※キャラクターの性格が崩壊しています。(特に大倶利伽羅様)
上記がOKな方だけ、お読みいただけると幸いです。
※この作品は「pixiv」にも載せています。
長谷部は、本部から来たメールに愕然としていた。
『…新たに生まれた付喪神ですが、本部で調べたところ、審神者(さにわ)様から鍛刀の指示もなく、自然発生したものと思われ、ウィルスの可能性があります。
念のため、付喪神達(あなたがた)の安全を考え、こちらより審神者様に通達したところ「その新たに生まれた付喪神を「破壊」せよ」という命令を受けました。
速やかに、新たな付喪神を「破壊」し、このメールに返信くださいますよう、お願いいたします。
』
長谷部は、眉をしかめた。
(確かに、刀装兵祈願の指示しかなかったが…いつものメールと違うような…。そもそも主(あるじ)が、いきなり破壊命令を出したりするだろうか…?)
ウィルスに関しては、これまでの被害を考えれば、今まで以上にデリケートになる気持ちもわかるが「破壊」というのは、主に似合わない「ヒステリック」な印象を受ける。
主自身が確認に来られない、ビデオ監視もできない状況だとしても…。
長谷部は、しばらく悩んでから返信ボタンをクリックした。
……
翌日-
長谷部は、突然、本舎に現れた黒いスーツを着た男に驚いていた。
本部から連絡を受けて説明するように言われたという。名は「タナダ」と名乗った。
「証拠と言われましても…」
タナダは、長谷部の前に正座をして座り、困ったようにそう言った。
長谷部は「本当に自分たちの主の命令なのかどうか、証拠を見せて欲しい」と返信メールを出したのである。
「ビデオでもなんでもいいですから、主と直接話すことはできないのですか?」
「正直、申し上げにくいのですが…実は、あの審神者は、謹慎させているのですよ。」
「謹慎!?」
長谷部は、タナダの思わぬ言葉に声を上げた。
「主が!?どうして!?」
「実は…彼女は、本部が規定している次元移動回数をかなり超えていましてね。」
「!!」
「それが原因で、ウィルスが流れ込んだのではないかという、本部の見解でして。それで彼女に、謹慎処分を出したわけです。…ま、そんな不名誉な事は、あなた方には言えないでしょうから…。」
「では、他の審神者は…」
「ええ。彼女以外は、次元移動できています。ウィルスの問題もとっくに解決していますし。」
「そんな…」
長谷部は、初めて知る事実に愕然としていた。…がやがて、はっとして「タナダ」に尋ねた。
「でも廣光は、主が来られなくなってから生まれています。その廣光がどうして「ウィルス」だと…」
「ひろみつ…というのですか。いい名前を付けましたね。」
突然、タナダがそう言って微笑むので、長谷部は面食らった。
「え、ええまぁ。うちの大倶利伽羅が、そう名付けたんです。」
「…皆、その付喪神を信用してしまってるのですね…。可哀想に…。」
タナダはそう言って、目を伏せた。長谷部は、少しむっとして尋ねた。
「だから、どうして廣光がウィルスなのですか?」
「その「ひろみつ」という付喪神に会わせてもらえますか?そこで、彼がウィルスだという証拠をお見せしましょう。」
「えっ!?」
「辛いでしょうが、これは急を要します。このままだと、この本丸が再びウィルスに侵されてしまいます。」
タナダが、表情を硬くして言った。長谷部は、思わず目を反らしたが、やがてうなずいた。
……
大庭-
大倶利伽羅は廣光を抱き、目を見張っていた。ダンス練習の途中である。
前には、タナダと長谷部が神妙な表情で立っている。
大倶利伽羅の後ろには、一緒に練習をしていた短刀達がいる。そして、それぞれ驚いた表情でタナダを見ていた。
