「はぁ!」
「はっ!」
キバの右ストレートからラッシュ、そして、回し蹴りへと続く連続攻撃を白いキバ…仮面ライダーキバーラは軽やかなステップでかわしながら、キバーラサーベルを振るいながらカウンターの形でキバにダメージを与えていく。
「あら、その程度でキバの後継者を名乗っている訳じゃないでしょう?」
「うふふ~。そうよね~、これじゃあ情けないわよ、お兄様♥」
キバーラサーベルに指先を這わせながら、余裕を持ってキバを挑発する様に言う
「くっ! 当らない!?」
「おい、気を付けろ、鎧の能力は兎も角、あの姉ちゃん、お前よりも…」
「分かってる…彼女はぼくよりも…」
「「強い!」」
そんなキバーラ達に対してキバとキバットはそう確信を持つ。二人の纏う二つのキバの鎧の能力はキバの方に部が有ったとしても、キバーラに変身している奏の力量は確実に今の奏夜よりも上に有る。
「ふふ、守ってばかりでも面白くないから、今度は私達から行かせて貰うわよ!」
その言葉と共にキバーラはキバへと接近し、キバーラサーベルを振るう。
「くっ! (山岸さんに連絡して次狼さんを呼んでガルルフォームに変わるべきか? いや)」
キバーラサーベルを防ぎながらそんな考えを巡らせるが直にそれを否定する。飽く迄目の前のキバーラは力を見ると言ったのだから、風花の力を借りるフォームチェンジはするべきではないと判断したのだ。
「はっ!」
キバはキバーラのサーベルを避けながら前へと進む。キバーラの一閃がキバの鎧を傷つけるが、それでも前へと進んだキバの拳が初めてキバーラを捕らえた。
キバのパンチが直撃したとき、キバーラの体が後方へと吹き飛ぶが、キバーラは直に体制を立て直す。
「いったぁ~。“この頃”だから少し油断しちゃったわね」
「あらあら。油断しちゃ、ダメよ、奏♥ でも、流石はお兄様のキバの後継者ね♥」
「そうね、キバーラ、ここからが本番よね」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
軽口で言葉を交わしているキバーラ達にキバはファイティングポーズを取って向かっていく。それに反応しキバーラもまたキバーラサーベルを構えて迎え撃つ。
戦いながら場所を移動する二人の仮面ライダー…赤と白の二人のキバ。二人の戦いは何時の間にか森の中へと移動していた。
「はぁ!!!」
木を足場に跳びながら飛び蹴りを放つキバ。その飛び蹴りを避け、森の中では不利と判断したのか、キバーラサーベルでの戦闘を最小限に抑えながら蹴り技と突きを中心とした戦い方に切り替えるキバーラ。
「甘いわね!」
「うふふ、ざぁ~んねん。」
キバの回し蹴りがキバーラに当ろうとした瞬間、ジャンプした事でキバの目の前からキバーラの姿が消える。
「くっ!」
慌てて横に避けると、キバの背後に廻って枝から逆様にぶら下っていたキバーラの振ったキバーラサーベルを前転しながら避ける。
「せい!」
「はぁ!」
木の枝から降りたキバーラの振るうサーベルを避け、キバは上に跳ぶ。そのまま枝を足場に上に跳びながら、キバーラに向かって上空からの飛び蹴りを放つ。
「残念だけど…それは大技過ぎるわよ!」
そんな大技が簡単に当る訳も無く、バックステップで避けるとキバーラを外して地面を叩いたキバへと突きを放つ。
「それはぼくも同感だね!」
それに対してキバは地面へとしゃがむ事でキバーラの突きを避け、キバーラの腕を狙って蹴り上げる。
「きゃあ!」
「今だ!」
腕を蹴られた衝撃でサーベルを手放してしまうキバーラ。それをチャンスと感じたキバは拳を握りキバーラへと追撃のラッシュを放つ。
「残念!」
ラッシュを放ったキバの肩を足場に上へと跳ぶ事でキバのラッシュを避け、弾かれたサーベルを上空で回収する。
「くっ! まだだ!」
そんなキバーラを追いかけてキバもまたジャンプする。向かい合うように木の枝からぶら下るキバとキバーラ。互いに相手の動きを理解していたのか、驚きも浮かべずにサーベルと拳を振るう。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」」
互いに防御を考えない連続攻撃だが、キバに比べてキバーラの方がパワー負けしているのだろう、その攻撃はキバーラの方が押され始めている。
「やっぱり、力負けしてるわね。」
「あっ、それはちょっと酷いわよ、奏。」
それ以上は不利と考えて枝から降りながらそんな言葉を交わすのは、キバーラ達。
「よっしゃ、どうだ、マイシスター!」
「ぼく達も簡単には負けないよ!」
キバーラ達を追いかけながら枝から降りたキバ達はキバーラ達へと告げる。
「そうね。」
「でもね、お兄様♥ 最後に勝つのは私達よ♥」
「へっ、悪いなマイシスター! オレにも兄の威厳って奴が有るんだぜ!」
