平凡少女ルカの★マギカ   作:Die-O-Ki-Sin

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2つも未完結作品があるのに新しい作品に手を出したアホは私です。しかも2つのうち1つは原作まで被ってます。
そんな無計画過ぎる作者ですが、お読みいただけたら幸いです。




プロローグ.平凡な少女と非凡な日常

 鎖で編まれた、迷路のような道を進む。ここは魔女の結界。人間を内側から蝕む邪悪な存在の住む居城。

 

「ねぇ、やっぱり私はついてこない方が……」

 

 前方を走る、闘牛士の様な格好をした少女に話しかける。

 

「たしかに危ないかもしれない。でもあたしは、流歌がいるから頑張れるんだよ!大丈夫、流歌はあたしが守るよ。何があっても……ね」

 

 彼女……私の親友、牧名絵理は振り返らずにそう言った。彼女は、人知れず魔女と戦う魔法少女という存在だ。なんでも、キュウべぇとか言うやつと契約し、1つの願いを叶える代わりに魔女と戦う使命を得るらしい。

 らしい、というのは私がそれを直接聞いたことが無いからだ。私にはキュウべぇの姿を見ることは出来ない。魔法少女としての素質が無いみたいで、この魔女の結界にも絵理が無理矢理連れ込んだのだ。

 

「了解!流歌、もうすぐ魔女のいる部屋に着くってさ!」

 

 絵理は自分の肩を見て頷く。きっとあそこにキュウべぇが居るのだろう。

 

 これが私達の日常。絵理が魔女と戦い、私がそれを応援し、帰りにはケーキ屋に寄って打ち上げする。そんな、アニメで見たような非凡な世界。

 

 鎖の通路の先には1つの扉。『立ち入り禁止』とかかれたテープでがんじがらめにされている。

 絵理は1枚の布を広げる。カポーテと言う、闘牛士が牛を誘導するために使われる布だ。

 絵理はカポーテを巻物のように棒状にすると、それに魔力を送る。カポーテは赤い光を放ち、その姿を変えた。彼女のソウルジェムと同じ朱色の宝石が飾られた赤い斧。

 

「どっせぇい!」

 

 絵理は斧を扉に叩きつけた。立ち入り禁止のテープが破れ扉が開く。

 何重にも隔離された扉の先、球状に編まれた鎖の中に魔女はいた。

 

「へーぇ、またこいつか……」

 

 1本の鎖を軸にして、何重にも鎖を巻いた変な姿。その姿は芋虫か蛭か、教科書で見た筋肉にも似ている。

 私達が鎖の魔女と呼んでいるこいつはとにかく大量に居る。確か、絵理が最初に戦った魔女もこいつだったはず。

 うねうねと動くそいつは鎖の端をこちらに向けた。あそこが頭なのだろう。全く区別できないが。

 

「気づかれたみたいだね、絵理、気を付けて!」

 

「はいよ!ま、今のあたしがこんなのに負けるはず無いって!」

 

 絵理は斧を構えて魔女に斬りかかった。金属と金属が擦れる音がする。

 

「今回のはちょいと固めかな?」

 

 個体によっては、今の一撃で真っ二つにされることもあった。どうやら今回の鎖の魔女はそれなりに強いようだ。

 

「ま、よゆーですよ!よゆー!」

 

 絵理は後ろに跳んで距離をとる。魔女に巻き付いていた鎖が伸び、槍のように絵理の心臓を狙う。

 

「甘い!チョコケーキより甘いよそんなの!」

 

 絵理の持つ斧が赤い光を放ち、その形はもとのカポーテに戻る。絵理はカポーテで鎖の突きを受け止めると、それを魔女に向けて受け流した。

 絵理に向けて放った鎖が、もとの勢いのまま魔女のもとに飛んで行く。絵理が一番得意とする受け流しの魔法だ。

 

「自業自得ってやつだね!いやぁ、勉強になるなぁ!」

 

 魔女の体に鎖が突き刺さった。さらにそれは地面にも深々と突き刺さり、杭のように魔女の動きを止める。

 

「ま、明日の朝には覚えてないんだけどね!」

 

 高く跳躍した絵理は、再び斧に変わったカポーテを叩き付ける。ただでさえ重い斧が位置エネルギーを味方につけて魔女の体に突き刺さり、爆散した。

 

「ちぇーっ、やっぱりこいつ、グリーフシード持ってないんだね」

 

