もっと長くなりますが模擬戦前の話が予想以上に長くなりましたので先に投稿します。
模擬戦の話はわりと早めに投稿できると思います。
サイド アッシュ・ブレイク
俺は困惑していた。
突然、第一王女の親衛隊に拘束されて魔導艦の中に連れこまれたかと思えば執事服を渡され、ヴェロニカ王女に仕えるメイドさんと話していると部屋の中に入ってきた謎の美少女と対面するといった状況になったからである。
メイドさんはプリムローズ・シェリーと名乗ったがコゼットさんと同じ性を持つという事は彼女の関係者なのだろうか。
謎の美少女は俺の事を知っているようだが俺は彼女に見覚えはない。
ない、筈なんだが……どこかよく知っている人と似ているような、そんな気がしている。
「リア……さん?」
「リアでいいわよ。
そんな他人行儀ないい方をしなくていいわ」
目の前の美少女はまるで「聖女」が微笑んだような、気品に満ちた笑顔で言ってきたが俺は彼女の眩しい笑顔を直視することができなくなり顔を逸らしながら頷いた。
「あっ……はい、リア。
えっと、貴女はど……」
どちら様ですか?
と聞こうとしたが何故だか脳内に電流が走った。
電流とともに脳内に声が聞こえた。
彼女の『秘密』は探るな!
探ると『後悔』する……。
アッシュ・ブレイク、お前は後悔したいのか!
そんな言葉が脳内に囁かれた。
「ど?」
リアが首を傾げながら聞き返してきた。
「
竜騎士ですよね!どんな
慌てて誤魔化したが最後は棒読みになってしまい、我ながら何をしてるんだと溜息を吐いてしまう。
そんな俺を心配したのかリアが部屋のソファに俺を座らせ隣に腰掛けてきた。
「ふふっ!気になるのかしら?
そうね……お茶がすんだらちょっと軽く運動でもしようかしら。
この艦で一番強い竜騎士って誰か知ってる?」
リアが彼女と同じメイド服を着たプリムさんに尋ねた。
「でしたら、グレン様のお相手はいかがですか?
ヴェロニカ様の親衛隊の隊長を務めていらっしゃいますし、もちろん
「グレン……ふふっ!私のミシェルに憑きまとうゴミの事かしら?
天使に群がる害虫を排除するのも竜騎士の務めよね!」
え?
いつ、そんな務めが?
「変態には粛正を!我が家の家訓よ!」
そんな家訓あるわけないだろう!
俺が疑問を抱くとリアが俺の頭を左手で撫でて囁いてきた。
「アッシュ……『天空の竜騎士物語』をよく読んでおきなさい」
突然そんな事をテーブルにカップを置きながら言ってきた。
天空の竜騎士物語?
「その様子じゃあ、まだ読んでないようね。
この艦にもある筈だからよく読んでおきなさい。
近いうちにその知識がきっと役に立つわ」
リアは慣れた手つきでカップにお茶を入れ始めた。
プリムさんが「給仕なら私がやりますよ〜」と言ってやろうとしたがそれを笑顔で制し、「新入りの仕事ですので先輩は総監督をお願いしますわ!」とやんわりと断りを入れて給仕始めた。カップを持った姿も様になっていてまるで名のある貴族の令嬢と言われても不思議ではない。それほどまでに完璧な美少女だ。
その後、出されたお茶を飲み乾すとリアはカップをテーブルに置いて立ちあがった。
「さて、せっかくこんな可愛い服を着させてもらってるのだから仕事しましょう。
アッシュ、貴方にメイドの仕事を教えてあげるわ!」
「いや、俺が着てるのは執事服なんだけど……」
メイド服じゃない、燕尾服だ。
というか今更ながら何で俺はここに連れられて来られたんだ?
「ええええ⁉︎アッシュ様に仕事を教えてあげるのは私の仕事ですよ〜?」
プリムさんが一人で悲鳴をあげているが驚くことはそこなのかよ!
「あらあら。だったら先輩に一度見本を見せてもらいましょう」
リアの一言でプリムさんに見本を見せてもらうことになったが……。
掃除、洗濯、炊事……プリムさんに付き従い艦内の様々な雑用を手伝うことになったがプリムさんは予想以上に手際が悪く、何もない場所で転ぶわ、皿は大量に割るわ、バケツの水は廊下にぶちまけるわ……と散々な有り様だった。
部屋に戻り給仕の仕方を習うが……。
「いいですか〜お茶を注いだらお客様のお好みで砂糖を入れますよ〜」
プリムさんはとある瓶を手に取りスプーンで中身を掬うとカップに投入した。
「ちょっ……それ塩って書いてありますよ⁉︎」
「塩と書いて砂糖と読む……ドジっ子の基本を抑えてますね。わかります!」
「ちょっとリア⁉︎見てないで止めて‼︎」
「は〜いできましたー。ではアッシュ君、味見をどうぞ〜」
「ほらできたわよ、美人メイドさんが淹れた(塩)紅茶よ!
