学院都市アンサリヴァン。
学生街を四人のある生徒達……正確には二人の人間と二人の竜族が歩いている。
そのうちの二人が突然止まり、後ろの二人に声をかけた。
「遅いわよ、もう少し速く歩きなさい!!」
「エーコお姉様の言う通りよ、あまりに遅いと噛み砕くわよ!!
……何だかいい匂いがするわね……アレは何かしら?」
イヴの視線の先には移動式の屋台、クレープ屋があった。
「本当だわ!?
いい匂い……行きましょう!!」
エーコは我先にと屋台へと向かう。
「エーコお姉様、待って~」
イヴも続いて走り出した。
残されたのは男性陣のみとなった。
「パワフルすぎたろ……クレープ食べさせればおとなしくなるかな?」
「あはははは…………無理だろ。」
ガクリと項垂れるノアとアッシュ。
二人はパワフルすぎる竜族の少女の元に向かい、それぞれ相手をする。
「うわ~いい匂い、どれも美味しそうね!!」
はしゃぐイヴ。
「桃まんとクックベリー入りのクレープってないのかしら?」
などと自身の好物入りのクレープをメニュー表で探しはじめる。
「いらっしゃいませ!!ご注文はお決まりですか?」
と店員の女性が聞いてくると……。
「う~~ん……桃まんとクックベリー入りのクレープってないのかしら?」
などと無茶な注文をはじめた。
「いや、ないだろ!?」
ノアはすかさずツッコミをいれた。
しかし、店員は……。
「ありますよ?」
「あるのかよ!?」
店員の女性が答えるとすぐさまツッコミを入れるノア……彼はイヴとの出会いで確実にツッコミの腕をあげていた。
「裏メニューで桃まんとクックベリーとアンサルティー入りの特製クレープ……一つ500グローリンとなります。」
500グローリン……一般的なクレープが50グローリン、アンサルクレープですら100グローリンに対してその倍以上の値段がする超高級なクレープを目の前にしてイヴは騒ぎ始めた。
「高っ!?」
というノアに対してイヴは……。
「ご主人様への日頃の感謝を忘れたの?
いいから出しなさい!!」
と無理矢理支払いをさせて超高級クレープをほうばっているイヴ。
一方ノアは……。
「はぁ~いくら実家から毎月仕送りがあるとはいえ、食費かかりすぎだろ!?
クレープ一個でこの値段って……貴族じゃなかったら破綻してるな。」
などと呟いている。
エーコ達を見るとエーコはアンサルクレープをほうばっている。
アッシュはアンサルクレープを食べているエーコを見つめ、エーコがクレープをもの足りなさそうにしていると自分の分を差し出していた。
「アッシュは早速エーコの尻に敷かれた、か……。」
などと呟いていると袖が引っ張られて視線を引っ張ったイヴに向けるとイヴは……ノアの持つアンサルクレープへと目を向けていた。
「……。」
「……。」
「……。」
クレープを見つめるイヴ。
ノアは内心、イヴのクレープを見つめる顔にドキドキしつつ、手に持つクレープをイヴに差し出した。
「食べるか?」
「いいの!?」
「ああ……食べたいんだろ?」
「し、仕方ないわね……食べてあげてもいいわよ?」
などと言いクレープにかぶりつくイヴ。
ノアはイヴの顔を見つめ(不覚にも『可愛いな……これで性格がよければパーフェクトなのにな。』などと思っており、)その視線の先は彼女の一部、メロンちゃんへと向いていた。
イヴがクレープにかぶりつくたびに揺れる『胸革命』は周囲の男の視線をくぎ付けにしていた。
「ご馳走さま……」
クレープを食べていないのに思わずそう呟いてしまったノアであった。
クレープを食べていたイヴは突然食べるのをやめてノアを呼び始めた。
「ぐすっ……ノア、ノア……ぐすっ……どこにもいかないで!?
ぐすっ……。」
突然鳴き始めたイヴ。
「え!?
……何コレ?」
訳がわからず呆然とするノアだが、アッシュが声をかけてきた。
「ノア……やっぱりイヴもか……。
どうやらアンサルクレープを食べさせたせいで酔っ払ったみたいだな。」
アッシュの呟きにより、アンサルとは竜族にとって何かを思い出したノア。
「!?
