ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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リーファ「GGOで最強ガンナー決定戦の第3回BoB。生き残っているプレイヤーも残り僅かとなり、大会もクライマックスを迎えていた」

アスナ「その中で、今も暗躍を続ける死銃(デス・ガン)たち。キリト君とリュウ君は、死銃(デス・ガン)の一味のソニーとアビスを追い詰めるも逆に2人が追い詰められてしまう」

リーファ「アスナさん、なんか病院に向かっている間にリュウ君もお兄ちゃんもピンチになっているんですけど!」

アスナ「わたしも今あらすじ紹介の原稿渡されて、凄く焦っているんだけど!2人ともどうなっちゃうの!?」

リーファ「スタッフさん、早く第17話に進んで下さい!」

ユイ「あ、言い忘れてましたが、今回の戦闘シーンの挿入歌としてRIDER CHIPSさんの《Law of the Victory》がオススメみたいです」

アスナ「ユイちゃん、わたしたちよりも随分と冷静だね。しかもなんか宣伝しちゃってる……」


第17話 届く温もり

俺のイクサカリバーとアビスのエタールエッジが何度も激しくぶつかり合って火花を散らす。さっきからこんな状態が続いているが、明らかに俺の方が押されている。

 

アビスはSAOでは攻略組のトップクラス級の長剣使いだった。だが、今奴が手にしているのは、SAOの時には使っているのを見たことがない短剣だ。それも長剣と同じくらい扱い慣れているなんて誰も知っていなかっただろう。加えて左手にはハンドガンを持っている。

 

剣戟から逃れようと距離を取っても、銃で撃ってくる。

 

遠近共に隙が無いと言ってもいいだろう。

 

オマケに、俺がサブウェポンとして使っているディエンドライバーについているアンカーフック機能は、木も建物もない砂漠のど真ん中では全く役に立たない。今はただのハンドガンだ。

 

先ほどから俺ばかりダメージを負っていき、体中に切り傷や銃弾による傷が増えていく一方だ。

 

「どうしたんだ、もう終わりか?もっと俺を楽しませてくれよ」

 

「言われなくてもそのつもりだ!」

 

挑発してくるアビスに怒りを露わにしてイクサカリバーを振り下ろす。だが、奴はエターナルエッジで的確に攻撃を防ぎ、反撃にハンドガンで撃ってきた。

 

寸前のところで横に回避し、軽く頬を掠めた程度で致命傷は免れた。そこへアビスが地面を蹴り、前進しながらの高速連撃技……短剣スキル9連撃《アクセル・レイド》のように斬撃を繰り出してきた。

 

回避しきれず、俺の体を鋭利な刃が次々と切り裂いた。

 

「ぐわぁっ!」

 

攻撃をまともに受けてしまい、地面に転がる。

 

「リュウ!」

 

近くでソニーの相手をしていたキリさんが助けに入り、剣による強力な突きを繰り出す単発重攻撃の技……《ヴォーパルストライク》をアビスに放つ。

 

しかし、アビスはすぐにキリさんの存在に気が付いて横に回避する。

 

《ヴォーパルストライク》を放ったことで隙が出来てしまったキリさん。そこにソニーのブレードガンナーから数発の銃弾が放たれてキリさんに命中する。

 

「ぐわぁぁぁぁっ!!」

 

「キリさん!」

 

銃弾を喰らったキリさんが俺の近くに転がった。

 

「大丈夫ですかっ!?」

 

「なんとかな……。すぐにソニーを倒してお前に加勢しようとしたけどダメだった。アイツ、ラフコフ討伐作戦の時よりずっと強くなっている。俺に負けて、黒鉄宮の牢獄に閉じ込められてからSAOがクリアされるまでの間に、ずっと片手剣の扱いの練習をしてきたんだろう……」

 

