ペルソナ Blood-Soul   作:龍牙

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第五十七夜

さて、ストレングスを倒した事で隠されていた反応が復活した運命のアルカナのシャドウ『フォーチュン』だが、今まで倒した満月の夜にのみ出現する大型シャドウに恥じないだけの力は持っている。

―高位疾風魔法(ガルダイン)―

まだゆかりの会得していない疾風(ガル)系の魔法の高位のスキル『ガルダイン』を使ってキバやゆかり達を迎え撃とうとする。だが、

「ふっ!」

風の刃を潜り抜けながら放たれたキバEの拳がフォーチュンへと叩きつけられる。

フォーチュンはルーレットの出目によってダメージを与えるギャンブル性の高い独自のスキル『運命の輪』に気を付ければ単体での戦闘力から考えてストレングスほど強敵ではない。

実際、ストレングスはフォーチュンを守る壁になると同時にフォーチュンのルーレットでダメージを与えた敵に多彩な物理攻撃による追撃でトドメを刺す役割を持っていたのだろう。

今まで戦った大型シャドウ、その中でもエンペラーとエンプレス、チャリオッツとジャスティスと二体揃って戦う事になる大型シャドウは連携する事で単体以上の強敵となっていた。今回のストレングスとフォーチュンも前例通りだ。

「岳羽、キバの援護だ」

「はい! イオ!!!」

―中位回復魔法(メディラマ)―

美鶴の指示に従って召喚器の引き金を引くゆかり、彼女の内より打ち出されたペルソナ・イオによる回復魔法が全員のダメージを癒す。

―コンセントレイト―

同時に美鶴が発動させるのは一時的な魔法攻撃の強化の為のスキル。それによって強化された魔力が彼女の攻撃魔法をワンランク上の物にさえ匹敵する領域にまで強化する。

「ペンテシレア!」

―中位凍結魔法(ブフーラ)!!!―

キバEがその気配に気付いたと同時に後ろに跳ぶと、強化された凍結魔法がキバEと戦っていたフォーチュンに直撃する。

ダメージと同時に全身が凍結するフォーチュン、その隙を逃さず放たれたキバEのパンチが『運命』のアルカナを象徴する仮面を残してその全身を粉砕する。

路地裏…

「どう言う事だよ。勝手に………死んじゃうって言うのか? 僕が何もしなくても。そんなのアリかよ!!! それなら僕は、今まで何を……何の為に…」

乾は心の底からそう絶叫する。何の為に今まで生きてきたのか、やっと出会えた母の仇の命は自分が何もしなくても尽きようとしている。それは母を失ってから今日(こんにち)までの自分の人生を全て否定された気分だろう。

いや、荒垣は乾に討たれる為にS.E.E.Sに戻ったのかもしれない。自分がもう長くない事は、他でもない彼自身が一番よく分かっているだろう。だからこそ、それまで乾を守り、この場で討たれる為に…。

「死が何によってもたらされるか等どうでもいい事でしょう」

タカヤは表情一つ変えず、乾の感情の濁流を受け流す様に言葉を続ける。

「少年………君からは彼とは別の意味で生きている気がしない」

まるで乾の心の中を見透かす様に、

「…彼を殺した後で自分も死ぬ気だったのでしょう」

そう、母の仇を討つ事を目的に死にたいと思いながらも生きてきた彼にとって、目的が終わってしまえば最早生きている意味も無いだろう。

天田乾は言った『そんなの背負うもんか』と。当然だ、罪の重さを知る前に、背負う前に、自らも死ぬのなら背負う訳が無い。

タカヤは二人へとベルトに挿している銃を向ける。召喚器ではない本物の銃。

「タイミングが少し前後するだけです。どの道二人とも死んでいる様なもの……。楽にしてあげましょう、これは“救い”なのです」

『パァン!』と乾いた音が響くと同時に荒垣の太股から鮮血が飛び散る。

「……ぐっ」

再び銃声が響くと肩や腹部からも鮮血が飛び散る。

駅前…

「ふっ!」

焦りを感じなら再生の為に自分達の下から逃れようとする『運命』のアルカナの仮面へと拳を叩きつける。

過去に戦ったファガイアタイプへの再生は仮面を中心に行われていた。ならば、仮面さえ破壊してしまえば再生は無いだろうと考えた結果だ。陶器が割れる様な音を立てながら叩きつけられたキバEの拳によって半分が砕け散るも、キバE達の元から逃れる。

(っ!? 逃げられた! 今は時間が無いって言うのに)

