ペルソナ Blood-Soul   作:龍牙

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第六十三夜

「はっ!」

キバEのパンチがラットファンガイアタイプの体へと突き刺さり、ラットファンガイアタイプはそのまま黒い塵となって消滅していく。

ファンガイアタイプのシャドウと言っても、ラットファンガイアタイプは他の固体に比べて遥かに弱い。番人級よりもやや下と言った所だろうか?

だからこそ、ラットファンガイアタイプはエンペラーフォームとなった今のキバの敵ではない。

だが、

「っ!?」

足場となっているキャッスルドランがファンガイアタイプ・サバトと戦っている為に常時足場が揺れて、常に其方にも気を配る必要も有る。そして、

『…………!』

「っ!? またか」

キャッスルドランの上空をファンガイアタイプ・サバトが取るたびに新たなラットファンガアタイプが召喚される。個々の能力は低いと言っても、相手の底が見えない無制限の戦力に晒されていると言う事実はキバEの精神を徐々にだが、確実に削っていく。

「ったく! 厄介な奴だぜ!」

「それは同感!」

キバットの言葉に同意しつつ、キバEが新たに出現したラットファンガイアタイプへと応戦しようとした時、

「っ!? 何だ!?」

キャッスルドランの悲鳴と共に今までに無い揺れが襲う。見れば、何発かファンガイアタイプ・サバトの放った光弾が直撃した様子だ。

キバEからの指示無しのキャッスルドラン単独での戦闘は、僅かにキャッスルドランの動きを鈍らせているのだろう。

「くそ、こいつ等を召喚したのはそう言う狙いも有ったって訳か!」

「…厄介だね、ホント!」

苛立ちを隠さず、新たに出現したラットファンガイアタイプを睨みつけながらそう言い放つ。相手の狙いが分かったとしても、自分の真後ろに居る敵を放置する訳には行かないのだ。正面に居る敵を無視して奥に居る敵を狙うのとは訳が違う。キバEだけの現状では特に、だ。

『あの、紅くん』

「風花さん?」

ふと、風花の声が聞こえてくると焦りが消える。不思議に心地よい感覚を覚えながら、ラットファンガイアタイプに応戦する。

『あの、今其方にイクサに変身した真田先輩が向かってます』

「流石にサバト相手だと、イクサでも不利だと…」

『それなら大丈夫です! 桐条先輩が切り札を用意してくれたてましたから』

「切り札?」

『はい』

「おっ! もしかして、パワードイクサーって奴も作ってたのか?」

「キバット、知ってるの?」

『え? キバットさん、知ってたんですか?』

「まあっ、前のイクサにも有った奴だからな。んな事より奏夜、もう少し下に落すぞ!」

「分かった! キャッスルドラン!」

キバEの指示を受けたキャッスルドランが垂直に上昇する。それとキバE達の戦っている同時に垂直になる。

当然そんな状況では経っている事が出来るモノは少ない。ラットファンガイアタイプ達も例外では無く、壁となった足場に指をかける事で落下する事を防いでいた。

キバEは逆に重力に逆らう事無く、寧ろ積極的に従いながらジャンプし、ラットファンガイアタイプの中の一体の顔にパンチを打ち込みつつ足場となった壁へと着地する。

同時にファンガイアタイプ・サバトの上に回りこんだキャッスルドランの一斉射撃がファンガイアタイプ・サバトへと撃ち出される。逃げ場を限定させる事で、ファンガイアタイプ・サバトをムーンライトブリッジの方へと向かわせる為だ。

