ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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アリス「ただいまファントムバレット編の最中ですが、今回は番外編として久しぶりの甘々回となっています」

ユージオ「えっと……今回の話の時系列は、ファントムバレット編の前に起こったものとなっています。いきなり呼ばれてきてみたけど、甘々回って何?」

アリス「この作品では恒例になっている話みたいです。なんでも読む時にはブラックコーヒーを用意しておいた方がいいとか……」

ユージオ「なるほど。でも何で僕たちがあらすじ紹介してるんだろう?リュウたちでもいいはずなのに……」

アリス「リュウガたちは忙しいから、私たちがあらすじ紹介することになったみたいです。さあ、ユージオもブラックコーヒーを用意して、今後のために今回の話をちゃんと見ておいて下さい!では、番外編スタートです!」

ユージオ(アリスは何でこんなに気合入っているんだろう……)


番外編1 カップル限定クエスト

2025年11月半ば

 

「ここか、例のクエストを受けれる場所っていうのは」

 

リュウ君は右腰の鞘に左手に持つ剣を収め、あたしにそう聞いてきた。

 

あたしも長剣を腰の鞘へと戻し、マップを開いてあたしたちの現在地と目的地を確認する。

 

「うん。ここであっているよ」

 

今あたしたちがやって来たのは、シルフ領付近にある草原地帯の端に人々……妖精たちに忘れられたかのようにひっそりと建っている大理石でできた塔。

 

どうしてこんなところに来たのかというと数時間前に遡る。

 

 

 

 

この日は、他の皆はそれぞれ用事があるということで、リュウ君と久しぶりに2人きりでクエストをやろうということになった。何かいいクエストはないか、スイルベーンにあるクエスト情報などが公開されている掲示板で探していた時だった。

 

「あれ?リーファとリュウじゃん!」

 

聞き覚えのある女性の声がする。

 

振り向いて見るとそこには、両手剣を背負ったシルフの女プレイヤーがいた。

 

「あ、フカさん」

 

そこにいたのは、この世界であたしが知り合ったフカさんことフカ次郎さんだった。一見すると変わった名前をした女性プレイヤーであるが、実力も高くてシルフ内では結構有名人となっている。ちなみにリュウ君も前に一度フカさんに会っているため、彼女のことは知っている。

 

「こんなところに来て、何かクエストでも探しに来たのか?」

 

「はい。久しぶりにリュウ君と2人きりでクエストでもやろうと思いまして」

 

「フカさんは何か面白そうなクエスト知ってますか?」

 

フカさんは、あたしたちの話を聞いて少し考え込み、何かピンときたような反応を見せる。

 

「それなら、草原地帯の片隅にある塔で最近発見されたクエストはどうだ?確か、参加条件が……男女2人組だっていうのが前提らしい」

 

「なんか参加条件が厳しいやつですね。ちなみにクエストの内容は?」

 

「さあな。私も参加してみたいけど、相手がねぇ。何だったらリュウ、私と参加してみない?」

 

またしてもリュウ君をナンパするフカさん。これにはリュウ君は困り、あたしは全力でそれを阻止しようと叫ぶ。

 

「ちょっとフカさん!リュウ君をナンパするのは止めて下さいよ!前にも言ったじゃないですか!リュウ君はあたしの彼氏だって!」

 

「冗談だってば。流石にリーファからリュウをとるようなことはしないって。ちょっと残念な気はするけど……。まあ、あとでどういうクエストだったのか教えてくれ」

 

 

 

 

 

ということがあって、そのクエストに興味を持ったあたしたちはここまでやって来たのだった。

 

「それにしてもこんなところで挑めるクエストってどういうものなんだろうね」

 

「塔の中に待ち構えているボスモンスターたちを倒しながら、最上階を目指していくっていうやつじゃないかな。あ……でも、参加条件が男女2人組限定だというのが、引っかかるんだよな……」

 

「クエストの参加条件が、何人以上じゃないとできないっていうのはたまにあるけど、こういうのは初めてだよ」

 

