ハイスクールD×D ーマルバス家復興記ー   作:ぬがー

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第6話

「まだやるかー?」

 

「あたり、まえ、です……ッ!」

 

 シトリー眷属とのレーティングゲームも終盤に入り、オレとソーナだけが向かい合っていた。

 いや終盤と言うのは正しくないか。なにせ開幕の一撃でソーナ以外のシトリー眷属は全滅したし、オレの眷属はそもそも参加してないからな。

 

 マルバス家の魔力は『病』。生き延びることが最優先なオレは、それで病原体の塊のような魑魅魍魎―――触れて免疫がなければ病を発症。攻撃して弾けさせると病原体を周囲にまき散らす―――を無数に作り出してけしかけ、自身の安全を確保したうえで戦う。

 今回は特大の魍魎を一体生み出し、自分で殴って破裂させたのだ。

 フィールド全体にまき散らされた病は魔力が高ければ抵抗できる物。これでシトリー眷属はソーナ以外昏睡しリタイア。ソーナも常時魔力を消耗し続けてどうにか意識を保っている状態になった。

 これを喰らったのが普通の眷属悪魔―――限りある『悪魔の駒』を授けるにふさわしいか厳選された者達―――なら何人か、特に魔力の扱いや魔法にブーストのかかる『女王』『僧侶』は残っていただろう。フィールド全体に拡散させたせいで威力、というか症状は軽かったはずだしな。だがソーナは自分の目標に賛同してくれる者、才能がなくても使えるようになる技術を持つ者を優先して眷属にしたせいか、技量はあっても出力が決定的に足りておらずこうなった。

 匙元士郎が原作のようにヴリトラの意識を覚醒させていたら抵抗できたかもしれないが、序盤の事件すら起きていない現時点では抵抗不可能だしな。何も考えられなくなって眠りに落ち目覚めないって感じの『病』を使ったから、気合や根性をしぼって抵抗すらできないようこちらで対策していたというのもあるが。

 その後、悠々とシトリー眷属の本陣まで乗り込み現在に至っている。

 

「なら続けるが、その前に一つ聞かせてくれよ。このゲームを見てて楽しいとか、映像記録買おうとか観客や庶民が考えると思うか?」

 

「……思わ、ない、でしょうね」

 

「それが分かるなら問題なさそうだな。とりあえず今は寝ておけ」

 

 病をのせた手で触れてソーナを昏睡させる。それと同時にアナウンスが響いた。

 

『ソーナ・シトリーさま、リタイア』

 

『バルバソン・マルバスさまの勝利です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……」

 

「起きたか。どうだー、調子は?」

 

「……ッ!?」

 

 病を治し目を覚ましたソーナがベッドから飛び起きた。

 そのまま返事もせずに周囲を見渡し、ここがレーティングゲームでリタイアした選手のための医療施設だと気づいて落胆した。

 

「……私たちの負けですか」

 

「おう、オレの完全勝利だ。一応確認するが、人間界への留学はやめても、契約の隙を突いて行動は続けるつもりだよな?」

 

「そのつもりです。あなただってあんなゆるい条件を提示したんですから、そこまで止める気はないんでしょう?」

 

 ソーナの言うとおりガチガチに縛って別の事で暴発されても困るので、そこまで厳しくする気はない。納得させずに力と契約で抑えつけても将来の不安が大きくなるだけだし、セラフォルーさまが暴走する可能性もある。あくまでレーティングゲームに平民が参加するのは現実的ではないと納得して諦めてもらうのが目的だ。

 

「確かに強制する気はない。だけど今回のゲームで実感できただろ? 力量に差があり過ぎると蹂躙して終わりになる。かといって制限が多すぎてもつまらないし、そうなれば興行収入は大赤字だ。フィールド作ったり、リタイアした選手の治療したり、人件費や宣伝にも金はかかってるんだから、ゲーム自体が開催できなくなりかねない。そう考えれば参加できるのは貴族だけ、っていうのにも納得できないか?」

 