何時の間にかストレングスの剛穀のアルカナの仮面もその場には無かった。間違いなくフォーチュンと戦っている間にキバE達の下から逃げていたのだろう。

『気をつけて下さい、敵の反応増大、ファンガイアタイプへの再生が来ます!』

剛穀の仮面が浮かび上がる際に引き上げられた黒いシャドウの残骸が子供が作る粘土の人形の様に練りあわされていく。だが、半身の砕かれた運命の仮面の方は上手く形とならない。すると運命の仮面は自身の仮面の破片諸共剛穀の方の人型の中に混ぜ込まれていく。

子供の作った人形から次第に形を変えるシャドウの残骸、アリジゴクを髣髴とさせる『アントライオンファンガイア』とシマウマを髣髴とさせる『ゼブラファンガイア』の姿を繰り返しながらその二つでもない新たな姿へと形を変えていく。

(何だ…あれは?)

「嘘だろ…」

アントライオンファンガイアの体と頭をベースにゼブラファンガイアタイプの手足を持ち、各部に紅葉を思わせる意匠を持つ装甲と翼を持つ姿。今までとはまた違う強化蘇生。

「…“レジェンドルガ”の能力まで取り込んでやがるのかよ…」

「っ!?」

キバットには新たなファンガイアタイプの姿の各部にある部分に対して見覚えがあった。どうやったのかは分からないが、今のままでは勝てないと判断したのだろうか、それとも単なる突然変異なのかは分からないが、キメラタイプとして再生する際に先代のキバが過去に戦ったファンガイアとは別の種族『レジェンドルガ』の中の一体『ガーゴイルレジェンドルガ』の能力を取り込んだのだろう。

新たな異形の胸に現れる運命の破壊された仮面、そして、剛穀の仮面を異形の人形が自身の顔に貼り付けると、色彩と硬質を得る。

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

自身の最短に対して歓喜の咆哮を上げるファンガイアタイプ…否、『キメラファンガイアタイプβ』。

『敵、再生完了……。敵タイプ剛穀と運命、来ます!』

あまりの光景に唖然としていた一堂だが、風花の警告の声によって意識は現実へと引き戻される。

路地裏…

「………ぐっ」

「どうしました? あなたらしくもない。それとも、そこまで体が弱っていたりするのでしょうか」

崩れ落ちる荒垣を嘲笑う様に言葉を続けるタカヤ。そう告げた後、何かを思い出したと言う表情を浮かべる。

「一つ訊いてもいいですか? 貴方達の中にチドリと似た“情報の使い手”が居るはずです。貴方方の情報が早くてね、シャドウを守る事が出来ないのですよ」

それは『山岸風花』についての情報だ。既に情報を扱うペルソナ使いが抑えられている以上情報面でストレガが負けている現状でS.E.E.Sに対抗する為には自分達も相手のバックアップを抑えるのが定石だろう。………もっとも、奏夜がそんな事を許すとは思えないが。

「まあ…答えなくても構いませんが」

タカヤの言葉を聞き乾は何かを決意した表情を浮かべる。

「待って!!!」

そう叫び乾は荒垣の盾になる様に立ちふさがる。

駅前…

咆哮を上げ背中の翼を広げ空中から襲い掛かってくるキメラファンガイアタイプβ。

「このぉ!」

素早くゆかりが弓で迎撃しようとしたのだが、キメラファンガイアタイプβの体の強度の前に傷一つ負わせる事無く地面に落ちる。

「嘘!?」

(…岳羽さんとは相性は最悪だね、本来の防御力に加えて機動力、しかも防御が耐性じゃない以上…攻撃するだけムダか)

完全に援護に回って貰えれば安全だろう。どっちにしても、キバに変身した自分とシャドウとの戦いでは彼女達では前衛になれない。下手をすれば余波でも怪我をする危険があるのだし。

キバE(奏夜)がそんな事を考えているとキメラファンガイアタイプβは大剣を出現させてそれを振り下ろす。

―デスバウンド―

叩きつけた剣を中心に発生した衝撃波が一同に襲い掛かる。

「きゃあ!」

「くっ!」

両腕でガードして何とかデスハウンドに耐えるが、幸運にも耐え切れなかった美鶴とゆかりがキメラファンガイアタイプβの攻撃範囲から逃れる。

―五月雨斬り―

一瞬にして放たれる複数の斬撃がキバEへと襲い掛かる。

「ぐっ!」

キバEへ斬撃を加えた後キメラファンガイアタイプβはそのまま上空へと逃げて大剣を翳す。

―最上位疾風魔法(マハガルダイン)―

「っ!?」

放たれた最上級の疾風属性の攻撃魔法に対して素早く自身の中に存在する物をガルルからシルフィーへと変える。シルフィーの持っている耐性によりダメージは無力化されるが、流石に複数の相手へと向けられる風の刃を一身に受けているのだ、動ける訳が無い。

