ペルソナ Blood-Soul   作:龍牙

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第十六夜

「やれやれ…。」

タルタロスの一角、愛用の小剣を床へと置いて、近づいて来る気配の主達へと視線を向ける。

「熱烈歓迎ってか、ったく、メンドクセーな、奏夜。」

「まあ、向こうの歓迎の意は受け取っておこうよ、キバット。それに…“幸い”な事に、通信は出来ないみたいだからね、パーティーの前に正装に着替えようか。」

「応! ガブ!」

直にでも襲いかかって来そうな気配を持つ三体の番人級のシャドウ達へと殺気を叩き付けらながら、奏夜が翳した右手をキバットが噛むと右腕から頬にかけてステンドグラスの様な模様が浮かび上がり、腰にキバットベルトが出現する。

「変身!」

キバットがキバットベルトへと止り、奏夜の全身をキバの鎧が纏い、奏夜はキバへと変身する。そして、キバは優雅な動作で一礼する。

「本日は、この招かれざる出席者への歓迎を感謝します。その意、キバの後継者として至高の礼を持って答えよう。」

“闇の王”の如き風格を持ちキバが、そう宣言するのを待っていた様にシャドウ達は一斉に襲いかかる。それを一瞥しながら、キバは両腕を大きく上下に広げ上半身を屈める独特のファイティングポーズを取るのだった。

だが、彼は知らない…己が『招かれざる客』ではなく、存在し得ぬ時の中に行われる満月の夜の宴に招かれし、己こそが主賓(メインゲスト)と言う事に。

今宵の晩も満月の夜に影と二つの仮面が舞いし、戦いの宴が起こる。

参加資格は『仮面』、託される招待状は一人の少女、主賓(メインゲスト)は“闇の皇帝”、そして、今宵の宴の主催者は異形なる影の(みかど)達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はタルタロス突入の六時間前へと遡る。

学園の会議室…そこに奏夜、ゆかり、順平、明彦、美鶴のS.E.E.Sの面々…と、奏夜のポケットの中に隠れているキバットが集まっていた。

まあ、ある種当然ながら、事態が自体の為、態々キバットを学園まで連れてきた本人である奏夜以外にはキバットの存在には気が付いてなどいないが。

「今夜、学園への潜入作戦を行う。目的は山岸風花の救出だ。」

美鶴の言葉に奏夜と明彦が納得した様に頷く。

「あの…イマイチ分かんないんスけど、山岸って、ガッコの中に居るんスか?」

「しかも、なんでそんな時間に? 0時になったら、学園は……。」

山岸風花の救出と言う言葉を聞いた時、奏夜を除く二年生トリオの二人が疑問を唱える。そんな二人に対して、美鶴に変わって微笑を人差し指で天井を指差しながら、奏夜が答えた。

「…山岸風花…彼女が行方不明になった謎を解明するヒントは三つ。『影時間の学園』、『タルタロス』、『ペルソナ使い』…以上だよ。」

そう言って奏夜は二人の方へと視線を移し、謎が解けたと言う表情を浮かべるゆかりと、まだ謎が解けていない様子の順平を見ると、一呼吸置いて言葉を続ける。

「…彼女が学園に居るのは間違いない。最初のヒント『影時間の学園』…そう、彼女は夜中まで学園の一部…体育館に閉じ込められていたんだ。深夜零時を過ぎて『影時間』を迎えてもね。」

無言で頷く二人に視線を向けつつ、奏夜は更に言葉を続ける。

「そして、次のヒントは『タルタロス』…これは簡単…『タルタロス』は影時間の時だけに現れる。そう、学園が変化して…学園と入れ代わる様にね。一つ目のヒントと合わせて考えると、彼女は影時間になってタルタロスになった学園に居る事になる。」

学園が変化する…もしそんな時に学園の中に等居てしまったら…。想像するだけで二人の顔色が悪くなって行く。

「最後の一つ…『ペルソナ使い』…。ぼくや順平の例から見ても分かる様に、ペルソナ使いはペルソナが使えなくても、影時間を経験できる。…そう、影時間のタルタロスに変化した学園…そこに影時間を経験できる人間が存在したら…結果は…。」

