それでは本編、どうぞ!
闇。その闇の中に紫の炎を灯し、会話をする魔族達がいた。
「すみません…例の少女捕獲作戦、失敗してしまいました…」
一人の魔族が申し訳なさそうに瞳を伏せ謝る。
「ふむ…」
魔族のリーダーの様な風格を持つ魔族が少し考えてから、
「構わんよ…なにせ…」
一呼吸置いて、
「『計画』はすでに動き始めているのだからな」
魔族達は笑い合う。
「さぁ、いつまで粘れるかな…勇者の小僧よ…」
ー数時間前ー
龍雅に別れを告げ、一人で数多くの敵と対峙していた迅は、
「ちっ…数が多いな…」
迅は自身のスピードを上げる。
ドス、ドス、ドス
数々の拳撃を敵に当てるが、なかなか数が減らない。
…どこかに根源があるはず…
そう迅が思った瞬間、
バシュゥゥゥゥン!!
いきなり大きな炎の塊が迅を襲う。
「誰だ!!」
迅はそれを紙一重でなんとか躱し、炎塊が飛んできた方向を見据える。
「ほう…あれを避けるか…」
拳をポキポキと鳴らしながら空から舞い降りたのは、迅と同じくファイターの魔族だ。
「俺は『魔界四天王』の一人、『拳撃』のジェネオンだ」
「魔界…四天王…だと?」
迅は驚きを隠せない。
魔界四天王とは、魔界の政権は魔王が握る。その権力の一部を4人の精鋭に分散させているのである。その4人の部門が、『拳撃』、『剣閃』、『魔術』、『剣術』である。『剣閃』と『剣術』の違いは、『剣閃』は純粋な剣での戦闘、『剣術』は剣と魔法を織り交ぜたトリッキーな戦い方が特徴だ。
つまり、今、迅の目の前にいるジェネオンは相当の実力者である。
「…やる気かい?」
ジェネオンは笑みを浮かべながら問う。
「この場は…龍雅に託されたんでなぁ!」
そう言った途端、迅の体から大量の魔力が放出される。
「これは…?」
ゴゴゴゴゴゴ…
大地が揺れ始める。
「…『幻獣顕在化』…」
そう呟いた途端、迅の基礎ステータスが跳ね上がり、一気に距離を詰める。
『幻獣顕在化』とは、迅が宿す獣、『漆黒の獅王(ダークネス・レオ)』の力を一時的に解放することである。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
渾身の一撃を相手の鳩尾へと叩き込む、が、
バギィィィィ!!
その一撃は甲高い金属音と共に防がれてしまう。
「ふむ…悪くは無いが…」
ジェネオンは教える様な口調で喋る。
「こういう大振りの一撃はもっとさ…」
そう言うとジェネオンは止めていた迅の拳をそのまま上空へと弾くことで迅の体を浮かせると、
「こういう風にするんだよ?」
「ッ?!」
咄嗟に両腕を前に出し、クロスさせ身を防ごうとするが、拳までは止めることが出来ても、衝撃までは緩和することが出来なかったのか、
「ガハァ!?」
ダイレクトに衝撃波が迅の体を襲う。
「所詮、その程度ですか…」
ジェネオンはつまらなさそうに言うとさらに拳を当てにくる。それも目に見える速度を超える、神速で。
ガスン!ドスン!ドゴン!
重い一撃を次々と迅の体へと叩き込んでゆく。
「ガッ…ハァッ…!」
そして、とうとう迅は意識を失ってしまった。
「龍雅よ…この程度ではあの少女を守れんぞ…?」
そう言うと、ジェネオンは魔法陣で魔界へと帰って言った。
龍雅達が駆けつけたのはその30分後くらいだった。
「ふわぁぁぁ…」
龍雅は大きな欠伸をして目を覚ました。
…迅、大丈夫なのか…?
