ハイスクールD×D ーマルバス家復興記ー   作:ぬがー

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第5話

 オレも十五歳になり、原作開始の年を迎えた。

 とはいえオレの生活に変化はなく、趣味の眷属探しをしつつ、マルバス(いしゃ)としての役割をこなし、ついでに社交界で「グレモリー家は娘をバアル家に嫁入りさせるべき」みたいな空気を広めていた。

 その影響でリアス・グレモリーにはバアル家を除き、一件も縁談が行かなかったので二巻のイベントが潰れたりしたが、まぁその辺は些事だ。

 グロースの方はこの数年間、グレモリー家家臣団やその親類から眷属を選び、彼らを味方につけることで当主の座を狙いに行っていた。それに対抗するためか、それとも素か知らないが、リアスは外で功績を挙げるため駒王学園を中心とした土地の統治に向かい、偶然にも原作と似たような状況になっている。このままなら騒乱を引き寄せる天龍の性質からして、原作通りリアスの眷属になると踏んでいる。

 なお原作開始前に兵藤一誠を殺してしまう、という案も考えたが堕天使陣営に白龍皇がいるし、他の陣営に赤龍帝をとられたら悪魔陣営としては大きな痛手なのでその手はとれなかった。かといっておっぱい狂いのせいでグロースが確保してもリアスを追い出そうとしていることで反感を買って裏切られる可能性がある。他の上級悪魔の眷属にさせようにも、騒乱を引き寄せる性質のある赤龍帝を積極的に抱え込みたいというやつはそうそういない。それらの理由で結局、原作通りリアスの眷属になるまで放置するしかなかったのだ。

 このままの流れで行けば魔王の妹二人が駒王学園にいる状況はそのままなので、コカビエルの襲撃は行われるだろう。その時、杜撰な対応をしたリアスのミスを「次期グレモリー家当主として」裏で見守っていたグロースがフォローすれば都合よく持って行けるはずだ。仮に上手く対応しても「それでこそバアル家にふさわしい」とか言って誘導するつもりだけどな。

 そうなれば連鎖で北欧との会談の際のロキ襲撃も別のメンバーで対応することになり、乳神の来訪もなくなりリゼヴィムも飲んだくれたまま、という理想的な展開に持って行ける可能性がある。

 頑張れグロース、オレは後方で日々の仕事を適当にこなしながら安全な位置で応援してる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが実際はそう上手くはいかず、オレの方にも原作組に接点が出来てしまった。

 

「久しぶりですね、バルバソン」

 

「おう、久しぶり。何があったか知らないが、突然眷属全員連れて押し掛けてくるとかどうかと思うぞ? いくら婚約者だからってさ」

 

 不機嫌そうな表情で眷属(せんりょく)を率いて押し掛けてきた女、ソーナ・シトリーとの婚約が決まってしまったのだ。

 こうなった経緯だが、マルバス家再興に伴いかつてマルバス家に仕えていた家臣たちを探したところ、その多くがシトリー家で医療関係の仕事に携わっていた事がきっかけだ。彼らも帰郷を強く望んでいたので引き抜こうとしたのだが、シトリー家の主な産業が観光と医療だったためにシトリー領の経済に大打撃を与えてしまうという問題が発生したのである。

 それでどうにか引き抜きを止めたいシトリー卿と色々と話し合った結果、ソーナを正妻―――マルバス家が断絶すると本気でヤバいことになると学習できたので、バアル家のように側室も取るよう指示された―――に迎え、身内として医療機関の運営にシトリー家も参加することになった。なお跡継ぎ問題に備えて、子供はマルバス家の『病』の魔力が発現した子のみマルバス姓を名乗り、他はシトリー家の子として扱う契約である。

 ただ原作のライザーのようにすぐに結婚しろと言うわけではないし、なんらかの条件で引き抜きを認めてくれるならいつでも破棄できるような婚約だ。こうして戦力率いて乗り込まれるような真似をした覚えはないのだが、一体どうしたというのだろうか?

 

「これを見ても分かりませんか」

 

 そう言って何やら紙を渡してきた。

 手に取って見てみると、うちの家臣団がシトリー家に送った書状だった。

 内容を要約すると「誰でも通えるレーティングゲームの学校作るとかふざけたことを言うのはやめさせて、普通に学校通って常識を身につけさせてください」とのことだ。まぁ冥界の常識的にはおかしなことは言ってないし、ただでさえオレが最低限しか働かないのに正妻まで働けないとなると丸投げされてる家臣団の負担がかなり大きくなる。そしてオレは改善する気が皆無なので、ソーナの方に改善してほしいと言ったんだろう。

 

「これがどうかしたのか? 別に変なことは書いてないが」

 

「……レーティングゲームの学校設立は私たちの目標です。いくら婚約者とはいえこれだけは譲れません」

 

「あー、撤回を求めてレーティングゲームでもふっかけるつもりか? それなら眷属総出も納得だが、真面目過ぎだなソーナは。検討しますって言って、実際は何も変えないとかでも問題なかったのに」

 

 家臣団の負担は増えるが、オレの負担は増えないから別にどうでもいい。むしろオレの監視のためにバアル家から移籍してきた連中が仕事で忙殺されて自由な時間が増えるのは歓迎すべきことだしな。

 これを伝えると完全に予想外だったのか、拍子抜けしたような顔に全員がなった。割と笑える光景だ。

 

「あ」

 

「どうかしたんですか?」

 

「いや、今の言わない方が良かったかもって思ってな。よく考えたらレーティングゲームで負かして夢諦めさせた方がオレ的には得だったわ」

 

「はぁっ!?」

 

 ソーナが素っ頓狂な声を上げるが無視だ。

 いや、本当に惜しいことをしたかもしれない。ここで勝負を受けていれば原作の事件を全て未然に防ぐこともできていたかもしれないっていうのに、思ったことをそのまま口に出してしまった。

 「ハイスクールD×D」という作品において、全ての事件のきっかけとなったのはコカビエルによる魔王の妹への襲撃事件だ。これが起きたから聖書の三勢力が和平を結んだし、それを好機とみた『禍の団』が大々的に活動を開始した。

 だからコカビエルが襲撃してくる条件である「魔王が溺愛する妹×2がろくな護衛もつけずに人間界で過ごしている」という状況を変えれば全ての事件が起きずに済む可能性があるのだ。

 特にソーナの場合、姉のセラフォルーさまは感情的かつ好戦的に動いて悪魔と言う種族が「どうせ戦争などもう起こせない」と他種族から侮られるのを防ぐ役目を担っている。リアスの兄であるサーゼクスさまは穏健派なので、戦争を起こすことが目的ならソーナを冥界に連れ戻すだけでコカビエルが駒王学園襲撃をやめる可能性は高かった。

 本当に惜しいことをした。今からでも撤回できないだろうか?

 

「やっぱり人間界への留学取りやめを賭けてレーティングゲームやらないか? 公平なルールでの試合にするって約束するから」

 

「お断りします。受けるわけないでしょう」

 

「そういわずにさ。こっちが負けたらそれなりに支援するぜ?」

 

「……条件について、詳しく話し合いましょう」

 

 お、案外簡単に釣れた。勝たせる気がないからこその提案だし、もう少し躊躇うかと思ったんだがな。

 次期当主になることが確定しているオレが支援するってことは、マルバス家がソーナの目標を認め協力してると言い換えられる。そういう状況になれば他の後援者も得られるだろうから、ソーナ的に食いつかずにはいられなかったか。

 

「おう。じゃあ書類も用意して正式に話進めるか」

 

「ええ、善は急げと言いますし、早めに決めてしまいましょう」

 

 

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