「タルタロスに迷い込んじゃうってこと?」

奏夜の言葉を補足する様に続けられるゆかりの言葉に頷く形で奏夜、明彦、美鶴の三人が答える。

「…そう…山岸さんが閉じ込められているのは、体育館なんかじゃない。…『タルタロス』だ…。」

「……でも、それって、十日も前の話しじゃないっスか! それ…どう考えても!!!」

「…生存は絶望的…かもね。」

深刻な表情を浮かべながら、奏夜はそう呟く。奏夜は彼女の立場を自分に置き換え、彼女の立場を想像して見る。キバに変身したとしても、十日も続けてシャドウと戦い続ける等できるはずもない。

「いや! 悲観するのは早い。」

明彦の言葉に一斉に視線が集まった。

「タルタロスは影時間の間にしか現われない。なら、山岸風花は日中は何処に居ると思う?」

一同は明彦の言葉に考え込む。そして、暫く考えた後、ハッとした様子で顔を振り上げる。

「…タルタロスの中に居る…まともな時間じゃない、影時間の中にだけ存在する…。でも、だとしたら…。」

「気がついた様だな。」

「でも、真田先輩…これは…仮説では…。」

「ああ。こいつは仮説だが恐らく山岸は、あの時からずっと影時間に居るんだ。つまり、十日と言っても、山岸にとっては影時間を足し合わせた分しか時が過ぎていない! 生存の可能性(・・・・・・)はある!!!」

明彦のその言葉に奏夜はテーブルをバンっと叩いて立ち上がる。

「影時間は一日の中で僅か一時間だけしか存在しない。十日が過ぎたと言っても、山岸さんの体験している時間は十時間だけ。仮説だけ…でも、可能性があるなら、十分に、それに賭ける価値は有る!」

奏夜の宣言に明彦は「ああ。」と答えて頷く。だが、

「でも、影時間って、慣れたオレらでもいるだけで結構バテるじゃないっスか。あれを十日間、ぶっ通しってのは…。」

「それに…生きていたとしても、山岸さんの居る場所に辿り着けるかどうか…。」

否定的な意見を零す順平とゆかりの二人。普通の時間でも十時間と言う時間行動し続けているのは、体力を消耗する。しかも、異形の怪物…シャドウの巣窟であるタルタロスと言う“場所”に居るだけでも体力を大きく消耗する“影時間”と言う二重の悪条件。

「…体力に関してはこれも完全に賭けでしかないね…。」

そう全ては賭け。…掛け金は自分や仲間達の命で有り、支払われる賞金は山岸風花の命、ハイリスク・ローリターンの部の悪い賭け…。

(…ぼく一人の命なら幾らでも賭けられる…。でも、みんなの命まで賭けの対象にするしかない。それに…仮説と彼女の体力…二つの賭けに勝たなきゃ助けられない…。でも、これは父さんなら、逃げないはずの賭けだ。)

そう心を決め、もう一つの問題の解決策を考えているであろう、明彦へと視線を向ける。それに着いては自分も答えを出している。

「それに…彼女の居る場所に近づく方法なら…真田先輩は気付いてますね?」

「ああ。山岸とまったく同じ方法で中に入るんだ。」

「同じ場所で影時間を待てば短時間で彼女の居る場所に行ける。」

そう奏夜と明彦が考えていた方法はそれなのだ。一歩間違えれば二次遭難の危険も有るのだが、既に現時点で登れる最上階である40Fまで探索済みで有り、彼女が行方不明になった十日の間も何回か探索している。

当然、彼女の存在を知らなかった為、出会えなかったと言う可能性もあるのだが、痕跡さえも見つかっていない。考えられる可能性はまったく違う場所か40Fよりも上の階に居ると言う事。