「まあ、参加条件が何にしろ、2人でノーコンティニューでクリアしちゃおうか」

 

「うん」

 

扉を開いて塔の中へと足を踏み入れる。

 

塔のエントランス部分は、外壁と同様に柱や床なども大理石でできた円形の部屋だ。周りには鎧騎士の白い石像がいくつも置かれ、部屋の中央には上の階に通じる螺旋階段があった。しかし、階段の入り口には青白い結界みたいなものが張られ、上には行けそうにはない。

 

螺旋階段に近づこうと数歩ほど進むと、目の前に無数の光の粒が漂い、一つの人影を作り出した。

 

少し露出度の高い黒い衣装を身に纏い、背中に2枚のコウモリみたいな羽を生やした綺麗な女性。見た目からして悪魔……サキュバスと言ってもいい。

 

すると、あたしたちの前にクエスト受注ウインドウが出現した。それには『クエスト《妖精たちの愛》を開始しますか?』と書かれている。

 

あたしたちが当然OKボタンを押した途端、サキュバスが話し始める。

 

「よく来たわね、妖精たち。ここまで来たということは、私の試練に挑みに来たのかな?」

 

「ああ。そのために俺たちはここまでやって来たんだ」

 

サキュバスの問いかけにリュウ君が答え、あたしは頷いた。あたしたちの返答を聞いたサキュバスは笑みを浮かべ、再び口を開く。

 

「そう。だったら試練のルールを説明するね。あなた達には私がいるこの塔の最上階を目指してもらう。だけど、最上階に行くためには各階層に1つずつ私が用意した試練をクリアすること。試練は全部で3つ。あなた達は全部クリアして私の元に来られるほどの愛の力は持っているかな」

 

ルールを説明し終えたサキュバスは姿を消し、同時に階段の入り口前に張られていた結界も消えた。

 

「いよいよクエスト開始っていったところだな」

 

「どんな試練だったとしても、あたしとリュウ君なら乗り越えられることができるよ」

 

「そうだな」

 

塔の2階を目指して階段を上っていく。階段には特に仕掛けはなく、数分ほどで2階へと辿り着いた。

 

2階部分は、西洋の庭園のような造りをしたところで、部屋の至るところにプランターがやオブジェが置かれている。そして、3階以降に続く階段の入り口には、先ほどみたいに青白い結界が離れ、行く手を阻んでいた。

 

「なんかモンスターが出てくるような雰囲気じゃないところだね」

 

「ああ。特に怪しいものも見当たらなさそうだ……んっ!?」

 

「どうかしたの?」

 

「あそこに石碑があるけど、何かなって……」

 

リュウ君が指さした方には、大理石で作られた石碑があった。

 

「とりあえず行って調べてみるか」

 

「うん」

 

早速、石碑を確かめに近づいてみると、それには『試練その1 お互いに相手に告白せよ』という文字が刻まれていた。

 

それは目を疑うようなもので、あたしたちは目を丸くして固まってしまう。先に回復したリュウ君が何かの見間違いじゃないのかと思い、もう一度石碑に刻まれている内容を確認してみる。しかし、それは見間違いではなかったことが判明し、リュウ君は荒げた声を上げた。

 

「 お互いに相手に告白せよって、これがあのサキュバスからの試練かっ!?」

 

「これってどういうことなのっ!?」

 

「俺だって聞きたいよ!」

 

当然のことながら、あたしもリュウ君も困惑するしかなかった。そんな中、先ほどサキュバスが最後に言っていたことを思い出す。

 

『 あなた達は全部クリアして私の元に来られるほどの()()()は持っているかな」』

 

そして、このクエスト名は《妖精たちの愛》というものだった。ということはもしかして……。

 

「ねえ、リュウ君。このクエストって……」

 

「多分君と同じ答えだと思うよ……」

 

リュウ君もこのクエストがどういうものなのか理解したらしく、頭を抱えていた。

 

