ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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キリト「GGOで殺人を行う死銃(デス・ガン)たちと、それを阻止するために戦う俺とリュウとカイトとシノン。俺たちは砂漠にある洞窟に身を隠している中で、自分たちの過去を打ち明け、更には死銃(デス・ガン)たちの殺害方法を解明した。そして、死銃(デス・ガン)たちとの最終決戦へ向かうのであった」

カイト「死銃(デス・ガン)たちの共犯が現実世界にもいたなんて完全に盲点だったな。キリトの推理力には驚いたな」

キリト「どうよ?俺の名・推・理!凄いでしょ、最高でしょ、天才でしょー!?」

カイト「あまり調子に乗るな。ところでリュウは何処に行ったんだ?今日はお前とあらすじ紹介するはずだったろ?」

キリト「リュウなら、作者にクローズの変身アイテムや武器を渡されて何処かに連れて行かれたよ」

カイト「何か色々と問題になりそうだな……」

キリト「まあ、ここなら何でもアリだから大丈夫だろ。ってことで、GGO編第15話に行きたいと思います、どうぞ」


第15話 3人の元へ

アスナさんが一度ログアウトして再びALOに戻ってきてから数分しか経ってないのに、その時間は何倍にも長く感じる。

 

「アスナもリーファもちょっと落ち着きなよ……って言っても、無駄だよね……」

 

ソファーの隣に座るリズさんがそう声をかけてくる。

 

「うん。ごめんね。でも やっぱり嫌な予感がするのよ……。キリト君たちが私たちに《ラフィン・コフィン》のことを何も言わなかったから……」

 

「あたしも一緒です……。ただの因縁とかだけじゃなくて、何か大変なことが起こっている……そんな気がするんです……」

 

あたしは皆と違ってSAOにいなかったけど、皆から何度かSAOでの出来事を聞いていたため、ある程度のことは知っていた。

 

でも、殺人ギルドのラフィン・コフィン……ラフコフに関することは今初めて知った。アスナさんたちが教えてくれた内容はどれも衝撃的で、胸が締め付けられるものだった。

 

中でも一番の衝撃を受けたのは、ファーランさんとミラちゃんの死の真相だった。間接的とはいえ、2人を死に追いやったアビスというプレイヤーのことが許せなかった。2人が死ななかったら、リュウ君が苦しむことはなかったというのに……。

 

あたしとアスナさんは胸の奥でどこまでもふくれあがろうとする不安感と戦いながら、ザックさんとアスナさんが呼び出した()()()が来るのを待ち続けた。

 

誰も喋らずライブ中継から出ている音しか聞こえない中、ザックさんが戻ってきた。リズさんが真っ先に彼に話しかけた。

 

「ザック、どうだった?」

 

「ダメだった……。親父の携帯に連絡しても出なかったから、職場の方に連絡してみたら今は事件の捜査に出ているみたいなんだよ……」

 

「そう…よりにもよってこんな時に……」

 

ザックさんのお父さんがダメとなると、やっぱり()()()に頼るしかないか。

 

その時、入り口のドアがノックされ、ドアが開いた。

 

「もう遅ーい!」

 

部屋の中に入ってきた人物に言い放ったリズさんが一言は、この場にいる全員の内心を代弁してくれたものだった。

 

「こ、これでもセーブポイントから特急で飛んで来たんだよ、ALOに速度制限があったら免停確実だよ」

 

とぼけたセリフを発したのは、ひょろりとした長身を簡素なローブで包み、マリンブルーの長髪を片分け、銀縁の丸眼鏡をかけているアスナさんと同じウンディーネの魔法使いの男性だ。名前は《クリスハイト》。これまで何度か共に戦ってきたことがあるため、ある程度面識はあった。

 

本名は菊岡誠二郎で、あまり知らないがリアルではネットワーク関係を調べている公務員らしい。

 

クリスハイト……クリスさんが後ろ手にドアを閉めると、アスナさんが威圧感を出してすぐに問い詰める。

「何が起きているの?」

 

「えっと、何から何まで説明すると、ちょっと時間が掛かるかもしれないなぁ。それにそもそも、どこから始めていいものか……」

 

「誤魔化すつもりですかっ!」

 

