聖天竜騎士は転生者!?   作:トナカイさん

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今回の話は大筋は原作とほぼ一緒です。
アーニャの心境とかをちょっと加えた感じで書いてみました。
この話がないと主人公の出番なくなっちゃうからね。


第三十話追撃のアーニャ

魔導艦シルヴァヌスが、アンサリヴァン市に到着した頃____。

屍灰竜を放ったミルガウスの右腕、アーニャは商業都市、デーンベリーに滞在していた。

デーンベリーはアンサリヴァン市の西方に位置する都市で商業都市とあって、数多くの商会が街中の至るところに存在した。

そんな商会の事務所が入るとある建物の一室で、アーニャは物思いにふけっていた。

事務所の扉には『ロゼッタ商会』の札がかけられているが、これは架空の業者名だ。

この事務所の実態はミルガウスが所属する帝国軍情報部が用意した隠れ家だ。

室内には事務所らしく机や椅子、棚が整然と並べられているがあくまでもそれはカモフラージュで実質、室内には現在アーニャだけしかいない。

 

「《銀麗の騎士》と《黄金色の戦士》……か」

 

手元の資料に目を通しつつ、ぼそりと呟いた。

ここしばらく、アーニャは《銀麗の騎士》と呼ばれる英雄についての調査を続けてきた。

アンサリヴァン市民にとっては屍灰竜を倒した英雄であっても、ミルガウスとアーニャにとっては、天敵といってもよい存在だからだ。

しかし、目撃情報が少ない為調査は難航していた。

屍灰竜の襲来によるなかで現場に居合わせた誰もが混乱していたのだから無理もない事はアーニャはわかっていた。

むしろ、ミルガウスの側で特等席から現場を見下ろしていたアーニャの方が事態を正確に把握していた。

街中で聞こえてくるのはどれも信憑性の低い噂話ばかりだ。

肝心の部分がどうしても見えてこない。

たった一つわかっている貴重な情報がアーニャの記憶の中にあった。

 

「あの少年……騎竜祭に出場していたということは、学院生よね」

 

彼が学院の生徒だという情報は失態に繋がりかねない情報だけにミルガウスには報告していなかった。

まさか、自分が殺し損ねた少年が《銀麗の騎士》である可能性が高いと言うことは……口が裂けても言えない情報だ。

言えば自分の失態をさらけ出すことになるからだ。

アーニャは窓際に移動すると、青空をぼんやりと眺めた。

 

「ミルガウス様……」

 

今は帝国本国への帰還命令により留守にしている想い人の名を呟いた。

 

____私が不在の間は、屍灰竜を倒した竜騎士について調べておけ。

 

そう言い残し彼は屍灰竜の起動実験について報告する為に帰還していった。

 

 

「そうだ、ミルガウス様がお戻りになるまでに、報告書を仕上げなくちゃ____」

 

ミルガウスに言われた命令を思い出したアーニャは報告書を作成しようとしたが……。

 

「大変!大変だよ、シャマラ!」

 

突然、部下の1人が部屋に駆け込んできた為にその作業を中止した。

小麦色の肌に漆黒の髪。

山の民と言われるタンタロス族の少年が駆け込んできた。

 

「ちょっと、何度言ったらわかるの?今のあたしはアーニャなの!二度と昔の名前で呼ばないで!」

 

「ご、ごめんよ……アーニャ」

 

「アーニャ様、でしょ?」

 

「はい……アーニャ様」

 

しおらしくなった少年に何故慌てた様子で駆け込んできたのか事情を聞いた。

 

「で、何が大変なの?」

 

「そ、それが……あの《鉄血の戦乙女》が、先程アンサリヴァンを訪れたって、皆が騒いでて……」

 

「なっ……!」

 

アーニャは知らされた情報に目をむいた。

《鉄血の戦乙女》、ロートレアモン騎士王家の、第1王女、ヴェロニカ。

その勇名は、今では大陸各地全土に轟いている。

ヴェロニカが大陸各地の民族紛争に介入した結果、血祭りにあげられたゲリラは膨大な数にのぼり、その中にはタンタロスの戦士も多数含まれていた。

タンタロスにとっては、仇敵といってもいい存在だ。

 

「ヴェロニカはいつまで滞在するの?」

 

「公式発表では5日間だって……」

 

今すぐ早馬を飛ばせば3日でアンサリヴァンに辿り着く距離だ。

山岳地帯で育ち鍛え抜かれたアーニャ達、タンタロスの戦士にとっては目と鼻の先の距離感だ。アンサリヴァン市内の警備が手薄なのは既に調査済みだ。

その気になれば、ヴェロニカを暗殺する事だって可能かもしれない_________という考えを、アーニャは慌てて打ち消した。

帰国する直前、ミルガウスから受けた命令を思い出したからだ。

 

『私が不在の間は、屍灰竜を倒した竜騎士について調べておけ』

 

アーニャにとってはもちろん、アーニャが率いるタンタロス族にとっても、ミルガウスの命令は絶対だ。

現在、そのミルガウスから受けている指令は、あくまでも諜報のみ。いくら好機とはいえ、アーニャが独断でヴェロニカの命を狙うわけにはいかない。

 

いかないのだが……。

 

「あの……それで……」

 

「なによ?」

 

少年の煮え切らない態度に、アーニャは胸騒ぎを覚えてしまった。

 

「実は……その……《鉄血の戦乙女》と聞いて、仲間達がアンサリヴァンに____」

 

「なんですって!」

 

アーニャは驚きのあまり黒髪を振り乱し、椅子を蹴り飛ばした。

少年の言う『仲間達』というのは、族長になったアーニャに付いて山を下り、ミルガウスの作戦に協力してきたタンタロス族を意味する。アーニャにとっては部下にあたる存在だ。

 

「ぼ、僕は止めたんだよ!だけど、ヴァレリーも、ミーチャも、セルゲイも……僕のいうことなんか聞いてくれなくて……」

 

言いながら目に涙を溜めて、悔しそうに言う少年。

そんな少年を責める事などアーニャにはできなかった。

 

「なんてことなの!」

 

ミルガウスが帰国したことによりアーニャは彼らに休暇を与えていた。

武骨な彼らには諜報などは不向きだと判断したからだが……。

 

さすがのアーニャでも彼からが指令を無視して独自の判断に基づいて行動することなど考えもしなかった。

アーニャ自身、ヴェロニカの名前を聞いた途端、いてもたってもいられなくなった同胞の気持ちはよくわかる。

だが、イタズラに騎士国を刺激するのは得策ではない。

この50年間、大陸随一を誇る機械工学によって、軍備を拡充してきたゼファロス帝国だが、まだ竜族には敵わないと思っているからだ。

今はまだ、耐える時なんだとそう思っている。

少なくても、あの屍灰竜が実用化されるまでは____。

 

「あたしも今すぐアンサリヴァンに向かうわ!」

 

「ええっ!アーニャ……様も、暗殺作戦に加わるんですか?」

 

「その逆よ。なんとしてでも、あいつらを止めるわ!」

 

アーニャは決意を胸に、部屋を飛び出す。

 

 

必ず彼らを連れ戻す!

止めてみせる!

 

そう、胸に抱いて彼らを追撃する為に街中を駆け抜ける。

 

 

 

 




原作では竜騎士になっちゃたアーニャちゃん。
もっと序盤でも活躍させたいんだけどアーニャ知ってる人どのくらいいるんだろう……。

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