狙い通り、ファンガイアタイプ・サバトはキャッスルドランの一斉射撃から逃れるために、ムーンライトブリッジの有る下へと降りていく。

「狙い、通り!」

今度はキャッスルドランはファンガイアタイプ・サバトを追って急降下を始める。それは即ち重力の向きが逆になると言う訳であり、

「「っ!?!?!?」」

「はぁっ!」

重力に負けたラットファンガイアタイプ達に向かってキバEは垂直になった床を駆け下りながら、二体へと飛び蹴りを放つ。

黒い塵となって消えていく二体のラットファンガイアタイプを他所に、そのまま足場も無く落下していく所をキャッスルドランの首に捕まって難を逃れた。

「なるほど、オレの趣味には合わないが、確かにああ言う相手には最適だ」

パワードイクサーを操縦しながらイクサの仮面の奥で明彦は笑みを浮かべる。イクサの仮面のモニター部分にパワードイクサーについてのデータが表示されている。

その事から確かに大型……と言うよりも、今回の様な超大型の相手には最適だと考える。その反面、通常のシャドウの相手には大型シャドウも含めて向いていない。

「だが……あの距離じゃ流石に何も出来ないな」

上空を見上げたイクサ(明彦)の視界の中に移るのはキャッスルドランと空中戦を演じているファンガイアタイプ・サバトの姿。

「どうする?」

残念ながら高度が高過ぎる今のファンガイアタイプ・サバトの位置に届く武器はパワードイクサーには搭載されていない。

どうやって戦うべきかと考えていると、上空で空中戦を演じていたファンガイアタイプ・サバトがムーンライトブリッジへと下りてきている。

『真田先輩、敵ファンガイアタイプの高度落ちてきてます。チャンスです』

「分かった」

風花を通じてキバE(奏夜)の言葉を伝える。奏夜の狙いとしてはラットファンガイアタイプの召喚を防ぐための最善の手段とて、地上のムーンライトブリッジに居るイクサ(明彦)との挟み撃ちを考えた。

その内容を風花へと伝えると、地上に降りていくファンガイアタイプ・サバトを迎撃する様に彼女通じてイクサ(明彦)へと伝えた。

『今です!』

「良し!」

風花の指示を聞いて、イクサ(明彦)はパワードイクサーを操作し、上空から降りてくるファンガイアタイプ・サバトへとティラノサウルスの尾の部分に搭載された『イクサポット』をティラノサウルスの頭を模したパワードアーム『ザウルクラッシャー』から投擲する。

「こっちもだ!」

それに応じる様に後ろからキャッスルドランのミサイルが直撃し、そのまま海の中へと落下していく。

前からは液体爆薬とナパーム弾のイクサポット、後方からキャッスルドランのミサイルの直撃を受けたのだから、無事で済む訳も無いだろう。

「…やったか?」

「おいおい、奏夜…それって、生存フラグらしいぜ」

キバEの言葉に思わず突っ込みを入れるキバット。キバによって与えられた生存フラグに答える様に、ファンガイアタイプ・サバトは全身が焦げたものの巨大な水柱と共に海の中から浮かび上がってきた。

「っ!? こいつ、まだ!」

ムーンライトブリッジに居るイクサを標的としたファンガイアタイプ・サバトは触手を叩きつけようとするが、イクサ(明彦)は素早く横凪に振るわれた触手をザウルクラッシャーで受け止め、バックさせる事で衝撃を抑える。

「先輩! キャッスルドラ…っ!?」

危ないと思ったイクサ(明彦)を助ける様に指示を出そうとした瞬間、キャッスルドランへとファンガイアタイプ・サバトの放った火炎弾が直撃する。突然の事で対応できなかったキバEはそのままムーンライトブリッジへと投げ出される。

「キャッスルドラン!」

体勢を立て直しながらムーンライトブリッジへと着地、同時に触手を振るって受け止めていたパワードイクサーを海へと投げ捨てようとする。

「っ!? うわぁ!」

海に落とされる前にキャッスルドランの天守閣部分とシュードランと交代する形で合体する。

「っ!? よく分からんが…これも、悪くないな!」

面白そうな笑みを浮かべ、キャッスルドランの一斉射撃に合わせる形でイクサパックを投擲する。

「…しぶといな…」

「ったく、でかい分だけ生命力も強いって奴か?」

「…かもしれないね。っ!?」

シュードランに乗ってキャッスルドランへと合流しようとするが、それを阻むようにファンガイアタイプ・サバトは十体近くのラットファンガイアタイプを召喚する。

「そうはさせないって訳か…」

「へっ、さっさと片付けるぜ!」

「ああ!」

キャッスルドランとドッキングしたパワードイクサーの一斉射撃をファンガイアタイプ・サバトは光弾と触手でガードする。

「こいつ、しぶといぞ!」

何度攻撃しても致命傷には至らない現状に苛立ちを覚え始める。残念ながら、影時間と言う制限時間が有る以上、時間切れはS.E.E.S側の敗北となる。

「どうする?」

自分へと問うが良い考えは浮かばない。

「まったく、こう言うのはオレのガラじゃないな…」

改めて頭脳労働は自分の専門では無いと思う明彦だった。

『紅くん、真田先輩達苦戦してます』

「…流石にキャッスルドランを呼ぶ余裕は無いか」

物量で攻められているキバEも、上空で戦っているパワードイクサー合体状態のキャッスルドランとイクサも、状況は似た様な物だ。

火力ではパワードイクサー合体状態のキャッスルドランが上回っているが、耐久力はファンガイアタイプ・サバトが上回っている。その為にパワーバランスが変化するにはもう一つ大きな一手が必要だろう。

