その想像を絶するファンガイアタイプ・サバトの巨体に唖然としているS.E.E.Sの面々に対し、当のファンガイアタイプ・サバトはゆっくりとした動作で腕を振り上げ、
『みなさん、危ない!』
響く風花の警告がそれよりも早くS.E.E.Sの面々が正気に戻り、ファンガイアタイプ・サバトの振り下ろした腕を避ける事に成功する。
「敵戦力は此方の予想以上であります。リーダー、一時撤退を提案するであります」
「オレもアイギスに賛成だ! 流石に奴は階級が違いすぎる!」
アイギスと明彦の言葉も最もだ。流石にペルソナ使いと言え、大型シャドウの『大型』と言う名が可愛く見える程の巨大な体を持ったファンガイアタイプ・サバトを相手に何の策も無く勝てる訳が無い。
「…ぼくは賛成ですけど、桐条先輩は?」
「……流石にこれは一旦引いて体勢を立て直した方が得策だろうな」
「流石のオレっちもこんなのの相手は無理ッス」
「私も賛成です。ってか、どうやって戦えばいいんですか!?」
奏夜の問いに美鶴だけでなく順平とゆかりも答える。一時撤退は反対者無しの満場一致で決定したが、問題は一つだけ存在する。そう、大き過ぎる問題が、だ。
サバトの顔の部分から撃ち出される光弾がムーンライトブリッジを、引いては其処に立つ奏夜達を襲う。
「くっ! 簡単には逃がしてくれそうも無いね」
ファンガイアタイプ・サバトの放った光弾を避けながら取り出した召喚器を取り出すと、奏夜は己の中に座するモノをタナトスからガルルへと変える。
「喰らえ…」
蒼き人狼が奏夜の内より打ち出される。少なくとも、現状に於いて足止めに最適な能力を持っているのは、ガルルだ。
―高位重力魔法(グラダイン)―
ガルルの放った巨大な重力場がファンガイアタイプ・サバトの腕を地面へと縫いつける。そんな奏夜へと、光弾を放とうとするファンガイアタイプ・サバトだが、
―上位重力魔法(マハグラダイン)―
続けて放たれた暴力的な重力波がファンガイアタイプ・サバトの体を叩きつけ、重力の渦が地面へと縫い付ける。
……確かに重力系の魔法は全てのシャドウの弱点になる事は無い特殊な魔法とは言え、上位の魔法だと言うのに、ファンガイアタイプ・サバトの巨体の動きを止めるのが限界だった。
「皆っ! 殿はぼくが勤めるから、今のうちに撤退を!」
「だが、紅、お前一人では…」
「少なくとも、今最低限こいつを抑えられるのは、ぼくだけですよ。そう言う訳で、リーダー代理、お願いします」
そう、耐性を無視して確実に足止めが出来る重力魔法を使えるのは、この中で奏夜だけだ。
「くっ、すまない、殿は任せた」
「分かり…っ!?」
奏夜を殿に一時撤退しようとした時、奏夜の上位重力魔法(マハグラダイン)による拘束から逃れたファンガイアタイプ・サバトが動き出そうとする。
「っ!? タナトス!!!」
動き出したファンガイアタイプ・サバトに対して素早くガルルから変えたタナトスを召喚する。小剣を持ってファンガイアタイプ・サバトに挑むタナトスだが、二体の大きさの差は歴然だ。
―五月雨斬り―
相手の振り回す腕を避けながら近づいた瞬間、一瞬の間に放たれた無数の斬撃がサァンガイアタイプ・サバトの体に傷を着ける。
(…流石に大きさが違いすぎるか。山岸さん、みんなは?)