誤魔化そうとするクリスさんに迫ってあたしも問い詰めようとする。クリスさんがあたしたちの気迫に押されていると、テーブルのグラスの陰からユイちゃんが現れる。

 

「なら、その役はわたしが代わります」

 

ユイちゃんはいつもの普段の愛くるしい表情とは違い、今は厳しい顔を浮かべていた。

 

ユイちゃんはあたしたちに今GGOで起きていることを話してくれた。

 

それは、ゲームの中で死銃(デス・ガン)と名乗るプレイヤーによって撃たれた《ゼクシード》、《薄塩たらこ》、《ガイ》という3人のプレイヤーが現実でも死亡したという恐るべきものだった。先ほどボロマントのプレイヤー……死銃(デス・ガン)に撃たれた《ペイルライダー》という人も3人と同様に死んでいる可能性が高いらしい。

 

ユイちゃんは一通り説明を終えると疲れたのか、グラスに寄りかかる。アスナさんはユイちゃんを掌に包み込み、「ありがとう」と囁きかけた。

 

「これはまったく驚いたなぁ。この短時間でそれだけの情報を集め、その結論を引き出したのかぁ。どうだい、ラー……いや、《仮想課》でバイトしてみないかい?」

 

とぼけたことを言うクリスさんをあたしとアスナさんは睨みつける。するとクリスさんは両手をさっと持ち上げ、降参するようなポーズを取る。

 

「いや、済まない。この期に及んで誤魔化す気はないんだ。おチビさんの言うことは全て…事実だよ」

 

「おい、クリスの旦那よ。あんたがキリトとリュウのバイトの依頼主なんだってな?ってことはテメェ、その殺人事件のこと知っててキリトとリュウをあのゲームにコンバートさせたのか!?」

 

バーカウンターから飛び降りて詰め寄ろうとするクラインさんを、クリスさんは右手の軽い動きで押しとどめた。

 

「ちょっと待った、クライン氏。()()()()()()()()

 

「ン....だと......?」

 

「クリスさん、殺人事件じゃないってどういうことですか?ユイちゃんの話だと、既にその死銃(デス・ガン)って奴に撃たれたプレイヤーが3人……いや4人も死んでいるって……。どう見てもこれって殺人事件ですよね?」

 

クラインさんの隣の席に座っていたオトヤ君も立ち上がり、クリスさんに問いかける。

 

「オトヤ君も冷静になって考えてみたまえよ。アミュスフィアは、ナーヴギアのセキュリティ強化版。どんな手段を用いようとも脳に一切傷を付けられない。ましてや、機械と直接リンクしていない心臓を止めるなんて不可能だ。僕は2人と先週リアルでたっぷり議論し、最終的にそう結論付けたんだよ」

 

クラインさんとオトヤ君がしぶしぶ納得すると、今度はあたしがクリスさんに問いかけながら詰め寄る。

 

「クリスさん。なら、あなたはどうして、お兄ちゃんとリュウ君にGGOに行くように頼んだんですか?あなたも感じてた……いえ、今も感じているんですよね?あの死銃(デス・ガン)というプレイヤーが何か恐ろしい秘密を隠してるって」

 

黙ったクリスさんに、アスナさんはあることを言った。

 

「クリスさん。死銃(デス・ガン)たちは私たちと同じ、SAO生還者よ。しかも、最悪とも言われたレッドギルド……ラフィン・コフィンの元メンバーだわ」

 

クリスさんもこれには本当に驚いた反応を見せる。

 

「っ!?本当かい?それは」

 

「ええ。私とクラインさんとザック君は、《ラフコフ討伐戦》に参加したから。死銃(デス・ガン)たちがゲームの中で人を殺すのは、今回が初めてじゃないのよ」

 

アスナさんに続くようにザックさんも話に加わる。

 

「殺害方法はまだわからないが、奴らの名前は《アビス》、《ザザ》、《ソニー》だっていうことはわかった。あとはアンタが親父……警察を動かしてくれたら今すぐに解決できるだろ?」

 

クリスさんが何も言えずに黙り込んでいると、リズさんが話に入ってきた。

 

