日常にひとさじの魔法を   作:センセンシャル!!
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ガバガバな設定とぐだぐだな日常が本領発揮する小説、はぁじまぁるよー。


四話 変わりゆく日常

 翌日登校すると、教室内が一瞬静まった。僕の顔が傷だらけの絆創膏だらけだったからだろう。あれだけやられたんだから、むしろこの程度で済んでラッキーだった。

 今まで教室の隅で一人だった奴が、いきなり傷だらけで登校してきた。誰だって何事かと思うだろう。僕は構わず自分の席に着く。……って、それじゃダメなんだってば。

 

「……おはよう(超小声)」

 

 自分の席についてから誰に向けてでもなく挨拶をする。誰にも聞こえないぐらいの大きさだったので、当然返って来るものはない。僕は小さくため息をついた。

 昨日、これまでのやり方を改める決意をした。それはいい。改めてすぐに改善できるわけではない。これも分かっている。

 だけどそもそもどうすればいいか分からないというのは、完全に想定外だった。根暗キャラは作りものだったわけだけど、じゃあどうやってその仮面をはがせばいいか、これが分からない。

 結局僕は、意識せずとも根暗キャラになってしまうぐらい定着してしまっているのだった。ため息の一つも出よう。こんなんで本当に改善していけるのだろうか。

 そんな僕の小さな不安は、ここ数日行動を共にすることになった女の子によって一蹴される。

 

「坂上くん、おっはよーう!」

「あっだぁ!?」

 

 バッチーンと背中を叩かれる。やったのが誰かなんて、確認するまでもない。この学校で僕にこんなことをするのは、現状では一人しかいないのだ。

 

「大西さん……僕、怪我人なんだけど……」

「うえ!? あ、ご、ごめん坂上君! つい……」

 

 影山に殴られたのは主に顔だから、胴体はそこまで怪我をしていない。それでも昨日はまともに動けないぐらいに痛かったのだ。女子とは言え、力いっぱい叩かれればむせる。

 だけど、大西さんらしいと思う。痛みで顔を伏せながら、ちょっぴり笑えた。

 

「……影山達は?」

「ん、今日はまだ来てないみたい。朝イチで文句言ってやろうと思ったのに、ちょっと拍子抜け」

 

 ということは、羽山先生が早速動いてくれているんだろう。本当に信頼できる先生だ。昨日のことを思い出すと涙腺が緩みそうになってしまう。

 そんな風に僕がちょっと感動していると、大西さんは色々と台無しにしてくれる。

 

「じゃあ、ここにサインお願いね!」

「……突拍子がないね。僕はまだ「やる」とは言ってないんだけど」

 

 彼女が突き付けたのは、やっぱり同好会申請書。僕が指摘したために誤字は直っており、「幻想魔法研究同好会」の下に「会長・大西明音」の文字。さらに下は「副会長」と役職のみが書いてあり、氏名は空欄だった。

 平会員でいいのに……っていうかそもそも入る気はないんだってば。

 

「なんでよー! 昨日色々話してあげたじゃないよー!」

「それとこれとは別問題。応援はするけど、泥船に乗る趣味はないから」

「泥船って言った!? 今あたしの同好会を泥船って言ったわね!?」

 

 大西さんを弄って遊ぶ。彼女とだったら普通に会話をすることが出来るみたいだ。……強制的に慣らされたからかな。

 昨日も一昨日もこんな光景が展開されていたため、いい加減クラスメイトも慣れたのか、僕に集まっていた視線が散っていくのを感じる。……伊藤さんは、相変わらずじっと僕を見ていた。

 それで思い出した。大西さんに、これまでの態度の謝罪と、昨日家まで運んでくれたことの感謝を伝えなければ。

 

「えっと、大西さん。昨日のことなんだけど……」

 

 切り出そうとして、気付く。家まで肩を貸してくれたことに感謝を伝えるということは、「大西さんが僕の家まで来た」ということを明示することになる。

 これが男子同士、女子同士なら問題ないだろう。だけど男子と女子では、面倒な噂の種になりかねない。こんな衆目に晒される場所で言うことじゃなかった。危ない危ない。

 

「……やめとく。あとでね」

「何遠慮してんのよ。言いたいことがあるなら言っちゃいなさいって。坂上君のお父さんからも、「透と仲良くしてやってくれ」って言われてるんだから」

 

 

 

 ガタガタガタっと、何人かが席を立つ音がした。……何でそういうこと言っちゃうかなぁ。しかも大西さん、まるで気付いてないし。

 僕が隠しても、大西さんが「僕の家族と会った」という話をしてしまっては意味がない。暗に「僕の家に来た」と言っているようなもんだ。

 

「あれ? どしたの坂上君。何か顔色悪いけど」

「……別に。どこかの誰かさんの不用意な発言のせいで、この後のことを考えると気が重いだけだよ」

 

 大西さんは、やっぱり意味が分かってなかった。この子には直球じゃないと伝わらないようだ。知ってた。

 ……問題の先送りでしかないけど、ここは戦略的撤退と行こうじゃないか。

 