「拙いぞ、ここままじゃ…」

(…確かに…ここままじゃやられる)

焦りも有ったが間違いなくキメラファンガイアタイプβはこれまで戦ったシャドウの中でも最強に座している。反撃の手段が浮かばないと今までとは違う焦りを感じると、

「イオ!」

ゆかりの声が響く。

―中位疾風魔法(マハガルーラ)!!!―

ワンランク下だがキバEの動きを止めている物と同じ属性のスキルが風の刃によって動きを止められているキバEに直撃する。

「くっ」

直撃した所でダメージは無く、寧ろそれは…。

(相手の魔法が消えた)

同種の魔法による相殺へと繋がった。

「良し、上手く行った」

キバEが風の魔法による拘束から逃れた姿を見てゆかりは喜びの声を上げる。

『良かった、紅くん。今のうちです』

聞こえてくる通信と先程のゆかりの言葉で今の攻撃が自分を助ける物だったと理解すると、素早くタツロットへと触れる。

「シルフィーフィーバー!!!」

タツロットに揃ったのはシルフィーを意味するライトグリーンのマーク。それと同時にキバEの手の中に出現するシルフィーアロー。その中心部にタツロットを接続するとタツロットから光の弦が伸び、タツロットの口の中に光の矢が形成される。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

―EMPEROR(エンペラー) INFINITE(インフィニット) ARROW(アロー)!!!―

上空へと引き絞った矢を放つとそれはキメラファンガイアタイプβを避けて禍々しく輝く月へと向かって飛んだ瞬間、無数の光の矢となってキメラファンガイアタイプβへと降り注ぐ。

「!!!!!!!!!!!!!!!」

声にならない叫び声を挙げて尚も生きていたキメラファンガイアタイプβは落下しながらキバEへと襲い掛かる。

「終わらせる!」

出現する美鶴のペルソナ『ペンテシレア』。既にコンセントレイトによる強化は済んでいるのだろう。

―上位凍結魔法(ブフダイン)!!!―

落下してきたキメラファンガイアタイプβを凍結させ、されが止めとなったキメラファンガイアタイプβは砕け散る。

『敵シャドウの反応消滅、お疲れ様でした』

(…風花さん、ぼくはこのままブロンブースターで荒垣さん達の所に向かうから)

『分かりました。みんなには私から紅くんにはそっちに行って貰ったって連絡しておきます』

(ありがとう)

風花の労いの言葉にそう返してキバEは戦場から離脱するとブロンブースターを召喚する。

路地裏…

「待って!!」

そう叫び乾が両腕を広げながら荒垣の盾となる様にタカヤの前に立ちふさがる。

「僕だよ。それが出来るから…。だから僕は子供でも戦いに加えて貰ったんだ」

「………お前、何を!!!」

真実を知っている物にとっては明らかな嘘。………同でも良いが、一度タカヤ達は防空壕の時に彼らの探している風花には会っている筈なのだが………気付かなかったのだろうか、激しく疑問だ。

「真意の程は分かりませんが、素晴らしい覚悟だ!」

そんな乾の言葉に歓喜に近い感情を浮べながら叫ぶタカヤ。ある意味、今の乾の心根は彼らストレガに近いのだろう。

「………ぼくの復讐は、もう終わったんだ。此処に居る理由も、これ以上戦い意味も…僕も、もう必要ないんだ」

復習が終わった今、既に彼の中に生きる意味ももう無くなったのだ。だからこそ、此処で死ぬのも…。

「君はもう十分に生きたと言う訳ですね。いいでしょう。君を先にしましょう。楽におなりなさい」

そう言って持っている銃の引き金にゆっくりと力を込めていくタカヤ。

パァーン!!!

響き渡る銃声。イクサリオンから飛び降りるようにその場に到着した明彦の目に映ったのは、

足と腕、腹部に受けた自らの傷をおして乾を庇った荒垣の姿と、

「ぐ…」

銃を持っていた火傷を負った腕を押さえているタカヤの姿。

そして、明彦の視線の先に有るのは、イエティをイメージさせる仮面ライダー、『仮面ライダーレイ』と見た事の無いペルソナの姿。彼らの位置からは見えないが、レイの側にそのペルソナを呼び出したであろう人物の姿があった。

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