平凡少女ルカの★マギカ   作:Die-O-Ki-Sin

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3.ガール・ミーツ・イレギュラー

「今日はみなさんに大事なお話があります。心して聞くように」

 

 朝のHRの時間。結局昨日は何も見つけられなかった。……それも何時もの事だ。あのシルクハットの魔法少女は神出鬼没。だけどあいつは確実に、鎖の魔女の近くにいる。

 あいつが鎖の魔女とどんな関係にあるかなんて考える必要もない。絵理を殺したのは……あいつなんだ。

 

「目玉焼きとは、固焼きですか?それとも半熟ですか?はい、中沢君!」

 

 クラスの担任……早乙女先生が教鞭で中沢を指した。何かある度に答えを求められる中沢には同情を感じてしまう。

 

「えっ、えっと……どっちでもいいんじゃないかと」

 

「その通り!どっちでもよろしい!たかが卵の焼き加減なんかで、女の魅力が決まると思ったら大間違いです!」

 

 早乙女先生は破局する度にHRで愚痴を言う。PTAから文句を言われないか心配だ。こう言った面を除けば良い先生なのだが……。

 

「女子のみなさんは、くれぐれも半熟じゃなきゃ食べられないとか抜かす男とは交際しないように!」

 

「ダメだったか……」

 

「ダメだったんだね……」

 

 隣に座るさやかが、まどかと苦笑いを浮かべた。

 

「そして、男子のみなさんは、絶対に卵の焼き加減にケチをつけるような大人にならないこと!」

 

 そこまで言って落ち着いたのか、早乙女先生は優しげな表情に戻る。

 

「はい、あとそれから、今日はみなさんに転校生を紹介します」

 

「そっちが後回しかよ!」

 

 さやかのそんなツッコミに、彼女の周りに座る生徒達が苦笑した。

 

「じゃ、暁美さん、いらっしゃい」

 

 先生に呼ばれて教室に入ってきたのは、綺麗な長い黒髪の少女。その端正で凛々しい顔立ちとは裏腹に、その瞳はひどく濁っている。

 

「はい、それじゃあ自己紹介いってみよう」

 

「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

 

 たったそれだけのシンプルな自己紹介。お陰で先生も戸惑ってしまっている。そしてぐるりと教室を見やった後、彼女の視線はまどかを向いて止まった。

 

「ぇ?ぅぅ……」

 

 なんだか、変なやつが来たものだ。

 

 

「えぇ!?何それ!?」

 

 昼休み。私とさやかと仁美はまどかの話を聞いていた。あの後転校生は体調を崩しまどかと保健室に行ったのだが、どうも不可解な発言をしていたらしい。

 

「文武両道で才色兼備かと思いきや実はサイコな電波さん?くーっ!どこまでキャラ立てすりゃあ気が済むんだ?あの転校生は!?萌えか?そこが萌えなのかあ!?」

 

「さやか、五月蝿い」

 

 でも確かにおかしな行動だ。……正直な話、正気の沙汰とは思えない。妄想狂か格好付けか、どちらにせよあまりかかわり合いたくない人間だ。

 

「まどかさん。本当に暁美さんとは初対面ですの?」

 

「うん……常識的にはそうなんだけど、あのね、昨夜あの子と夢の中で逢った、ような……」

 

 そんなまどかの発言に思わず箸を落としてしまう。まさか電波は感染するのか……?

 

「あっははは!すげー、まどかまでキャラが立ち始めたよ!」

 

 そんなまどかをさやかがからかっていると、仁美が時計を見る。

 

「あら、もうこんな時間……。ごめんなさい、お先に失礼しますわ」

 

 仁美は優雅に礼をすると、ちらりと私の方を見て食堂を出ていった。

 

「じゃあ、私達も行こっか」

 

 まどかがそう言うと、さやかがふと思い出したように言う。

 

「あ、そうだ、帰りにCD屋に寄ってもいい?」

 

 さやかは結構なペースでCD屋に寄り道している。それだけ上条の事が大切なのだろう。だけど……。まぁ、私がどうこう言うことでもない、かな。

 

「いいよ。また上条君の?」

 

「へへ。まあね」

 

 僅かに赤らめた頬を掻く。こんな状態なのに、彼女は頑なに自分の本心を認めない。

 

「ね、ね。流歌もついてきなよ!なんか良い曲あるかもよ?」

 

 さやかは、私を毎回誘ってくれる。何度断っても懲りずに。それはちょっとだけ鬱陶しいけど、嫌ではなかった。

 

「……まぁ、今日は……良いよ」

 

「よっしゃぁ!」

 

 食堂中に響き渡るさやかの声。そう言えば、絵理がああなってから彼女の誘いに乗ったのは初めてだ。

 

 

『~~♪』

 