「廣光が…ウィルスだって?」
廣光自身も目を見開いている。しばらくして、大倶利伽羅の手の中でガタガタ震え出した。
「…ぼく…」
「違うっ!廣光、絶対違うから!」
大倶利伽羅がそう言い、廣光を抱きしめた。
「これは、ウィルスを検知する機械です。」
タナダはそう言い、背広の胸ポケットから、小型のリモコンのような機械を取り出した。
アンテナが赤く点滅している。
そしてそれは、廣光に近づけば近づくほど点滅が早くなり、廣光の体に触れたとたん「ピーッ」という音を出した。
「!!」
大倶利伽羅は目を見開いて、その機械を見た。
タナダは、その機械を今度は長谷部に近づけた。すると、赤の点滅が消え、青に変わった。
「…おわかりの通り、赤はウィルスに近い、或いはウィルス本体であるという信号です。」
「そんな機械…」
「すいません。長谷部さん、ひろみつ君を抱いてもらえますか?」
タナダは長谷部に向いて言った。長谷部はうなずき、廣光を大倶利伽羅の手からそっと受け取った。
タナダは、大倶利伽羅自身に機械を向けた。
…赤色のライトが点滅している。だが、音がなることはなかった。
「?」
大倶利伽羅がタナダを見た。タナダが、眉をくもらせて言った。
「…あなたも、ウィルスに侵されかけている…。ひろみつ君と、常に一緒にいるのではないですか?」
「!…」
確かに、いつも一緒に行動していた。寝るときも、起きている時も…。
長谷部が、廣光を抱きしめて目を伏せた。廣光が呟くように言った。
「ぼく…やっぱり…ウィルスなの?」
「残念ながら、ひろみつ君、そういうことだ。」
タナダが廣光に向いて、悲しそうな表情をして言った。
「…君が生きている限り、この本丸は君に侵されて、消えてしまう。」
「!!」
大倶利伽羅をはじめ、短刀達、長谷部も目を見開いた。
「…だけど…だけど…こいつを壊すなんてこと…」
大倶利伽羅が、目を泳がせて呟いた。
「もちろん、皆さんの手は汚させません。本部の方で、処理…あ、いいえ、対応させていただきます。」
「だめだっ!!」
大倶利伽羅が、長谷部の手から、廣光を奪い取って叫んだ。
「そんな機械信じられるか!!こいつには手を出させない!!」
「大倶利伽羅さん…他でもあなたと同じような人がいて…そのために、付喪神達が全滅してしまった本丸があるんですよ。」
「!!」
大倶利伽羅は目を見開いた。
「その悲劇を繰り返さないように、本部は私をここへ来させたのです。私だって、こんな可愛いひろみつ君を壊したくない。」
「……」
タナダの潤んだ目を見て、大倶利伽羅は言葉が出ない。やがて、廣光が大倶利伽羅を見上げて言った。
「…せんぱい…ぼく…いく。」
「!!廣光…」
「ぼく…みんなにきえてほちくない。ぼくがきえてすむなら…ぼく…いく。」
タナダが、うつむいた。
すると、短刀達がお互いうなずき合い、大倶利伽羅を取り囲んだ。
「?」
大倶利伽羅の真前に立った「薬研(やげん)藤四郎」がタナダに言った。
「廣光は行かせない。」
「!?」
タナダの目が見開いた。そして、薬研に諭すように言った。
「君、まだ子供だからわからないだろうけど…」
「子供じゃない!ばかにするなっ!」
薬研が怒鳴った。隣に立っている2代目「今剣(いまのつるぎ)」がうなずいて言った。
「隊長(廣光)がウィルスでも、僕たちは一緒に生きる!もう2度と、隊長だけを死なせたりしない!」
「みんな…」
廣光の目から涙が零れ落ちた。大倶利伽羅が微笑んで、廣光を抱きしめた。
「…君たちはおかしくなってる…あっ!…もしかして君たちもウィルスに…」