 魔女の死体からは何も見つからなかった。魔法少女の魔力を回復させる力を持つ、魔女の卵。鎖の魔女がそれを落としたことはない。

 鉄の臭いに包まれた結界が消えていく。場所は学校の屋上だ。

 

「っていうか、まさかうちの学校(見滝原中学校)に魔女が来るなんてねぇ」

 

 変なところに結界を作る魔女だった。絵理がキュウべぇから聞いた話によると、魔女は人気のない所に結界を作ることが多いらしい。人の多い所に作ったとしても、生気を吸い取りやすい病院や、負の感情が溢れる繁華街がほとんどなんだそうだ。だから学校に結界を作るなんて……。

 

「それじゃあ戻ろうよ、絵理」

 

 あまり長居するのはよくない。何てったって今日は日曜日。本来なら私達はここにいてはいけないのだ。

 

「うん……それなんだけど、さ」

 

 絵理は視線を合わせずに言う。

 

「ちょっと、あたしここでやることがあるんだ。流歌は先に帰っててよ」

 

 子供が親の前で罪を告白するように。言いにくそうに、でも言わなければいけない、そんな強迫観念に囚われた様子で。

 

「なに?怪しい儀式でもするの?」

 

「あ、あはは……そんなところ、かな」

 

 何を言っても話してくれそうには無かった。

 

「そっか、じゃあ私は先に帰ってるよ」

 

 絵理なら変なことはしないだろう。私はそう信じてる。私は屋上の扉を開き、階段を下りた。

 

「……あ」

 

 そうだ、1つ言い忘れていた。日課の打ち上げで食べるケーキ。今日はケーキ屋が定休日で、ケーキを買うことができないのだ。

 私はその事を相談しようと、下ってきた階段を再び登る。

 屋上へ向かうドアを開けると、そこには私の想像だにしなかった光景が広がっていた。

 

「……絵理!?」

 

 魔法少女の姿の絵理。彼女の胸元に付いたソウルジェムから、黒い穢れが溢れている。

 

「流歌、何で!?」

 

 私に気づいた絵理がソウルジェムに手を当てた。だが、もう遅かったのだ。

 

「やだ、流歌、逃げて!」

 

 パリン。

 絵理の胸元のソウルジェムが砕け散り、黒い宝石が産み出される。それは私達が、グリーフシードと呼んでいた物だ。グリーフシードから穢れが広がり、おかしな世界を作り出す。

 

「絵理!?」

 

 私は絵理に近寄る。絵理の体は冷たく、動かない。

 

「絵理!目を覚ましてよ!」

 

 魂を抜き取られてしまったかの様に応答がない。あの一瞬にして、絵理が死んでしまった……!?

 

「っ、キュウべぇ!私には見えないけど、あんたには聞こえてるんでしょ!?これはどういうことなの!?」

 

 キュウべぇの姿は私には見えないし、キュウべぇの声も聞こえない。だけどその逆なら、キュウべぇには私の存在が認識できるはず。

 

『僕を呼んだかい?里部流歌』

 

 頭の中に直接響く声。私の目の前に、白いなにかがちょこん、と出てくる。兎のような、猫のような不思議な生き物だ。

 

「説明してよ!絵理はどうなっちゃったの!?」

 

 私が居るのは闘牛場の中心。真っ赤に染まった空は目に痛い。

 

『彼女は魔女になったんだ』

 

「……は?」

 

 魔女。それは魔法少女の敵だったはず。魔法少女が魔女になるって、どういうこと?

 

『ソウルジェムの穢れが限界に達したとき、魔法少女は魔女になるんだ』

 

 穢れ。魔法少女が魔法を使う度に、ソウルジェムに蓄積されていくもの。穢れが溜まりすぎると魔法が使えなくなるとは聞いていた。だけど、魔女になるなんて……。

 

「何で、教えてくれなかったの」

 

 それは絵理に向けて呟いた言葉。だが、それに答えたのは白い悪魔だった。

 

『聞かれなかったからね。それにそもそも、魔法少女としての素質が無い君には関係のない話だろう?』

 

 キュウべぇはただ無感情にそう言う。見た目こそ可愛らしいものの、こいつの考え方はそうとう黒そうだ。

 

「絵理は……知ってたの?魔法少女が魔女になることを」

 

 何も知らないまま死んでいくだなんて、悲しすぎる。自分が、騙されていたことに気づかないままなんて。

 

『彼女は、魔法少女が魔女になることを知っていたよ』

 

 なら、どうして黙っていたの?