どっちにしても、通常の方法で行こうとしても不可能なら、三つ目の、最初の賭けにも参加するしかない。

「無茶っスよ!!」

奏夜と明彦の言葉に順平が叫ぶ。彼の言葉は正論だ。はっきり言って、無茶としか言えない方法。

「だいたい、そんな方法でタルタロスに入れるなんて保証もないし、みんなして遭難ってことになったら!!!」

「「なら(だったら)、このまま見殺しにするのか!?」」

「…あ、いえ……。」

奏夜と明彦の気迫に押されて順平は言葉を失ってしまう。

「可能性があるのに、放っておくなんてオレには出来ない。」

「真田先輩に賛成だね。最悪…ぼくと真田先輩だけでも行く。でも、今回は今まで以上に危険な賭けになるから、参加は強制するべきではないと思います。」

そう言って奏夜は順平、ゆかり…最後に美鶴へと視線を向ける。言葉通り、奏夜と明彦の二人は勝手にタルタロスに飛び込んでしまうだろう。それを考えて溜息を吐き、美鶴は口を開く。

「仕方ないな…。正直に言えば私はこの作戦には諸手を上げて賛成できない。伊織の言う様に最悪、二重遭難と言う可能性も有る。だが、危険は承知だが、このまま放置する訳にもいかないからな。」

美鶴も参加を決め、順平とゆかりの二人も最後まで渋っていたが、参加を決めた。多少二人は場の空気に流されたと言う感もあるが、それでも、全員が参加を決めたと言う事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突入一時間前…

寮の作戦室…装備を整えた奏夜達S.E.E.Sの面々の姿がそこには有った。

ゆかりと順平の装備は引き続き弓と大剣…奏夜も一通り揃えていた武器の中から愛用している小剣を選んだ。

小剣、大剣、弓、グローブと一通りの武器を用意して交換しながら使っているが、僅かに小剣の方が使いやすいのだ。順ずるのは、キバでの経験を最大限に活かせるグローブと言った所だろうか? 明彦は参加した時のグローブをまだ使い続けている。

「まいったな、理事長がつかまらない。」

先ほどから美鶴が何度か電話をしているが、幾月理事長との連絡が取れない。

「理事長の口添えがないとなると、夜の学校にどう入ったものか。」

「流石にガラスを割ったら、直に警備員に見つかるだろうし…ピッキングなんて技術はないし…。」

「あ。」

そう言って考え込む美鶴と奏夜の二人。そんな中、順平が手を上げる。

「それ、ご心配なく。その事なら、“仕込み”が済んでマス。」

「仕込み…? 爆薬か?」

何故そう言う答えに行きつくのだろうか? 彼女なりの冗談かとも思ったが、美鶴の顔は真剣その物だった。

「ハァッ!? ちょッ…桐条先輩…!?」

「フフ、いいだろう。今回は伊織に任せよう。」

そう言って美鶴と明彦は作戦室を出ていった。

「…順平…アンタ…。」

「…君さ…荒谷さんじゃないんだから…。」

「ちゃうちゃう! ってか、紅!!! 『アラヤサン』って、誰!?」

「……………誰だろう…………?」

『オレを危険人物の代名詞にするな!? by.亨夜(時空と作品の壁を超えて、彼、参上)』

そして、夜の学校…

「ね、すんなり入れたっしょ! オレって、なんつーか天才!?」

順平の行っていた手段とは単純明解、

「昼間の内に鍵を……ブリリアント!!!」

呆れた様子で眺めている奏夜だが、彼女は心から賞賛の言葉を送っているのだ。作戦室での発言から、今の反応と言い、妙に掴み所がない。

「あの人……なんなの?」

「…さあ…。」

思わず溜息が交差する奏夜とゆかりであった。そんな会話を交わしながら、廊下の真中に立っている訳にも行かず、近くの教室に集まっている次第である。

当然、警備員に見つかる危険を考えて、明かりを点けずにいるのだが、明らかに怖がっている様子で近くに居た奏夜の袖を掴んでいるゆかりを二つの意味でからかう順平に激昂して反論して見せた挙句、自分の行動に気が付いたゆかりに奏夜が殴られるのだった。

