ペルソナ Blood-Soul   作:龍牙

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第四十一夜

ドッガフエッスルの音色が響くキャッスルドランの中、(リキ)(ちから)を込めて次狼から投げ渡されたチェスの駒を握り潰す。

「い、ってく、る。」

「今回はあいつか。」

「…今日はシルフィーも静かだよね。」

「…前回呼ばれたからな。屋久島の時の事も有るだろうしな。」

「うふふ…奏夜様~。うふふ…。」

呆れたような視線をトリップしているシルフィーへと送りながら、次狼とラモンは腕組みしてドッガの姿に戻ってキバの元へと向かう力を見送るのだった。

ドッガハンマーを手に握り、両肩と腕、胸部に(カテナ)が厳重に巻き付き砕け散ると紫の装甲が表れる。

両腕は通常時の十倍の腕力を持った腕『グレードアーム』に、胸部はアイアンラングに覆われる。純粋なパワーでは他の魔騎士達を上回るドッガのパワーを扱う為、他の三人以上に厳重な物になる。

そして、キバにドッガの影が重なるとキバットの瞳が紫に変わる。

これが、強力(ごうりき)を得たキバの四魔騎士(アームズモンスター)達の力を借りた四つフォーム、その最後の一つ、『仮面ライダーキバ・ドッガフォーム』!

無言のままキバDF(ドッガフォーム)はドッガハンマーを振り上げ扉へと叩きつける。強固な扉とは言え所詮は人が作った物、それをキバの力を持って破壊できない道理が無い。

流石に一撃で破壊する事は出来ないが何度も叩きつければそれを破壊する事はできる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、いくらなんでも戦車はヤベーんじゃねぇか…。」

「こんなの……弓や剣で勝てるの?」

アイギスの武器は機関銃なのだが、それを含めて考えても『戦車』を相手に人が携帯出来る武器で戦車を破壊する事は不可能だろう。流石に生身で戦車を倒せと言われれば、『無理』と答えるしか無いだろ。

思わず順平とゆかりがそんな弱音を吐いてしまう。

『エッと、敵タイプ“正義”……じゃなくて“戦車”? ……あ、あれ? 見かけは一つなのに反応が二つ? どう言う事?』

一方で『戦車』のシャドウに対してアナライズの結果で出てきた情報に風花が困惑する。不鮮明なタイプ、反応が二つ有るシャドウ。今までに無い状況なのだから混乱してしまうのも無理は無い。一本の通路で隠れ場所は無いとは言え前回のラヴァーズの時の様に何処かに隠れている可能性だって捨てきれないのだ。

「仕方ない、少し早いがこれを使うぞ!」

だが、少なくとも戦車を相手にする為の切り札は存在している。

「おっし! 任せてくださいって、先輩方!」

そう言って順平は美鶴から投げ渡されたそれを握り、

《レ・デ・ィ》

「変身!」

《フィ・ス・ト・オ・ン》

電子音共に順平がイクサナックルをベルトに装着させると、順平の姿はイクサ・バーストモードに変身する。

「おっしゃー、行くぜ!」

イクサカリバーを両手で構えて順平イクサは『戦車』のシャドウへと向かっていく。

「ああ、相手が何であれ倒すまでだ! 出番だ!!!」

自身のペルソナ・ボリデュークスを出現させ、明彦は順平イクサと共に『戦車』のシャドウへと向かっていく。

同時に『戦車』のシャドウはスピードを変えずに前へと進みながら砲塔から砲弾を撃ち出す。

「おわ!」

「ッ!?」

順平イクサと明彦は撃ち出された砲弾を掻い潜り、『戦車』のシャドウとの距離を詰める。

「くらえ!」

中位雷撃魔法(マハジオンガ)