そう思い、リビングへ行くよりも先に迅のいる部屋に向かった。すると、
「ふぅ…」
体はまだ包帯だらけだが、しっかりと2本の足で立っている迅がいた。
「大丈夫なのか?」
「当たり前だ」
迅は平気だと言わんばかりに断言してみせる、
「ならいいんだが…」
龍雅は安堵の表情を浮かべる。
「俺と戦った相手のことなんだが…」
迅は険しい表情で話す。
「『魔界四天王』の『拳撃』を担う奴だった…」
「よく生きてるな…お前…」
龍雅は驚きの表情を見せる。
「かなり手強かった…『幻獣顕在化』を使ってもあっさりやられたよ」
やれやれ、とため息を吐きながら話す迅。
「まあ、対策については今後、じっくり考えようか」
「そうだな」
そういって二人はリビングへ向かうと、
「あ、二人共、おはよう!」
と、元気に薫が話しかけてくる。
「もうすぐスープができるから、もう少し待ってて」
「お、おう」
龍雅と迅はとても驚いていた。
机の上に並んでいるのは、香ばしく焼かれているトーストに、色とりどりのサラダ。そして、食欲をそそる香りを醸し出している薄切りのローストビーフだった。
「お、おい、薫」
「どーしたの?龍雅?」
薫はキョトンとした顔で聞いた。
「これ、家の冷蔵庫にあったか…?」
龍雅は信じられらないと言わんばかりに聞く。
「ううん、無かったよー」
と、軽く答えた後、
「だから、朝一で買い出し行ってきたの…って…え?」
薫が答えていると、途中から龍雅は怒りの表情で薫の華奢な肩を掴んでいた。
「なにやってるんだよ!!」
一言目はそれだった。
「薫は狙われてんだぞ?!勝手に出歩いちゃ絶対にダメだ!」
龍雅は必死の表情で訴えかける。それが届いたのか、
「そっか…そうだよね…」
薫は悲しそうに瞳を伏せ、泣き出しそうになる、
「ごめんね…勝手に外へ出て行って…」
薫は謝罪する。
「だが…」
龍雅の表情にはもう怒りは無くなっていた。
「一生懸命、俺達を少しでも癒そうと薫なりに考えてくれたんだろ?」
そう龍雅が聞くとコクンと薫は頷いた。すると、
「ありがとうな…」
そう言って、薫の頭を撫でた。すると、
「も、もう!からかうのはやめてよね!」
そう言ってそそくさとキッチンに戻った薫の表情は、耳まで真っ赤になっていた。
「まったく…俺の前で堂々とイチャつきやがって…」
「今なんつった?」
「いいえ、なんでもありません、龍雅様」
というようなやり取りも生まれていた。昨日まで死闘だったのに、こんな平和な風景。いつまでも見ていたい、絶対に守ってやる、と龍雅が心に誓っていると、
「よし!完成!」
「食うか!!」
そう言って二人が席につくと、龍雅も座り、
「「「いただきます!!」」」
そういって三人で朝食を食べ始めた。
「うまかったー!」
迅は満足気な表情を浮かべている。
「ほんとに、どれだけうまいんだよ…」
「えへへー」
続けて龍雅も賞賛の声を上げた。
「さて…」
龍雅は椅子から立ち上がり、外への大きな窓を開け、
「いつまでそこで隠れているんだ?」
そう龍雅が言うと、庭の草がザザっと揺れ、中から一人の少女が出てきた。
「まさか…バレていたとは…」
そう言いながら長い金髪を掻き上げながら呟く。
「お前は何者だ?」
警戒の色を強めて迅は問う。
「私の名前は『結城 楓加』勇者の一族の一人よ」
改まった表情で楓加は名乗る。
「ということは…」
龍雅は外へ出てから、
「俺らを連れ戻しに来たのか?」
「そうですよ!!」
そう楓加が答えた途端、楓加は一気に加速し、龍雅へと距離を詰める。
「なに?!」
「やああああああああああ!!」
楓加が具現化している武器は小太刀が2本、『
ガギィィイイ!!
