……ドク、ドク、ドク、ドク……。
血流の流れは止まらない。止められない。
自分の意思で抑え込もうと試みるが、今の俺では制御できない。
ああ、駄目だ……なる。なってしまう。
なっていく……なってしまった。
血流が身体の芯に集まり神経を通じて自身の思考が加速していくのがわかる。
きっと、側からみたら今の俺は目つきを鋭くしていて、何処か雰囲気的にも変わっていることがすぐにわかるだろう。
「ふっ……街中で銃撃とは穏やかではないね」
起き上がった俺は、割れたショーウィンドウの向こう側。セルゲイと名乗った男がいる通りの方に向かって歩きだす。
店から出て男を探そうと辺りを見渡すと銃声が鳴り響く中、
少女の髪はピンクで、頭には二本の角らしきものがあり、その小柄な体型には似つかわしく巨大な谷間が胸元にそびえ立つ。
「IT'S_SHOWTIME〜♪」
少女に視線を向けていた、その時。男がその言葉を呟いた。
______ガ、ガガ、ガアァァン。
男が持つ銃の銃口から発射される鉛弾が一人の少女に向けて放たれた。
俺の手がその手に握る銃のトリガーに指をかけた、その時______少女が何やら呟いた。
「
少女がそう呟いた、その瞬間。突如、少女の姿が消えた。
「何っ⁉︎」
「き、消えたわ⁉︎」
「きゃー、人殺しよー!」
消えた少女に驚きの声をあげるセルゲイや逃げ遅れた街の住人達。
その光景を眺めながら俺は視線を辺りに張り巡らせていた。
「まさか、
大したもんだよ、イヴ」
「ふん、当然よ!あたしを誰だと思ってるのよ!」
突然、俺の耳元から聞こえてきた声に驚きつつ、後ろに顔を向けると、ついさっきまで通りのど真ん中でセルゲイに銃撃されていたはずの少女、イヴが俺の背後に立っていた。
「どうして、ここに?」
「
イヴのその言葉にハッとした。
その捜索方法は以前、イヴやエーコがアンジェラに拐かされた時に、俺やアッシュが使ったやり方だったからだ。
「そうか、何にしても助かったよ」
「ふん、終わったらクレープ10個買いに行きなさいよ!」
明らかに食べ過ぎだろ⁉︎
なんて、思ったが言わないことにした。
竜族の食事は1日5回。
イヴならそのくらい、ペロッと余裕で平らげそうだからな。
「それより、来るわよ!」
イヴの言葉にハッとして、視線を通りのど真ん中に戻す。
セルゲイが銃口を此方に向けていた。
口元には何が可笑しいのか笑みを浮かべている。
「なる程、それが噂の
「ああ、俺の自慢のパートナーだよ」
「あたしが主人でこいつが肉奴隷だけどねっ!」
ちょっとイヴ。
その発言は際どいから辞めてくれよー、と思いつつ、手に握る銃を制服のズボンに付けたホルスターに収めた。
「何の真似だ?」
「ちょっと、アンタ。何でしまっちゃうのよ?」
慌てるイヴに大丈夫だ!とウインクをして黙らせる。
そして、セルゲイに向き合い丸腰をアピールする。
「もう、辞めとこうぜ。
もうアンタに勝ち目はないからさ」
「ふっ、ふはははは!勝ち目がない?
丸腰の子供相手にか?
そいつは何の冗談だ?」
「冗談?
そう思うなら撃てよ!
一発も当たらないと思うけどな」
俺の言葉にイラッとしたのか眉を吊り上げたセルゲイが銃口の先をイヴから俺に変えた。
「子供が!
俺を馬鹿にしたその罪。自身の命を以って償え!」
______ガガガガアァァン。
セルゲイは怒りを露わにして、サブマシンガンのトリガーを引いた。
無数の銃弾が俺に向かって放たれた。
イヴは何やら呪文を口にし始めたが俺は視線でそれを制した。
どうやら意味は伝わらなかったらしい。
セルゲイの放った銃弾が俺に迫るが俺は特に慌てたりしない。
サブマシンガンから放たれた、その弾は俺には当たらない。当たるわけない。
視えるからだ。
今の俺の目には、銃弾がまるでスローモーションのように、全部視えてしまう。
いい狙いだ。銃弾の狙いは全て俺の頭部に当たるように狙いが付けられている。
俺はその銃弾をホルスターに収めた
本当なら身体を大きく傾ければ躱すことなんかもできるのだが、俺の背後には
今の俺なら相手よりも早く撃てる技が使える。
『
だが一つ問題がある。
相手の銃が放った銃弾は10発。
対して俺の銃の装填数は6発。
俺の銃の装弾数とセルゲイが持つ銃の装弾数に差がある。
10発を6発で防ぐにはどうすればいいか?
答えは簡単だ。
ビリヤードでいう、『キャノン・ショット』と同じで______俺の弾1発が連続して相手の弾2発以上に当たるような射角で撃てばいい。
もちろん相手の1発目に当たれば弾の軌道も変わるから、それも計算した上でな。
相手の弾を全て俺の弾で撃ち落とすと、余った一発は男が持つサブマシンガンの銃口に吸い込まれるように入っていった。
______ガアァァン。
「ッ⁉︎」
相手が持つ銃は暴発を起こしたかのように、粉々に吹き飛んだ。
「終わり、だね」
そう呟き、背後のイヴが駆け寄る足音が聞こえた______その時。
______タアァァァ。
何処からか突然飛んできた何かがイヴの背に突き刺さる音が聞こえた。
「あっ……」
その音に俺が振り返ると______
イヴが俺の方に倒れてきた。
その背には______孔雀の羽を付けた矢が、垂直に刺さっていた。
心臓を貫く程、深く。
「イ、イヴ______‼︎」
俺は、ただ、ただ、叫ぶことしかできなかった。