「大西さん……あとは任せた!」

「え、ちょ、坂上くん!? 待ってよ、何処行くの!?」

「お、大西さん! 坂上の父親に会ったってどういうことなんですか!? あいつとどういう関係なんですか!?」

「最近のあかねちゃん、いつも坂上君と一緒にいたけど、そういうことだったの!?」

「ええ!? なになに、皆いきなりどうしたのよ!?」

「おい、坂上を逃がすな! って速っ!?」

 

 大西さんを生贄にして、スタートダッシュでクラスメイトを振り切った僕は、ホームルームが始まるまで適当な場所で時間を潰すことにした。

 謝罪と感謝はまたあとで。

 

 

 

 

 

「む……」

「あ……」

 

 そうやって中庭に続く廊下を歩いていると、思いがけない顔に出くわした。

 影山。後ろには表情を険しくした黒木もいる。尾崎はいないみたいだ。いつも三人セットってわけじゃないらしい。……当たり前か。

 影山の顔には、困惑。昨日暴力を振るい、そして手痛い反撃を喰らった相手に対し、どう接するか決めあぐねている様子だ。

 彼が動かないからか、黒木がずんずん僕の前に進み出て来る。

 

「てめえ、よくもまあノコノコと学校に顔出せたな、この化け物野郎が!」

「やめろ、シュウ! 羽山のオッサンにも言われたばっかだろうが!」

 

 黒木の肩を掴んで影山が止める。職員室帰りみたいだ。力関係としては影山の方が上らしく、黒木は納得いかない表情ながらも引き下がった。

 改めて、影山は僕の前に立つ。彼は僕と同じぐらいの身長だから、真正面から向き合うことになる。相変わらず、僕の目は髪で隠れていた。

 

「……センコーから大体聞いた。こっちの都合押し付けて、悪かったナ」

「……いいよ、僕の態度が最悪だったことは自覚してるから。影山は、そういうのが気に入らなかったんだよね」

「まあな。始まりは、お前が伊藤チャンに冷たく当たってるのを見てからだヨ。三日前、文芸部の部室前で言い合ってたろ?」

 

 見られてたのか。……そういえば、影山は何部なんだろう。見た目はあんまり部活とかやりそうな感じじゃないけど、一年は所属必須。そして彼が呼び出されていないということは、どこかには所属しているはずだ。

 

「俺ら、社会科研究部なんだヨ。活動場所があの近くでな」

「そういうことか。……先生の言った通り、影山は影山で、正しいと思ってやったんだね」

「すぐに腕力に頼るなって怒られたけどナ。で、一昨日も大西チャンのこと軽くあしらってただろ? それで何様だこいつってなって、忠告することにしたんだヨ」

 

 それが中庭での一件だ。彼らが僕に注意するきっかけとなった伊藤さんが羽山先生を呼んで止めたというのは、皮肉な話だな。

 そこで僕は彼らを無視し、影山の腕を振り払った。それが、決定的となった。

 

「こいつは一回痛い目を見せないと分からねえって思ったのよ。で、ああなった」

「そっか。……尾崎は気絶してるだけって言ってたけど、怪我はしなかった?」

「おいおい、そりゃ俺らの方が気にすることだろ。途中から熱くなって手加減なしになっちまったからヨ」

「それでも……僕の感応は、簡単に"壊せて"しまう。僕の方が、よっぽど危険だよ」

「そうだ化け物野郎! てめえなんかが学校に来てんじゃねベッ!?」

 

 黒木が騒ぎ出したところで、影山が頭に拳を叩き込んで黙らせた。彼らの間にも温度差はあるみたいだ。

 

「悪いな、こいつの言うことは気にしないでくれ。大西チャンが最近お前に付きっ切りだから、妬いてんだヨ」

「な、バ、違ぇよ!? ひろき君、何言ってんだよ!」

「ああ、そういう……」

「納得してんじゃねえよ、化け物野郎!」

 

 顔を真っ赤にした黒木の態度が全てを物語っていた。別に不思議なことでもないか。大西さんは魅力的な女の子だから。そういう男子だって、少なからずいるだろう。

 なおも騒ごうとする黒木を、影山が「だ・ま・れ」と言って締め上げる。黒木は静かになった。

 

「……影山は、怖くないの? 僕の感応がどういうものか、聞いたんだよね」

「あー、ソッコーでやられたから見てはいないんだよな。それが逆によかったのかもナ」

 

 それもまた、影山と黒木の温度差の理由かもしれない。黒木は自分の感応を消し飛ばされ、自分を殴り飛ばした"触手"を見ている。あのとき彼は、間違いなく恐怖していた。今も僕を「化け物野郎」と呼んでいる。

 "触手"は、力の凶悪さもさることながら見た目も悪い。大西さんは色々(エロエロ)やってたけど、見た目だけで生理的嫌悪を感じる人だっているだろう。

 だからと言って、影山に見せて確認する気はないけど。少ないとはいえ、人目はあるのだ。

 彼は、不敵に笑った。

 

