聖天竜騎士は転生者!?   作:トナカイさん

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第二十四話 とあるお姫様の憂鬱② 完璧メイドと最強に求められるもの。

翌日の午前中、アッシュは生態学の講義を受けていた。

隣には学院の《制服》を着てすやすやと机に突っ伏して、穏やかな寝息をたてるエーコの姿がある。

「―――つまり、翼竜《ストラーダ》は風属性、地竜《アーシア》は土属性、水竜《ハイドラ》は水属性を帯びているのよ」

教壇に立っているのは、あのアンジェラ・コーンウェル博士だ。

エーコやイヴに並々ならぬ関心を寄せている研究者ということもあり、あまり彼女を近づけたくなかったのだが…。

「それでは、聖竜《マエストロ》の属性はなにかしら?」

アンジェラは鋭く問いかけると、出席簿に視線を落とした。

「そうねぇ…じゃあ、ノア君に答えてもらいましょうか」

アンジェラが名前を読み上げるが呼ばれた少年からは返事は帰ってこなかった。

「先生ー。ノアの奴なら生徒会長に連れられてアンサリヴァン市議会の方に行きました」

レイモンがそう言うと。

「何!?会長と二人っきりで…だ…と!?」

「くそー。何であんな奴が会長と…」

「まさか、『制服デート』をしてるんじゃ!?」

「ここに、異端審問会の開催を宣言する!」

 

「「「「「異議な―――――し!!」」」」」

教室のあちらこちらから怒声と羨望と嫉妬が混ざり合ったクラスメイト(主に男子)の声があがる。

 

アッシュはその様子を見て、先日のエーコやシルヴィアとの『制服デート』(エーコとイヴの誘拐騒ぎの件)を目撃されていなかったことに安堵しつつ、これから親友を襲うであろう無慈悲な制裁を想い同情した。

教師であるアンジェラはそんな彼らを見て「若さっていいわねー」などと呟いていたが3分後には「でも、一番の恋人(興味対象)はやっぱり竜族よね―――」などと呟いた。

「先生、授業を進めてください。

他の皆も今は授業中だ。

そういうこと(尋問の準備、拷問器具の手配、標的の拉致方法の相談、裁判の準備(執行の用意)、埋葬場所の手配)は休憩時間か放課後にやるんだ」

マックスの一言で騒がしかった教室内は静まり返り静寂を取り戻した教室で授業は再開された。

「では、シルヴィア王女殿下に先ほどの問題を解いてもらいましょうか」

ノアの身を案じるどころか普通にスルーするあたり《普通の学院ではない》と、理解しながら彼女は授業を再開させた。

アンジェラから指名を受けたシルヴィアは、しかし、ぼんやりと窓の外を眺めたまま、呆けてしまっている。

「王女殿下?どうかされましたか?」

アンジェラのさらなる問いかけにも、シルヴィアは応じない。

教室に居並ぶ生徒たちも、不思議そうにシルヴィアの様子を窺っている。

「はぁ……しかたないわねぇ。では、ジェシカ・ヴァレンタインさん」

「はい!」

指名されたジェシカは颯爽と立ち上がった。

「聖竜の属性は、光ですわ!」

得意満々に告げたジェシカ。

だが、アンジェラが返したのは冷たい笑みだった。

「正解……と言いたいところだけど、それじゃあ五十点といったところね。

確かに聖竜の基本属性は光だけど、それだけじゃないわ。

生まれつきの属性も、しっかりと引き継がれるのよ。

つまり、翼竜出身の聖竜の場合なら、光と風の属性をあわせ持つというわけね―――――」

「おい、アッシュ。姫様はどうしまったんだ?」

アンジェラの解説そっちのけで、レイモンが訊ねてきた。

「いや、それが……《鉄血の戦乙女》がアンサリヴァン市に来ると聞いた途端、ずっとあんな調子なんだよ。

よっぽどショックだったみたいで…」

レイモンは不思議そうな顔をした。

「《鉄血の戦乙女》って、姫様の実の姉だろ?なんでショックを受ける必要があるんだ?」

「それは、俺にもよくわからないんだけど…」

「それでは、わたくしのほうから解説いたしましょうか?」

突然横から声をかけられてアッシュはのけ反った。

「コゼットさんっ?どうしてここに?」

ついさっきまで空席だったはずの席にいつのまにかコゼットが座っていた。

「うふふ。姫様があんな調子ですので、さりげなく見守っているのですわ。

ちゃんと先生の許可も貰っていますし」

「いやいやいや、全然さりげなくないですよね?

でも、姫様がショックを受けている理由は気になります」

「それは、姫様のご学友としてですか?

それとも、ひとりの男性として?」

アッシュは頬が熱くなるのを感じていた。

 

 

 

 

 

その頃、ノアはレベッカに連れられて市議会へと参加させられていた。

街中を制服姿のままレベッカと並んで歩いている。

アンサリヴァン市内の最高議決機関である市議会に本来ならいち学院生であるノアが出られるはずがないのだが現在ノアは3つの理由により特別に許可されている。

 

一つ目は、現アンサリヴァン騎竜学院生徒会長補佐という肩書きを得たこと。

 

二つ目は、現生徒会長であるレベッカ・ランドールからの強い要望があったこと。

 

三つ目は、巷で噂されている《銀麗の騎士》の関係者で、議員たちの中にはノアが《黄金色の戦士》だという情報を把握している者もいるといった事実から特別に収集された。

 

中でももっとも大きな影響力を発したのは、生徒会長レベッカの言葉だった。

この町、アンサンリヴァン騎竜学院の生徒会長はその権力は絶大で最終的な決定権まで持つとされている。

町の大人達よりも十代のたった一人の少年少女のほうが権力を持てるというのだからどれだけこの世界では《竜族》ひいては《聖天竜騎士》の立場が重要かよくわかるというものだ。

むろん、大きな力を持つ者。その力を振るう者には大きな責任が課せられる。

力を持たない、持てない弱き人々を守るといった責任が。

ゆえに、学院では生徒会長になる条件として《最強》であることが求められている。

 

 

「といっても、俺には関係ないはず…次期生徒会長は原作通りならアッシュがなるはずだしな」

「?

何を一人で呟いているんだ?

せっかくの《制服デート》なのだからもっと密着させて楽しもうじゃないかー」

腕を絡ませて密着してきた。

胸に腕が当たってるが指摘もお触りもできない。

なぜなら…。

「ちょっと、うちの馬鹿(肉)奴隷から離れなさいよーーーーー!!」

何でかしらんが付いてきたイヴによってキツイ制裁があたえられるからだ。

 

「ふふ、羨ましいのか?

ラブラブな私とノアが?」

挑発するレベ。

「なっ、そ。そんなわけないでしょ―――――!!

そいつは私の下僕で奴隷で非常食だから盗られるのががまんできないだけよ!!

う、羨ましいなんてことは…絶対絶対ぜ――――たいないんだからね!」




レベッカ・ランドールファンクラブ…通称『RRFC』
会員数は100人を超える。
某『FFF団』に似てる強引なやり方で会長に近づく不穏分子を排除している。





コゼットさん、やっぱいい。
信じてる。
信じてるよ俺は。
きっと…ね。
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