『はい、もう大丈夫です。変身行けます!』
「分かった!」
一度タナトスを戻し、ファンガイアタイプ・サバトの腕を避け、時には切りながら相手の反対側へと滑り込む。
「キバット! タツロット!」
「オッシャー! こいつが最後だ、キバって行っくぜぇー! ガブ!」
「ビュンビューン! 行っきますよー!」
「変身!」
奏夜の腰に出現したベルトのバックルにキバットが、腕にタツロットが装着され、最後の大型シャドウの変貌したファンガイアタイプと戦う為に、奏夜は金色の皇帝・『仮面ライダーキバ・エンペーフォーム』へと変身する。
「さあ、これが最後の戦いだ!」
まだ知りたい真実は欠片しか手にしていない。だが、少なくとも………幾月の言葉を信じるのなら、この戦いはシャドウとの最後の戦いだ。
「「「キバって行くぜ(行きますよ)!!!」」」
新たなフエッスルを取り出し、それをキバットへと加えさせる。この戦いは正に『総力戦』。奏夜にとってザンバットソードを除く全ての戦力を使うと言う意思。
「キャッスルドラーン!!!」
~~~~~~~♪ ~~~~~~~~~♪♪
影時間の夜に響き渡るフエッスルの音色。それと重なる様に何処からか響くドラゴンの城の咆哮。
一方、奏夜を除いたS.E.E.Sの面々は当初の予定通り、風花達の居る場所まで一時引いていた。
「くそ、あんな無茶苦茶なのどうやって勝てってんだよ!」
思わず順平の口から悪態が零れる。それについてはその場に居る全員が同意見だ。
「…いや、方法はある」
ふと、美鶴がそんな言葉を呟く。その言葉に全員の視線が彼女へと集まる。
「美鶴! それは本当か!?」
「ああ、明彦。流石に普段のシャドウとの戦闘には使えなかったから忘れていたが」
驚きの声を上げる明彦にそう言って美鶴が取り出したのはイクサナックル。今までは対ファンガイアタイプ用の切り札でも有ったが、サバトに対抗できるとは思えない。
「…出来ることなら“絶対”に使いたくなかったのだが…状況が状況だ、仕方ないだろう」
「あの、桐条先輩、それでどうやってアイツに対抗するのですか?」
「ああ、実は元々イクサの装備の一つ面白い物が有っていな。戦闘用の特殊車両も含まれているんだ」
「特殊車両?」
「説明する時間も惜しい。明彦、使え!」
「ああ!」
ゆかりの言葉にそう答えた後、美鶴は明彦にイクサナックルを投げ渡す。
《レ・デ・ィ》
「変、身!」
《フィ・ス・ト・オ・ン》
電子音と共に明彦が仮面ライダーイクサ・バーストモードへと変身すると、美鶴は新たなフエッスルをイクサ(明彦)へと投げ渡す。
「これを使え」
「これは?」
「『パワードフエッスル』だ。誤って使う事を避ける為にこうして私が預かっていた訳だ。だが、それを使えば今回の切り札が使える」
美鶴の言葉に従ってイクサ(明彦)はイクサナックルにパワードフエッスルを読み込ませる。
《パ・ワ・ー・ド・イ・ク・サ・ー》
響く電子音。そして、海面に水柱が立つ。
「おわ! な、なんだ、もう切り札ってのが来たのかよ!?」
「いえ、違います、あれは…」
水飛沫が飛び散る中から現れるそれは、
「「「「「ド、ドラゴン!?」」」」」
正確にはドラゴンの頭と羽と手足が生えた城の一部だが…。流石に今まで戦ったシャドウの中にも存在して居ない。
「おー、あれがドラゴンでありますか。なるほどなー」
「って、アイギス、驚くところだから、今!」
「見てください、あっちにも何か居ますよ!」
乾の指差す先に居るのは、咆哮を上げながら禍々しい満月の照らす夜の空を飛翔するドラゴンの城・キャッスルドラン。
「あれって……ドラゴンのお城?」
「…山岸、あれもシャドウ…なのか?」
少なくともドラゴンと城の融合体等美鶴達の知識の中にはシャドウだけしか存在して居ないだろう。
「山岸、どうした?」
「え!? あっ、はい!」
「………山岸、驚くのも無理は無いだろうが、あの二体のドラゴンの事を調べてくれるか?」
「あ、すみません。…二匹ともシャドウの反応はありません」(い、言えない…紅くんのお城だなんて)
内心そんな事を思いながら風花は美鶴の言葉に、答えを濁しながらそう答える。流石に奏夜と関係が有る等と言えないが。
そして、風花を除いたS.E.E.Sの面々は突然現れたキャッスルドランともう一体のドラゴン…直面した者達にとっては巨大と言えるが、まだまだ子供と言われても信じられるものでは無いだろう。それが、巨龍の城・キャッスルドランの天守閣部分となる幼竜(パピー)『シュードラン』。
シュードランはキャッスルドランの姿を見て嬉しそうな、親に甘える子供の様な鳴き声を上げながら空中を舞うキャッスルドランの元へと飛翔する。