「ま、ちょっとやそっとでビビッたりはしねえヨ。俺がそんなタマに見えるか?」

「……だね。すぐ暴力に訴えるような人だし、心配はいらなかったかな」

「……お前、結構毒舌だよな。大西チャンはよく付き合えるゼ」

 

 そうなんだろうか。長い事一人でいたせいで、自分が本当はどういうキャラクターなのか分からない。

 ……これから理解していこう。僕はもう、逃げないんだから。

 

「影山。色々気にさせてしまったことと、感応でぶっ飛ばした件。ごめんね」

「……かと思ったらこれだ。よく分かんねえナ、お前。こっちこそ、都合を押しつけた上にぶん殴って悪かった」

 

 結局、黒木はともかくとして、影山は自分の"正義"に従って行動したのだ。僕が"善かれ"と思って人を遠ざけていたことと差はない。そんな彼を、僕が責められるわけがなかった。

 影山とは、今後友好的な人間関係を築いていきたいと思えた。ちゃんと、そう思えた。……黒木はまだ分からないけど。彼はまだ伸びている。

 

「そういえば、尾崎はどうしたの?」

「あン? 別に一緒じゃねえヨ。あいつはセンコーからの呼び出しなしだからな。大西チャンが巻き込まれないように抑えてただけだろ?」

 

 そういえばそうだった。彼は一切手を出さず、大西さんを"守って"くれていたんだ。冷静に思い出すことで、初めて気付いた。

 やっぱり彼は、最初から僕の味方をするつもりで……それだったら影山達の暴走も止めるよな。彼の真意が何処にあるのか、さっぱり分からない。

 

「なんだよ、マサキがどうかしたのか?」

「いや……僕の感応を見たとき、尾崎が「やはり」って言ってたのが気になって」

「向こうは知ってたんじゃねえの? 中学が一緒だったとかでサ」

「いや、僕は東一中だから……って、影山は同じ中学じゃなかったの?」

「俺らは文堂二中だよ。マサキとつるんだのは高校からだゼ」

 

 ますます尾崎の行動が分からなくなってきた。彼は何故影山達とつるみ、何故僕の感応を知っていて、何故彼らの暴走を止めなかったのか。行動のラインが繋がらない。

 やっぱり、一度彼とも話をする必要があるな。同じクラスなんだから、そう難しいことではないだろう。

 

「そっか、ありがとう。本人から直接聞いてみることにするよ」

「おう。あんまり力になれなくて悪いナ。……しかし、なんだなァ」

 

 いまだ戻って来ない黒木の首根っこを掴んだまま、影山は僕をマジマジ見た。ニヤニヤ笑いは彼のニュートラルの表情みたいだ。

 

「坂上って、意外と話し好きなんだな。こっちが素か?」

「……まあね。長い事一人でいたから、まだ一部の人としか話せないけど」

 

 影山と普通にしゃべれるのは、お互いに殴り合ったからだろうね。あとは、影山が「意外とイイ奴」だったから。何でこんな不良っぽい見た目をしてるんだろう。

 ――後に聞いたら、「高校生活を目いっぱい楽しむため」だそうな。感性は中々ファンキーみたいだ。

 話が一段落したところで予鈴が鳴った。そろそろ教室に戻った方がいいな。

 

「黒木、起こした方がいいんじゃない?」

「そだナ。おら、シュウ。いつまでも伸びてんじゃねえぞ!」

「……ハッ!?」

 

 影山によってゆすり起こされた黒木は、やっぱり僕を目の仇にした。そしてまた影山にやり込められる。これは時間をかけてどうにかするしかなさそうだ。

 ともあれ僕達は本鈴前に教室に戻れるよう、走って移動した。そして羽山先生に見つかり、「廊下を走るな」と出席簿で頭を叩かれた。

 何でもない学校生活の一幕。今まで放棄してきたその中に僕がいるということが何だかおかしくて、人知れず笑った。

 

 

 

 

 

 ホームルーム開始ギリギリに戻ってきたためか、それとも大西さんがあらかた話したからか、僕が教室に戻ってから問い詰められることはなかった。

 代わりに、大西さんから恨みがましい視線を受けた。不用意な発言をしたのは彼女なので、自業自得ということでスルーさせてもらおう。

 その後、一限の授業を受けながら考えた。伊藤さんに謝罪するにしても、どのタイミングですればいいだろうか。

 一部の人と話せるようになったとは言え、僕はまだまだクラスの中で根暗キャラという認識のはずだ。大西さんのように向こうから来るならともかく、僕から行ったんじゃ迷惑にならないだろうかと考えてしまう。

 かと言って謝罪をしないという選択肢はない。僕は彼女に酷い事を言った。客観的に見てもそれは事実であると影山達が証明してくれた。

 彼女には謝罪し、説明しなければならないだろう。……僕が、何故あんな行動をとったのか。つまり、僕の感応について話さなければならない。

 これもまた、抵抗感の原因になっている。確かに一部の人が知るところにはなったけど、大っぴらにしたいことでもない。出来ることなら、伊藤さんにも感応抜きで説明をしたい。

 それが出来ないなら、せめて周りに人がいないときに謝りたい。だけど、学校生活の中でそんなタイミングが早々あるわけじゃない。どのタイミングで切り出すか……難しいところだ。

