聖天竜騎士は転生者!?   作:トナカイさん

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シルヴィア「高潔な女に私は……なりたい」

シルヴィアちゃん、ガンバ!
マジガンバ!

はい、というわけでお久しぶりです。
読者の皆さん、私は戻って来たぞよ?

……はい、大変申し訳ございませんです、はい。
一年近く更新しないで本当、スミマセン。
相変わらずの文字数ですが、また執筆していきますのでよろしくお願いします。

とりあえず、五巻までを目処に書いていきます。


第四十三話 高潔な女

その女は誰が見ても百戦錬磨のテロリスト……とは見えない容姿をしていた。

漆黒の髪に、爛々と禍々しい双眸。

露出の高い民族衣装から覗くのは、褐色に近い肌。

右手には鞭を携え、その顔は童顔だ。

体型も小柄。これが百戦錬磨のテロリストとかと疑いたくなるほど、にその外見は幼い。

手配書に描かれている人相書きとは似ても似つかない容姿をしていた。

だが、そんな容姿をしているアヴドーチャは悠然とした顔で、参拝客を見下ろしていた(・・・・・・・)

見下ろす事が出来てしまうのだ。

何故なら彼女の側には……。

 

「「ひっ……」」

 

私もジェシカもその生き物を見て思わず震え上がってしまう。

恐怖のあまりお互いの手を離すことさえできない。

私達の目の前にいる生物。

その鋭い双眸が自分を見つめている。

そう考えただけで体が震えてしまう。

その生き物の見た目はトカゲに近いが、大きさはトカゲとは比較にならない。地竜(アーシア)の眷属ともいえるが、竜族のような知性は微塵も感じられない。

______バジリスク。

そんな獣を飼い慣らすのみならず、騎馬のように乗りこなすなど、正気の沙汰とは思えないことだが……。

それはあくまでも『普通の人間』なら、という条件下で見た場合だ。

だが、目の前の女が本物の『断罪のアヴドーチャ』だとするなら。

ストンと、納得出来てしまう。

そのくらい、様になっていた。

 

「これより、そなたたちは人質じゃ! 大人しくしておれば、命までは取らぬ! じゃが……妾に抵抗する者は、この子の餌にしてくれようぞ!」

 

「シャーッ!」

 

アヴドーチャがそう宣言すると。

それに呼応するかのように、バジリスクが荒々しい唸り声を上げた。

唸り声を聞いただけで体は震えるが、私はなんとか堪える。

倒れるのは簡単だ。諦めるのも簡単だ。

だが、それらの行為は出来ない。

騎士王家として。

第四王女として。

大切な民を守るという、王族が果たすべき責務があるのだから。

とは、いえ。目の前の状況が良くなる見通しは立たない。

教会に囚われれている参拝客はおよそ百名。

テロの首謀者は『断罪のアヴドーチャ』。

その周囲には、仲間と思わしき、9名の戦士が控えている。

山岳育ちを窺わせる、筋骨隆々たる男たち。全員が民族衣装に身を包み、顔には鷲をモチーフにした仮面を装着している。装備は山岳民族(タルタロス)に伝わる鞭や半月刀、小刀。

いずれもアヴドーチャに忠誠を誓っているらしくら見た目の不気味さとは裏腹に、正規軍さながら統率されている。

アヴドーチャの目的はヴェロニカ(姉上)を倒すこと。

その目的を果たす為に、百名の人質というカードを使うつもりなのだろう。

 

「くっ……打つ手はないのか?」

 

騎士王家の娘として、自分にできること。

真っ先に思い浮かぶのは、自らの身分を明かすことで人質の解放を要求する手段。

 

自分の身を差し出すことで、一般市民を守れるのなら、安いこと。

そう思い、「私が身分を明かして人質の解放を要求すれば……」などと口に出してしまったが。

 

「そんなこと、許しませんわよ!」

 

隣からその考えを制止する声が聞こえた。

声がした方を見れば、それは人質にされたジェシカだった。

 

「あなたがヴェロニカ王女の妹だとバレた暁には、なにをされるかわかったものではありませんわ」

 

「しかし……私一人の犠牲で、百名の民が救われるのなら______」

 

「見損なわないでください! あなたを犠牲にしてまで、自分が助かりたいとは思いませんわ。わたくしは、ジェシカ・ヴァレンタインですのよ」

 

ジェシカがそう宣言したその時。

ジェシカの声が大きかったせいか、あれこれ指示を出していたアヴドーチャが、突然、私達の方を振り返った。

 

「ほう……この状況で私語にふけるとは、いい度胸じゃな」

 

バジリスクの手綱を引いて、アヴドーチャはこちらに向かってきた。

のっし、のっしと歩くバジリスクを見てしまい、恐怖のあまり私は失神してしまいそうになる。

だが、ジェシカは違った。

気丈にも、その場で立ち上がったのだ。

 

「わたくしは、ジェシカ・ヴァレンタインですわ!」

 

「それがどうした?」

 

「こう見えても、地方では名の知れた貴族ですのよ! わたくしの名に免じて、他の人質には手は出さないと約束なさい」

 

(なっ、何を言っているのだ。正気か此奴?

地方貴族どころか、ベレッカ会長の家に仕えるただの使用人の家系に過ぎぬのに……)

 

衝撃を受ける私とは違い。

ジェシカの言葉に、バジリスクに跨ったまま、アヴドーチャはスッと目を細め。

 

「貴族とな? ヴァレンタイン家など、聞いたこともないが……まあ、よかろう。その蛮勇に免じて、そなたには重要な役目を果たしてもらう。ひっ捕らえい!」

 

アヴドーチャが命じるとら彼女の配下が二名、無言で進み出ると、ジェシカを両脇から抱えこみ、問答無用でアヴドーチャの正面に引きずっていく。

と、その時。

人質の群れから引き離される寸前。

ジェシカは私の方を振り向いて。

仄かな微笑を浮かべた。

まるで、私を安心させるかのように。

わたくしは大丈夫ですわ。あなたはそこで大人しくしていなさい。

そう言っているかのように。

その顔を見てしまった私は恐怖がほんのちょっとだけ薄まるのを感じた。

だが……。

その後、人質一同の前で繰り広げられた光景は、無惨の一言だった。

ジェシカは無理矢理衣服を脱がされ、その腹部に、アヴドーチャ自らが口紅を手に取って’’The Head Of Valkyrie!!!(戦乙女の首),,と書き記した。ジェシカの身を使って、姉上の首を要求したのだ。

ジェシカは悲鳴ひとつあげずに、涙すら見せることなく、歯をくいしばっていたが、その心中は察しられた。

 

(公然の場で服を脱がされ、肌を晒し、口紅とはいえ、その肌を紙代わりに利用されるなど……悔しいだろう。泣き叫びたいだろう。許せないだろう……何をやっているのだ!)

 

私の中で怒りが収まらない。

私が怒りに震えている前でジェシカは祭壇の奥へと連行され、磔にされた。

 

「ジェシカ……私はお前を誤解していた。お前はそこら辺の貴族なんかより、よっぽど高潔な女だ……」

 

______それに引き替え、私は……なんて無力なんだろうか。

 

いっそ竜騎士(ドラグナー)としての本領を発揮できれば……とも思ったが、人質を巻き込む可能性がある以上、教会内部に相棒(ランスロット)を召喚することは出来ない。

ランスロットが暴れるのには、この教会は狭すぎる。

 

「くそっ……私は……なんて無力なんだ!」

 

 

人質に紛れて、ただ怯えることしか出来ない自分が、無性に呪わしかった。

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