楓加の二刀の斬撃を龍雅は咄嗟に己の剣、『戦乙女の大剣』を具現化し、防ぐことに成功する。
しかし、
「まだまだ行きますよぉ!」
楓加は攻撃の手を緩めることなく次々に剣閃を繰り出してくる。
…相手が女…それもこんなに可愛い少女に戦いをふっかけられてもなぁ…
楓加は才色兼備の名に相応しかった。故に、なかなか龍雅は手を出せずにいた。
その事に気づいたのか、
「ッ!?真面目に戦いなさい!!」
そう言って、楓加はスピードを二倍近くに上げ、龍雅と同じレベルの速度で攻めてくる。
…仕方ないか…
龍雅は己の大剣の形状を変えた。
「なっ…!『チェンジ・オブ・ブレイド』ですって!?」
『チェンジ・オブ・ブレイド』、己が持つ剣の性能はそのままに、その剣の保有者が使いやすいように、あるいは戦況に応じて剣の形状を変えることが出来る力。一説には、神より選ばれし者だけが授かる事のできる力らしい。
「はっ!」
動揺している楓加を見た龍雅は形状を日本刀の様な細く、軽い物に変え、スパッと楓加を切り裂く。
「きゃあ!」
ドテッと楓加は尻餅をついた。龍雅が切ったのは少女の右脚、とは言っても切ったのはほんの少しだけで、剣に風の力を纏わせることで、風圧で尻餅をつかせたのだ。
シュイイイイン…
剣にオーラを纏わせ、楓加の首元へ近づけると、
「これでもまだやりたいか?」
と、尋ねる。すると、
「ううぅ…悔しいですけど…降参です…」
目を潤ませながら、自身の敗北を認めた。龍雅は、
「手当するからそこで待っててくれ」
「いや!敵の情けは無用です!」
「こらこら…君は女の子なんだから…もう少し自分を大切にした方がいいよ?」
そう言うと、龍雅は家の中へ入って行き、救急箱から手当に必要な物を持ってきた。
シュルシュルシュル
消毒などをした後、包帯を巻いていると、
「その…あっ…あり…がとう…ございます…」
楓加は顔を赤らめながら礼を言った。
「まったく…いくら勇者だからって女の子なんだからさ…」
「う、うるさい!馬鹿にしてるのか!?」
楓加はキレてくる。
「いや、そうじゃなくてさ、もっと自分を大切にしろって事だよ」
龍雅はサラッとそう答えたあと、
「とっとと帰りなさい」
そう楓加に諭した。
「そのつもりよ!!」
吐き捨てるように言った後、魔法陣から楓加は帰っていった。
…顔が赤かったが…熱でもあったのか…?
龍雅が疑問に思っていると、
「さあ、俺たちも家に入ろうぜ」
「うん」
「そうだな」
そう言って3人は家に入っていった。
「おーい、迅ー」
「なんだー?」
龍雅は1階から二階の迅の部屋に向けて質問する。
「お前は今日どーするんだー?」
「ちょっとやりたい事があるから部屋に籠るわー」
「了解ー」
どうやら迅は引きこもるらしい。
…俺は昼寝でもするか…
時刻は午前11時。昼寝には早いが、龍雅は睡眠をとろうとした。すると、
「龍雅!!」
「おわっ!」
薫が急に龍雅へ話しかけた。
「なんだよ…びっくりするじゃねぇか」
「ご…ごめん…」
謝りながらも、薫は話を続ける。
「今日、暇?」
「あぁ…暇だが?」
そう答えると薫は嬉しそうな顔をして、
「なら、少し付き合え!」
と、キリッとした瞳で見てくる幼馴染。しかし、身長差があるところから自然と上目遣いで睨むという仕草になっていた。しかも、今は部屋着。胸元のガードがかなり緩くなっていて、年相応に成長した胸が危うく先端まで見えてしまいそうだった。