キリさんも大分ソニーに苦戦しているようだ。SAOではレベルもスキル熟練度も彼の方が上だからこの世界でも奴をすぐに倒せると思っていたけど、そうはいかなかったみたいだ。それに、キリさんのフォトンソードで奴のブレードガンナーは防げないから、武器の相性も最悪だと言っていいだろう。

 

倒れている俺達に、アビスとソニーが武器を持って近づいてくる。

 

「あの黒の剣士をここまで追い詰めるなんて、随分と成長したんだなソニー。流石、SAOで俺の片腕を務めていただけはあるな」

 

「黒の剣士にはあの時、世話になったからな……。ここでコイツを殺し、俺達のゲームを成功させる……」

 

「そういうことなら、さっさと終わらせるか」

 

俺たちは体に鞭を打って無理やり起き上がり、武器を持って構える。

 

「まだ勝負は終わってないだろ……」

 

「勝手に俺たちの負けだって決めつけるなよ……」

 

「まだそんな話せるだけの体力は残っているみたいだな。でも、今すぐに地獄を楽しんでもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「リュウ君っ!お兄ちゃんっ!」

 

壁掛けのパネルに、リュウ君とお兄ちゃんが攻撃を受けて地面に転がったところが映し出された瞬間、思わず声が出てしまう。

 

明日奈さんは声を出さなかったが、凄く不安そうにして黙ってライブ中継を見ていた。

 

リュウ君とお兄ちゃんは立ち上がって再び戦い始めた。でも、先ほど変わらずアビスとソニーに苦戦している。特にリュウ君はお兄ちゃんよりもダメージを負っていてかなり深刻だ。

 

中継を見ていると、傍にあるモニター装置が刻む電子音が上がり、あたしと明日奈さんはそっちに顔を向けた。

 

リュウ君とお兄ちゃんの心拍が160bpmまで上昇していた。

 

画面から目を離し、ベッドに横たわるリュウ君とお兄ちゃんの顔を見る。2人とも額には汗が滲み、表情も少し苦し、呼吸も荒くしていた。

 

「フルダイブ前に多めに水分を取ってもらってるけど、フルダイブしてもう4時間以上経っているから、こんなに汗を掻くと脱水の危険があるわ。一度ログアウトして貰うことは……出来ないよね?」

 

「ここで何を言ってもキリト君とリュウ君には聞こえませんし、大会中にログアウト機能が有効かどうか……。一応、安全面を考慮して、危険なほど脱水する前にアミュスフィアが自動カットオフにするはずなんですが……」

 

看護師さんの言葉に明日奈さんはそう答える。

 

「わかりました。もう少し様子を見るわ」

 

この看護師さんがいてくれるならリュウ君とお兄ちゃんは大丈夫だろう。でも、苦しそうにしているリュウ君とお兄ちゃんを見ていると胸が痛くなる。

 

リュウ君とお兄ちゃんが仮想世界にダイブするのに使っているのは、ナーヴギアじゃなくてアミュスフィアだ。だからここでアミュスフィアを外しても死に至ることはない。今すぐ2人をこの苦しみから解放させたかったけど、できなかった。

 

リュウ君とお兄ちゃんは、あたしが知らないSAOでの因縁に決着を付けるために、そしてこれ以上誰かを殺させないために命がけで戦っている。それをあたしにも明日奈さんにも邪魔することはできない。

 

リュウ君とお兄ちゃんはすぐ近くにいるのに、今は遥か遠くにいる。そんな気がした。

 

2人に何もしてあげられないことが辛かった。

 

『ママ、リーファさん、手を……』

 

不意に、明日奈さんのケータイからユイちゃんの声がする。

 

『パパの手を、リュウさんの手を握ってください。アミュスフィアの体感覚インタラプトは、ナーヴギアほど完全ではありませんが、ママとリーファさんの手の温かさならきっと2人に届きます。わたしの手はそちらの世界には触れられませんが、わたしの……わたしの分も……』

 

ユイちゃんの声は最後の方は大きく震え、揺れていた。

 