 僕は伊藤さんを詳しく知っているわけじゃない。たった一回話をしただけ。行動パターンだとか交友関係だとか、そういったものは分からない。

 だけど、一つだけ分かっていることがある。彼女が文芸部であることと、活動のために図書館で本を借りるということ。そして図書館なら、あまり人目につかずに済む。

 彼女が今日も図書館に来るかはわからないけど、放課後まで待たなければならないということだ。……そのぐらいなら、大した待ち時間でもない。

 放課後に動く。そう決めて視線を前に向けた。だいぶ考え込んでいたようで、板書がかなり進んでいた。

 

「……ここの証明を誰かにやってもらいましょう。前回の授業で最後に当たったのは小宮山さんでしたね。では坂上君、お願いします」

 

 そしてよりにもよってこのタイミングで指名された。木曜一限は冬木先生の数学Aの授業だ。現在は「集合」の範囲をやっている。

 証明する例題は、「とある二通りの条件で指定された整数X、Yの集合が同一であることを証明せよ」というものだ。ええと、まず条件を数式で書き表して……。

 

「おや、坂上君。一日で随分イメージチェンジしましたね。どうしたんですか?」

「……階段で転びました」

 

 バカ正直に影山達とケンカしたと言うわけにもいかず、適当な話をでっち上げた。冬木先生は「そうですか、気を付けてくださいね」と言ったけど……何かを察した様子だった。

 冬木先生も隣のクラスを受け持っているわけだから、うちの担任から何か話がいっているのかもしれない。だからどうしたということもないけど。

 あまり気にせず、問題に集中する。集合が同一ということは、条件Aが条件Bの部分集合であることとその逆を証明すればいい。そのための式展開は……ああもう、ややこしい問題だなぁ。

 

「ところで坂上君、魔術部への入部は考えていただけましたか?」

「……だから、僕には出来ませんってば。こんな問題で躓いてるようじゃ、魔術なんて夢のまた夢でしょう」

「そうでもないと思いますよ。それ、今やってるところから3ページ先の問題ですから」

 

 ……どおりで難しいわけだ。問題を解く手を止めて、冬木先生の方を見た。彼は相変わらず圧迫感のある笑みを浮かべていた。

 

「予習が出来ていて大変結構なことですが、授業にはちゃんと集中しましょうね、坂上君」

「……失礼しました」

 

 どうやら僕が考え事をしていたのはバレバレだったようだ。クラスメイト達から小さな笑い声が聞こえてきた。影山も、伊藤さんも笑っていた。

 問題は最後まで解いて、自分の席に戻った。僕の解答は特に問題なかったようで、解説にも使われた。

 その後はちゃんと集中して授業を受けたので、一限は何事もなく終わった。

 

 

 

 四限、体育。男子はグラウンドでサッカー、女子は体育館でバレーボールをやっている。

 最初はインサイドキックでのパス練習。せっかくなので、僕は影山と組むことにした(そもそも男子でまともに会話出来るのは影山しかいない)。黒木がまた僕を睨んでいたけど、尾崎によって連れていかれた。

 

「お前、魔術部に誘われてたんか。羽山のオッサンがうるさくねえか?」

「根性曲がるからやめとけって言われたよ。僕自身、魔術部に入る気はないんだけどね。昨日見学したけど、とてもじゃないけど着いていけそうになかったよ」

 

 一対一で向き合うため、非常に話がしやすい。一限での冬木先生とのやり取りについて聞かれた。

 

「魔術、ねえ。大西チャンがやろうとしてる同好会って、魔術絡みなんか?」

「僕もちょっと分かんない。大西さん曰く、「魔術でも感応でもない画期的な魔法」を考えてるらしいよ」

「魔術でも感応でもって、それ「霊能」のことじゃねえの?」

 

 「霊能」。この世界にある三つの魔法の最後の一つであり、原初の魔法であるとも言われている技能だ。感応・魔術両方の性質を合わせ持ち、ここから二つの魔法に派生したとする説があるそうだ。

 定義としては「精神存在に作用する非科学技能」らしいんだけど、はっきり言って本当に存在するのかすら疑わしい魔法だ。それ故に、僕は今まで思考に上らせることすらしてこなかった。

 人口の半数が持つ感応や、誰でも習得可能な魔術と違い、とにかく使い手が少ないのだ。普通に生活していて、感応使いや魔術技師もどきを見ることはあっても、霊能力者だけは僕も見たことがない。

 そもそも出来ることが「精神存在への作用」なせいで、特殊な才能がないと確認することが出来ない。だから感応使いや魔術技師と違って、魔法行使を見ても霊能力者であると判断するのが非常に難しいというのもある。

 実際、テレビなんかで「自称」霊能力者が出ていたりするけど、魔術や感応を使ってそれっぽく見せている、あるいはCGか何かでの演出だったりするらしい。

 それでも一応は魔法の一つに数えられているので、世間一般には認知されている。……実在するものとしてか、それともただの迷信としてかは定かでないけど。

 

