「ついに、この日が来たか……」
正午の鐘が、鮮やかな蒼穹に響きわたる。
今日は
コバルトブルーの青空の下、アンサリヴァン市内の学院の第一校舎の入口前には、市長をはじめとした、市議会や学院理事会の重鎮、生徒会役員など、総勢20名程による歓迎団が整列し、ロートレアモン騎士国第一王女、ヴェロニカ・ロートレアモンの到着を待ち受けている。
歓迎団の中には他にも国宝級の研究者などが参列している。
その中にはこの人の姿があった。
「あのヴェロニカ王女がお越しになるなんて……何年ぶりかしらね」
めずらしく白衣を脱いだ、アンジェラ・コーンウェル博士がそう呟いた。
何故か学院の講師となった彼女だが、その本業は竜族を研究することだ。
「はぁ〜騎士団の竜を解剖してみたいわ〜」
「
この国、ロートレアモン騎士国で禁忌とされているもっとも重い罪。
竜殺しをした者はたとえ
「わかってるわよ〜ノリの悪い子ね……ところでヴェロニカ王女に関する噂を知っているかしら?」
「噂?」
「ヴェロニカ王女は二つ名をいくつももっているんだけど大抵は大袈裟につけられたものばかりなのよね。
でもその中にある竜殺しは本当に彼女がした事なんですって」
「……」
「無言になっちゃって……怖かったのかしら?
冗談よ。ただの噂。デマでしょうからそんなに怖がることはないのよ?」
「……ああ。そうだな」
本当の事を言うのはまだ早い。
まだ彼は……彼には
アッシュが覚醒していない段階で奴に挑むのは無謀だ。
そうなるとやはりヴェロニカとアッシュが出会う今回の訪問は必要だな。
今回のヴェロニカ訪問で起きる
「おい、見ろよあれ!」
「デカイ……」
「どうやって浮かんでんだ?」
考え事をしていると大人達が次々と叫びだした。
俺も大人達が指す方角を見上げた。
コバルトブルーの空の果て、上空にどうみても自然界では存在しない異物、飛行物体が浮かんでいた。
ゆっくりとその飛行物体は学院に近づいてきた。
「……デカイな」
原作で、文字としては知っていたが実物の、そのあまりのデカさに驚いた。
ヴェロニカ王女には何度か会ったことはあるがあの飛行物体には見たことも乗ったこともない。
空の彼方を観察していると飛行物体の周りを7体の
護衛を務めるドラゴンが豆粒に見えるくらい飛行物体はでかかった。
「……マジか!」
俺の隣にいたアッシュが呟くとレベが厳粛な面持ちで告げた。
「あれがヴェロニカ王女の専用機、
_____魔導艦シルヴァヌス。
帝国から亡命した科学者の一団を召し抱えたヴェロニカ王女が彼らの技術力を使い開発させた試作艦。
魔導艦シルヴァヌスは第一校舎の正面、広大な敷地をうめつくすように、ふわりと着陸した。まるで水鳥が湖面に着地するかのような、穏やかな着陸だった。
魔導艦の形は流星形のフォルムで白地に真紅のラインを織り交ぜた、壮麗な外装、多数の砲門を装備したまさしく動く要塞といった感じだ。
隣に立つアッシュにシルヴィアが解説している。
「燃料は竜綺華晶だ。
「じゃあ、
「そういうわけだ。ただし、
「ミレニアム」
「ドラゴンの化石が地中で千年のときを経ると、莫大な魔力を秘めた結晶体が生まれることがあるんだ」
「知らなかった」
「さすがだな……王宮で教わったのか?」
俺は
「愚問だな。
よく食べ、よく寝て、よく学べ!
我が家の家訓だ!」
「今考えたな……」
「ヴェロニカ王女が降りてくるぞ。私語はつつしめ」
あきらかにそんな家訓ないだろうと思いながら突っ込むとこちらを向いたレベが小言で叱咤してきた。
シルヴァヌスの隣に七騎の竜騎士が着陸した。
一番先頭の竜騎士のみが、一目で
甲冑を装備した男性が俺に近づいてきた。
「久しぶりだな。
ノア・リューシュブル。
先日は妹が世話になったようだな。
妹の代わりにこの私がお礼を言うよ。
ありがとう」
真面目な挨拶やとりとめない話をしていると
「出迎え、大儀である!」
王女の声は革の鞭が、ピシリとしなるような声だった。
ロートレアモン騎士国第一王女ヴェロニカ・ロートレアモンが地上に降り立つと周りの視線は彼女に釘つけになった。
王女というよりまさしく
姉妹だけあり顔立ちはシルヴィアと似ている。
輝かしい金髪に、
シルヴィアと違うのは、その長身から放たれる気迫と彼女の目だ。
遥か天空から獲物を見据える、鷹のような目。
一瞥されただけで、常人なら心臓を貫かれたような気分にさせられる、すさまじい眼光を放っている。
ヴェロニカは真紅のマントをばさりとひるがえした。
マントがひるがえると、ヴェロニカの肢体を覆う鎧が見えた。
一目で鋼鉄製とわかる、重厚で
腰には両手持ちの大剣、クレイモアを帯びている。
親衛隊員をぞろぞろと引き連れて、ヴェロニカはこちらにやってきた。
「堅苦しいのは苦手だ。それより、シルヴィアはいるか?」
鷹のめがぐるりと一同の顔を見渡す。
「ご無沙汰しております、姉上」
シルヴィアは堂々と前に進み出た。
「四年と二ヶ月と十三日ぶりだな、我が妹よ」
「はい。私がアンサリヴァンに入学するため、王宮を発って以来です」
シルヴィアはしっかりした受け答えでそう返した。
「貴様には失望したぞ、シルヴィア」
右手を振り上げるヴェロニカ。
頬を叩かれる姿が頭をよぎったが原作通り
彼女の動きは人間離れしていた。
「ご乱心ですか、姉上?」
不敵に笑うシルヴィア。
「この私をコケにするとは……いい度胸だな、