「騒ぐな。」

当然ながら、明彦の一喝で二人は慌てて口を閉じる。

「この時間は主電源が落ちている。それに暗いままの方が、都合が良い。」

「良く有るパターンですからね。うっかり、明かりを着けて見つかるって話しは。」

「うぅ……でも、なんか、コソコソしてて、ヤだなぁ……。」

「まあ、仕方ないよ。実際、見つかったら咎められる事をしている訳だし。」

己自身の血故か、自分の個人的なスキルなのかは疑問だが、何故か、暗闇の中でも十分動けるほどに夜目が効くのだ。

まあ、こんな所で隠れている所か、これからコソコソしながら、体育館の鍵がある職員室か、公務員室を調べると言う泥棒の真似事をする必要があるのだ。何故か、見覚えの無い、バーコードを連想させる蒼い仮面ライダーの事が頭に浮かぶのだが、それは直に消去する奏夜だった。

そして、二年生が職員室を…三年は公務員室を回って鍵を探し、一階の玄関ホールへ集合すると言う美鶴からの指示が飛んだ時、

「職員室のガサ入れか……。…テスト問題とかあるかも?」

「オレも職員室にするかな……公務員室より面白そうだ。」

順平の言葉に明彦が彼の顔を見て、口の端を緩めて不正を企む順平に同意する。実際、奏夜も内心楽しそうだと考えていたのだ。…職員室と言うある種、学生には未知の場所に入り込めるのだから、楽しくない訳が無い。

「私の目の前で不正の算段か? 事実ならば“処刑”だな……。」

冷徹に美鶴がそんな言葉を零した。その言葉には、確かな破壊力があった。…そう、奏夜が“闇の王”なら、“氷の女王”の一喝とでも言うべき一言が…。順平は怯えながら慌てて先ほどの発言を否定する。

「まったく……真面目過ぎるんだよ、お前は。」

そう言う明彦だが、彼にも怯えが浮かんでいる。そもそも、何気に美鶴との付き合いが1番長いのは明彦なのだから、過去にも似た様な…いや、処刑を受けた事が有り、その時の事を思い出しているのだろう。

そして、二人を監視する為に美鶴の班に順平が移動し、公務員室を回る事となったのだ。

「……それにしても、さ……昼間と違ってシーンとしてるから、何か気味が悪いね。」

「そうだね。」

一階の玄関ホール…集合場所まで辿り着いた所で怯えを見せるゆかりの言葉に、苦笑しながら答えるのだが、奏夜…何一つ恐怖心を感じていないのだ。

闇は支配するべき世界…闇の一族『ファンガイア』…亡き祖母にその元クイーンを…亡き叔父にキングを持つ奏夜にとって闇は恐れる物ではない。

「ね、ねえ……なんか、聞こえない?」

ゆかりの言葉に奏夜は目を閉じて聴覚へと意識を集中する。確かに聞こえてくるそれは、一定の間隔で響く足音だった。

「…足音か…。」

「な、なんだ。…って、何落ち着いてるのよ!」

「静かに。とにかく、隠れよう。」

彼女の手を引いて物陰へと隠れる。

「な、なに……? 私達の他に……誰か居るの……?」

「いや、いるでしょう。警備の人とか。」

奏夜の言葉通り、足音の主は警備員だった。懐中電灯で周囲を照らし、見回りを続けていたが、隠れている奏夜達に気付かず、その場から遠ざかって行く。その様子にゆかりは大きく溜息を吐いた。

「警備の人か…驚かさないでよ…。」

「まあ、確かに驚いたけどね。」

そんな普段とは違う彼女の様子を苦笑しながら観察する奏夜だったが、流石にからかう気にはなれなかった。

流石に彼女をからかって騒がれたくないし、それが原因で警備員が戻ってこないとも限らない、なにより、キバの姿を見せて驚かせて時間を稼いで(そんな事に使う気は毛ほども無いが)、新しい怪談の吸血鬼になる気は無い。