タナダがそう言い、胸元から機械を取り出したが、その機械を「乱(みだれ)藤四郎」が取り上げ、地面に叩きつけて踏みつけた。機械は、ピーッという大きな音を立てて壊れた。
「何をする!!ああ…私の傑作を…こんな…」
タナダが、機械を拾い上げようとかがんだ。
すると突然、タナダと大倶利伽羅達の周りにガラスのような大きなドームが囲んだ。
「!!」
「くっそ…いったいこの本丸はどうなってるんだ?」
体を起こしながら、タナダが呟いたその言葉に、全員が驚いてタナダを見た。
「ただの作りものどもが、俺に逆らうとはな。」
タナダの目が吊り上がっている。本性を見た大倶利伽羅達は目を見張った。
「本当は…これから徐々にお互いを疑わせて、殺し合ってもらうつもりだった。さっき言った全滅した本丸というのは、俺がそう仕向けてそうなったんだ。」
「何だって!?」
大倶利伽羅が、思わず声を上げた。
「面白かったよ。友情が壊れていくあの瞬間。見ていてたまらなかったねぇ…。」
「なんてひどいこと…」
乱が、両手を口に当てて言った。タナダが「ふん」と鼻を鳴らしてから言った。
「だが、そうできないとなれば、このドームの中で死んでもらうしかないな。」
「!?」
「よく考えてごらん。ウィルス本体の「ひろみつ」君と、この狭いドームにいるとどうなるか。」
「!廣光はウィルスなんかじゃない!」
「そう言っていられるのも、今のうちだよ。」
タナダがそう言い、にやりと笑って大倶利伽羅に向いた。
「何?」
「この小さな付喪神のウィルスに侵され始めてたのは「大倶利伽羅」…君(きみ)だったね。」
大倶利伽羅の手の中にいる廣光が、目を見開いた。
「ああひろみつ君、心配しないでいい。君はウィルス本体だから死なないんだ。」
「!!」
「君も皆が死んでいくのを、俺と一緒に見ていられるよ。」
「…そんな…」
廣光が、自分を抱いている大倶利伽羅を見上げた。
「お前の目的は何だ?」
大倶利伽羅が、タナダに言った。タナダが大笑いしてから言った。
「目的だって?これは単なる俺の趣味だよ。」
「趣味?」
「そうだ。友情や愛、そして命そのものが壊れていく美しさを見るのが私の趣味だ。結構、俺が思っていたより簡単に壊れるものでね。」
「狂ってる…」
大倶利伽羅が眉をしかめた。タナダが、あごをくいと上げて言った。
「ほら、君たちの仲間が外にいるだろう?」
大倶利伽羅達が振り返ると、石切丸と獅子王、光忠が必死にドームを外から叩いている。
「!!」
「君たちは仲間の前で、この中で死んでいくんだ。向こうはどんな気持ちだろうねぇ?そして、どんな悲しいドラマが見られるんだろうねぇ…?」
その時、ずっとタナダに背を向けてドームの壁を見ていた長谷部が、本体を出現させた。
タナダが笑いながら言った。
「やめるんだな。君が折れるだけだ。」
「長谷部!やめろ!」
大倶利伽羅が、長谷部に駆け寄り腕を掴んだ。
「おやぁ?外の仲間もこっちに来たようだね。」
そのタナダの言葉通り、石切丸達が、大倶利伽羅達の前に移動してきている。それを見てタナダが嬉しそうに言った。
「おお、石切丸!付喪神の中で、打撃が1番強い奴だな。こりゃいい。あいつが壊れる姿でも拝見するとするか。」
大倶利伽羅が、外にいる石切丸達に首を振って見せた。刀を出現させていた石切丸達は、目を見張って大倶利伽羅を見た。
「だめだ!お前たちが折れてしまう!」
大倶利伽羅がそう言ったとたん、目を見開き膝をついた。
「ほら、来た。」
タナダが言った。
「!!倶利伽羅!」
長谷部が崩れる大倶利伽羅の体を支え、ゆっくり芝生に横たわらせた。
短刀達も驚いて、大倶利伽羅を囲んだ。
「…体が…」
大倶利伽羅が、息を弾ませながら言った。
「体が…動かない…」