「行くよ! キバット!」
「オッシャー! キバって行くぜ!!!」
互いに放った回し蹴りがぶつかり合う瞬間、やはりキバーラの方が力負けしているのだろう、キバーラの体が弾かれるが、それは本人達も予想していたのだろう、直に体制を立て直しキバへと突きを放つ。
「っ!? しまった!?」
「ぬお~!」
「「嘘!?」」
その突きは確かにキバの体に決まったと思った瞬間、キバーラ達の驚愕が重なって響く。
「へへへっ…。ナイスキャッチ。」
キバーラの放った突きは、しっかりとベルトに止まっているキバットが口で受け止めていた。
「今だ、行け、奏夜!!!」
「うん! はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
キバットの言葉に従いキバは武器を受け止めた事で動きを止めているキバーラへと渾身のパンチを放つ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
悲鳴を上げながらキバーラは吹き飛ばされ、森の外…最初に戦っていた海岸へと吹き飛ばされる。
「ううぅ…今のは本気で痛かったわよ!」
「それは本気でやったからね。」
キバーラを追いかけて森の中から現れるキバはキバーラへと向き直りながら、彼女を指差し、
「さあ、そろそろ、そっちも気が済んだ? 気が済んだら、君のもう一つの用事って奴を教えてもらえるかな?」
「そうね。力も十分に見せて貰ったし…そろそろ良いかもしれないけど…やっぱり、負けるってのは悔しいから、最後に勝たせてもらうわよ!」
「それはぼくも同感。最後に大技で決めさせてもらう!」
そう言ってキバがベルトから取り出すのは必殺技を放つ為のウェイクアップフエッスル。キバーラもキバーラサーベルを逆手に構え、両腕を大きく広げる。
「ウェイクアップ!!!」
「うふふふ~…行くわよ、奏!!!」
ヘルズゲートが開放された足を振り上げてジャンプするキバと、背中から紫の光の翼を広げ空へと浮かび上がるキバーラ。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」」
飛び蹴りの体勢でキバーラへと向かうキバと、背中から広がる紫の光の翼で飛翔しキバへと向かうキバーラ。
互いにぶつかり合う二人のライダーの必殺技。
「ダークネスムーンブレイク!!!」
「ソニックスタッブ!!!」
二人のキバの必殺技がぶつかり合った瞬間、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
二人のキバが弾かれ、キバへの変身が解除されて海岸を転がる。
「くっ…引き分けか…。」
「そうね…残念だけど、勝てなかったわね。」
多少ふら付きながらも立ち上がる奏夜と奏。
「ふぅ…流石に引き分けだと、私の方が負けと言った方が良いわね。」
「そうね、奏と彼の力量差を考えればそうなるわね。」
残念そうな表情を浮かべながら奏とキバーラは奏夜達へと言う。
「? それって…どう言う意味だ?」
「そうだぜ、マイシスター。確かに、その姉ちゃんの方が奏夜よりも強いかもしれないけどよ~、引き分けがそっちの負けってのはどう言う意味なんだ?」
奏夜とキバットのある意味当然な疑問の言葉…その言葉を聞きながら奏は軽く息を吐くと、
「良いわ、それも合わせて話してあげるわ。それが私のもう一つの要件だしね。」
そう言って奏は奏夜へと近づいて口を開く。
「最初に言っておくわ。…私とキバーラが来たのはこの時代よりも先…全ての大型シャドウを倒した後の時間軸になるわね。」
「っ!? 全ての大型シャドウを…。」
「倒した後だって!?」
彼女の言葉に思わず驚愕の声を上げてしまう奏夜達。だが、考えてみれば納得できる所だろう…そう考えるのならば、彼女の力量が自分よりも高いと言うのは。
「ええ、私が来たのは今から四ヵ月後…四ヶ月後には犠牲を払いながら…私達は最後の大型シャドウ…アルカナナンバー『12』のシャドウ…『刑死者』を倒したわ。」
奏の言葉に奏夜は考える。奏夜達が戦ったのは、1の魔術師、2の女教皇、3と4の皇帝と女帝、そして今月に5と6の法王と恋人のシャドウを倒してきた。彼女の言葉通りならば、幾月の言うとおり、残りは六体と言う事になる。
「多分、貴方達は今月に法王と恋人の二体をホテルで倒したわね?」
「うん。」
奏の言葉に奏夜は頷く事で答える。
大型シャドウが全部で十二体で刑死者までと言うのなら残りは、
「未来への流れを変える訳には行かないから、詳しい事は言えないけど、気を付けて欲しい事が幾つか有るの…。一つは次の戦いで私達は私達とは別のペルソナ使い達と出会うことになる。一つは最後の戦いに繋がる十月の戦いの時私達の仲間が一人犠牲になるわ。」
