――――――サイド――――――レベッカ
エーコの後を追って聖ダーラム広場に来てみるとそこには巨大な竜がいた。竜は咆哮するとまるで魂が揺さぶられるような死者も飛び起きるんじゃないかと思うほどの壮絶な泣き声をあげ目の前に立ったエーコを触手で拘束している所だった。私はエーコを救出しようと〈カフェ・エサロワ〉の近くから移動しようとしたそのとき、まるで狙いすましたかのようなタイミングで竜は咆哮と攻撃魔法を口から〈カフェ・エサロワ〉が入る建物に向けて放った。
竜の口から放たれた紫電の光球は――――――――――ドン―-――――――――――――――という音をたて建物に向かっていったが私はすでに呼んでいたクー・フリンに跨り建物を守るために瞬時に防御魔方陣を展開して放たれた攻撃魔法から建物を守った。
私は攻撃を防いだ後目の前の竜に向かい撃退宣言をした。
「〈カフェ・エサロワ〉には、乙女の夢が詰まっている。アンサリヴァンの生徒会長として、絶対に死守するぞ!」
そう宣言した私を後押しするかのように市民の間から、「頼んだ――――!!」「頑張れ―――――――――!!」「愛してる―――――――!!」などの声援が飛び出した。
……一部可笑しい声援?もあったが……。
私は私が持つ力を解き放って竜と対峙した。
「顕現せよ……一撃必中の魔槍」 私の頭上に召喚された魔導兵器がその威容を現した。
「その名はゲイ・ボルグ!」 私の呪文に呼応して光が炸裂し、巨大な槍が顕現した。
槍を投擲すると膨大な魔力を秘めた光の束が集束して魔槍が雷光と化し、忌まわしき竜の頭部に向かって疾駆する。
だが……竜の抵抗にあい魔槍はその竜を撃破するには至らなかった。
疾駆した魔槍が竜に到達するよりも速くに竜が前方に七層にもわたるシールドを顕現したからだ。
放たれたゲイ・ボルグの先端が第一層を突き破る。
第二層も容赦なく突き破る。
だが勢いはそこまでだった……。
第三層以降は徐々に勢いを失くしていき、第六層を突破。
私や街の皆は祈るような気持ちで最後の層に突き進むゲイ・ボルグの軌道を見つめていた。
最後の第七層のシールドに亀裂が入り突破すると竜の頭部にゲイ・ボルグが炸裂した。
目を開けられないような光芒が弾け、そして轟音が大気を揺さぶった。
黒煙が朦々と立ち上り竜の巨体を覆い隠すと街の皆は盛大な歓声を上げた。
誰もが私の勝利を疑っていなかった。
―――――――黒煙が晴れるまでは……。
やがて黒煙が晴れると誰もが言葉を失った。
グズグズと頭部が溶解しているのにも関わらず竜は倒れずにエーコも宙吊りにしたまま放しもしない。
頭部の傷がふいにグニャリと蠢いた。
あたかも、傷自体が一つの生命体であるかのように……。
傷はあっという間に再生していき竜は原型を取り戻した。
「そんな……馬鹿な……。」
私は驚愕し、同時に得体の知れない相手に恐怖した。
歪んだ双眸に、悪意の気配を満ちびらせ竜は尻尾を振り回した。
私はとっさに盾になったが……
「しまった……。」
原始的な物理攻撃……否、単純な攻撃だからこそ防げなかった。
竜の背後の建物はまるで積み木のように吹き飛ばされた。
私はボロボロの体を引きずりノアの下に行くと彼がなにやら真剣な表情で話していた。
彼と会話をした後私は、再び竜と対峙しようとした。
したが…。
「!?王女殿下…」
視線を広場に向けるとちょうどシルヴィア王女殿下が聖ダーラム広場に足を踏み入れた所だった。
王女殿下は竜を見るとガクガク震えて、その場に尻餅をついている。
「しっかりしろ、姫様!」
事態に気づいたアッシュが姫様の元に駆け寄った。
広場の上空ではもう一体の巨大なゾンビ竜相手にノアがたった一人で戦っている。
その身には聖騎甲《アーク》を身に着けている。
「あれがノアのアークか……?
黄金色とはずいぶん派手だな…。」
ノアのアークからは雷光が迸っている。
頭上からノアの声が響き渡った。
『模造品だが喰らえ!!
顕現せよ、迸る雷帝、天から降り注ぐ雷撃の槌
その名は、トール……。』
魔導兵器は大槌、巨大なハンマーの形をしている。
すさまじい轟音が鳴り響いた。
雷撃を浴びた巨大な竜は黒焦げになり街に落下しはじめた。
広場の方ではマックスのパルがアリアンロッドがやられていた。
「ぐっ……まずい街を守らなくては……。」
私は広場の竜に対峙し、もう一体の落下した竜はノアに任せることにした。
……すまない、ノア。
無事でいてくれ……。