「あ、でも考えてみたら……先輩達も居る訳だし、足音くらい不思議じゃないかも?」

「…なんで疑問系? それに、どうしてそこに戻るの?」

「あははは、そう思うとヘーキ…ヒャアァァァァァァ!?」

突然響く音に驚いて叫び声を上げてしまう。思わず周囲を警戒するが、警備員の姿は無い。

「岳羽さん…ケータイ。」

悲鳴を上げて自分にしがみ付くゆかりに苦笑を浮かべながら、その音の正体を教えた。

「え? あ、ケ、ケータイ!? わ、私…の?」

「うん。」

奏夜に言われてゆかりは携帯電話を確認する。

「しかも、迷惑メールだし。」

「二重の意味で迷惑だね。」

「で、でもさ…普通、ビックリするでしょ? いきなりなるんだから。」

「そうだね。」

そんな彼女の言動に苦笑しつつ、職員室に入った奏夜達は無事目的の鍵を入手して、玄関ホールへと戻るのだった。

「途中、なーんか聞き覚えのある声で『キャア』とか聞こえたけどなー。」

「………。」

「えっ、テキトーに言ったのに、図星?」

無言のまま順平を睨むゆかりの反応に思わずそう答えてしまう。

「とにかく、時間も無い事だし、早く始めよう。」

「ああ。それじゃあ、突入組とバックアップでチームを分ける。」

「このメンバーだと、突入組はぼくと真田さんは固定ですから…入ってもあと一人位ですか?」

安全面を考えると、突入組は最大で三人…そして、突入組と同様、バックアップチームには美鶴が固定されるのだから、二つのチームには、一年生トリオの二人の内の一人が参加する程度だろう。

「じゃあ、三人目は私で……。」

「待った、ゆかりッチ。」

突入組に参加しようとするゆかりを順平が止める。

「ほら、オレ。前にモノレールの時、迷惑かけちったじゃん? 恩返しっつーか、汚名バンカイさせてくれよ、な。」

「順平…汚名は返上…挽回するのは、名誉だよ。…お願いだから、汚名は挽回しないで。」

言外に『お前は今回も迷惑をかけるのか?』と言って居る奏夜。

「よし! そう言う事なら、()()()()させてやる。突入は男三人で行く。」

「分かりました。」

「おし、よろしくっス!」

そして、冒頭の数分前…体育館に集まり、体育館で待機する三人だったが…零時を回った時。

「おい、奏夜! 起きろ!」

「…キバット…。ここは…タルタロス? ぼく達だけか…。」

『やぁ。』

後から聞こえてくる声に驚いて振り返ると、そこには囚人服の少年が居た。

「君は…。」

「お、お前は…。」

「目、覚めた? 君の部屋の外で会うのは初めてだね。でも今はゆっくりしていられない。今夜君にやってくる試練はどうも一つじゃないみたいだ。」

一つではないと言う言葉と、奏夜は試練と言う言葉で僅かに考え込む。

「一つじゃないって事は…今日の試練とやらは、やっかいな事になるみたいだな。」

「…大型シャドウはニ体…フォームチェンジ無しで、ニ体のファンガイアタイプを相手に戦うのは少し厄介だね。」

奏夜達の言葉に少年は微笑を浮かべる。

「鋭いね、君達は。とにかく、急いだ方が良いよ…“彼女”が待っている。今の君達には必要な人だ。」

少年の姿が言葉と共に透き通って行く。

「彼女の力を借りれば、君の仮面は本来の力が戻るはずだよ。それじゃあ、また会えると良いね。」

少年はそう言いきった後、姿を完全に消した。それと同時に周囲にシャドウの気配が現われる。それを奏夜は一瞥するのだった。

―…誰…? ………人…なの……。―

かすかに聞こえるそんな声がキバへと変身した奏夜の耳に届くのだった。;

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