「せんぱい!」
廣光が、大倶利伽羅の胸にしがみついた。
「廣光…お前のせいじゃない…」
大倶利伽羅が、廣光に言った。
「…こいつが…何か…仕掛けを…」
大倶利伽羅は、タナダにちらと目を向けて言った。
「何か…仕掛けを、俺に…かけてるだけだ…。お前は絶対に…ウィルス…なんかじゃ…ない…」
「せんぱい…」
廣光が、大倶利伽羅にしがみついたまま泣き出した。
長谷部が、眉を吊り上げてタナダを睨み付けた。
「そんな怖い顔をして見せても、皆助からないよ。どうするね?近侍君。」
タナダが、せせら笑うように言った。
長谷部が、再び本体を出現させた。タナダが、笑いながら言った。
「おおっと。俺を斬るつもりだね。…そんなことをしたら、俺の本体も死んでしまう。そして、その罪は君たちの主に行くんだよ。」
「!!」
「わかるよね?俺が死んだら、君たちの主が殺人犯になってしまうんだ。それでも、俺を斬るかい?」
「…長谷部!やめろ…!」
大倶利伽羅が、苦し気に言った。
長谷部は唇を震わせると、刀を消した。
すると廣光が、大倶利伽羅から離れて自分の刀を出現させた。そして、自分の首に向けた。
「!!隊長!」
2代目「今剣」が間一髪のところで、廣光の体を掴んだ。同時に、廣光の刀が今剣の手を刺した。
「!!」
「いまつる!!」
薬研が思わず声を上げて、今剣の傍にかがんだ。今剣は廣光の体を掴んだまま、痛みを堪えている。
今剣は手から血を流しながら薬研に「大丈夫」と言った。そして、驚いた眼で自分を見上げている廣光に言った。
「隊長、僕ら隊長を信じてる。絶対に死んだらだめです!」
乱藤四郎が駆け寄り、血を流す今剣の手にハンカチを押し当てた。今剣が乱に微笑んだ。
「ありがとう」
「廣光君は僕が。」
その乱の言葉に今剣がうなずいて、そっと廣光の体を乱の手に抱かせた。廣光は泣き続けている。乱は廣光を優しく抱きながら言った。
「大丈夫、廣光君。主が助けに来てくれる。」
「…あるじ?」
廣光が泣き止み、乱の顔を見上げた。乱は微笑んでうなずき、ドームの壁に向いて立っている長谷部に振り返った。
「ね、長谷部にいさま。」
「ああ。」
長谷部が、振り返らずに答えた。
「長谷部?」
大倶利伽羅が息を弾ませながら、うつろな目で長谷部を見上げた。大倶利伽羅の傍にしゃがんでいる短刀達も目を見合わせた。
「さっきから、何を言っている。ここの主が来れるわけないじゃないか。」
タナダが、あざ笑うように言った。
すると長谷部が、振り返りながら微笑んで言った。
「さぁ、主のご登場だ。」
「えっ!?」
タナダを含めた全員が、驚いてドームの外を見た。
大倶利伽羅も、短刀達に支えられながら、起き上がった。
すると、獅子王がいきなりドームの壁を駆け上がったのが見えた。
「!?獅子王!?」
全員が、ドームの天辺にしゃがみこんだ獅子王を見上げた。獅子王は、こちらを見てにやりと笑うと、片手に持っていた水晶のような玉を振り上げた。
「なんだあれは?」
タナダがそう呟いた時、獅子王がその玉をドームに叩きつけた。
いきなりドームが光り輝いた。全員が思わず目を覆った。
すると、いきなりガラスが割れるように、ドームが崩れた。
「!!!」
「そんな…この堅いドームをどうやって…」
そうタナダが呟いた時「ぅおおおおおおりゃぁー!」という声とともに、割れた空間から足を先に何かが飛び出し、タナダの頭を蹴り飛ばした。
「!!!」
タナダの体が吹っ飛んだ。
タナダの頭を蹴り飛ばしたその何かは、倒れたタナダを飛び越え、片膝と両手をついて地面を削る様に降り立った。
「!!!主っ!?」
短刀達が、思わず声を上げた。大倶利伽羅の目にも、いつものパンツスーツ姿の女主(あるじ)の姿が映った。