「お、おう、分かったから一旦離れてくれ…」
「ん…?なんで?」
「な、なんでもだよ」
龍雅は強引に逃げ切ろうとする。
「あのさぁ…一ついいか?」
龍雅は質問しようとする。
「別にいいけど」
対して薫は素っ気なく答えた。
「薫さ…喋り方統一してくれないか?」
「…は?」
昨日は可愛い女の子の喋り方だったのに、今日は割と凛々しい喋り方だったのだ。故に、龍雅は戸惑いを隠しきれなかった。
「そ、そんなこと龍雅に言われる必要はないでしょ!」
薫は顔を真っ赤にして否定する。
…言えない…龍雅がかっこよくて、こうやって喋らないと気が緩むなんて言えない…
「ふーん…まあいいや、んで、出発は何時だ?」
「んーと…2時かな」
「了解」
その後、龍雅は妙に薫を意識してしまい、薫はとても嬉しそうな表情で昼ご飯を食べた。
ー午後2時ー
「んじゃ、行くか」
「う、うん…」
薫は少し俯きながら、顔を赤らめていた。
「どーした?熱でもあんのか?」
「な、無いわよ!馬鹿!」
「いきなり馬鹿はないだろ…」
やはり慣れない。龍雅はそんな薫にペースを乱されながらも、
「どこに行くんだ?」
まず、自然な会話を心掛ける。
「あ、えーとね…」
一呼吸置いて、
「この近くに大きなショッピングモールがあるの、知ってる?」
「あ、あぁ…」
「そこに行きたいんだけど…いいかな?」
「おう、いいぜ」
どうやらショッピングモールで買い物のようだ。
そして、妙な距離感のまま、歩くことしばし、
ガヤガヤ…
「おお…やっぱいつ見てもでけぇな…」
「そ、そうだね…」
薫は精一杯照れ隠しをしているつもりなんだろうが、
「おいおい…本当に顔が赤いぞ?休むか?」
「嫌だよ!」
薫は即答した。
「せっかくの龍雅との…デート…無駄にしたくないし…」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん!な、なんでもない!」
「そっか、じゃあ行くか」
と、まず、薫からのリクエストは洋服店だった。流石に大きいので何件もの店が並ぶ。値段はどの店も安いお買い得のものから、少し高めの洋服まで、ほとんど全てが揃っていた。
そんな中、薫は目を輝かせて服を持ってくると、
「試着してくるから、この辺で待ってて」
「お、おう」
そう言って薫は試着室に入っていった。
そして、待つことしばし、
シャアアア
カーテンを開ける音を聞いた龍雅は振り返って試着室の方を見やると、
「ど…どうか…な?」
顔を真っ赤にしながらも聞いてくる。
…まずい…綺麗すぎて…
今の季節は春というだけあって、明るい色の服が主においてあった。その中から薫が選んできたのは、薄いピンク色をしたワンピースと、その上に羽織る腰まである薄手のカーディガンだった。
「似合ってるぞ…うん、とても良く似合ってるぞ」
「そう?やった!」
いくら高校生になったと言えど、この無邪気な笑顔は変わらなかった。
「早く脱いでこい、買ってやるよ」
「え?いいのか!」
「もちろん」
「ありがとう!!」
そう言った後、すぐに試着室に戻り、服を渡してきた。
その時である、
ゾクッ!!
龍雅の背中に悪寒が走った。瞬時に背後を振り返り、念のために『戦乙女の大剣』を待機状態にしておく。
…なにも…いないのか…?