「あのサキュバスの試練は、簡単に言ってしまうとお題通りに俺たちにイチャイチャしろっていう内容だろう」

 

「参加条件が男女2人組じゃないといけないっていうのは、こういうことだったんだね」

 

「サキュバスが出す試練らしいって言えばそうだけど、完全に運営の悪ふざけで作ったものとしか思えないな……」

 

「それは言えてる……」

 

ある意味とんでもない内容のクエストに挑んだのだと今さら気が付いた。でも、あたしはリュウ君と一緒にこのクエストをクリアしたいなとも思った。

 

「ねえ、リュウ君が良ければこのままクエストを進めてみない?あ、リュウ君が嫌だっていうなら強制はしないけど……」

 

「いや、リーファが一緒なんだから嫌じゃないよ。一緒にノーコンティニューでこのクエストをクリアしよう」

 

「うん」

 

微笑んでそう言ってくるリュウ君を見て、あたしも自然に笑みがこぼれる。

 

「まずは『お互いに相手に告白せよ』だよな。付き合う時に一度告白したけど、改めてってなるとなんか恥ずかしいな……」

 

「確かに……。どっちから言う?」

 

「じゃあ、俺から言うよ」

 

リュウ君はあたしの顔をジッと見始めるが、やっぱり恥ずかしいのか頬を赤く染めて中々言い出せずにいた。それでも自分の頬を両手で数回パンパン叩いて心を落ち着かせてから、口を開いた。

 

「リーファ、俺は君のこと好きだよ。君は俺のことどう思っているの?ハッキリ答えて?」

 

いくらリュウ君と付き合っているとはいえ、2回目の告白されて、自分のことがどうなのかと聞かれて、鼓動が早くなって戸惑ってしまう。1回目の時もそうだったけど、普段は草食系のリュウ君が勇気を振り絞って言ってきたんだ。あたしもちゃんと答えてあげないと……。

 

一旦深呼吸をしてから、あたしは自身の重い口を開いた。

 

「あたしもリュウ君のこと好きだよ。他の誰よりも……」

 

あたしも思い切って最愛の人に2回目の告白をする。そして2人揃って頬を赤く染めて黙り込んでしまう始末だ。他の人が見たら、本当に付き合って半年も経ったのかと疑ってしまうくらいのレベルだろう。

 

そんな中、石碑が光って上に通じる階段の入り口に張られていた結界は消え、あのサキュバスの声が何処からか聞こえてきた。

 

「どうやら1つ目の試練は合格したみたいね。でも、試練は残り2つ。終わりはまだ先よ。私はブラックコーヒーを飲みながら待っているから」

 

「まずは1つ目の試練クリアだね」

 

「ああ。ていうか、あのサキュバス俺たちのこと見ていたんだな。しかもブラックコーヒーを飲みながらって……」

 

「完全にくつろいで待っているって感じだったね……」

 

「みたいだな……」

 

早速、次の階へと足を進める。

 

「次の試練ってどういうものなのかな?」

 

「少なくても変なものでないことを祈るよ」

 

こんなことを話しながら進んでいる内に、3階へと辿り着いた。

 

3階は、至るところにある噴水から水が流れ出ていて、水のフィールドとなっている。水の中を1本の道が伸び、その先には神殿のオブジェと2階にもあった石碑が置かれていた。

 

石碑があるところまで行き、試練の内容を確認してみる。石碑には『試練その2 お互いに積極的に相手に迫れ』と刻まされていた。

 

「これまた、随分と厄介な内容だな……」

 

2つ目の試練もハードルが高いもので、リュウ君は戸惑ってしまう。あたしも恥ずかしさがある反面、クエストとはいえリュウ君とイチャイチャできるのが嬉しかった。

 

「リュウ君がいかないっていうなら、あたしから先にいかせてもらうよ」

 

「へ?」

 

状況を飲み込めてないリュウ君に、わざと体を密着させる。小悪魔のような笑みを浮かべながら見る。

 

「ちょっ!?リ、リーファっ!?」

 