 レーティングゲーム自体、自分の眷属の方が凄いっていう自慢合戦から始まった遊びが発端だからな。採算度外視で始めたものだから利益は少なく出費は多い。あまりに流行したものだからゲームを管理する委員会とか作って少しでも利益を回収できるようにしたが、映像記録の販売や領主権限で他の産業と連携をとらせてどうにか、と言う状況だ。

 権力を持たず派手な戦いもできない平民が参加したら、ほぼ利益は得られず会費だけですぐに破産するだろう。参加できるのが貴族だけなのは、平民を見下した差別からではなく、無理に参加して身を滅ぼしてはいけないという配慮からでもあるのだ。

 

「それは……」

 

「ついでに言うとレーティングゲームの勝敗には社交界での地位や名誉なんかがかかってる。だからこそ戦闘バカに商売や大口の契約をとってきて成り上がった奴らが食い物にされないよう、経済制裁やら村八分といった盤外戦術を駆使するのは当然のことなんだ。そんな業界にただの平民が入って無事で済むと思うか? まず間違いなくゲームのフィールドに入ることすらできないぞ。巻き添えを恐れた隣人たちに袋叩きされて殺されたりしてな」

 

「……ッ!」

 

「で一番大事なことだが、レーティングゲームに参加できるほど稼げたり、鍛えて実力を付けてたりすると、まず間違いなく上級悪魔にスカウトされて眷属になれるってことだ。運悪くスカウトされなくても売り込んでいけば余裕だろうな。レーティングゲームに関する勉強はそれからすればいいって言うのが今の冥界での方針だし、悪魔の寿命は永いからそれで問題は起きてない。

 それでもまだ「誰でも通えるレーティングゲームの学校」を設立したいって言うのか? 他の誰も望んでないのに?」

 

 ソーナの目標の最大の問題点は、冥界での需要のなさだ。人間界で例えるなら、プロ野球選手になってからようやく役立つような技術を乳児に教える教室を作ると言ってるようなものだから、需要なんかなくて当然とも言えるんだが。

 これを告げるとさすがに応えたのか、俯いて黙ってしまった。

 

「まぁ相談くらいは乗ってやるよ。これでもお前の婚約者だし、なんかお前自分の本当にやりたいことを勘違いしてるような気がするからな」

 

 原作では学校設立はしたが、レーティングゲーム学校じゃなくて問題を抱えた貴族や平民の子供への教室って感じだった。だけどああいうのこそ目指してたものって感じで、教える内容にレーティングゲームは無くても全く問題ないと思うんだ。

 作りたいのがああいうのなら普通に支援するつもりだし、これを機によく考えてもらいたいものである。

 

「本当にやりたいこと、ですか……」

 

「すぐに答えを出す必要は全くないけどなー。ま、冥界でしばらくのんびりしたらどうだ? 時間は有り余ってるんだし」

 

 原作で事件が起きた日は刻々と近づいているが、事件が起きる状況を解消してしまえば時間が余っているというのは嘘ではない。

 それにソーナの暴走は人間のペースで悪魔が生きようとしたせいだろうから、冥界で過ごしていれば自然と治るだろうしな。

 

「……そうですね。とりあえず少し休んで考えてみます。ただ実家には戻りにくいんですけどね」

 

「やっぱりセラフォルーさまの過保護が原因で居づらいとかか? それならうちに来ればいい。うちならバアル家の後ろ盾があるからセラフォルーさまもそう簡単に干渉したりできないし、婚約者なんだから遠慮する必要もねーからさ」

 

 人間界の常識に染まる前、なんで冥界から人間界に引っ越したか謎だったが予想通り居づらかったからか。

 まぁ好き勝手するのが仕事のセラフォルーさまに溺愛されてる妹とか、厄過ぎて誰もがソーナを避けて過ごすような環境だっただろうし、人間界に逃げたくなるのも理解できる。多少は労わってやろう。

 

「お言葉に甘えさせてもらいます」

 

「そう堅苦しくなくてもいいんだけどなー。ま、いいか。部屋を用意しておくよう家臣に言っておくから準備が済み次第くればいいさ。 じゃ、オレはこれから他の奴の治療もやってくるから」

 

「分かりました。あの子たちのこともよろしくお願いしますね」

 

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