『…えっと、紅くん…目立ちすぎです! 皆警戒しちゃってるよ!』
《…ごめん、流石にそっちの事をあまり気にしてる余裕なかったから》
奏夜との単独回線に切り替えた通信でそんな会話を交わす奏夜と風花。先程から何度も聞こえる衝撃音は、キバEに変身した奏夜がファンガイアタイプ・サバトと戦っている戦闘音なのだろう。
「って、ちょっと! また何か来た!」
「って、おわ!? なんだ、ありゃ?」
「来たか!」
地響きを立ててムーンライトブリッジに向かって来る、キャッスルドランと対極に有るこの影時間の闇の夜には白い重機。
「お、おい、美鶴…まさか、あれが切り札なのか?」
「ああ」
イクサ(明彦)の言葉に頷きながら美鶴は答える。
「これがイクサリオンと共に作られたイクサの装備の一つ」
十年の月日を経て開発されたかつてのイクサの騎馬たる戦獅子・イクサリオンと並ぶメカドラゴン。
「素晴らしき青空の会」によって開発されたそれをイクサやイクサリオンと共に新たに作り上げられ、影時間に対応される形で再生されたレプリカの一つ。イクサ専用のティラノサウルス型巨大重機、その名も、
「『パワードイクサー』だ!」
「いや、重機でどうやって戦うんですか!?」
「ってか、オレ達未青年ですよ、誰も重機なんて運転できませんって!」
「…それなら問題ない。今は影時間だ。急いであのファンガイアタイプを倒せれば無かった事になる」
…少なくとも、既に銃や剣等銃刀法は違反しているのだから、無免許運転が加わった程度今更だろう。
「それに、イクサナックルを通じて操縦できる。それに戦闘に於いても問題ない、後部には投擲型の武器も装備され、パワーも有る」
「と、兎も角、これ以上紅を待たせられない! オレは行くぞ!」
気を取り直してパワードイクサーに飛び乗るイクサ(明彦)。運転についての疑問を感じさせない軽快な動きでファンガイアタイプ・サバトの元へと爆走していく。
「…運転は本当に問題なかったみたいですね」
「…ってか、真田先輩ばっかズルイっすよ!」
「…そう言う問題なんですか? …ちょっと、羨ましいって気はしますけど」
上からゆかり、順平、乾の順番である。
(紅くん…)
一人奏夜の無事を祈っている風花だった。
「おお、来たか、シューちゃん♪」
「さあ、行こうか!」
キバEがムーンライトブリッジから飛び降りると素早くキャッスルドランが回収する。そのままファンガイアタイプ・サバトと対峙する様にキバEを頭に乗せたキャッスルドランが対峙する。
そして、キャッスルドランにシュードランが合体し、普段は抑えられていた十三の魔族の一つ・ドラン族最強の怪物と謡われた“グレートワイバーン”の凶暴性が完全に解き放たれる。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
咆哮を上げて先制攻撃とばかりに口から撃ち出される光弾がファンガイアタイプ・サバトから撃ち出される光弾と相殺される。
ファンガイアタイプ・サバトとキャッスルドランの間で繰り広げられる壮絶空中戦。サバトの光弾を避けながら反撃として放たれるキャッスルドランの城の左右に装備されたミサイルがファンガイアタイプ・サバトに直撃する。
ミサイルの直撃を受けながらも、ファンガイアタイプ・サバトは触手を武器に接近戦を挑もうと近づくが、キャッスルドランはそれを避けて光弾を放つ。
「行ける、空中戦ならこっちの方が上だ!」
「オッシャー、このまま決めるぜ!」
空中戦は圧倒的にキャッスルドランがファンガイアタイプ・サバトに対して優位に立っている。そう思いながらキャッスルドランの一斉射撃が撃ち出される。
「っ!?」
ミサイルと光弾による一斉射撃が直撃したと思ったが直ぐに間違いだったと気付く。キバEが見上げると上空にファンガイアタイプ・サバトの姿が見える。
次の瞬間、ファンガイアタイプ・サバトが無数の黒い泥をキャッスルドランへと投げつける。
「なに!?」
「おいおい、こいつ、こんな芸当まで出来るのかよ!?」
黒い泥が変化していく。『運命』のアルカナを告げる仮面を着けた黒い泥がゆっくりと異形の姿へと変わる。黒いネズミを思わせるファンガイアの姿をしたシャドウがキャッスルドランの上に現れたのだ。
「…元々シャドウの召喚能力を持っていたのか…」
「ったく、それが今度はこんな物を呼べる様にパワーアップしたのか!?」
ファンガイアタイプ・サバトと戦うキャッスルドランの頭部から飛び降り、キバEは新たに出現するラットファンガイアタイプと対峙する。