当然のことながら頬を赤く染めて慌てだすリュウ君。そんな彼を見てちょっとからかってみたいなと思い、悪魔のような笑みを浮かべる。

 

「もしかしてリュウ君はあたしにこうして密着させられるのって嫌だ?」

 

――ヤバい、リーファが可愛すぎる。それに胸が俺に……。

 

更には右手をリュウ君の左側の頬に触れる。たちまちリュウ君の頬は赤くなって熱くなっていき、その熱が右手に伝わる。ちょっと積極的に攻めてしまったせいか、リュウ君はオーバーヒートする寸前の状態にまでなってしまう。

 

かというあたし自身もリュウ君にこうして積極的に迫ったことが恥ずかしくて、心拍がドクンドクンと速くなっていく。そしてソードスキルを使った時みたいに硬直状態となり、完全に無防備になってしまう。

 

そこに回復したリュウ君が動き出す。あたしを壁際に追い詰める。

 

「えっと、リュウ君……?」

 

頬を赤く染めながらジッとあたしを見つめ、壁に左手をドンと置く。恋愛系の少女漫画やアニメやドラマなどで見るシチュエーションの1つの壁ドンだ。

 

あたしは完全に逃げ場をなくし、身動きが取れなくなる。

 

「さっき、俺にあれだけのことをしたんだから、リーファも覚悟しろよ」

 

更には顎を指で軽くクイッと持ち上げて見つめ合うようにさせてきた。いわゆる顎クイだ。これも壁ドンと同様に恋愛系の少女漫画やアニメやドラマなどで見るシチュエーションで、壁ドンとセットで行われることもあり、主に女性を口説く時に使われる。

 

それを普段は草食系のリュウ君がやってきて、ドギマギしてしまう。きっと今のあたしは先ほどのリュウ君みたいに顔を真っ赤にしているだろう。

 

リュウ君は追い打ちをかけるかのように、面と向かってあたしにこう言った。

 

「リーファ…。君の運命は俺が変えるよ」

 

ある意味最強とも言えるリュウ君の恋愛コンボは、Max状態のあたしのHPを全部削り取ってしまうほどのもので、一撃必殺を受けたあたしは意識を失ってしまう。

 

「ええええっ!?リーファ大丈夫か!?」

 

リュウ君の叫ぶ声が聞こえてくるが、今のあたしには答える気力は残ってなかった。

 

 

 

 

 

10分後。何とか意識を回復させたあたしは、リュウ君と最後の試練が待っている塔の最上階へ階段を上っていた。そんな中、リュウ君があたしに声をかけてきた。

 

「あの、リーファ。さっきはゴメン……。ちょっとした仕返しのつもりだったけど、ちょっと度が過ぎた……」

 

「りゅ、リュウ君が謝る必要なんてないよ……。リュウ君にこういうのされるは……き、嫌いじゃないし、むしろ……嬉しいっていうか……」

 

先ほどの自分たちがしたことが恥ずかしくなり、ぎこちない会話となっていた。

 

「早く最後の試練もやってクエストクリアしちゃおう……」

 

「そうだね……」

 

既に色々な意味で体力を消耗したあたしたちは、階段を上りきって4階へと着く。

 

4階は下の層とは打って変わり、1階のエントランスのように大理石でできたシンプルな部屋で、あるのは部屋を支えている柱と試練の内容が記載されている石碑だけだった。

 

石碑を確認してみると、それには『 試練その3 キスを交わせ』と刻まれていた。

 

「これまでの内容からして、やっぱり最後はこうなるよな……」

 

「でも、これをクリアすれば、あとは最上階にいるサキュバスのところに行くだけだよ」

 

早くクリアしようと、石碑の前であたしとリュウ君は向かい合うように立つ。リュウ君があたしの二の腕を優しく掴んだところで、キスしようとお互いに顔を近づけるが、恥ずかしくなって途中でやめてしまう。

 

「今まで何回もキスしてきたけど、告白と同様に改めてするってなるとやっぱり恥ずかしいな」

 

