「帝国の諜報員だと⁉︎」
ノアがした発言に驚きの声をあげる議員達。
動揺が広がる中、とある議員が挙手をした。
「ミシェル・マクガイアだ!しちゅ…質問がある」
挙手をしたのは金髪碧眼で髪を腰まで伸ばした美少女だ。
「発言を許可します」
議長の許可のもと、彼女はノアを見て僅かに微笑みトコトコとマイクの前まで移動した。
「まぢゅ…しちゅれい。かみまちた」
「違うワザとだ!」
「かみまちた」
「ワザとじゃない⁉︎」
いつも通りのやりとりをし、彼女の緊張を和らげるノア。
「ちょうねん…しちゅれい、しょうねん。
単刀直入で聞きまちゅ…貴方はどこまでしってんでちゅか?」
かみかみで話す少女もとい美幼女。
身長およそ140cm。
まるで迷い蝸牛の某小学生みたい少女。
「俺が知ってるのはこれから先、騎士国と王国で様々な騒動が起こるっていうことだけだ。
なんで今回、俺が屍灰竜を倒せたかといえばそもそも俺が奴らがこの街を襲う事を知っていたからだ。
俺には未来を知る力がある。
その力を使い変えられる未来を変えたいと思った。
ただ、この力は万能じゃない。
俺が知らない人物や出来事は変えられない。
すでに俺が知ってる出来事では、そもそもミシェル君は存在していないし、イヴや俺も元々存在しない」
「馬鹿な…未来を知る力だと⁉︎
そんな子供の世迷い言を信用しろというのか?」
議員の1人がそんな言葉を発するとそれまで黙っていた他の議員らも次々非難的な言葉を浴びせてきた。
「知っていたのに、事前に対処しなかったのか⁉︎
なんて無責任な奴だ。
それじゃあ、今回この街がこれ程の被害を受けたのは君の責任ではないか‼︎」
ある議員はこんな発言をし、また別の議員は。
「ちょっと竜に乗れるからって調子に乗りすぎたんじゃないかね?
竜騎士といっても所詮子供。
必要な時に必要な力を発揮できないような奴は使えない。
ただの欠陥品と同じではないか」
ぱちぱちぱち。
一部の議員達が彼に同調して拍手をした。
「そうだ、そうだ!」
「竜騎士だからって調子に乗るなー」
そう発言しているのは、ノアがこの場で発言していること自体が気に入らない、反竜騎士団の下級貴族の面々。
彼らは聖天竜騎士が優遇されることに日頃から不満を持っていた。
ノアの失態はそんな彼らからしてまさに好機だった。
「リーシュブル家も跡目がこれじゃあ、底がしれてるな…」
「まあまあ、所詮子供ですし我らみたいな大人な判断を求めるだけ無駄ですよ」
「聞けばランドール家のお嬢さんが後押ししてるとか…」
「なんと…生徒会長ともあろうお方が押す人物だというから期待していたがこんなのとは…生徒会長の良識を疑いますね」
批判は生徒会長であるレベッカにも向けられた。
「いい加「黙りなさい‼︎この愚民共______‼︎」…イヴ?」
言いたい放題言われ危うくブチ切れそうになったノア。
自分が罵倒されるなら仕方ないと思う。
だけど、レベッカを、自分の大切な仲間を侮辱されて黙っていられるほどノアは人間ができていない。
ノアが罵倒する議員達に対して怒りを爆発させようとしたが爆発させる前に、『彼女』が怒りを爆発させた。
他でもない、ノアのパル。
イヴである。
「黙りなさい、この愚民共_____‼︎黙って聞いていればいい気になって言いたい放題言って‼︎
あんた達何様よ‼︎あの騒動のあの場面の中、あんた達は何をしてたのよ!
市民を逃がした?守った?避難誘導させた?
ここにいる議員の中で協力的だったのは、そこにいるミシェル達だけだったじゃない!
竜族の記憶舐めないでよね!
竜騎士だから駄目?、子供だから駄目?生徒会長のレベッカの良識を疑う?
ふざけんじゃないわよ!
あんた達愚民共は、自分達の地位とお金のことしか考えていないじゃない!
それをノアやレベッカに責任押し付けて何が大人よ!
全員、覚悟しなさい!
私の大切な仲間と大切な人に対して侮辱した責任はとってもらうわよ!」
イヴはぐるると獣のように怒りの声をあげ、議員が座る議員席に飛びかかった。
この日、アンサリヴァン市の議員のうち、じつに四割の議員達が辞職したという。
辞職した議員達は全員、頭にまるで竜族に噛まれたかのような鋭い歯型が残ったとか…数日後、アンサリヴァン市に新たな都市伝説として『噛みつき少女』の噂が広まるがそれはまた別の話で明らかになるだろう。
「さっきはゴメン…君達を巻き込んだ。
もっと違うやり方があったかもしれないのに…」
そうノアに言ってきたのは、イヴの被害を受けなかった議員の一人でノアやレベッカの知り合いの議員でもあるミシェル・マクガイアである。
「気にすんな!
ミシェルのせいじゃない。
暴露する輩を間違えただけだ…」
「そうだ。
むしろこれは私自身が招いたの責任だ。
議員の中に我々竜騎士を嫌う者もいることは解っていたことだ!