よく味わって飲みなさい」
「いや待て!砂糖と塩を目の前で間違って淹れてただろう。
絶対に飲まないからなっ!」
「ほらほらグイ、グイっと。飲まないなら口移しで飲ませるわよ?」
リアと口移し。
喉の奥に溜まった唾をゴクンと飲み込み、その場面を想像してしまう。一瞬頭の中にエーコとシルヴィアの姿が浮かび、なんとか誘惑に耐える。
リアの顔を見るとイタズラに成功したといった顔をして微笑んでいる。
目の前の美少女は誘惑しているという自覚はあるのだろうか。
「アッシュ。貴方は女の子が一生懸命淹れたお茶を一口も口にしない最低な人なの?
もし、そんな人だったら相棒のエーコが将来同じことをしてもそうするのね?」
リアからエーコの名前が出た途端、俺は相棒の彼女がメイド服姿で一生懸命給仕する姿を思い浮かべた。
『ほ、ほらお茶淹れてあげるわよ!感謝しなさいよねっ!』
『べ、別にあんたの為にアンサルティーを淹れたわけじゃないんだからねっ!』
……可愛いな。
きっとエーコにもメイド服似合うよなー。
って何考えてんだ俺は。
ハッとしてリアとプリムさんを見ると二人共、なにやらニヤニヤした顔で俺を見つめていた。
「……ご馳走様」
「あらあら。お熱いことで〜」
「ち、違う。エーコはそんなんじゃない。ただの竜族だ!
俺が飼い主であいつは相棒だ!」
「ふふっ!まあ、そういう事にしておきましょう。
それよりプリムさん。片付けを「______ガシャーン(皿が割れる音)」……ああ、やっぱりいいわ。
アッシュ後で一緒にやりましょう」
「うぅ……すみません。それにしても、アッシュ様はどうして、この艦の使用人に?」
「そんなの、俺が聞きたいですよ……」
「______だったら教えてやろうか?」
戸口から峻厳な声を飛ばしてきたのは、ヴェロニカ王女だった。
相変わらず鎧を装備したまま、威風堂々と戸口に立っている。
「姫様っ!」
プリムさんはビクッと驚いて、恭しくお辞儀をした。
リアは興味なさそうにカップにお茶を淹れ直している。
俺は二人とは対照的に怒鳴らずにはいられなかった。
「ああ、今すぐ教えて欲しいですよ!」
「ならば教えてやろう______ただの余興だ」
俺は自分の耳を疑った。
「今、余興って聞こえたような気がしたんですけど……?」
「なんなら、暇つぶしといい換えても構わんぞ」
俺はがっくりうな垂れた。
「そ、そんな理由で……俺はこんな目に?」
「そういうことだ」
俺を冷たい視線で睨むと彼女はプリムさんに視線を向けた。
「プリムよ。これからしばらく、そやつとそこで呑気に紅茶を飲んでいる馬鹿を自分の部下と思って教育してやれ」
「かしこまりました、姫様!」
「ヴェロニカ王女。
一つよろしいですか?」
それまで黙ってカップを傾けていたリアがヴェロニカ王女に初めて声をかけた。
「ああ。いいだろう」
「暇つぶしにこの艦内で一番強い竜騎士と模擬戦させてください」
「ふむ……よかろう。
私も久しぶりにリアが戦う姿を見たいしな。
グレン、相手になってやれ」
「はっ!」
「
「ちょっ……あ、
もしかしてリア……さんも
「いいえ。
私はただの竜騎士よ?」
「ウルスラ相手に大健闘した奴がただの竜騎士とか……まあ、よい」
ウルスラ?
誰だろう?
「きゃー!まさかリア様があの噂の騎士様なんですか〜」
「噂?」
「知らなくて当然だ。
王宮内でもリアの存在はトップシークレットだからな。
たった一人で騎士国の一部隊と同等の力を持つなんて明かせる訳ないだろうが!」
衝撃的な発言に固まってしまった。
「いやですわ。昔の話です」
「十にも満たない子供が竜騎士相手に大健闘するとか、我が騎士国始まって以来の事だったな。
そんなリアの正体がまさか奴なんて……おっとこれは秘密だったな」
「奴?」
「姫様の想い人ですか?」
「ち、違う!奴の事なんてなんとも思ってない!」
「まあまあ、姫様に想い人が⁉︎」
「違うと言っとるだろう!
この話題は終わりだ!
後日、グレンとの模擬戦を行う!
よいな!」
ヴェロニカ王女は戸口に向かい駆け足で退室していった。
退室する時にその顔をチラっと見たがその顔は真っ赤に染まっていた。
次話は変態VS変態。
聖天竜騎士(シスコン)VSただの竜騎士(女装男)。
変態に粛正を!
……の巻。
備考
ちなみに、竜騎士とリアは名乗ってますが正式にはまだ竜飼い人(ブリーダー)です。
竜騎士の定義として相棒(パル)が聖竜になり王族(騎士王)から証である懐中時計を授与されること。
以上の条件をまだ満たしていないので竜飼い人です。
ただの相棒ではないので聖騎甲を出せますけど。