 そんな疑問は声にはならず、喉元を埋め尽くした。

 

「っ、そうだ!キュウべぇを見ることが出来るなら、魔法少女になれるんでしょ!?なら、私を魔法少女に――」

 

 キュウべぇを見ることが出来るのは魔法少女としての素質があるもののみ、そう絵理から聞かされていた。

 魔法少女になる際、1つだけ願いを叶えることができる。なら、絵理を蘇らせる事だって。

 

『君には不可能だ。今君に僕の姿が見えるのは、僕がわざと君に見せているからなんだよ』

 

 この無表情な生き物が、嗤っているように見えた。こいつは、私達の事を何だと思って……。

 

『それに彼女は死んでいない。ほら、みてごらん』

 

 キュウべぇが空を見上げた。

 

『彼女はそこにいるんだよ』

 

 空から何かが落ちてきて、地面に突き刺さった。それは絵理が使っていた物に似た斧。

 

『これが今の牧名絵理だ。再会が果たせてよかったじゃないか』

 

 斧には目玉がついていて、それがキョロキョロと辺りを見回している。

 

「……絵理……!?」

 

 ギョロリ、と。斧の瞳が私を見つめた。

 私は絵理の体を抱えながら、叫ぶ。

 

「絵理!私だよ、流歌だよ!元の体に戻ってよ!ねぇ!」

 

 斧の瞳はただ無機質に私を見つめている。だが、その視線が絵理の体に向いた途端に動き出した。ふわり、と宙に浮かんだ斧が私めがけて降り下ろされる。

 

「きゃあっ!?」

 

 間一髪。私のすぐ隣に斧が突き刺さった。しかしその時の衝撃で、私は絵理の体を落としてしまう。

 

「絵理!」

 

 その次の瞬間だった。絵理の体を突き破り、中から何かが這い出てきた。

 

「あれは……鎖の魔女!?」

 

 ウジ虫の様に、倒れた絵理の体から無数の鎖が出てくる。さっき戦った鎖の魔女を小さくしたような姿だ。

 小さな鎖達は私を見つけると、尺取り虫の様な挙動で近づいてくる。

 

「……嫌だ、助けて!」

 

 腰が抜けてしまい、立ち上がることができない。私は手と足を必死に動かして距離をとるが、屋上の柵に止められてしまった。

 だが鎖達は止まらず、成長しながらにじり寄ってくる。

 

「絵理……助けてよ……!」

 

 目をつむり、祈る。今の私に出来ることは、それしかなかった。何一つ特別なものがない、平凡な人間。ただ、非凡な少女と仲が良かっただけ。

 鎖が跳び跳ねた音が聞こえる。あぁ、私、ここで死ぬのかな……。

 

『させないよ、絶対に』

 

 絵理の声が聞こえた気がした。目を開けると、斧の魔女が鎖の魔女を一刀両断にしていた。

 

「絵理……!?」

 

 私の付近の鎖の魔女を倒した斧の魔女は、持ち手を私に向けて結界の地面に突き刺さる。手に取れ……ってことなの?

 絵理の体からはまだまだ鎖の魔女が涌き出てくる。私は深呼吸をしてから、恐る恐る斧の魔女を手に取った。

 

「……力が、沸いてくる」

 

 体が軽く感じる。自分の物じゃない力が、想いが、持ち手を通して私に入り込んでくる。

 

「……行くよ、絵理」

 

 私の背丈よりもはるかに大きい斧を、私は軽々と持ち上げた。自分の腕のように、この斧を自由自在に操れる。

 

「絵理の体から、離れろっ!」

 

 絵理の体を傷つけないように、その周囲に出てきた鎖の魔女を斬る。生まれたての魔女はそこまでの力を持っていないようで、易々と撃破できる。

 

『これは驚いた。人間に協力する魔女、か。前例がない訳じゃないけど、興味深い事象だね』

 

 言葉のわりには全く驚いた顔をしていないキュウべぇに殺意が沸いてくる。こいつがいなければ、絵理が死ぬことはなかったのに。

 

「あんたも死ね、そして絵理に謝れ!」

 

 大上段に構えた斧を、白い悪魔に向けて降り下ろした。

 白い悪魔の中身はぬいぐるみのようだった。内蔵も、血液も見当たらない。

 