 名も知らぬ誰かの歌が流れる。たまたま手に取ったCDを試聴しているだけだ。最近流行りのアイドルらしいが、いまいち良さが分からない。

 私はCDを元あった場所に戻すと、別のCDを取り出す。やっぱりこれだ。クラシックが一番落ち着く。

 そうやって音楽を聴いていると、まどかが突然何処かへ走り出す。

 

「……まどか?」

 

 なにやら切羽詰まったような表情だ。一体何が……。

 

「さやか、さやか!」

 

 音楽を聴いていたさやかの肩を叩く。

 

「お、何?何かいいCDでも――」

 

「まどかを追いかけるよ」

 

 そう言って彼女の手を取り走り出した。

 

「ちょっ、うぇっ!?」

 

 何やら変な声を出しつつも、さやかはしっかりと付いてきた。流石の運動神経だ。

 店を出た人混みの中、彼女の可愛らしいピンク色の髪がチラリと見える。

 

「いた、あっち!」

 

 まどかの運動神経は、あまり良いものではない。だけど今の彼女は速かった。

 

「おい、まどか!何処行くんだよ!」

 

 さやかが叫ぶが、その声は届かない。そのまままどかを追いかけていると、街の外れにある廃ビルにたどり着いた。

 

「あなたなの?」

 

 そう言ってまどかが抱き抱えたのは、白い生き物。魔女の口づけを受けた、今の私には見える。

 

「……キュゥべぇ……!」

 

 キュゥべぇはボロボロの体を震わせている。何かに襲われたのか?

 

「そいつから離れて」

 

 唐突に響く声。暗がりの中から現れたのは、妙な格好をした転校生……暁美ほむら。

 

「っ、何なんだあの転校生!?流歌、行くよ!」

 

 暁美ほむらは拳銃を持っていた。きっとキュゥべぇを襲っていたのは彼女なのだろう。キュゥべぇには恨みしか無いが、まどかに危険が及びそうだ。

 

「分かったよ」

 

 私はそう返して、このビルに置き去りにされた物であろう消火器を手に取る。

 

「まどかから、離れろっ!」

 

 そして暁美ほむらに向かって発射。

 

「っ!?」

 

 暁美ほむらは消火器を持った私の姿を見て、目を見開いた。

 

「まどか!こっち!」

 

 さやかがまどかの手を引き走り出す。私は牽制の為に消火器を投げつけてから、2人の後を追いかけた。

 

「里部流歌……どうして貴女がここに……?」

 

 そんな小さな声が聞こえた気がした。

 

「っ、一体何なんだよアイツ!今度はコスプレして通り魔かよ!?」

 

 さやかがここにいない暁美ほむらに向かって毒を吐いた。私はまどかの手からキュゥべぇを奪う。

 

「あっ、まって流歌ちゃん!その子怪我してて……!」

 

 怪我?あるはず無い。こいつは血液すらない、ただの高性能なぬいぐるみなのだ。それにパッと見ではボロボロだが、1つも深い傷を負っていない。

 

「……何のつもり?キュゥべぇ」

 

 まどかが急に走り出したのもこいつが呼んだからなのだろう。契約せざるを得ない状況を作り出そうとしたのかもしれない。暁美ほむらを使って。……なら、あいつはキュゥべぇとグルなのか……?

 

「……ねぇ、ここどこ?」

 

 さやかの声が震えている。目を上げると、周囲の風景が変わっていることに気づく。

 

「な、なんか変だよ!」

 

 ぐにゃりと道が歪む。蝶々が空を舞い、廃れたビルに薔薇園が現れる。

 

「やだ、何かいる!」

 

 そう叫んだまどかの視線の先。そこにいたのは、蝶々から綿のついたタンポポが生えたような化け物。

 その化け物は鋏を手に、じりじりとにじり寄ってくる。

 

「冗談だよね?あたし、悪い夢でも見てるんだよね?ねぇ、まどか!?」

 

 2人は腰を抜かして抱き合う。あの転校生には期待できない。……2人を助けられるのは、私だけだ。

 

「さやか、まどか、そこから動かないで」

 

 右手の甲に、魔女の口づけが浮かび上がる。

 

「2人には、触れさせない!」

 

 この魔女の結界に割り込むように闘牛場が作られ、その空から巨大な斧が落ちてくる。

 

「る、流歌!?あんた一体何を……!」

 

 巨大な斧で大きく薙ぎ、綿毛の化け物達を引き裂いた。

 

「っ、流歌ちゃん!うしろ!」

 

 まどかの声に振り向く。綿毛の化け物が、その大きな鋏で私の首を断ち切ろうとしていた。

 

「……っ!」

 

 急いで斧を振るうが、間に合わない!

 その鋏が私の首に届く直前、1発の銃弾が化け物の頭を撃ち抜いた。




薔薇園の魔女の手下戦でした。お読みいただきありがとうございます。
いまいち状況が掴みにくい現状ですが、次回である程度の説明をするつもりです。
それではまた次回、お会いできたら嬉しいです。
ではでは。

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