なのに、議員達全員に理解されようとして失敗した。
私の認識不足でなったことだ…君達が気にすることじゃない」
「それは違うぞ、レベッカ!
私のじゃなく、私達だ!
一人で抱え込むな。
これは俺達皆の問題だ!」
「そうか…そうだな」
「ありがとう、本当にありがとう!」
「ふん。肉奴隷も役にたつじゃない!」
「イヴ、相変わらず肉奴隷呼ばわりかよ?
さっきのは…へぶしっ…」
「忘れなさい!忘れないと風穴開けて、爆発させてから噛み砕くわよ‼︎」
「理不尽すぎだろ⁉︎」
さっきの発言はイヴにとってかなり恥ずかしかったらしく竜族の強靭な肉体をフルに使ったストレートパンチがノアに炸裂した。
だがそこはノア。
常日頃からのイヴの被害を受ける身。
放たれたパンチを食らっても数秒後には起き上がり、何事もなかったようにツッコミを入れ普通に接する。
慣れとは恐ろしいものだ。
「ふふ。本当面白いな…彼らは。
原作キャラではないのに気になるわけだ」
小さく呟いたのは金髪ロングの美少女もとい美幼女。
ミシェル・マクガイアである。
その性が示す通り彼女は原作キャラの一人、グレン・マクガイアの妹である。
「お兄ちゃんに早く会わせたいな…けど下手に接すると原作崩壊するかもしれないし。
彼女達、ウルスラとカサンドラを救うためにはまだ時期じゃないか…。
焦って今日みたいになるより…」
「ミシェルなに1人で呟いてるのよ?」
イヴにそう声をかけられて慌てて、彼らの会話に加わる。
「疲れたのか?
なら今日は休んだ方がいい。
送ろう」
「いや、だいじょうひゅ…」
また、噛んでしまった。
噛み癖が
「はは、大方グレンさんの事でも考えていたんだろ?」
兄の話をされて、微妙な顔をするミシェル。
ミシェルは、見ためは幼女みたいに幼いがこれでも15歳。
ノアやアッシュ達の一つ下の年齢だ。
その見ためからして『金髪の妖精』というアンサリヴァン市に伝わる都市伝説の一つに数えられているが本人はその事を知らない。
ただ、唯一の肉親である騎士団に所属する兄、グレンからは溺愛されておりアンサリヴァン市内および首都にあるフォンティーン城内で彼女の事を知らない人はいない。
その
「お兄ちゃんのはなちぃはやめちぇ…鬱になにゅから…」
鬱になるくらいヤバイとだけ言っておこう。
「あ〜。悪かった…本当に悪かった」
グレンのシスコンっぷりを思い出したのか、思わずミシェルに向けて憐みの視線をしてしまうノア。
「うぅっ…原作だとお兄ちゃんはもう少しマトモな人って感じで書かれていたのに…。
なんであんなんなんだろう…」
グレンのシスコンの被害者はすでに鬱モードになっていた。
「さて、そろそろ帰るか」
夕暮れになり、アンサリヴァン市内も帰り支度する学生や主婦で混み合っていた。
市場や屋台では買い物客を捕まえようとどの店も活気溢れている。
ノアとイヴはミシェルを送るレベッカとしばし別れ、買い物客で賑わう商店の前を通る。
「うわ〜綺麗…」
とある商店の前を通りかかった時に隣を歩くイヴが物珍しそうな目でショーウィンドウに飾られた髪飾りに魅入っていた。
太陽の形をモチーフにしたその首飾りは真ん中に緋色に輝く大きな宝石がつけられている。
「イヴがた、食べ物以外に反応した…だと⁉︎」
大変失礼な態度だがノアがそう反応するのも無理ないだろう。
これまでのイヴは宝石より食べ物主にクレープに目を光らせていたのだから。
「失礼ね!
本当に綺麗だと思ったのよ!」
頬を膨らませてアニメ声で話すイヴ。
そんなイヴの今までになかったギャプに思わず魅入ってしまうノア。
「買ってやろうか?」
「本当⁉︎」
甘やかすつもりはないが今日はイヴに嫌な役目をさせてしまった負い目もあり自然とそう口にしていた。
「ああ。
イヴの誕生のお祝いと今日のお礼を兼ねてな…」
「だったら後でクレープもほしいわ。
桃まんとクックベリーとアンサルが入ったやつ!」
「考えとく…」
アンサルと聞いて顔を青くするノア。
だがそんなノアの心境に気づくことなくイヴは上機嫌に店の中に入っていった。
「ついでにレベにも何か買っとくか…イヴだけに買ったらまた怒りそうだしな…」
こうして長い一日は終わった…。
二人目の転生者との邂逅を得て、未来は予測不能な方向へ加速していく。
ミシェル・マクガイア。
二人目の転生者。
見ため幼女の15歳。
ひんにゅー。
噛み癖があり、片言になる。
ノアとは原作開始の約1年前に出会う。
兄はグレン・マクガイア。
グレンは原作だとマトモなキャラだがこの世界だとシスコンを拗らせ暴走気味に…。