そう龍雅が考え込んでいると、
「どうしたんだ?」
と、薫が心配そうな顔をして聞いてくる。
「あぁ…何でもない」
「そうは見えないが?」
珍しく薫がしつこかった。
「そ…そんなに私と居るのが…嫌か?」
潤んだ瞳で聞いてくる。
「ち、違うよ!これは、本当に違う!」
「じゃあ、なんなのよ」
ジトっと見られて龍雅は観念した。
「誰かに見られてたような気がしてさ…」
「ふーん…」
薫は半信半疑と言わんばかりの声のトーンだ。
「お前…信じてないだろ、絶対」
「だって…龍雅が浮かない顔してるから…」
薫は顔に不安の色を滲ませながら龍雅の顔を見詰めた。
「だ、大丈夫だ…いざとなったら守ってやるからさ」
「そーいう問題じゃないの!!」
薫は怒っていた。
「じゃあなんなんだよ…」
そう聞いた途端、薫の顔が真っ赤に染まった。
「な、なんでもない!」
「そっか、じゃ会計してくるわ」
「う、うん…」
その後は昼ご飯を食べ、ゲームセンターで久しぶりに遊んだ後、買い物を済ませて帰路についていた。
「結構買っちまったなぁ…」
「そうだな…」
2人の影は段々と伸びいく。すると、
「ッ!?」
「ど、どうしたの?!」
龍雅は瞳に焦りの色を滲ませ、背後を振り返る。
「誰だ!!」
龍雅は虚空に向かって叫んだ。
「ほう…気付くか…」
すると、虚空がいきなり捻じ曲がり、中から高身長の背丈に長刀を携えた男が現れた。
「私の名は『スライヴ・ベルゼード』。四天王の『剣閃』だ」
「また四天王か…」
龍雅は焦っていた。
現在、迅は動ける状態ではなく、龍雅も四天王に勝るほどの強さは無かった。しかも、近くに薫がいる事で、無茶な真似はできない。限りなく戦闘に不向きな条件が揃っていた。
「薫…買い物持って家に帰っててくれ」
「龍雅…分かった」
そのかわり、と薫。
「必ず、生きて帰ってきて」
「任せろ!」
その後、薫は家に走り、龍雅はスライヴを見据えた。
「ふん…逃がしたか…まあいい」
「あくまで狙いは俺か…」
「ま、そういう事だな!」
突如、スライヴは爆ぜるように動き、長刀を龍雅の右脇腹に当てようとする。
バチィィィイン!
その剣閃を龍雅は剣で防ぎ、カウンターを展開しようとするが、
「甘い!」
「くっ…!!」
そのカウンターを読まれ、逆に反撃を許してしまう。
…こいつ…できる…
龍雅は必死に活路を見出そうとしていた。
「はぁ!」
「ぐあっ!」
スライヴの横薙ぎの一閃が龍雅の剣の防御を崩し、吹き飛ばした。
「くっ…うあ…」
地面に転がった龍雅は立ち上がるのが精一杯だった。体には無数の擦り傷、所々に刺傷、切り傷があった。
「いい瞳だ…」
「そ…そりゃあどうも…」
…こうなりゃ、一か八か…
「な、なあ…少し時間をくれないか?」
「…まあいいだろう」
許可をとると、龍雅はそっと目を閉じて、ある者に話しかける。
…おい…聞こえてるだろ…『戦乙女の大剣』…
『どうした…何か用か?』
龍雅が話しかけたのは、自身の剣だった。
『戦乙女の大剣』は『契約刀』と呼ばれる物の一つで、剣の力を振るえる代わりに、自身の腕を捧げて、力を発揮、また、潜在意識の中での会話が可能になる。
…力を最後まで使う…リミッターを解除してくれ…
『死ぬ気ですか…?』
…あぁ…
そう思っている龍雅の顔は、ひどく切なそうな顔だった。
『分かりました…リミッター解除!』
ヒュイイイイン…
その途端、龍雅の体が剣を中心に光り輝く。
「はああああああああ…」
「お、おい…まさか…契約刀の力を使い切るつもりか?!」
「ご名答、その通りだよ!!」
そう言った後、龍雅は地から飛び跳ね、空からの攻撃を試みる。
ギュイイイイイン!
空中からの落下による勢いと、龍雅自身の勢いが合わさって、超高速で落下していた。
「くっ!」
それを紙一重で交わしたスライヴは、
「小癪な!」
スライヴは、龍雅が落下した一瞬は動きが止まると予想して、煙を纏っていた龍雅に向かって突進した。
「はあ!!」
バチィン!