そうか……アンサルは竜族の嗜好品。
俺達、人間にとっての煙草や酒と同じだったな。
ってことは……イヴは酔っ払って泣いているのか……。
まさか、泣き上戸だとは……。」
イヴの意外な一面に驚くノア。
当のイヴは泣きながらノアに抱きついてきた。
「離れたら……嫌だ……ずっと……ぐすっ……側にいて……ぐすっ……」
泣きながらノアを見つめるイヴ。
ノアは……。
「ヤバイ、イヴ可愛すぎ!!
……我慢だ、我慢……」
などと理性を保つノア。
理性によりなんとかヒステリアモード化をも奇跡的に防いだノアだが……
だが……そんな時に彼女はやって来た。
「お、おお……お前達は……公衆の面前で何と破廉恥な!」
痛烈な罵倒に耳朶されノアとアッシュは身震いした。
聞き覚えのある声だった。
いや、聞き覚えのあるどころではない。
おそるおそる顔を上げると、案の定、あのシルヴィア王女殿下だった。
「女の敵には死の鉄槌を!我が家の家訓だ!」
岩をも砕く鉄拳がノアとアッシュを襲った……。
「これで大丈夫だと思いますわ」
エーコとイヴを介抱してくれたのはシルヴィアの侍女を務めるコゼット・シェリーだった。
学院では割りと有名人な為、ノアとアッシュも知っていた。
街中でもメイド服を着ている為、妙に目立っている。
「ふにゅう……」
「みゅう……」
エーコとイヴはまだ頬が赤いものの二人してベンチに腰かけている。
「助かりました、コゼットさん。姫様もありがとう。」
そうアッシュが言うが、シルヴィアは……。
「まったく、幼竜にアンサル・クレープを食べさせるなど、お前達は授業で何を聞いていたんだ!」
とぷんぷん怒っていたが……
「あらあら。姫様だって、生まれたばかりのランスロットにアンサル・ティーを飲ませた挙げ句――」
「古い話を蒸し返すなっ!」
どうやら見に覚えがあるらしい。
「それはおいといて……何故人の姿をしている?
学院でも噂になっていたぞ」
「へぇ……友人を作ろうとしない、姫様も皆の噂は気になるんだな……」
などとアッシュは空気の読めない発言をし、案の定姫様は怒りだした。
そして、エーコが可愛いくしゃみをした、途端……暴風が吹き荒れてシルヴィアのスカートがめくれ下着が露になった。
見てしまった、ノアとアッシュ……姫様の怒りの鉄拳が炸裂する……が……意外にもそれをエーコが止めた。
「なんのつもりだ?」
エーコに問いかける姫様。
「あんたこそ、愚図で愚劣で愚昧な人間の分際で、どういうつもり?
こいつらの飼い主は私とイヴなのよ?
こいつらをしり虐げてもいいのは、私とイヴだけなんだからね!」
「「どんな理屈だよ」」
思わず声を揃えて叫んだ二人。
「ふん……馬鹿馬鹿しい」
姫様はそう言うとアッシュに一言……パルを侮辱した以前の態度を謝罪してから立ち去っていった。
クレープを食べ終え、街中を散策し終えると、エーコとイヴはそろってお手洗いに行き男性陣は公衆トイレの前に佇んでいた。
「遅い……。」
「なぁ、アッシュ……周りの視線がそろそろ痛いんだが……」
女子トイレの前に佇んでいる二人を通行人は怪訝そうな顔をして見てくる。
「……やっぱりなかを見た方が……。」
「馬鹿、止めとけ……殺されるぞ?」
二人して言いあっていると再び姫様がやって来た。
「そんなに女子トイレが気になるのか?」
「「当然だ!!」」
二人してそう叫ぶと……
「見損なったぞ!!」
と姫様が言い怒りだしたが、訳を話しすとコレットと姫様の二人が女子トイレの中にはいっていった。
しばらくすると二人は慌てた顔をして聞きたくなかった最悪な可能性を言いはなった。
「エーコもイヴも……どこにもいなかった。」とシルヴィアが言い、続いてコレットが言った。
「代わりにこれが……竜綺華晶の粉末かと」
「誰かが竜綺華晶《オラクル》を使ってエーコとイヴを拉致した……か……。」
ノアはそう言うとまるで犯人がわかっているかのように言い放った。
「多分……あの人だ。
アンジェラ・コーンウェル……学者だよ。」
はい、ついにあのキャラが登場!!
ようやく原作に入れた……。