ペルソナ Blood-Soul   作:龍牙

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なお、今回からオリジナルキャラの登場です。


第十一夜

「ガルル…『ハウリングスマッシュ』!!!」

炸裂音と共に撃ち出された青き人狼のペルソナ『ガルル』の持つ技の一つにして、最も強力な技である『ハウリングスマッシュ』の一撃が、電車の中に巨大な狼の爪痕の様な傷を残しつつ『泣くテーブル』の最後の一体を粉々に粉砕する。

「すごい…。」

圧倒的な力を見せる奏夜の力に対して、ゆかりは思わずそんな感想を零してしまう。

奏夜が『ガルル』のペルソナを使うのはこれが始めてだが、使って見て純粋な戦闘力では恐らく現時点での手持ちのペルソナの中でも一、ニを争うほど強力な物だろうと想像できる。

だが、それと同時に強力な力にはそれなりのリスクが付きまとう物と言う事に直に思い知らされていたのだ。具体的に言えばガルルのペルソナの持つ『技』の反動のダメージとも言うべき疲労。確かに三体の『泣くテーブル』は強敵では会ったが、反動の大きさは戦闘の疲労とダメージを除いてもかなり大きい。

(…かなり辛い。もう一つはそれほどでもないけど、『ハウリングスマッシュ』は一日一回…無理をしても二回が限度か。)

だが、ニ回目の大技の使用は使えたとしてもその反動で、確実に奏夜の意識を刈り取ってしまうだろう。リーダーである自分の戦線離脱はパーティーの全滅を招く恐れがある以上、無理は控えて、一日一回と限定すべきだろう。

現時点でまだこの先に居る大型シャドウとの残されているのだから、こんな早々に切り札の『ハウリングスマッシュ』を使ってしまったのは不利にしかならない。

「…せめて順平が居れば……居ないよりマシだろうし。」

表面的には冷静に振舞っているが奏夜としては、内心、怒り心頭と言う所である。

「そうだね。ったく、早速敵のペースじゃん。」

番人級…それも複数タイプとは言え三体を同時に相手にして二人で勝ってしまった事にはある種、ゆかり自身も驚きを隠せない。その代償として、既に最強戦力である奏夜の疲労はかなり大きい物になっている。

「ん?」

奏夜の心の中に声が響いてくる…それは何処かで聞き覚えの有る声…。

“私は貴方、貴方は私…私は『金色の王』に使えし従者の一人――『緑碧の射手』――シルフィー。遅れ馳せながら、貴方の力となりましょう。”

(今のは…シルフィー姉さんの声?)

そう考えた瞬間、掌の中に弓矢を構えた碧色のドレスの女性の絵の書かれた『カード』が現れて、消えていく。それと同時に己の中に座する者が一つ増えた事を感じ取った。

『紅、岳羽、危ない所だったな。…紅、君は…大丈夫か?』

美鶴からの連絡が届く。実際、奏夜の第四のペルソナ『ガルル』がなかったら、冗談抜きで危ない所だったのだ。流石はペルソナとは言え、ウルフェン族最強の戦士の面目躍如と言った所だろう。だが、そのペルソナを使い、戦った結果、奏夜の披露は大きい。

「ええ、なんとか…。桐条先輩、ここにはもうシャドウは居ない様ですけど、順平は何処に?」

自分に起こった異変を気取られない様に気を付けながら、奏夜は美鶴からの通信へと答える。

『ああ、反応では何両か先に行っているだけだ。だが、このままでは各個撃破の的だ、キミらもすぐに伊織を追ってくれ。』

「ああ、もう!!! 順平の奴、自分からはぐれてどうすんの!」

「まあ、はぐれてる訳じゃないよ…勝手に突っ走ってるだけだから。」

怒りを込めながら、奏夜はそんな事を言いきる。

(うん、絶対にそれなりに戦力が整ったら、罰を考えておこう…。)