お返しとばかりに明彦のボリデュークスが放つ電撃魔法を『戦車』のシャドウは、

「立ったぁ!?」

そう、文字通り『立つ』事で回避したのだった。前方のキャタピラを腕にして、後方のキャタピラを足にして立ち上がった隠された新たな顔を持った“戦車”のシャドウ『戦車(チャリオッツ)』はそのまま順平イクサと明彦へと向かって、腕の様になったキャタピラを叩きつけようとする。

「おっしゃー!」

それをバックステップで避け、順平イクサはイクサカリバーの斬撃をチャリオッツへと浴びせる。

「もう一丁!」

追撃とばかりに更に一撃を加えた瞬間、背中の部分に存在していた頭を持った砲塔がはずれ、小型のシャドウとなって砲塔で順平イクサを狙う。

「へっ?」

突然の自体に思わず唖然としてしまう順平イクサだったが、シャドウが順平イクサが正気になるまで待ってくれる訳が無い。

「拙い、伊織、避けろ!」

「へっ? おわぁ!!!」

逸早く正気に戻った美鶴の警告の意志が込められた叫び声が響いた瞬間、慌てて横に避けた順平イクサの真横を砲弾が通過していく。

砲撃を行った者の正体は、鉄製の羽と体と一体化した両手で支えた戦車時の砲塔、腰には使う意志が感じられない小剣を携えた甲冑を纏った天使の体から戦車の砲塔が生えた様な姿のもう一体のシャドウ…『正義(ジャスティス)』。

『分かりました。砲塔部分が“正義”タイプ。大きいほうが“戦車”タイプです。』

風花の言葉によって確信が得られた。二体の大型シャドウが一つに合体し、一体のシャドウと見せかけていたのだ。

その姿は『大型シャドウ』と呼んでいた敵の中で例外と言えるほど小さい。大きさだけならば通常のシャドウレベルだろう。だが、体から生えた砲塔が辛うじてそれを『大型』と呼べるだけの大きさを与えている。

「加勢します!!!」

ジャスティスが分離した瞬間、アイギスがそう叫び走り出す。アイギスは砲塔の照準から逃れる様に回り込み両手の指に仕込まれた機関銃を乱射する。

―刹那五月雨撃―

だが、ジャスティスも砲塔から無数の砲弾を乱射する事で反撃する。攻撃数ではアイギスの方が上回るが、一撃一撃の威力ではジャスティスが圧倒的に上回っている。結果、アイギスとジャスティは互いの攻撃を避けながら動き回ると言う形での戦闘を繰り広げる事になった。

「ボリデュークス!」

「よいしょぉ!!!」

一方、中位雷撃魔法(マハジオンガ)を放ち、順平イクサのイクサカリバーがチャリオッツの体を切り裂く。

だが、表面的な傷もチャリオッツの纏っている戦車の装甲か原因で本体には届いていない様子であり、雷撃魔法も効果は有るが人間が乗っているのなら兎も角、耐性こそ無いがチャリオッツ自体には弱点ではない魔法を使われた程度の認識だろう。

「来て! イオ!!!」

中位疾風魔法(マハガルーラ)

