「どっかできいたような名称だな…どこで知ったんだっけなー」
俺の目の前にある掲示板は縦横無尽、無許可で張られたポスターで埋め尽くされていた。
就任式を終えた直後、俺やアッシュには生徒会長様から直々に指令がだされた。
学院が休校している間に、女子寮ではSKFCというFanClubが設立された…らしい。
その勧誘ポスターが学院内のあちらこちらに張られているという。
生徒会の承認を受けていない以上、そんな勝手を許すわけにはいかない―――というのが生徒会の総意らしい。
らしいというのは、生徒会長からこの件を聞かされるまで全く知らなかったからだ。
無許可に張られたポスターの撤去、それが俺達の初仕事だ。
俺とアッシュは二手に分かれ、アッシュは学院の一階、俺は上の階を見て周ることになった。
午後の授業の開始まであと20分弱、貴重な昼休みを少しでも確保したいので目につくビラや広告を破りまくっていると《本命》のSKFCのポスターが目についた。
そのポスターの内容とそこに記されている代表者の名前を見たとき、俺はどこかでこれと似たようなものを見たことがあるという既視感《デジャヴ》を感じた。
しばらく見ていると、代表者の少女の名前に目が止まった。
ジェシカ・ヴァレンタイン。
その名を見てるとあることを思い出した。
「ジェシカって、《子胤》発言をするあのジェシカじゃねぇか~」
ジェシカ・ヴァレンタイン、レベッカと同じ地方の出身で二人は幼馴染。
俺も子供の時に何度か会ったことがある残念少女だ。
・・・・
美人だけど思い込みの激しい奴だったな…。
そんな風に昔のことを懐かしんでいると。
~♪
授業の開始5分前を知らせる音が鳴り響いた。
「やべっ…授業が始まる」
俺は急いで授業が行われる上級課程の第二魔法講義室へと向かった。
教室に着き中に入ると…。
なにやら騒がしく、誰かが揉めていた。
「ふん、ならば、その野望とやらを聞かせてもらおうか」
聞こえてきたのは第四王女、シルヴィアの声。
凛とした声で皆の注目を集めている。
一方、シルヴィアに対峙しているのは…。
ん?
見間違いか?
ここ1年のクラスじゃないよな?
大勢の女子生徒を引き連れているのは…。
「わたくしは、《銀麗の騎士》様の子を産みたいのです!」
王女の問いに「待ってました」とばかりに、胸を張った少女は…。
「じぇ…ジェシカ!?
なんであいつがここにいるんだよ!?」
つい驚きの声を上げてしまったが、幸いなことにクラスメイト達はジェシカのトンデモ発言にどん引きしまくっていて俺の声を聞いた奴はいないようだった。
シルヴィアもぽかんとして言葉を失っている。
沈黙を破ったのは、ジェシカの背後に控えた少女だった。
「会長!その発言は、会則百二十七項に違反するであります!」
「む…さすがは副会長のリネットさん。
よく気づいてくれましたわ。今の発言は撤回します」
「ただ今、発言の撤回を確認したであります!」
小柄で色白の眼鏡をかけたその生徒はそういうと再び元の位置まで戻っていった。
「なんなんだ、あのうざさは…」
アッシュが苛立っているが、俺もこれには全面的に同意する。
うぜえ。
レベッカがいないとこうもつけあがるのか。
この残念娘は…。
「ところで、シルヴィア王女、実は私たち、現場に居合わせた人物のリストを作成中なのですけど」
「それがどうした?」
「その中には、王女のお名前もあるのです。
確か、王女もランスロットに騎乗して戦っておられたんですわね?もしかして、《銀麗の騎士》様の正体をご存知なのではなくて?」
「なっ、なにをいっているのだ!」
ジェシカの発言に動揺を隠せないシルヴィア。
まあ、お姫様は嘘をつくのがが苦手だからな。
なにしろ、その《銀麗の騎士》はランスロットに相乗りしていたんだしな。
「まずいな、あれでは《私、知ってます》って言っているようなものだな。
さて、ここは…アッシュ任せた!」
「俺かよ!?
まあ、行こうと思っていたけど」
アッシュはジェシカに向けて言い放った。
「なあ、あんた。悪いけど、今は授業中なんだよ」
たちまち周囲の視線がアッシュに集まる。
シルヴィアも驚いた顔をしている。
心しか安堵しているように見える。
「あら、あなたは生徒会の―――」
ジェシカの言葉を容赦なく遮って言った。
「邪魔だから、今すぐ出てってくれないか?」
教室内は静まり返った。
だが、俺は知っている。
あいつがこの程度で下がるようなタマではない事を。
ジェシカは形相を変えず、逆ににっこり微笑んだ。
「確か、お名前はアッシュ君でしたわね。大した実績もないくせに、生徒会への入会を許された男子…。ねえ、副会長のリネットさん?聖ダーラム広場に居合わせた人物のリストには、彼の名前もありましたよね?」
リネットは間髪いれずに答えた。
「確かに、聖ダーラム広場の付近で姿を確認されているであります!」
あの眼鏡っ娘やるな…。
俺が感心していると。
「そう言えば、あなたの通称は、”どんなドラゴンでも乗れる男〟でしたわね。もしかしてその調子であの屍灰竜も乗りこなしたのかしら?」
へ~。
あほな発言するわりには鋭いんだなー。
俺はしばらくなりゆきを見守ることにした。
「もっとも、《銀麗の騎士》様はれっきとした聖天竜騎士。
それに引き替え、あなたときたら…ただの竜飼い人でしたわね。お話になりませんわ。おーほっほっほ!」
あ~。
そろそろ、お・し・お・きがひつようかな?
「ましてや、あなたのパルときたら…ふふっ、笑っちゃうようなお子様でしたわね。
今朝の就任式、傑作で「いいかげんにしろよ、ジェシカ・ヴァレンタイン!!」っ!?
あ、あなた…ノア、様?」
アッシュより先に俺の堪忍袋が先に切れた。
「俺の大切な友人とそのパルと俺のパルを侮辱するとはどういう了見だ?」
「いえ、わた、わたくしはノア様を侮辱しておりませんわ!」
は?
なに言ってんだこのアホは?
「俺のパルを侮辱したろうが!!
今朝の就任式でアッシュのパルと一緒に出てたのは俺のパルだ!」
「で、ですから…わたくしは…」
「おいおい、大・貴・族・の・ご・令・嬢さまがいいわけなんてするとはな…。
これは俺もいろいろと考えないといけないなー。
ヴァレンタイン家の今後が心配だなー。
(ボソ)ついうっかりアレをブチマケチャウかもな~。
実はジェシカの実家は…」
「ひいっ!
あ、あなたという人は…なんて卑劣な!きょっ、今日のところは許してさしあげますが…覚えてなさいっ!」
俺の呟きを聞き逃さなかったジェシカは顔を真っ青にして逃げるように教室から出て行った。
ちょっと脅しすぎたか…。
「おっ、いたな。
授業中に申し訳ないが生徒会役員はすぐに私の後について来てくれ!」
入れ違いに生徒会長様がやってきた。
「ところで、またジェシカが何かしたのか?」
レベッカがアッシュやシルヴィアからジェシカの事をきているがおれは別のことを考えていた。
ジェシカが来たということは…。
「いよいよ来るのか、『第一王女』が…」