ゴウン…

奏夜が順平に対してそんな物騒な事を考えていると、突然、床がゆれた。

ウィィィ…ィィイン

「な、何? うそ、動かないんじゃなかったの!?」

「何で…待てよ、桐条先輩、まさか!?」

『ああ、どうやら列車全体がシャドウに支配されているらしいな…。』

外れてくれと考えながら告げた言葉に対して、通信を通して美鶴は奏夜の考えを肯定する。

「やっぱり…。」

「らしいって…ちょっと、大丈夫なんですか?」

「最悪だと思う…確か、前の列車は……。」

『その通りだ。このまま加速していけば、あと数分で一つ前の列車に。』

「衝突する。」

『………。』

美鶴の言葉に続くように告げられた奏夜の言葉に美鶴は無言で肯定した。

「衝突…。衝突!?」

唯一人自体のとんでもなさに呆然と呟いたゆかりがそんな事を叫んだ。はっきり言って、大事故が確定するそんな事だけは避けたい。

「さて、事故防止の為にも、急いで列車を支配しているシャドウを倒しに行こう。………あと、ついでに順平も見つけないと。」

「うん。って、順平の事はついでなの!?」

「…だって、一本道だし…流石に相手が大型シャドウでこんな場所なら、さっきの番人級とは違って隠れて奇襲も出来そうもないしね。危険が有るとすれば…。」

『ファンガイアタイプか?』

「………。」

奏夜の言葉に継いで告げられた美鶴の言葉を、奏夜は無言で肯定する。ファンガイアタイプのシャドウに関しては自分達に奇襲も可能だろう。

自分とキバット以外知る者は居ないが、前回はキバに変身した自分が倒した物の、間違いなくファンガイアタイプのシャドウは変身しなければ危険な相手だ。

それに…最初に戦ったファンガイアタイプは『ホースファンガイア』…彼の父である先代のキバが最初に戦った大して強い部類に入らない敵であったのだ。

「岳羽さん、急ごう。」

「うん。」

「くそっ…くそっ! くそくそくそっ!!! オレ一人だってなぁ!!!」

一人(勝手に)先行する順平の行く手を遮る様にシャドウが姿をあらわす。順平はその歩みを止める事無く、召喚器を自分の米神に押し当て、

「ヘルメェェェェェェェェス!!!」

引き金を引く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『状況を説明する。落ち着いて聞くんだ。』

通信機越しに告げられる美鶴の説明を聞きながら二人は車両を進んでいく。

『今、君達の乗っているモノレールはシャドウの支配下に有り、加速状態に有る。このままではあと数分で一つ前の列車に衝突してしまう。』

「…そんな、ご丁寧に…。」

『状況を理解しろ! いいか! 先頭車両に強い反応を感じる。多分、それが“本体”だ。行って倒し、列車を止めるんだ!!!』

奏夜とゆかりは互いに頷き会い、前の車両へと移動する為、通路のドアを開く。

『まずは、一人先行してしまった伊織に追いついてくれ。このままでは各個撃破される!』

「確かに…ご丁寧にぼく達の所には番人級を三体も用意していた相手が、今、一番撃破しやすい順平に手を出さないはずはない。」

「ったく、また順平の奴!」

『私の不注意のせいだ。すまない…。』

「そんな…。」

「いえ、リーダーのぼくの対応が遅れたせいです。すみません。」

実際、戦力低下を防ぐ為に今日まで順平への罰を先送りにしすぎていた。前回の独断先行で殴っておいたが、やはり、自分の愚行を反省させる為に直に何かしらの罰を与えておくべきだったと後悔する。

だが、それはリーダーと言う立場に憧れるからでた、それに選ばれた奏夜への反発故での暴走だろうとは推測できる。

これが、年齢・経験共に先輩である明彦や美鶴がリーダーと言う立場ならば何一つ反発する事はなかっただろう。ゆかりがリーダーの立場であっても…自分達よりもシャドウやペルソナに関わったと言う点で先輩である彼女なら、自分よりも反発が小さいだろうと考えてしまう。

そう、どれだけ実力・経験に差が有っても…自分は彼にとって近い存在…言い方を変えれば、ライバルとでも言うべきなのだろう。と奏夜はそう考える。

もう一つ考えられる物とすれば『ペルソナ』と言う人知を超えた能力に目覚めた事への高揚感からだろう。だが、残念ながら、奏夜はそんな感覚からは実際問題、縁がなかったのだ。それはキバの力に対しても同様である。

父である先代の黄金のキバ(キバ)『紅 渡』。

叔父である闇のキバ(ダークキバ)『登 大河』。

偉大なる先代が二人も目の前には揃っているのだ。まだまだ未熟と考える事は出来ても、舞い上がる事など出来はしない。

『っ!? たった今、計算が出た! 列車衝突まで残り丁度、五分だ!』

「オォウッ!!!」

叫び声を上げてのヘルメスの再召喚、その物理ダメージを与える『突撃』により、奏夜達が戦った物とは種類の違う、テーブル型のシャドウを粉砕する。

「ハァ…ハァ…ハァ…。」

呼吸の乱れる順平に対して前方車両のドアが開き、王冠の様な頭に仮面、蛸の様な足で構成されたシャドウが三体、追撃の形で出現する。

(こいつら、次から次に、キリがねぇ…。)

疲労を隠せない順平へと襲いかかるシャドウを手持ちの武器である刀で叩き切りながら、そんな事を思う。

(シャドウ? キバ? 人類の敵? なんだそりゃ。)

ニ体目のシャドウの一撃が順平の体を刀ごと弾き飛ばし、そのまま床へと倒れる。

(誰も知らない時間の中で戦う孤独のヒーロー。)

襲いかかるシャドウを迎え撃つ為に召喚器を取り出し、再びペルソナの召喚を行おうとするが全身を疲労が襲い、倒れそうになる。

(…………って、あら、ダメじゃんか。一人で勝手にキレて突っ走って、バカみたいだな、オレ…。カッコワリ―――。)