「ううん、そんなことない。ユイちゃんの手もきっと届くよ。だからわたしたちと一緒にパパ……キリト君とリュウ君を応援しよ」

 

明日奈さんは微笑んでそう言い、お兄ちゃんの右手にケータイを握らせ、その上から両手で包み込む。

 

その時、ある言葉が脳裏をよぎった。

 

『手が届くのに手を伸ばさなかったら死ぬほど後悔する。それが嫌だから手を伸ばすんだ』

 

『リュウ君が辛いときはあたしがリュウ君の手を掴むよ。だから安心して』

 

そうだよね。今リュウ君に手を伸ばさなかったら死ぬほど後悔するだろう。リュウ君が苦しい思いをしているなら、あたしが彼の手を掴んであげないと……。

 

あたしも明日奈さんのようにリュウ君の左手を両手で包み込む。リュウ君の手は氷のように冷え切っていた。恐らく、お兄ちゃんも一緒だろう。

 

――リュウ君、頑張って。あたしはいつも君の傍にいるから。あたしも一緒に戦うから。だから、お兄ちゃんと一緒に戻ってきて。

 

観て眼を閉じてそう念じた。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

アビスとソニーの猛攻撃を受け続けたリュウとキリト。残っている体力も半分を切り、地面に片膝を付いて息を切らしていた。

 

ここで自分たちの中で誰か1人でも負ければシノンの命はない。まだ倒れるわけにはいかないと戦おうとするが、勝機が見えない。

 

どうすればいいんだと思っていた時だった。

 

――リュウ君、頑張って。あたしはいつもリュウ君の傍にいるから。あたしも一緒に戦うから。

 

――頑張って、キリト君。あなたの信じるもののために。わたしは何時だって側に居るから。ずっとあなたの背中を守り、支え続けるから……。

 

――パパ、絶対に戻ってきてください。わたしとママはパパが戻ってくるのを待っていますから。

 

現実世界で自分たちの帰りを待っている人たちの声が聞こえた。気のせいかもしれなかったが、傷ついたリュウとキリトに力を与えてくれた。そして、リュウ達は立ち上がった。

 

「キリさん。まだここで倒れるわけにはいかないですよね……」

 

「ああ。カイトとシノンのためにも、そして俺たちの帰りを待っている人たちのためにもな……」

 

アビスはそんな2人を見てあざ笑う。

 

「まだ立ち上がるだけの元気があったとはな。でも、お前たちの体もう限界だろ。さっさと楽になった方がいいと思うぜ」

 

「いや、そういうわけにはいかないんだよ。 アビス、ソニー……お前たちを攻略するまではな!」

 

「お前たち死銃(デス・ガン)の……ラフィン・コフィンの殺人はここで終わらせてやる!」

 

何も言わず黙っていたソニーだったが、リュウとキリトの言葉を聞き、怒りを露わにする。

 

「ふざけるな。俺たちのゲームはまだ終わらない。お前たちを殺すまではな」

 

ブレードガンナーを強く握り、剣先をリュウとキリトに向ける。隣にいるアビスもフッと軽く笑い、エターナルエッジとハンドガンを手にする。

 

「キリさん!」

 

「ああ!」

 

「「お前の運命は俺が変える!!」」

 

リュウは左手にイクサカリバーを、キリトは右手にフォトンソードを持ち構えた。

 

「「超協力プレイでクリアしてやるぜ!!」」

 

最後にリュウとキリトが同時にそう言った直後、アビスはハンドガンの銃口を2人に向けて発砲。

 

弾丸が2人の間を通り抜けて、後ろにある壊れて動けなくなっているタンクローリーに命中。巨大な爆音と共に爆炎が上がった。

 

「かかってこい」

 

アビスがそう口にした直後、リュウとキリトは地面を蹴り、アビスとソニーに武器を振り下ろす。対するアビスとソニーも各々武器を手にして迎え撃つ。攻撃は防がれてしまうも続けざまに武器を振るい攻撃する。