『あんまり殺さないで欲しいなぁ、勿体無いじゃないか』

 

 屋上の避雷針の上から私を見下すキュウべぇ。分身か、幻か、それともキュウべぇが何体も居るのか。私がキュウべぇを睨むと、端末とはいえまた潰されるのは非効率的だね、と言い捨てて何処かへと消えていった。

 それから数時間後。

 絵理の体からは未だに魔女が生まれてくる。何時間も倒し続けているはずなのに。

 

「……しつこい、なぁ!」

 

 そう言いながら鎖の魔女に斧を叩き付ける。疲れは全く感じなかった。この斧が力を与えてくれているのだろうか。

 だがこれではキリがない。どうしたら、鎖の魔女が生まれるのを防ぐことができるのだろうか。

 絵理の体は穴だらけだ。どこもかしこも食い荒らされていて、辛うじて人の形を保っている。

 

「……ごめんね、絵理」

 

 でも、このまま食われ続けるよりは、良いと思うんだ。

 私は絵理の体の上で斧を持ち上げた。

 

「これ以上、絵理の体を汚させない」

 

 そして目をつむり、降り下ろした。絵理の体は鎖の魔女をも巻き込み爆散し、消えた。

 

「ごめん、ごめんね……!」

 

 誰もいない結界の中。私は斧の魔女を抱き締め、ただただ懺悔の言葉を呟いた。

 

 視界の隅に、シルクハットを被った誰かの姿が写った気がした。





若干長めのプロローグ。というかもはや1話な気もします。次回以降はちょっと短くなると思われます。
もう1つまどマギの小説を書いておりますが、そっちとこっちは全く関係は無いので両方読む必要は皆無です。でも読んでくれても良いのよ|д゚)チラッ
一応他の二つを優先、と言うことでこちらの更新頻度は低めになります。
さて、長くなりましたがお読みいただきありがとうございました。また次回、お会いできるのを心待ちにしております。

以下キャラ設定です↓

里部 流歌 サトベ ルカ
特徴:普通の少女。キュウべぇとは契約していない。魔法少女としての素質は無いが、キュウべぇや魔女を視認することができる。
魔法少女であった親友の死の謎を追っている。親友のなれの果てである斧の魔女は何故か流歌を襲わず、彼女の装備品のような扱いになっている。
容姿:右目にかかる茶髪のアシンメトリー。長さは短め。普段は焦げ茶色の瞳だが、斧の魔女を手にしたときには赤色に変わる。見滝原中の制服を何着か持っており、それを着回している。親友を失ってからはお洒落する心の余裕もない。右手の甲に斧の魔女の口づけがある。
性格:明るくて活発だった。親友を失ったことで何処かが壊れてしまい、今は笑うことはない。それなりに優しいので魔女に襲われた一般人を助けることもある。

牧名 絵理 マキナ エリ
特徴:流歌の幼馴染みで親友。キュウべぇと契約した魔法少女だが、流歌の前で突然魔女化してしまう。
昔から流歌に依存ぎみで、流歌のためなら何だってやってきた。魔法少女になったのも流歌が関係している様だが……。
容姿:真っ赤な髪を、ツインテールにしている。髪は腰ほどまで伸びており、振り回すと結構痛い。瞳の色は青。服は暖色系の物が多く、露出も大きい。男子のことは眼中にないので無防備な格好をしている。
魔法少女に変身すると、闘牛士の様な姿に変わる。長かったツインテールは纏められ、(その平らなとある部分もあいまって)男性のようにも見える。
武器はカポーテ。相手の攻撃を受け流したり、マミのリボンよろしく斧に変化させて攻撃することもできる。
性格:猪突猛進で考えるのはすべて終わった後。10秒以上何かを考えようとすると頭がパンクする超弩級のバカ。だが(流歌が絡まなければ)とても優しく、人望もある。

斧の魔女
斧の魔女。その性質は友愛。行き過ぎた友情はたとえ絶望の中でも親友のために。もうその親友がどんな存在であったかも思い出すことは出来ないが、親友を傷つけるものを決して許さない。
特徴:漫画にも登場した、斧を持った牛の魔女。今作品では色々と設定が違う。牧名絵理が魔女化した姿。流歌を傷つけるものを許さず、彼女の武器となって戦う。流歌の身体能力を飛躍的に上昇させる他、分身を行うことも出来る。
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