「た、確かに……。でも、ここまで来たんだから、もう後には引けないよ。思い切ってしちゃおう」

 

「あ、ああ……」

 

改めてキスしようと目を閉じて顔を近づけるあたしたち。お互いの距離が短くなるに連れて鼓動が早くなっていく。そして距離が0になってあたしたちの唇が重なった。10秒ほどで軽いキスを終え、あたしたちは顔を離す。リュウ君は頬を赤く染めて恥ずかしそうにあたしから目線を逸らしており、あたしも彼と同じようになっているだろう。

 

これで3つ目の試練も終了かと思われたが、最上階に繋がる階段の結界は消えてなく、まだ試練は終えてないことを示していた。

 

「何で?ちゃんとキスしたから、これでクリアのはずなのに……」

 

「あれ?下に何か続きが小さく書いてあるぞ」

 

リュウ君は石碑に続きが書いている文字を見つけ、読み上げてみる。

 

「えっと、なになに……『注意。軽いキスではなく、濃厚なキスではないとクリアとして認められない』って、えええええええっ!?何だよこれっ!?」

 

1つ目の試練の内容を知った時みたいに、荒げた声を上げるリュウ君。それを聞いていたあたしも一気にカァっと顔が熱くなる。

 

「の、濃厚なキスって……」

 

それはどういうものなのかあたしもリュウ君も知っている。何回か場の雰囲気の勢いでしたことはあるけど、それは普通にキスするのより恥ずかしいものだ。今ここでしないといけないのかと思うと余計に恥ずかしい。でも、そうしないとこれまでやってきたことが全部無駄になってしまう。

 

10分近く間、自身の羞恥心と葛藤したあたしたち。もはや逃れる手段はないとわかったところで、ついに意を決した。

 

リュウ君は先ほど壁ドンした時みたいにあたしを壁際に追い詰める。

 

「じゃあ……い、いくよ……」

 

そう言い残してあたしに顔を近づけてきて、あたしは黙って待っていた。そして再びお互いの距離が0となって唇が重なる。最初の数秒はただ唇が重ねるだけだったが、あたしの方から自分の舌をリュウ君の舌に絡めていく。リュウ君も体をビクッとさせるも、嫌がることはなく自分も舌を絡める。

 

「んっ……んぅ……」

 

「んっ、ふっ、んぁっ……」

 

沈黙とした空間の中で、あたしたちの声と唾液が混ざり合う音がする。

 

続けている内に頭がボーっとして熱が入っていき、入れ替わるようにリュウ君を壁際に追い詰めて両手を彼の頬を当てて離れないようにガードする。リュウ君も初めこそは引き離そうと抵抗していたものの、次第に力が抜けていき、黙ってディープキスを交わす。

 

魔力供給でもしているのかというぐらい濃厚なキスは1分近くも続き、お互い唇を離したところでようやく終わった。

 

「リーファ、ちょっと……激しかったんじゃないのか……?」

 

「そういうリュウ君だって……」

 

これほど濃厚なキスをしたこともあって3つ目の試練は無事にクリアし、最上階への道は開かれたものの、あたしたちはある意味強力なボスモンスターと戦った時よりも多く体力を消耗させてしまった。

 

「まあ、これで試練は3つクリアしたから、あとは最上階に行くだけだな……」

 

「早く行って、クリアしよう……」

 

2つ目の試練を終えた直後と同様に、恥ずかしさのあまり、お互いにろくに目を合わせられなくなっていた。こんな状況の中でも最上階に続く階段を上っていく。

 

最上階は、様々な花が咲き乱れ、花のアーチや噴水などが置かれているフラワーガーデンだった。

 

その中にあるオープンテラスみたいになっているところには、1階で出会ったサキュバスがいた。しかも、金属製のガーデンチェアとテーブルを置き、コーヒーが入ったカップにマカロンやケーキが乗っているティースタンドまでも用意して完全にティータイムを満喫している。

 

サキュバスはあたしたちが来たことに気が付くと、手を振って呼ぶ。

 