 

リュウとキリトの動きは倒れる前と比べてキレがいい。そして、同時攻撃や片方が先に攻撃してもう片方が少し遅れて続くように攻撃するという抜群のコンビネーションで、お互いをカバーしながらアビスとソニーを押していく。

 

アビスが素早い身のこなしで前進斬り……短剣スキル6連撃《ミラージュ・ファング》を繰り返してきた。

 

対するリュウは目にも止まらない速度で、龍が鍵爪でクリスタルを粉々に破壊するかのような4連撃の斬撃でそれを相殺する。

 

ユニークスキル《龍刃》の4連撃技《クリスタル・ブレイク》だ。

 

アビスは初めて見る《龍刃》に高揚する。

 

「フッ、まさか以前戦った時より強くなっているなんてなぁ」

 

「今の俺はあの時の俺とは違うんだよ!」

 

当時はまだ得ていなかったユニークスキルの1つ、全てのプレイヤーの中で最も悪しき力に負けない心を持つ者に与えられる《龍刃》。

 

悪の力だとしても誰かを守るために使う決意を見つけ、そして自分の全てを受け入れて支えてくれる最愛の人との出会えることが出来たリュウだからこそ扱える力。

 

ユニークスキルどころかソードスキルすら存在しないGGOでは、動きを再現する辺りが限界だ。それでもアビスには十分効果があった。

 

「今の俺は負ける気はしない」と意気込んだリュウは、次々と動きを再現できる《龍刃》をアビスに叩き込んでいく。

 

龍が自身の鋭い牙で相手を串刺しにするかのようにイクサカリバーを突き刺していく。龍刃 7連撃技《バイティング・ドラゴン》。

 

アビスはリュウの攻撃をエターナルエッジで防ぐが、初めて見る剣戟を完全に見切ることはできず、ダメージを負う。

 

ここでリュウの攻撃は止まることはなく、更にもう一撃喰らわせようとイクサカリバーを振り上げる。

 

浮遊城で紅の騎士に一撃喰らわせて黒の剣士に逆転のチャンスを与え、妖精の国を支配していた緑の怪物を打ち破った技……単発垂直斬り《グランド・オブ・レイジ》。

 

一気に振り下ろされたイクサカリバーはエターナルエッジを地面にたたき落とし、アビスの身体を斬りつけた。

 

「ぐっ!」

 

まともに攻撃を受けてアビスは怯み、左手からもハンドガンを落とす。

 

リュウはこの隙に、自分の近くに倒れているトライチェイサーから機動キーとなっている右側のハンドル……トライアクセラーを素早く抜き取り、キリトへと投げ渡す。

 

キリトは、くるくる回転しながら飛んでくるトライアクセラーを左手でキャッチ。それに付いているボタンを押すと先が伸びて警棒となった。そして、ソニーが振り下ろしてきたブレードガンナーをトライアクセラーで受け止めた。

 

「お前のご自慢の剣もこれだけはすり抜けることはできないみたいだな!」

 

ニヤッと笑い、左手で持つトライアクセラ―でソニーのブレードガンナーを弾き、右手で持つフォトンソードでソニーを斬りつける。

 

「ぐわっ!」

 

地面に転がるソニー。そこにキリトが続けざまに攻撃しようとするが、ソニーもこのまま終わるわけにはいかないと、ブレードガンナーのトリガーを引いて発砲。

 

「ぐわああああっ!」

 

キリトはまともに銃弾を受けてしまい、左手からトライアクセラーを落として地面を転がる。

 

ソニーが倒れているキリトに剣を振り下ろそうとする。

 

「死ね!」

 

「させるか!」

 

リュウは空いている右手でホルスターからディエンドライバーを抜き取り、ワイヤーアンカー射出用のトリガーを引く。すると、ディエンドライバーから伸びて出たワイヤーアンカーは弧を描いてソニーの右腕に命中。その拍子にソニーの手からブレードガンナーが落ちた。