「…今度は、飛び蹴りで登場かよ。」
大倶利伽羅が、思わずそう呟いて苦笑した。
「こんの、下衆(げす)野郎!!!」
主はそう目を吊り上げて叫ぶと、立ち上がりざまその場で反転し、体を起こしたタナダの頭を蹴り飛ばした。タナダの体が別の方向へ飛んだ。
「…あるじ…」
廣光が、呟くように言った。
が、主は廣光の方は見ず、タナダに馬乗りになって、その顔を左右からこぶしで殴りつけた。
「お前のっまいたっウィルスのっせいでっ、うちのっ子たちがっ…3人もっ死んだんだぞっ!」
殴りながら、泣きながら、主は叫ぶように言った。
「その上にっまだっうちの子をっ殺すっつもりかっ!!」
「主っ!!」
長谷部が、主の背中に飛びついた。
「主っ!もういいです!こいつは、死んだと同じですっ!!落ち着いてくださいっ!!」
「いやぁぁぁぁ!!」
主はそう泣き叫んで長谷部を振り飛ばすと、もう顔の形が変形しているタナダの顔を殴り始めた。
「死んでもっこいつはっ私の気持ちなんてっ!!わかるわけがっ…」
「主っ!!」
光忠が駆け寄り、長谷部と一緒に主の拳を掴んだ。
「主っ!!こいつをどうしたって、2代目達は戻って来ません!!」
主の動きが止まった。
「もう…戻ってこないんです…主…落ち着ついて…」
その光忠の言葉に、主は悲鳴のような声を上げて空を仰いだ。そして、タナダから離れてその場に伏せて声を上げて泣きだした。
「主…」
長谷部がその主の背に手を乗せて、目に手を当てた。
石切丸達、短刀達も、皆、こぼれる涙を抑えることはできなかった。
……
「落ち着いたか?主?」
廣光を抱きしめた大倶利伽羅が、立てた膝に顔を伏せている主に言った。
長谷部が心配そうに、主の背を撫でている。そして、第1部隊のメンバーと短刀達も、主を囲むようにして座り、心配そうに主を見ている。
ちなみにタナダは、突然現れた男たち(本部からの使者)に、倒れたまま回収されて行った。(タナダの顔が変形していた事に、かなり驚いていたが)
「倶利伽羅は、大丈夫なのか?」
光忠が、大倶利伽羅に向いて心配そうに言った。大倶利伽羅がうなずいて答えた。
「ああ。ドームが壊れたとたん、俺の体も動くようになった。」
「今剣は?」
長谷部が、今剣に言った。今剣が、自分の手を見ながら答えた。
「僕もどうしてだか、ドームが壊れた時に傷が治って…」
「えっ!?」
全員が驚いて、今剣の手を見た。確かに血のついたハンカチだけが残り、傷がなくなっている。
「俺が、ドームに投げつけたワクチンが利いたのかな?」
あぐらを掻いて座っている獅子王が、口を開いた。大倶利伽羅が、獅子王に向いた。
「ワクチン?」
「あれ、主が持ってきてくれたんだ。これをドームに叩きつけろってさ。」
「…ということは、廣光は本当にウィルスだったのか?」
大倶利伽羅の手の上で、廣光が顔を上げた。
「タナダの奴…」
主が膝から顔を上げて、涙を指で払いながら言った。
「小さなリモコンみたいなの持ってたと思うけど。」
「!!ああ、ウィルスを検知する機械だって。」
その大倶利伽羅の言葉に、主が首を振った。
「逆よ、ウィルスを注入する機械なの。」
「!!」
全員が、驚いた表情で主を見た。
「誰か1人にウィルスを注入すれば、それで蔓延するようになっていたの。他の本丸がそれで壊滅させられたのがわかったから、本部がワクチンを作ってくれたのよ。」
「そうだったのか…」
「乱が壊して正解だったな。」
長谷部がそう言って、乱に微笑んだ。膝を立てて座っている乱が肩をすくめて、ぺろっと舌を出した。
「つい、かっとなってやっちゃった。」
大倶利伽羅が、乱の頭を撫でながら言った。