「いや、それはないと思う。大西さんが求めてるのって、「派手な魔法」のはずだから」

「あー、霊能じゃ派手さはないわな。んじゃ、やっぱ魔術か?」

「うーん……昨日の魔術部見学では、「魔術は違う」って思ったらしいけど」

 

 だけどそれは、魔術部が研究している魔術が違うだけであって、やっぱり魔術に含まれるものかもしれない。僕も全ての魔術を知っているわけじゃない。

 ……っていうか影山、随分興味津々だな。

 

「もし実現出来るなら、俺も使ってみたいからナ。ゲームみたいで面白いじゃん」

「そういうもんなのかな。僕は自分の感応をどうにかするので手いっぱいだよ」

「お前はそうかもな。俺も感応は持ってるけど、しょっぱい念動力だけだヨ」

 

 「ほれ」と言って影山は、ボールを蹴らずにこっちに飛ばした。足で飛ばしたときに比べて随分軽かった。彼は感応よりも身体能力の方が優れているみたいだ。

 影山はいつものニヤニヤ笑いを浮かべて、クイッと手招きした。……僕にも感応を使えと言っているのだろうか。さすがにそれはまずい。

 

「人目に付くところでは使えないよ。目立つし、危ないし」

「何だヨ、つまんねーの」

 

 そもそも今は体育の授業時間なんだから、感応を使うのはあまりよろしくないだろう。体を育むと書いて体育なのだから。

 再びボールを蹴り合い、話題は移り変わる。

 

「ところで、マサキとは話したのか?」

「……いや、まだ。タイミングなかったし、何話せばいいかもよく分からないし」

 

 尾崎に聞きたいことは一つ。僕の感応を見たときの「やはり」とは何だったのか。だけど、いきなりそれだけを聞くというのもおかしな話で、導入の話題は必要だ。

 だけど長年根暗キャラを続けてきた僕に、自然な会話の切り出し方などという高等技能は備わっていない。他にもやることがある現在は、彼に割けるリソースが足らなさ過ぎる。

 

「影山や大西さんみたいに話し上手なら、僕も上手く話せるんだけど」

「そりゃマサキには期待できねえナ。あいつ、ほとんどジェスチャーでしか会話しねえから」

 

 無口キャラと根暗キャラ。どちらからも話を始められず、ひたすら無言が続きそうだ。とはいえ、こんなことで誰かの助力を請うというのも憚られる。

 今のところ、彼については後回しということで考えている。僕が今、何よりも優先すべきなのは……。

 

「いい加減、僕も部活決めなきゃいけないしね。まずはそこからだよ」

「お前、結構ガタイいいし、陸上部でいいんじゃねえノ?」

 

 影山も運動部推しで、ため息が出た。だから僕は自分から疲れる趣味はないんだってば。

 

 

 

 昼休み。昼食を摂り、午後の授業と放課後の活動に備えて心身の休息をとる時間だ。授業毎の休み時間が10分であるのに対し、昼休みが40分も与えられているのは、その目的のためだろう。

 休息の方法は人それぞれだ。自分の席でゆっくりする。あるいは逆に、校庭に出て体を動かす。会話好きなら、くだらない話に花を咲かせるのもいいだろう。

 だが、昼食を摂ることも出来ずひたすら校内を逃げ回るというのは、昼休みの在り方として絶対に間違っていると思う。

 

「ぜえ、ぜえ……坂上君、署名……」

「だから、入らないって、言ってるだろ……」

 

 男子更衣室で着替えを終えて教室に戻る途中、同好会申請書を手に僕に迫る大西さんから逃げ出し、いつの間にか屋上に出ていた。二人とも体力の限界で、これ以上走れなかった。

 何が悲しくて体育の授業後、しかもエネルギー補給もままならない状態で全力疾走しなきゃいけないのか。

 

「朝、あたしを見捨てて、逃げたんだから、入って当然でしょ……」

「そんな当然は、ない。あと、あれは大西さんの、自業自得」

 

 ようやく息が整ってきた。日陰になっている段差に腰掛け、大きく息を吐き出した。屋上は五月の日差しが容赦なく照りつけており、非常に暑かった。

 大西さんはよろよろした動きで、僕の隣に腰掛ける。……ナチュラルに隣に来ないでほしい。彼女にはパーソナルスペースというものがないように思える。何のためらいもなく距離を詰めてくる。

 

「……誰にでもそうするの?」

「何の話よ。ともかく、坂上君は同好会に入会するの。これはもう決定事項よ!」

「勝手に決めないでよ。僕の自由意思は何処行ったのさ」

「坂上君、入りたい部活ってあるの?」

 

 ……ないけど。いやでも、これからの部活見学でやりたいことが見つかるかもしれないし、少なくとも現時点で大西さんの同好会に興味はない。

 

「影山は、大西さんの活動に興味あるみたいだったよ」

「やだ! あいつ、坂上君のことボコボコにしたじゃない。そんな奴を誘うなんて、絶対無理!」

 

 僕は気にしてないのに。やられた側と見ていた側では感覚が違うのかもしれない。まあ、そもそもあいつは社会科研究部だから、同好会所属は無理だろうけど。

 ちょっとフォローしておくか。

 