 

「うおおおおおおおおおおおお!!」

 

キリトはこのチャンスは逃さないと、咆哮を上げて踏み込み、一度強く左にひねった全身を、弾丸のように螺旋回転させながら突進する。そして、左手でホルスターからこの世界でのもう1つの武器《FMファイブセブン》を抜き取り、銃口をソニーに向け、左の剣で切り上げるイメージのままにトリガーを連続で引く。

 

放たれた数発の銃弾はジョニーの身体に命中する。更に、時計回りに旋転する体に重量を全部乗せ、右手の光剣を左上から叩きつける。

 

2本の剣ではなく、1本の剣と1丁の拳銃ではあるが、これは二刀流重突進技《ダブル・サーキュラー》だ。

 

青紫に光るエネルギーの刃が、ソニーの右肩を切り裂き、そのまま胴へと斜めに断ち割り、左脇へと抜ける。

 

斬り裂かれたソニーの身体は宙を舞って地面に転がり、【DEAD】と死亡したことを表すタグが浮かび上がった。

 

「ソニーの奴はやられたか。まあいい」

 

アビスはソニーの死を惜しむ様子もなく、先ほどソニーが落としたサブマシンガンを拾う。

 

体勢を整えたキリトはリュウの隣に並び立った。

 

「キリさん」

 

「倒すぞ、一緒にな」

 

武器を持ち構えるリュウとキリト。

 

アビスがトリガーを引いた途端、サブマシンガンの銃口が火を噴いた。

 

銃弾の雨が飛んでくる中を、リュウとキリトは自身が持つ剣で防ぎながら何とか接近しようとする。しかし、防ぎきれなかった銃弾が当たり、手からディエンドライバーとFMファイブセブンが離れ落ち、残っていた体力を少しずつ奪われていく。加えて蓄積されたダメージが大きく、力尽きて今にも倒れそうになる。

 

意識が遠のく中、リュウの左手が、キリトの右手が、何者かに操られるように動いた。冷え切っていた手をよく知る温もりが包み込んで温め、的確に銃弾を防いでくれる。

 

2人はこの温もりが自分たちの最愛の人と愛娘のものだと感じ取り、軽く笑みを浮かべる。

 

「「うおおおおおおおおおおおおっ!!」」

 

最後の力を振り絞り、リュウとキリトはそれぞれ目を銀色と金色に光らせながら地面を蹴った。そして、すれ違いざまにアビスを目にも止まらない速さで切り裂いた。

 

「ぐあああああああああっ!!」

 

利き手の違う2人の渾身の斬撃がアビスの中央でクロスする。アビスは悲痛な叫びを上げながら膝から崩れ落ちる。

 

同時に、リュウは右手で、キリトは左手で拳を作り、拳をぶつけた。

 

「お遊びのつもりで手を抜いていたのが命取りだったみたいだな……」

 

この言葉にリュウとキリトはハッとなって振り返り、武器を構える。

 

2人の渾身の一撃を受けたにも関わらず、アビスはHPが僅かに残っていたのかまだ生きていた。さっき落とした自身のハンドガンを手に取り、重い身体を起こして2人にこう言い放った。

 

「でも、退屈しのぎには十分だったぜ……。これなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。また会おうぜ、チャオ……」

 

銃口を自分の頭にピタリと付け、トリガーを引いた。直後、バンッと銃声が響いて一発の銃弾がアビスの頭を撃ちぬいた。この銃弾が決め手となり、アビスにも【DEAD】のタグが浮かび上がった。

 

「どうやら俺たちは自分の役目を果たせたみたいですね……」

 

「だな……」

 

2人はアビスとソニーを倒せて安心し、同時に地面へと倒れ込んだ。

 

「早くカイトさんとシノンさんのところに行って加勢しないといけないのに全然力が入らないや……」

 