ゆかりが彼女のペルソナ・イオを召喚し、ジャスティスとチャリオッツへと向かってカマイタチを放つ。

ジャスティスの方はマハガルーラのカマイタチをある程度を回避できた様子だが、巨体を持ったチャリオッツには完全に直撃する。

「おっしゃー! ナイス、ゆかりッチ! 真田先輩、大技行きます!」

「ああ!」

―ソニックパンチ―

明彦のボリデュークスの拳がチャリオッツを打ち抜き、そのまま後ろに倒す。元々戦車の車体が直立した不安定のチャリオッツなのだ、倒す事も容易いのだろう。

「おっしゃー! 行っくぜぇー!」

それを確認すると順平イクサは叫びを上げて、金色のフエッスルを取り出し、イクサベルトのフエッスルリーダーにそれを読み込ませる。

《イ・ク・サ・カ・リ・バー・ラ・イ・ズ・アッ・プ》

「喰らえ!!!」

順平イクサがイクサカリバーを頭の上で構えると刀身が輝き始める。そのまま倒れているチャリオッツへと走り出すと大きくジャンプし、一気に振り下ろす。

「どっせ~~い!!! イクサ・ジャッジメントォ~!!!」

イクサ・バーストモードの必殺技『イクサ・ジャッジメント』によって真っ二つに切り裂かれ、チャリオッツの車体は音を立てて倒れる。

「テレッテ~、順平はレベルアップ~♪」

見事にチャリオッツを倒した順平は勝利宣言とでも言う様にそんな声を上げる。

「ぼやぼやするな、もう一体居るぞ!」

今まで風花の護衛に廻っていた美鶴が警告の声を上げる。そう、まだチャリオッツ一体だけを倒した程度。まだアイギスが戦っているジャスティスが残っている。

「分かってますって!」

一体を自らの手で倒したと言う事に自信を持ったのか、順平イクサが軽口で答えてアイギスと戦っているジャスティスへと向かおうとした時、

『っ!? 気を付けて下さい、もう一体のシャドウが…。』

完全蘇生魔法(サマリカーム)

風花の警告よりも速くジャスティスはアイギスの機関銃の直撃を受けながらも、治癒の光をチャリオッツの体を包んでいた戦車の装甲へと放つ。

「へっ、そんなモン…。」

『気を付けて下さい! 敵シャドウの反応が復活しました!』

「へっ?」

「なんだと!?」

ジャスティスに向かおうとしていた事が原因で完全に復活したチャリオッツに背中を見せる形になってしまった二人へと向かって、

―電光石火―

巨体からは想像できないスピードで連続攻撃を叩きつける。

「オワッ!!!」

「ガハッ!!!」

『順平君、真田先輩!!!』

そのまま攻撃が直撃した事で二人は地面に叩きつけられる。

そして、チャリオッツは体を倒し、ジャスティスが砲塔として合体する事で最初に現われた時の『戦車』のシャドウへと戻る。

「召喚シークエンス!」

―デッドエンド―

アイギスが出現させたペルソナ『パラディオン』が轢き殺さんと順平イクサと明彦へと突撃していく『戦車』のシャドウへと斬撃を放つ。

火花を散らしながら甲高い音を上げて強固な戦車の装甲を切り裂くが、それでも『戦車』のシャドウのスピードを緩める事しか出来ない。

「このぉ!!!」

中位疾風魔法(マハガルーラ)

ゆかりがもう一度イオを召喚し、カマイタチを使い切り刻むがそれもアイギスのデッドエンドと同様の効果しか齎さない。

「順平、真田先輩! 逃げて!!!」

「逃げろ、明彦、伊織!!!」

動けずに居る二人へとゆかりと美鶴が警告の声を上げるが、動ける様子ではない。

『二人とも、早く逃げて!!!』

必死に警告の声を上げているが、『戦車』のシャドウが二人を轢き殺すほうが逃げるよりも早いだろう。

(ダメ、お願い! 助けて、紅君!!!)

心の中でこの場に居ない…一番頼りになるであろう者の顔を思い浮かべながら叫ぶが、この場に居ない奏夜が助ける事は不可能だろう。…本来なら、

 

 

 

 

 

ガン!!!

 

 

 

 

 

そんな音に気が付いて後ろを振り向くと何時の間にかドアが凹んでいた。そして、凹んだ事によって出来た僅かな隙間から何かの手が入り込む。そして、それを一気に左右に開くと、その手の主がゆっくりと『戦車』のシャドウへと近づいていく。

砲塔をキバDF(ドッガフォーム)へと向けて『戦車』のシャドウは砲弾を打ち出すが、キバDはそれを意に介する事無く悠然と『戦車』のシャドウへと向かっていく。

「あれは…。」

「キバ!? もしかして、私達を助けに?」

キバDF(ドッガフォーム)がドッガハンマーを引き摺りながら『戦車』のシャドウへと近づいて、ドッガハンマーをフルスイングする。

ガン!!!