「ねえ……アスナ、ザック。クリスハイトって、SAOのこと知っているの?確か、リアルではリアルでは何かネットワーク関連の仕事してる公務員さんで、VRMMOの研究がてらALOやってるって話だったけど......」

 

「その通りなんだが、昔は別の仕事をしていたんだよ。僕は、総務省の《SAO事件対策チーム》一員だったんだ。……と言っても、対策らしい対策なんて何もできない、名ばかりの組織だったんだが……」

 

自嘲的になっているクリスさんに、アスナさんが言った。

 

「それでも、あなたなら今すぐに死銃(デス・ガン)と名乗るプレイヤーの現実世界の名前や住所を突き止めて、今自宅からGGOサーバーに接続しているか、契約プロバイダに照会することはできるでしょ?」

 

「確かに可能だよ。でも、明確な証拠が上がっていないから、今すぐにっていうのは難しいんだよ……」

 

解決手段はあるっていうのに、それを今すぐ実行できないなんて……。

 

「お兄ちゃんとリュウ君は、自分たちで何とかするしかないって思って、今あの戦場にいるんだと思います。きっと、カイトさんも……」

 

皆が黙り込んでいる中、あたしはそう呟いた。そして震える両手を体の前で握り合わせ抑え込みながら続ける。

 

「夕べ帰ってきた時、お兄ちゃん、凄く怖い顔してました。リュウ君も今日昼間に会った時、何かすごく思い詰めていた感じだったんです。多分、昨日の予選の時点で気付いたんだと思います。GGOにラフィン・コフィンに入ってた人達がいること、その人たちが本当に人を殺していることを……」

 

あたしもリュウ君とお兄ちゃんの様子がおかしいことに薄々と気付いていた。昼間にリュウ君に会った時、リュウ君はどこか不安そうな顔をしていた。理由は知らなかったけど、2人を引き止めようと思えば引き止めることはできたはずだ。

 

不安が抑えきれなくなる中、ザックさんが声を震わせながら話し始めた。

 

「様子がおかしかったのは、カイト……隼人もだ。今日会った時のアイツ、《ラフコフ討伐戦》に参加した時と同じ顔をしていた……。きっと気のせいだと思っていたけど、まさか本当にそうだったなんて……。何で……気づいてやれなかったんだよ……」

 

身体を震わせて俯くザックさん。目から涙が零れ落ちていた。

 

「ザック……」

 

リズさんは慰めようとザックさんの左肩に手を置く。

 

「カイトって……もしかしてカイト君も……」

 

まともに話せる状態でないザックさんに代わって、シリカちゃんがクリスさんに説明する。

 

「実はカイトさんも今回のこと知っていたみたいなんです。GGOでキリトさんとリュウさんに会ったらしいですから、多分2人から聞いて……」

 

「バッカ野郎がぁ!水クセェんだよ!一言言ってくりゃ、どこだろうとオレもコンバートしたのによ!」

 

クラインさんが叫びながら左手で力任せにカウンターへと叩きつけた。

 

「でも、キリトさんとリュウさんとカイトさんなら言わないと思います……」

 

シリカちゃんは泣き笑いのような顔でピナを抱きしめながらそう呟く。それを聞いたオトヤ君は微笑みながら頷いた。

 

「そうだね、3人ともそういう人たちだよね……。少しでも危険があると思ったなら、僕たちを巻き込もうとするわけもない。そういう人たちだから……」

 

壁の大スクリーンには、いくつもの映像が映し出されている。でも、あたしたちはリュウ君とお兄ちゃんのGGOでのアバターの外見を知らない。ザックさんの話だと、カイトさんは現実世界やALOとあまり変わりないらしい。だけど、映し出される映像には彼の姿はない。そしてあのボロマントたちもだ。

 

大スクリーンの左端にあるプレイヤーリストには、リュウ君たちの名前がある。他の出場者たちが【DEAD】ステータスになる中、3人ともまだ【ALIVE】のままだ。きっとどこかで死銃(デス・ガン)たちと戦っているのだろう。そう信じるしかなかった。

 

アスナさんがクリスさんに訊ねた。

 

「クリスハイト、あなたは知ってるはずよね?キリト君とリュウ君がどこからダイブしているのか」

 