「お前たちの方が強いな。」
「ほんとだ。」
光忠が、目を細めてうなずいた。
長谷部が、主に向いて言った。
「主は、ずっとタナダを追ってたのですか?」
「うん。このふた月の間、ずっと本部と一緒に探しまくって…やっとあいつを見つけて…」
主は再び、膝に顔を伏せた。
「…やっと見つけたのに…こんなことしか、できないなんて…」
主が泣き出した。長谷部が慌てるように、主の背を撫でた。
大倶利伽羅が、ふと微笑んだ。
「主、ずっと俺たちのこと、思ってくれてたんだな。」
「あたりまえでしょっ!!」
主が涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて、大倶利伽羅に言った。
「子を思わない親はないのっ!!」
「主、痩せたな。」
「え?」
思わぬ大倶利伽羅の言葉に、主が目を見開いた。大倶利伽羅が続けた。
「痩せて、なんか顔変わった。」
「!?変わった?」
「うん。怖い顔になってる。」
「!!」
主は、両手で自分の頬を押さえて、隣にいる長谷部に向いた。
「私の顔、怖いっ!?」
「いえ…」
長谷部が困ったような表情になり、大倶利伽羅をにらんでから言った。
「美しさが増したって意味です。」
「!!」
主は両手で顔を伏せて「やだぁ!!」と言って、長谷部の肩をバシッと叩いた。
「いっ……!!」
長谷部は、あまりに痛さに声を上げかけたが、なんとか堪えた。
大倶利伽羅がそれを見て笑った。その大倶利伽羅の手の中にいる廣光も笑い出した。そのうちに、全員がくすくすと笑い始めた。
主が、長谷部に「ごめん」と手を合わせた。
……
夜-
第1部隊のメンバーが、主を中心に宿舎の縁側に座っている。
そして…主の手の上には「廣光」がいる。その手に包まれるようにして座り、主の顔を見上げていた。
「廣光君」
主が、廣光に微笑んで言った。
「よく、戻ってきてくれたね。本部から連絡があった時は、ほんと驚いた。」
廣光が、照れたようにうつむいた。大倶利伽羅が言った。
「本部はわかってたんだ。廣光が前の2代目だってこと。」
「うん。それまでも、うちの本丸に何か意志を持つものが漂ってるようだって、言われてたんだけどね。」
「!!」
「廣光君には悪いけど、最初は私たちも、あなたがウィルスの本体だって疑ってたの。ごめんね。」
廣光は驚いた表情をしたが、首を振った。
「…そうおもわれても…ちかたないもん…」
「でも、そうじゃないってことは、すぐにつきとめられたの。だってあなたがウィルスなら、他の本丸には何もないはずだもん。」
「なるほどな」
大倶利伽羅がうなずいた。主が続けた。
「タナダは、次元を移動できる審神者の本丸だけに、ウィルスを送り続けてた。結局、それが彼を見つけ出すきっかけになったんだけど、何しろ頭だけはいい奴だから、なかなか尻尾を捕まえさせなくて…。でも、あいつが自分で動くという迂闊な行動を起こしてくれたおかげで、やっと証拠がつかめた。」
「そう言えば…付喪神達を殺し合わせて、本丸を全滅させたって…」
大倶利伽羅が、呟くように言った。光忠が、ふと眉を曇らせた。
「…ひどい…」
主の隣に座っている長谷部が、膝に乗せた拳を震わせている。主は廣光を自分の肩に移動させ、その長谷部の拳に、そっと自分の手を乗せて握った。
「大丈夫。廣光君の例があるから、本部がその本丸の付喪神達を蘇らせようとしてる。私も協力するつもり。」
「!…そうですか…」
長谷部がほっとした表情をした。主が言った。
「ここでは、通用しなかったから良かった。」
全員がうなずいた。長谷部が言った。
「特に今回は、短刀達に助けられたな。」