「っ!? ぼく達の仲間が!?」
「それって、一体誰なんだよ!?」
「お兄様、残念だけど、それは言えないわ。」
「ええ。でも、10月の大型シャドウとの戦いの前に貴方達の前に居ない人…犠牲者はその中に居るわ。そして、最後の戦いが終わっても戦いは終わらない事を覚えておいて。…寧ろ、それは本当の戦いの始まりよ。それを企んでいた奴が…私達の中に敵が居る…。…私達にとっての…本当の敵が…。」
言葉と共に悔しげに皮膚に爪が食い込むほど拳を握り血が出るほどに唇を噛む奏。
彼女が辿った未来に何が有ったのかは想像するしかないが、自分達の味方と思われる人間の中に一人だけ怪しい人間が存在している。…幾月だ…。
「私は…私も…その中で大切な人達を失ってしまった…。…その先を…選べなかった…希望も…未来も…微かな可能性も…。」
俯く奏の瞳から砂浜に涙が落ちる。自分達を待つ未来が…彼女が辿った過去が…彼女にとっての悲しみが有るのだろう。
「…気を付けて…私達の中に居た敵が私からみんなを奪う切欠を作った…。だから…私は…みんなと敵になっちゃった。大好きだったのに…大切な人達だったのに…許せなかった…どんな理由が有っても…あいつに騙されていたとしても…私の大切な人達を奪った事が!!!」
叫ぶのは慟哭。彼女の過去は…奏夜に待ち受ける未来は…。そこまで叫んだ後、奏は呼吸を整えて落ち着きを取り戻す。
「私がみんなから完全に離れた時に、世界の未来は本当の意味で閉ざされたと思うわ。私が離れてからも、学校に行かなくなってからも時々町で見かけたみんなは今まで以上に傷ついてた…。…まるで、タルタロスのシャドウにも力が通用しなかったみたいにね…。」
奏はそこで一度言葉を区切り、息を吸う。話している間にも奏の瞳から涙が零れていた。
「私に戻ってきて欲しいって言った時に、話を聞いてみると…タルタロスの番人に勝てなくて、全然上の階に上れなかったみたい…。…でも、私は戻る事は出来なかった…。…みんなの所には…戻りたくなかった!!! みんなに会いたくなかった!!! 次狼さん達を殺したみんなが憎かったから!!! でも、大好きなみんなを憎みたくなかったから!!!」
「…みんなが…次狼さん達を殺した…? それってどう言う!?」
「それを説明している時間は無いの。話をよく聞いて。」
奏の叫びに問い掛ける奏夜の言葉をキバーラは真剣な言葉で遮り、奏の話を聞く様に促す。
「ええ、大事なのはここからよ。」
奏は涙を拭いて顔を上げるとまだ涙の残る奏夜を見据える。
「全ての大型シャドウを倒した後に本当の真実を知る事になるわ。…貴方は次狼さん達を犠牲にしちゃ…みんなに殺させちゃダメ…それが…みんなの絆が壊れる切欠だから…。だから…私は戦えなくなっちゃった…。…戦うのがイヤになっちゃた…。」
禍々しい月を見上げながら告げられる言葉と共に彼女の頬を伝わるのは悲しみの涙。
「だから…私は彼を殺した…。…もう二度と戦わないで良い様に…戦う事も、シャドウの事も、タルタロスの事も忘れてしまう様に…彼を…殺した。」
『彼』と言う人物が奏夜には何者かは分からない。だが、奏の言葉から考えれば、その人物を殺した事でタルタロスやシャドウの記憶が消えると言うのだろう。
「…覚えておいて…忘れないで…。…私の言葉を…。」
涙と共に告げられる足元から少しずつ消えていく奏の最後の言葉…。
「ええ、これだけは忘れないでね、奏夜、お兄様。」
「…この先に選ぶ選択を決める権利は私には無い…。でも…だけど…これは私の願いだから…。」
俯きながらそう告げて奏夜を見据えながら、奏は叫ぶ。
「お願い…私が選べなかった道を貴方は選んで!!! 私達の未来に有る…滅びの運命に…神に立ち向かって!!!」
「神って、運命ってどう言う意味…奏、キバーラ!!!」
奏夜の言葉が響く中、奏は奏夜へと願いを託し涙を流しながら微笑みながら消えて行った。その瞬間、影時間が開け、夜が元に戻る。
「…キバット…。」
「ああ…託されたな、オレ達に…。」
奏の世界と自分達の世界…二つの世界の先にある未来が同じ物とは限らないだろう。だが、奏の言葉を信じるのなら…。
だが、これから先に待つであろう大型シャドウ達との戦いを放棄するわけには行かないのだ。
「…何れぼく達の仲間の誰かが犠牲になって…次狼さん達がみんなに殺される。」
「ああ、先ずは来月…その次は十月だよな。」
二人の意思は決まった。奏の言葉が本当かどうかは来月には分かる。それを踏まえた上で十月に起こるであろう悲劇の回避…自分達の先に待つ滅びの未来に立ち向かう為にも、まずは十月に待つ悲劇を叩き潰すだけ。
そう決意を込めて奏夜とキバットは新たな決意を固める。
「でもよ~、奏夜~、その前に戻らなくちゃダメなんじゃないのか?」
「そうなんだよね。」