「アイツらなら俺たちがいなくても大丈夫だろ。疲れて動けそうにないからちょっと休んでから行こうぜ……」

 

「相変わらず呑気なんですから……。まあ、俺も一休みしてからじゃないと体が動く気配しませんから賛成ですけどね……」

 

つい先ほどまでの緊張感が一気になくなり、軽口を叩きながら笑みを浮かべるリュウとキリト。

 

倒れている2人の上空には、厚い雲に覆われた夜空が広がり、雲の切れ目から満点の星々が競い合うように光っていた。

 

2人は黙ってしばらくの間、GGO世界の夜空を見ていた。

 

 

 

 

 

その様子を現実世界の直葉と明日奈も見ていた。

 

「ふぅ…2人とも勝ててよかったわね」

 

安岐さんが2人に笑顔で言う。

 

「はい…キリト君…」

 

『パパ…』

 

「リュウ君…お兄ちゃん…良かった…」

 

明日奈と直葉は涙を浮かべながら、2人の勝利に安堵した。

 

 

 

 

 

同時刻。

 

リュウ達が戦闘を繰り広げた場所から数百メートル離れたところにある岩山。

 

そこにグレーのフードを深くかぶり、顔を隠している人物がいた。死銃のように亡霊のような姿だ。

 

グレーのフードの人物は、リュウ達の戦いを一言も発せずにスコープを使って見ており、戦闘が終わるとスコープをしまう。代わりに黒い大型のハンドガンを取り出した。

 

銃口を上に向けてトリガーを引いた途端、銃口から黒い煙が溢れ出てソイツを包み込んだ。煙が完全に消え、グレーのフードの人物も跡形もなく姿を消していた。

 

直後にライブ中継のカメラが1つ来るが、ソイツの姿を一切捉えることもなく通り過ぎていく。

 

この時、大会のフィールドとなっている孤島のISLラグナロクで()()()()1()()()()()()()()()()()()()()()()()という奇妙なことが起こっていた。だが、誰もそれには気が付いていなかった。まるで亡霊のように本当に実在するのかわからない者かのように……。




やっと最新話投稿できました!やっぱり久しぶりの戦闘シーンは難しいですね。

今回の戦闘シーンは、旧版とは大きく変わってエグゼイド第40話にビルド第29話と第44話の戦闘シーンを元にしてみました。他にもリュウ君が龍刃を再現するなどリメイク版でこそ使えるネタを入れてます。旧版で元にしたオーズの最終決戦はもっといいところで使えるのではないかと思ったので、いつか登場するかもしれないです(笑)

今回の話を書いてて愛の力は強いなと思いました(笑)

SAOアニメはここ数話は本当に絶望感が半端ないですよね。特に最新話のリーファのところはかなりグロくて言葉を失ってしまいました。でも、キリトの妹だということもあって彼女の活躍っぷりはカッコよかったです。そして、ついに映画に登場したエイジとユナが登場!最初は出てもセリフなしにならないか不安になりましたが、ちゃんとセリフがあって安心しました(笑)。見ててオーディナルスケール編も早くやりたいなと思いました。
次回はキリトが復活するみたいなので本当に待ち遠しいです。

ゼロワンの最新話もSAOに続いて絶望感が半端なくて、土曜深夜から日曜朝までお通夜みたいな空気となってしまいました。これまでもライダーでは主人公のダークサイドの一面を描く展開はありましたが、このタイミングで来るとは思ってもいませんでした。ゼロワンも残り数話となり、どうなってしまうのか目が離せないです。

次回はカイトとシノンの戦闘になります。

余談ですが、本作ではSAOアニメの最新話であったリーファのグロシーンはやらない方針でいます。代わりにリュウ君が、初期のクローズチャージみたいに好戦的になったり、かなりボロボロになってしまいますが。流石にリュウ君の左目に槍が突き刺さるのはやらないです。それやるとリーファが精神崩壊しちゃいますので。

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