「やっほー、よくここまで来たねー。こっちこっち!」

 

あたしたちは若干イラっとしつつも、サキュバスがいるところへと向かう。

 

「あなた達の愛の力、見させて貰ったわ。見てて砂糖もミルクも入れてないのにコーヒーが甘く感じるほどのものだったよ。せっかくだから、このまま2人で子作りしちゃってもいいんだけどなー」

 

最後のサキュバスの言葉に、あたしとリュウ君は一気に顔を真っ赤にする。

 

「こ、子作りって……その……よ、要するに……」

 

「え、えっと……もしかして……リュウ君は、あたしを妊娠させたいの……?」

 

「ぶほッ!」

 

テンパって思わずそんなことを言ってしまい、リュウ君は吹き出してしまう。かというあたし自身もなんてことを言ってしまったんだろうと余計に顔が熱くなる。

 

「リーファまで何言ってるんだよっ!」

 

「ご、ゴメン!頭が真っ白になっちゃって、つい……」

 

あたしとリュウ君は慌て、サキュバスはその様子を爆笑を堪えて楽しそうに見ていた。

 

「冗談だよ。流石に年齢制限あるから、そんなさせないって」

 

さりげなくメタ発言までもしてきたよ。さっきリュウ君が言っていたけど、本当にこのクエストは運営が悪ふざけで作ったとしか思えない。

 

「まあでも、あなた達は試練を全部クリアして、あなた達の愛の力を見させてもらったわ」

 

すると、あたしたちの前に2つのブレスレットが現れた。

 

「あなた達の愛が長く続くよう祈っているわ。末永くお幸せにね」

 

サキュバスはそう言い残し、光の粒子となってこの場から姿を消す。そして、あたしたちの目の前にクエストクリアを示すウインドウが出現する。

 

「これでクリアだね」

 

「ああ。でも、凄く恥ずかしい……」

 

「あたしも……」

 

いくらクエストをクリアするためだからと言って、自分たちがしてきたことを思い出すと恥ずかしかった。

 

「このクエストの内容、フカさんには絶対に教えないでおこうか……」

 

「賛成。フカさんだけじゃなくて、他の皆にも内緒にしよう……」

 

今回挑戦したクエストのことはあたし達だけの秘密にし、後日フカさんにクエストの内容を聞かれた時は、結局受けられなくて他のクエストをやったと言って何とか誤魔化すのだった。

 




今回の話は、旧版の2周年記念として書いたものを修正したものですが、リーファがテンパって爆弾発言してしまったりと年齢制限ギリギリのものとなってしまいました。ちなみに、あの爆弾発言は何処かの聖女様の名言となってしまったものを元にしました(笑)。他にもリュウ君がエグゼイドの決め台詞であんなキザなことまでも言って……。でも、前にシリアスな場面で「リーファの運命は俺が変える」と言ったことあるんですけどね。
執筆してて、リュウ君だったらテラリアの無制限回復能力も無効化してしまうんじゃないのかと思いました(笑)

先週のSAOアニメは、正妻戦争が話題になってましたね。でも、ここ最近シリアスばっかりだったので、いい中和剤になったと思います(笑)
本作のキリトは、皆にシスコンと言われ、近頃はネカマやホモ疑惑をかけられ、キリトに片思い同盟は崩壊してますけど、本作では正妻戦争は起きるのか(笑)。
先日公開になった最新話の画像を見ると現実サイドでも大きな動きが。そして誰かがオーズとクローズの変身アイテム一式を無断で持ち出してしまいました(棒読み)

そしてこの前は、アリスのキャラソンの視聴動画が公開されましたね。一応リュウ君のキャラソンは、『Wish in the dark』、『Regret nothing~Tighten Up~』、『 Burning My Soul』の3曲をイメージしています。実はアリシゼーション編のも考えてますが、そちらはネタバレ防止のためまだ秘密です。他のオリキャラたちのはまだ考え中です。

次回はちゃんとファントムバレット編の話になります。

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