。でも明日は絶対に負けない…明日の本大会、私と戦うまで生き残っててよ!リザイン!」

 

そう宣言し、私は負けてカイトが勝利したという結果で戦いは終わった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

待機ドームの片隅から中央に映し出されているカイトとシノンの戦いを黙って見ている男が2人いた。1人は全身をボロボロに千切れかかっている黒いマントで身を隠し、深く被られているフードからは髑髏の様な仮面が見えた風貌をしている。そしてもう1人は黒いニット帽を深く被り白い布で顔の下半分を隠し、右手で赤と黄色の玉が着いた算盤のようなものを持っていた。

 

「あの銃の弾丸を切っちまうとはな。相変わらずとんでもない奴だ。でも、これでアイツらは本物だということがわかったな」

 

そこへ黒いボロ切れ布のようなフード付きのポンチョを身につけて身を隠している男がやってくる。

 

「今までお前たちの様子を黙って見ているだけだったが、今回は俺もひと暴れさせてもらおうか」

 

ポンチョの男は、黒いニット帽を被った男が持っている算盤の黄色い玉を1つ動かす。

 

「流石に他のターゲットみたいに現実世界で本当に殺すことはできないが、この世界だけでも実行しようぜ」

 

その言葉に他の2人もそれぞれ黄色い玉を1つずつ動かす。

 

「これは面白くなってきたなぁ。さあ、地獄を楽しみな…全GGOプレイヤー、《黒の剣士》、《紅蓮の刀使い》、そして……《青龍の剣士》よ」

 




試しに前書きでビルドのあらすじ紹介みたいなことをやってみました(笑)。今後もやるかどうかは未定です。

今回は前回と異なって全体的にシリアスな雰囲気となりました。

リメイク版では旧版と比べてリュウ君たちとラフコフとの因縁はかなり深いものに。今回の話を書くのに改めてアインクラッド編見ましたが、ファーランとミラの死、ナイツオブバロンの壊滅は作中でもみんなのトラウマに含まれてもいいものでしたからね。

これでファントムバレット編の前半部分は終了し、次回から後編へと突入します。

昨日と先々週のSAOアニメを見て、サトライザーことガブリエルミラーはかなり危険な奴だなと思いました。特にシノンをGGOで殺したところは腹が立ちました。これはカイトさんにアイツをぶっ倒してもらわないといけないですね。そしてダークテリトリーの面々も登場して、事態は絶望へのカウントダウンが動き出して。原作の方を見て展開は知ってますけど、アニメで見るのが今から凄く楽しみです。
ところで、リュウ君はどうして紫のコアメダルとマグマナックルを用意しているの?えっと「息の根を止めたい奴出てきたから準備している」?どういうこと?

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