無常にもシャドウの一撃がトドメとして撃ち出されようとする。

(はは…“力”が有ってもヒーローにはなれないってか。なんだよそりゃ、ヒデェじゃねぇか。あー、なんか泣けてきた…。いや、寧ろ、おかしいな。へへ………。)

順平の真横を通ってトドメを刺そうとしたシャドウを後方から飛翔する矢が撃ちぬき、

「っ、せい!」

奥に控えていた最後の一体を奏夜の剣が真っ二つに切り裂く。そして、天井付近を一瞥すると…十字架に天秤の皿がついた形のシャドウが三体ほど降りてくるが、

「岳羽さん!」

「分かってる!」

その十字架のシャドウの存在に気が付いた奏夜がゆかりへと叫び、床を蹴って後方へと下がる。彼女が引き金を引いた瞬間、風は疾風の刃となり、疾風の刃(マハガル)は十字架を切り刻む。

「ったく、言わんこっちゃない! 一人で勝手するからよ、もう……で、大丈夫?」

「だ…大丈夫に決まってんだろ!! つーか、助けなんか…。」

呼吸も整わぬまま順平は答えるが、その様子は明らかに大丈夫には見えない。

(はぁ…。)

思わず彼の態度に頭を抱えながら心の中で溜息をついてしまう。

(…順平…いい加減反省してよ…二度目だよ、これで。)

「ちょっと、あんたねぇ!!!」

奏夜が順平を睨みつけて一言言ってやろうとした瞬間、ゆかりが声を荒げる。行き成りの勝手な行動に疑問を持っていた。それ以上に、勝手な行動しておいて、その態度はないだろうと言う考えからである。

「岳羽さん、 “そんな事”はあとでいい。残念だけど、今は時間がない。」

『あと、三分四十秒。時間がないぞ、急げ!』

「急がないと。順平、時間がない。これ以上勝手な行動をとるのなら…命の保証は出来ない。」

既に死へのカウントダウンは始まっているのだ。そう言いきり、奏夜は振りかえる事無く、死を告げる時計を先頭車両へと足を進み始める。

「そうだった! 話しはあと、死んだらもとも子もないからねっ!!!」

奏夜の言葉にゆかりも順平へとそう言い残して彼の後を追いかける。

先へと進んでいく二人の背中を見送りながら順平は…

「くそっ!!!」

心の中で毒づきながら二人を追いかけて走り出す。

合流した奏夜達三人(一年生トリオ)は先頭車両へと向けて走り出す。

最初の番人級との戦闘で大きく消耗している為、奏夜は本体との先頭に備えてペルソナを温存する為、武器での接近戦が主体となるが、それでも、手持ちのペルソナの恩恵を利用しての前衛を勤め、同時に順平も大人しく彼の指示に従っての前衛となって、ゆかりがペルソナと弓矢での援護と言う形のチーム戦で、確実に戦闘へと進んでいく。

そして、

「えーと、大丈夫?」

「ハァ…ハァ…ガス欠っス…。」

奏夜の言葉に息を乱しながら、そう順平は答える。

「先はもうないみたいよ。」

「そうだね。」

『紅、その先だ! 時間はまだあるが、加速が続いている! 急がないと…。』

「分かってます。岳羽さん、順平………行くよ!!!」

奏夜の掛け声の元、先頭車両へと続くドアを開きその車両へと足を踏み入れていく。

「うわぁ…。」

「……す、すげーことになってんな……。」

「確かにこれは凄い。」

先頭車両に陣取っていた大型シャドウ。それは女性のようでいて、確実に人間ではない。列車の横幅程も有る巨体が床に座り込んだ形で有りながら、頭部は天井へと届いている。体と顔は白と黒のモノトーンに彩られ、シャドウの特徴である仮面を付けているその姿は、威厳のある聖職者……言うなれば、女教皇(プリーステス)を思わせる姿である。

ドックン!!!

そのシャドウ…プリーステスを見た瞬間、奏夜の中の何かが強く反応する。

(おい、どうしたんだ、奏夜!?)

ポケットの中からキバットが小声で聞いてくる。

(いや、何でもない…それよりも…。)「来るよ!!!」

数時間前

「これで…この子達の修理は完了しましたね。そして、“あれ”を組み込んだ事で“あの時間”の中でもこの子達は変わらず貴方様の力になってくれるでしょう。」

緑色の髪のメイド服を来た女性が、自分の目の前に座す真紅のバイクとモアイ像を連想させる金色の像を一瞥しながら、神に祈りを捧ぐ様な仕草でそう呟く。

「奏夜様、貴方様のお父様より託された御力は完全な形を取り戻しました。私も今、貴方様の力となるべく、貴方様の元へ参ります。」

『真紅の鉄馬』-『マシンキバー』-と『ブロンブースター』、そして、奏夜に仕える四魔騎士の一人『シルフィー』はそれぞれ、赤、黄、緑の光に包まれ、飛び去っていく。

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