大上段からの振り下ろしは、龍雅ではなく、剣に当たっていた。
「なぁ!?」
「今の俺には常識は通用しない」
そう言うと、強引にスライヴの剣を弾き飛ばし、龍雅は横薙ぎを放った。
「があああああ!!」
スライヴは吹き飛ばされながらも、なんとか体勢を整え、
「図に乗るなよ!」
スライヴも力を解放した。
バチィ!ガギィ!カギィ!バギィ!
鳴り響くのは、剣と剣がぶつかり合う音と、
「はああああああああ!!」
「やああああああああ!!」
2人の声だ。次第に、剣のスピードはどんどん増していき、
「うおおおおおおおお!」
「おおおおおおおおお!」
いつしか、目視できない程の速さになっていた。
このまま斬り合っても埒が明かない、そう感じた龍雅は、
バシュゥゥウン!
「がはぁ!?」
突然、爆炎魔法をスライヴの体めがけて放った。
「俺は剣だけじゃないんでね!」
そう言って、どんどん爆炎魔法を放つ。
ちなみに放った魔法は『
バジュン!ドシュン!ガシュン!
「が…は……あぁ…」
スライヴはもう動けない。
「終わりだ!」
そう言って、龍雅は最後の力を振り絞り、消滅剣閃を放った。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
『お疲れ様でした、龍雅殿』
『戦乙女の大剣』が干渉してくる。
…おう…
龍雅は心身共に疲れていた。
『望み通り、私の力を含めた、貴方が保有する魔力を全て使い切りました』
…そうか…
龍雅は疲れながらも一つ、問いかけを放った。
…復活までは…どれくらいだ…
最低でも1週間で回復しないと、次に誰が攻めくるか分からない。龍雅はそれに備えておきたかったが、
『龍雅殿自身は数日で回復するでしょう』
しかし、と干渉を続ける。
『私の力を使い果たしているので、戦闘での具現化は不可能でしょう』
現在、龍雅は本当に魔力が無かった。予備の魔力を貯めることができる『魔晶石』と呼ばれる石に込めていた魔力も使い、魔力を一時的に大量使用し、相手を圧倒する『
…『戦乙女の大剣』はいつ戻るんだ…?
『分かりません…私もここまで力を使い切ったのは初めてですので…』
…そうか…まあ、ゆっくり休んでいてくれ…
そう言って干渉を終えた後、龍雅はとうとう意識に限界を迎える。
「あ…がっ…」
「──!!」
龍雅は倒れる寸前に女性の声を、それも聞き慣れた声を聞いたが、もう瞼は閉じていた。
「龍雅…大丈夫かな…」
現在、薫達は家にいた。
薫は龍雅に言われた後、走って迅まで知らせに行き、倒れる寸前でなんとか助けることができた。1通りの治療は薫が済ませ、今は目覚めを待つことしかできない。
…無茶しちゃって…
薫は自分を恨んだ。龍雅をここまで痛めつけているのは、元はと言えば自分が原因なのだと。
…ごめんね…龍雅…ごめんね…
薫は必死に涙を堪えた。もし、龍雅が泣いた薫の姿を見たら、
『ごめんな』
と、謝ってくると思ったから。だから、溢れそうになる、嬉しさと悲しさが混じった涙を堪えた。
そうして、時間が過ぎることしばし、突然、部屋の床に魔法陣が展開された。
「誰?!」
薫は驚いているのに対し、
「まさか…」
迅は少し嬉しそうな表情をしていた。
シュイイイン…
現れたのは1人の小柄な女性。長めの銀髪に白衣を纏っていた。
「久し振りだね、迅、龍雅」
そして、と女性。
「初めまして、東薫さん」
いかがでしたでしょうか、第3話。思った以上にキャラが増えてきてしまいました…。個人的に、スライヴ、結構気に入ってるんですよね(笑)
次回は新たな力と、新たな敵との攻防を書けたらなと思っております。
それではまた次回、お会いしましょう!