「少なくとも影山は、悪い奴じゃなかったよ。ちょっと行動が乱暴だっただけで。あんまり嫌わないであげてよ」

「……坂上君、心広過ぎ。何でそんな簡単に許せるのよ。あいつ、ひどい事したのよ!?」

「僕の態度にも問題はあったからね。お互いに謝って水に流したんだから、必要以上に引きずることはないよ」

 

 むしろ、彼には感謝している部分もある。彼が性急な行動に出たおかげで、僕は自分の振る舞いを見直す機会を得られたのだ。あれがなければ、いまだに過去に囚われたまま動き出せていなかった。

 そう考えれば、「どちらが正しかったか」は明白だ。僕の消極的な考えは、彼の積極性により塗り替えられたのだから。

 

「僕も、今後は影山と仲良くしていきたいと思ってる。だから大西さんも、あいつのことは許してあげてよ」

「……しょうがないわね。で・も! 同好会に誘うのは無理! これはもう決定だから!」

 

 それは別に構わない。大西さんが考える無茶に影山が力になれるとは思えないし。僕も同じだけど。

 ……他のクラスに都合よく魔術に精通してる部活無所属の一年生がいたりしないかなぁ。そうすれば僕が追い回されることもなくなるのに。

 

「大体、なんで僕なのさ。僕が大西さんのやりたいことの力になれないなんて、もう分かってるでしょ?」

「そんなことないと思うけど。坂上君、すっごい感応持ってるじゃない」

「……、感応じゃダメでしょ。大西さん、感応は使えないんだから」

 

 向き合うとは決めたけど、そう簡単に受け入れられるものじゃない。反応がちょっと遅れてしまった。大西さんが気付いた様子はないけど。

 僕のもっともな意見は、大西さんにとっては説得される根拠にならなかったようで、彼女は僕との距離をずいと詰める。

 

「それに! あたしが坂上君と一緒にやりたいんだもん。理屈じゃないよ」

「近い近い。……それがよくわからないんだよ。僕の何をそんなに気に入ったのさ。自分で言うのもなんだけど、地味の中の地味だよ」

「だから、理屈じゃないの。なんかこう、坂上君といると楽しいんだもん」

 

 気恥ずかしくなって視線を外す。なんでこう直球なのかね、この子は。……僕も、大西さんといると退屈はしないけど。それが楽しいのかどうかは、自分でもよく分からない。

 視線を外した僕を、大西さんはじっと見ている。どう反応を返せばいいんだろうか。

 

「……とにかく、僕はまだ入るとは決めてません。せめて僕が自分の意志で入るかどうか決めるまで待ってよ」

「うーん……しょうがないわね。今はそれで許してあげる」

 

 許された。いつの間にか僕は糾弾されていたようだ。勧誘を断るのって、そこまで責められることだったのか。なんてこった。

 とりあえず、大西さんを落ち着かせることは出来たみたいだ。これで今後はゆっくり部活見学が出来そうだ。

 ……と、そうだった。周りに人はいないし、ちょうどいいタイミングだ。

 

「大西さん。昨日まで邪険にしてたことと、家まで運んでくれたこと。ごめんね、ありがとう」

「いいわよ、別に。友達でしょ」

 

 友達。それは、小学四年生の事故以来、僕が作ることを放棄してきたものだった。いつの間に僕と大西さんが友達になったのかは知らないけど……嬉しかった。

 ニカッと笑う彼女につられ、僕もちょっとだけ笑った。

 

 そのタイミングで予鈴がなった。昼休みの終わりを告げる予鈴。あと5分で午後の授業が始まる。そして僕達は、午前の授業終了後に直接ここまで走ってきた。

 つまり、僕も大西さんも昼食はまだ。大西さんの笑顔が凍りついた。

 

「……急いで戻れば、ちょっとぐらいは時間あるかな」

「は、走るわよ坂上君! このままじゃあたし、飢え死にしちゃう!」

 

 慌てた様子で大西さんが走り出す。やれやれとため息を一つつき、僕も彼女に続いて屋上を後にした。

 なお、教室に戻ったらすぐに授業が始まってしまったため、昼食を食べる時間はなかったことを記しておく。……ひもじい。

 

 

 

 

 

 五限と六限の間の休み時間に昼食をかきこみ、満腹による睡魔との戦いを終えて放課後。僕は図書館へとやってきた。数日前と変わらず、気の早い受験生が勉強に精を出している。

 本棚コーナーを回り、伊藤さんの姿を探す。ホームルームの後、彼女が図書館の方に移動したのは確認している。多分いると思うんだけど。

 

「借りたい本でもあるの? 部活見学しないなら、同好会に入ってよ」

「……後でするよ。ここにいるはずの人に用事があるんだ」

 

 ちなみに、何故か大西さんも一緒だ。

 誰かが同好会に入らない限り、彼女も同好会活動をすることは出来ない。この学校では、同好会の設立には二人以上のメンバーが必要らしい。今のところ、彼女はやることがないのだ。