甲高い音を上げて『戦車』のシャドウは無理矢理その進路を変更させられる。

「!?!?」

装甲を凹ませられた『戦車』のシャドウへと向かって今度はドッガハンマーを真上から振り下ろす。今度叩きつけられた場所は砲塔として合体したジャスティスの頭、

そして、キバDF(ドッガフォーム)はドッガハンマーを振るいながら『戦車』のシャドウを滅多打ちにする。そんなキバDを轢き殺そうと向かっていく『戦車』のシャドウだが、キバDF(ドッガフォーム)は『戦車』のシャドウの突進を片手で受け止めながら、砲身へとドッガハンマーを叩きつけ、砲弾を発射できないように叩き潰す。

「す、すげぇ…。」

「今まで見た赤の姿とも、緑の姿とも違うが…。」

呆然と立ち上がりながら順平イクサは『戦車』のシャドウを圧倒するキバDF(ドッガフォーム)へと唖然とした声を上げ、美鶴は今まで自分達が確認したキバの姿とも違う姿と言う事に疑問の声を上げる。

もっとも、S.E.E.Sのメンバーで風花以外が知っているのは、キバフォームとバッシャーフォームだけだが。

だが、彼等の感想も最もだろう。

ドッガフォーム、基本カラーは紫、ドッガが変化した槌『魔鉄槌ドッガハンマー』を召喚することで変身する胴体と両腕が頑強な鎧となり、腕力と防御力が大きく向上する姿。機動力こそ減退するが、相手の攻撃を正面から受け止め、一撃必殺で仕留める近接戦闘を得意とする。

幾ら戦車の装甲とは言え、ドッガフォームのパワーの前にはただの鉄の箱に等しい。

滅多打ちにする事に飽きたのか、両腕で持ち上げてそのままひっくり返す。

「!?!?!?」

本来の戦車なら既になす術も無いが、このシャドウは二体のシャドウの合体した姿。立ち上がり分離することで体勢を立て直す事は可能だが、キバDF(ドッガフォーム)はそんな反撃の隙など与えず必殺技の体制に入る。

「『DOGGA BYTE』!」

キバットがドッガハンマーへと噛み付き、魔皇力を伝達すると、影時間の夜の支配者がキバへと変わる。

不気味な満月が消え、雷鳴と共に朧月が浮ぶ。一回転させ、ドッガハンマーの柄を地面に叩きつけると、握り拳を意識させるハンマーの握り目を『戦車』のシャドウへと向ける。

ドッガハンマーの拳が少しずつ開き、掌に大きな一つ目が現われる。

ドッガハンマーに有る巨大な眼球『真実の瞳(トゥルーアイ)』。トゥルーアイの中心にある巨大な魔皇石『真実の意志』から放出する魔皇力によって相手の弱点・記憶を解析することができる。それだけではなく、見つめたモノ全てを偽りと断じる事が出来る。

そして、絶対的な『真実』の前に否定された『偽り』は動く事を許されない。立ち上がろうとしたシャドウの動きが止まり、ドッガハンマーを持ち上げた瞬間、巨大な拳が雷を纏ってドッガハンマーの真上に現われる。

「オォォォォォォォォオ!!!」

ドッガハンマーの起動にあわせて巨大な拳も動く。そして、叩きつける拳が戦車の装甲を削り取る。

「オォォォォォォォォォ!!!」

絶対的な真実によって相手(偽り)の動きを封じ、偽りを断罪する絶対的な破壊の雷槌を叩きつける一撃必殺のドッガフォームの必殺技、

『DOGGA THUNDER SLAP!!!』

『戦車』のシャドウは二つの仮面を半分ずつ残しながら、ドッガの顔の輪郭が光ると共に爆散する。

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