「あー……それは、まあ……。と言うか、その場所は僕が用意したんだ。セキュリティは鉄板、モニタリングも盤石だよ。すぐそばには何か起こった時に最適な人がいるから、キリト君たちの現実の体に危険がないのは責任もって安全は保証するよ」

 

「それで場所は何処ですか?」

 

更にあたしもクリスさんに訊ねる。

 

「流石にそれはちょっと……」

 

クリスさんはあたしたちから目を逸らして口ごもった。またしても誤魔化そうとしているのを察し、ハサミと包帯を用意してクリスさんの元に行く。

 

「ねえ、クリスさん。リュウ君が何処にいるか教えてくれないと……刻みますよ?」

 

何処かのネットアイドルみたいに黒い笑みを浮かべ、ハサミを数回開閉させながらそう言い放ち、最後にハサミで包帯を切った。直後、何処からか『ヤベーイ!』と謎の音声が聞こえてきた。

 

クリスさんは顔を一気に青ざめ、声を震わせながら話し出した。

 

「えっと……ち、千代田区の……お茶の水の……病院です……」

 

「千代田区の都立中央病院?そこってキリト君がリハビリで入院してたっていう!?」

 

「は、はい……」

 

あたしへの恐怖のあまり、アスナさんに対しても敬語で話すクリスさん。

 

「そこなら今あたしたちがダイブしているところからタクシーを使えばすぐに行けます!アスナさん行きましょう!現実世界のリュウ君とお兄ちゃんがいるところに!」

 

「うん!」

 

「カイトは家からダイブしているはずだ。オレはカイトの家に行く!」

 

「ザックまで行くのっ!?」

 

「ああ。家にはアイツの姉さんと妹がいるが、念のためにな。リズたちはここでカイトたちのことを見ててくれ!」

 

「わかったわ。3人とも気を付けてね」

 

あたしとアスナさんとザックさんは頷く。そして、あたしたちはログアウトした。

 

 

 

 

 

ログアウトすると、ダイブしたエギルさんが現実世界で経営している喫茶店兼酒場《ダイシー・カフェ》の二階の部屋の天井が視界に映り込む。すぐに携帯でタクシーを呼び、荷物をまとめて部屋から出る。

 

一階に下りるとエギルさんに呼び止められた。

 

「どうしたんだよ、そんなに慌ててよ。もしかして試合が終わってキリトとリュウのところに行くのか?」

 

「そんなところです!」

 

「今日はありがとうございました!じゃあ、私たちはこれで!」

 

あたしとアスナさんはそう言い残して《ダイシー・カフェ》を後にして、さっき呼んだタクシーに乗って、千代田区のお茶の水の都立中央病院へと向かう。

 

――リュウ君、お兄ちゃん、待ってて!あたしたちもすぐにそっちに行くから!




3カ月ぶりにリーファ達の出番となりました。本当ならもっと早くにこの話をやりたかったのですが、まさかこんなに時間がかかってしまうなんて……。
そして久しぶりにリーファの鉄板ネタとなっている美空の「刻むよ」が登場しました。今回は7つのベストマッチの時にやったやつにしました。これでまだやってないのは、プライムローグの「ピーマン、山ほど刻むよ」だけになりましたね。でも、リーファの「刻むよ」は私の予想に反して好評なので、これからもやっていきたいと思います(笑)

この前、アリシゼーション編最終章の新PVが公開されましたよね!放送まであと1か月切って、益々待ちきれなくなってきました!
だけど、リーファのあのシーンが少し流れた時は、クローズマグマやクローズエボルに奴をボコボコにしてもらいたいと思うほど、ブチギレそうになりました。最近、本作では原作以上に奴を叩き潰してくれるのを期待しているというコメントをいくつも頂いてますし、私もそのつもりでいます。

SAOとあまり関係ないですが、FGOで復刻版のアポクリファのコラボイベントが開催されてテンションが上がりました!やっとうちのカルデアにジーク君を呼ぶことができる!余談ですが、最近ジーク君を見るとリュウ君と重なって見えてしまうことが多いんですよね(笑)。

GGO編もいよいよ大詰めとなってきました。次回もよろしくお願いします。

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