 だからなのか何なのか、僕の部活見学に付き合うというのだ。勧誘を止めることは出来たけど、結局付き纏われている。以前よりはマシだけど、これもどうなんだろう。

 まあ、伊藤さんに話をするときに大西さんがいることは問題ないだろう。周りに人がいてほしくない理由は僕の感応絡みの話だからであり、既に知っている大西さんなら気にすることはない。

 図書館に慣れていないのか、大西さんは落ち着きなくあっちへ行ったりこっちへ行ったりしている。仮にも魔法の研究をしようと言うのだから、本に囲まれる雰囲気には慣れておくべきではないだろうか。

 ……と、三つ編みと眼鏡の文学少女を見つけた。僕の探していた人だ。

 

「伊藤さん」

「っ! ……坂上君」

 

 突然名を呼ばれ、びっくりして振り返る伊藤さん。表情は固く、僕に対して思うところがあるとはっきり分かった。この間の件を引きずっているみたいだ。

 そりゃそうか。僕の方で意識が変化するイベントがあったからと言って、それが伊藤さんに関係あるわけじゃない。彼女にとっては、僕に拒絶されたままなのだから。

 

「この間は、ごめんなさい。親切にしてくれたのに、無下にするようなことを言っちゃって」

「えっ!? あ、その……こちらこそ、無理に勧誘するような真似をして、ごめんなさいでした。あんなの、迷惑ですよね……」

 

 彼女は自分の行いが悪かったと考えているようだ。……本当にいい子だな。誰がどう考えたって、僕の態度に問題があったに決まっているだろう。伊藤さんに落ち度はなかった。

 

「そんなことはないよ。こっちの都合で勧誘を受けられなかったってだけだから。伊藤さんが気に病むようなことじゃないよ」

「……いえ、私がいけないんです。坂上君がもっとクラスに馴染めたらいいなって、余計なお節介を焼いてしまって……坂上君の事情も考えないで、勝手なことをしたんです。本当にごめんなさいっ!」

「いや、だからそれは僕の態度が悪かったわけで……キリがなさそうだから結論を言っちゃうけど、僕は色んなものから逃げてただけなんだ。それを伊藤さんにも押し付けてしまったんだ」

 

 伊藤さんは今にも泣きそうだったので、前振りなしで詳細を説明する。僕が感応使いであること、小学校のときに暴発事故を起こしたこと、それが原因で人を遠ざけていたこと。

 二度目の説明だからか、大西さんにしたときよりも端的に説明出来たと思う。伊藤さんは、黙って僕の語る過去の事実を聞いてくれた。

 

「……それで昨日、先生に言われて気付いたんだ。人を遠ざけて感応から目を背けても、何も変わらないんだって。僕は……ただ努力することを怠ってただけなんだって、気付かされたんだ」

「坂上君……」

「だから僕が伊藤さんに酷いことを言ったのは、八つ当たりみたいなものでしかなかったんだよ。……本当にごめんね」

「あ、謝らないでください! 私、坂上君にそんな事情があることも知らないで、あんな軽率なことを……こちらこそ、本当にごめんなさい!」

 

 結局謝ってくる伊藤さん。いい子なんだけど、ちょっと責任感が強過ぎる。大西さんの無責任さを見習うぐらいでちょうどいいんだけど。

 そんなことを思ったら、いつの間にか迷子になってた大西さんがやっと合流した。

 

「坂上君、やっと見つけた……って、何さつきちゃん泣かせてるのよ!」

「え!? あ、いや、これは話の流れというか……」

「うぅ、大西さん……私、ダメな子なんですぅ!」

「女の子泣かせちゃダメでしょーが! おーよしよし、あたしの胸で泣きなよ、さつきちゃん」

「あの、二人とも……ここ図書館……」

 

 図書館では静かにしましょう。そんなわけで騒がしくしてしまった僕達は、三人そろって図書館を追い出され、イエローカードを喰らってしまった。レッドカードで一学期間出入り禁止だそうだ。

 僕達はともかくとして、伊藤さんには手痛いダメージを喰わせてしまった。……いや、これについては彼女の自業自得だな。僕は止めたんだから。

 

 

 

「なるほどねー。そんなことがあったんだ」

「泣いちゃったりしてごめんなさい……恥ずかしい……」

 

 場所を移して、中庭ベンチ。グラウンドを使わせてもらえない運動部の一年が走り込みをさせられているのを横目に、僕達は大西さんに事情を説明した。

 伊藤さん(フルネームは伊藤皐月さんというらしい、今知った)は僕の話を聞いて、これまでの苦労なんかを想像して悲しくなってしまったそうだ。さすが文芸部、感受性豊かだ。

 そんなに気にしないでもらいたいものだけど。乗り越えた……とはまだ言えないけど、それでもようやく向き合おうという気にはなったんだから。彼女が気にするようなことじゃないはずだ。

 

「あたしだけじゃなくて、さつきちゃんにも「迷惑」なんて言ってたのね。坂上君ってば毒舌なんだから」

「……影山にも言われたけど、僕ってそんなに毒舌?」

「そ、そんなことないですよ? ただ、言葉選びが容赦ないっていうか、あえて攻撃力の高い言葉を選ぶっていうか……」

 