「あいつら、ほんと強いよ。」
大倶利伽羅が、うつむき加減に言った。
「俺達は、何があっても殺し合うなんてことにはならないな。」
その獅子王の言葉に、石切丸が微笑んでうなずいた。
主が「うーん」と伸びをした。
「さて、帰るかー!」
「えっ!?もう帰るのかっ!?」
大倶利伽羅が思わず声を上げた。長谷部達も、突然の言葉に表情を曇らせた。主が両手を上げたまま「で、明日また来る」と言った。
「!!」
主が「へへっ」と笑った。
「今日は、あの「タナダ」の事を片づけなきゃならないから一旦帰るけど、また来る。とりあえずは、ウィルスの問題は解決したんだから。」
その主の言葉に、光忠が嬉しそうに言った。
「じゃぁ、久しぶりに「食事会」でもしますか。」
「やろうぜ!主、明日は泊まれるのか?」
「泊まるわよ。」
「やったーーーー!」
隣同士に座っている獅子王と大倶利伽羅が向き合って、両手をパンという音と共に合わせた。主の肩の上で、廣光も「やったー!やったー!」と飛び跳ねている。石切丸と光忠が笑顔を見合わせた。
「ですが主、向こうのお仕事の方は大丈夫なのですか?」
長谷部が心配そうに尋ねた。主はうなずいた。
「ちょうどゲームが完成した後だから、長い休暇をもらったのよ。」
大倶利伽羅が、身を乗り出した。
「えっえっじゃぁ、主は何日いられるんだ?」
「倶利伽羅!主は「人」だから、ここでは48時間が限界なんだよ。」
その光忠の言葉に、大倶利伽羅が「えー!」と、不満の声を上げた。
「じゃないと、私の本体が腐っちゃうからね。」
主が笑いながらそう言い、廣光と頬ずりしあった。
「でも、一旦戻って24時間経ったら、またここに戻って来られるの。」
「えっ!じゃぁ来いよ!」
「来るわよ。もちろん。」
「よっしゃー!」
大倶利伽羅がそう言って、廣光と一緒にガッツポーズをした。主が笑いながら言った。
「大倶利伽羅がガッツポーズするなんて、うちくらいじゃない?」
全員が笑った。
-FIN-
……
-妄想CAST-
廣光(ネンドロイド型大倶利伽羅)「いと様」式
大倶利伽羅「ku-ya様」式
へし切長谷部「XAIN様」式
燭台切光忠「SAM様」式
獅子王「るか様」式
石切丸「帽子屋様」式
乱藤四郎「なかむら様」式
薬研藤四郎「ぱぴこ様」式
今剣「ゆるん様」式
五虎退「カクタス様」式
前田藤四郎「2PC様」式
平野藤四郎「2PC様」式
Back Music「Flowerwall」by 米津玄師様
……
お読みいただきありがとうございました!!
すっかり遅くなりましたが、なんとか主を強制帰還(!?)させることができましたー!(;;)
実は、やっとパソコンを買い直しまして、MMD(動画)作りができるようになり、そちらの方をやりながらの執筆でございました。
本当は「大倶利伽羅ラプソディ」を、紙芝居でもいいからMMDで作ろうと思って始めたのですが、なんとっ!3代目君(RIRAKO様式大倶利伽羅)が配布休止中でして、あきらめることにいたしました。
まどっちにしても、もっと技術を上げなければ、作れないんですけどね(^^;)今は、技術向上に日々精進しております。
そして、Back Musicの「Flowerwall」は、偶然見つけた「米津玄師」様の名作でございます。ほんと素敵な歌です。是非聞いてみてください。…ああこの曲を、長谷部さんに紫アネモネの花畑の上で歌ってもらいたい~…いつか必ずMMDにて実現させたいと思っております。
小説の方も、MMDの方も頑張って続けて参りたいと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします!!
立花祐子