 それが毒舌っていうんじゃないかなぁ。僕はそんなつもりなかったんだけど。……もう覚えていない小学四年生のときの口ゲンカも、もしかしたらそれが原因だったりするのかも。

 考えれば考えるほど、色々と自業自得過ぎて埋まりそうだ。深く考えない方がいいかもしれない。

 

「……でも、大西さんはそれでも挫けなかったんですね。私なんか、声もかけられなくて……」

「伊藤さんは繊細なんだよ。大西さんみたいなガサツとは違うんだから、比べたって仕方ないよ」

「ほらー! やっぱり毒舌じゃない!」

 

 これは毒舌じゃなくて、ただの大西さん弄りです。兼、伊藤さんへの励まし。タイプは違うけど、二人ともいい子なんだ。こんなことで落ち込む必要はない。

 僕の攻撃的な冗談で、ようやく伊藤さんはクスリと笑ってくれた。

 

「あの……私、また坂上君と、お話してもいいんですよね?」

「……うん、まあ、その……お手柔らかに」

「なに日和ってんのよ。坂上君も、根暗直すんでしょ? こう言ってくれてるんだから、協力してもらいなさいよ」

 

 そうなんだけど。……人から「根暗を直す」って言われると、なんかクるな。芯まで根暗のつもりはないからかな。

 

「僕なんかと話して楽しいことなんてないと思うけど……それでよかったら、お願いするよ」

「とんでもないです! 坂上君とお話するの、楽しいですよ! 大西さんもそう思いますよね!」

「うんうん。さつきちゃんは分かってるね。自信持ちなって、坂上君」

 

 女子二人が揃って持ち上げてくる。こんなことで嘘をつくような人たちではないけど、僕の何がそんなに面白いんだろうか。ちょっとよく分からない。

 ……まあいっか。褒められて嬉しくないわけじゃないし。二人にとっては意味のあることなんだと、素直に受け止めておこう。

 

「僕からは以上なんだけど……伊藤さん、そろそろ文芸部の活動に行った方がいいんじゃないの?」

「あ、そうですね。……あの、坂上君。せっかくだし、この間は出来なかった文芸部の見学、していきませんか?」

 

 伊藤さんは、ちょっと控えめな感じで提案した。確かに、今はもう見学を断る理由がない。もし僕が文芸部に興味を持てるなら、入部するのも選択肢としてありだ。

 見学する部活はまだ決めていなかったわけだし、渡りに船だ。

 

「そうだね。迷惑じゃなかったら、お邪魔させてもらうよ。大西さんも来るの?」

「もちろん! 同好会の会長として、副会長候補をしっかり見張っておかないとね!」

「クスッ。それじゃ、お二人ともご案内しますね。坂上君に入部してもらえるように、私頑張りますから!」

 

 そうして僕達は、文芸部の活動場所である第三小教室へと向かった。

 

 見学した文芸部の活動は、本の論評を行うというものだった。僕達が見たのは発表形式のものだったけど、普段は執筆形式で行っているそうだ。

 他にも資料をもとに随筆を書いたり、小説を書く人もいるらしい。過去に執筆されたものを読んでみたけど、中々読み応えのありそうなものだった。

 ただ、やっぱり大西さんには退屈だったようで、発表の途中で寝てしまった。見学としては失礼なことだけど、部員は皆穏やかな人たちだったから、笑って許してくれた。

 僕の感想としては、多少興味はそそられたけど出来るかどうかは分からないという感じだ。伊藤さんや部長さんは「活動していくうちに出来るようになる」と言ってたけど……まあ、保留だね。

 見学を終えて小教室を出た後、大西さんから「入部しちゃダメだからね!?」とすがられた。この世の終わりみたいな大げさな表情だったので、ついつい笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 まだまだ少しずつだけど、それでも確かに、僕の日常が変わっていくのを感じた。




今回の語録
「だ↑ま→れ↓」

・人物紹介

大西明音(おおにしあかね)
透のクラスメイトの女子。裏表のない性格で、男女問わず人気がある。明るい茶髪をポニーテールにしている。3サイズはB89、W62、H90と、かなりグラマラス。エロい。
元陸上部だが、そこまで陸上が好きではない。体を動かすのは好き。競う意味が分からないらしい。魔法への憧れから「幻想魔法研究同好会」を立ち上げようとしている。
自身の魅力に無頓着であり、パーソナルスペースが非常に狭い。その豊満なボディにどぎまぎさせられた男子が多数いる。本作メインヒロイン。

伊藤皐月(いとうさつき)
透のクラスメイトの女子。黒髪で三つ編み眼鏡と、見るからに文学少女である。性格は割とアグレッシブ。3サイズはB76、W60、H82。文芸部所属。
図書館でばったり出会った透に何かを感じ入った少女。初めは冷たくあしらわれてしまったが、今も彼と仲良くしたいと思っているようだ。最近まで透に認識されていなかった。
本作サブヒロインの立ち位置ではあるが、状況次第ではメインヒロインに取って代われるポジション。がんばれ♡がんばれ♡

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