「何かあと一手だけ……パワーバランスを崩せるだけの戦力が有れば…」

そんな事を考えながらラットファンガイアタイプの一体を殴り飛ばす。黒い塵に変わるラットファンガイアタイプを尻目に、そんな事を呟く。

「有るぜ」

ふと、キバットの声が奏夜の耳に入る。

「有るって…そんな手が…」

「出来る事なら使わせたくない手段だからな…」

言外に『危険な手段』と言っているのが分かる。だが…

「悪いけど、少しくらいの無茶はやらせてもらうよ、キバット!」

相棒であると同時に兄の様に思っているキバットの言葉に反発するのは気が引けるが、それでもこれが最後の戦いなのだ。多少の無茶ならば、やるしかない。

(…これで終わらせる。シャドウとの戦いを、父さんの死の真相を知る為にも……この戦いで負ける訳には行かない!)

思う物はこの戦いの先に有る、自分が望んだ真実を求める心。

(…これ以上シャドウの犠牲者を出さない為にも!)

シャドウによる被害者をこれ以上増やさないため、

(…皆のためにも…)

それぞれの思いを持って戦っている仲間達や、未だに目を覚まさないもう一人の仲間の為にも、

『紅くん』

(…風花さん…)

自分の力になってくれている人の為にも、

「ぼくは……負けられない!」

飛び掛ってくるラットファンガイアタイプ達を、キバEの背中から広がった翼が薙ぎ払う。

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」

それこそが最大限に高ぶった想いが覚醒させた更なる強化形態。

背中から広げた翼で飛翔しながら、キバEはファンガイアタイプ・サバトへと向かう。その姿は人のモノから完全な異形の姿へと変わっていく。

「!!!!!!!!!!!!!!」

咆哮を上げて覚醒した姿は巨大なコウモリ(翼竜)型の形態。

「なっ!」

それを見て、己の主の覚醒に歓喜の咆哮を上げるキャッスルドランとは対照的に驚愕を露にするイクサ(明彦)。

通称『エンペラーバット』と呼ばれる姿、『仮面ライダーキバ・飛翔態』!!!

素早く飛翔しながらファンガイアタイプ・サバトへと翼での翼撃を浴びせる飛翔態。

「…よく分からんが…味方で良いのか?」

そんな事を考えながらイクサ(明彦)はファンガイアタイプ・サバトへの戦闘に集中する。

パワードイクサー合体状態のキャッスルドランの援護を受けながらファンガイアタイプ・サバトヘと肉薄する飛翔態。そして、そのまま口から放つ金色の光線『ブラッディストライク』を浴びせる。

『っ!!!!!!!!!!!!!!』

声にならない悲鳴を上げてファンガイアタイプ・サバトの体勢が崩れる。そのまま苦し紛れに飛翔態へと反撃しようとするファンガイアタイプ・サバトだが、

「させるか!!!」

イクサ(明彦)はパワードイクサーをフルスロットルでキャッスルドランから発進させる。空中に投げ出されたパワードイクサーは、そのままの勢いでファンガイアタイプ・サバトのボディにザウルクラッシャーを叩きつける。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」

そのまま落下するも、ファンガイアタイプ・サバトの体を削っていく。

『っ!!!!!!!!!!!!!!』

それによって絶叫を上げるファンガイアタイプ・サバト、それはキバ飛翔態と再びシュードランと合体したキャッスルドランにとって最大の好機(チャンス)を与える結果を生んだ。

「くっ!!!」

衝撃に耐えながら何とかムーンライトブリッジへと着地に成功するパワードイクサー。無事とは言えないが可動に問題は無いだろう。

「今だ、決めろ!」

イクサの言葉に従うようにキバ飛翔態とキャッスルドランは一つとなって、巨大な仮面ライダーキバ・エンペラーフォームを作り上げる。

『いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』

それこそが、キバ飛翔態とキャッスルドランの合体必殺技『ジャイアントムーンブレイク』!!!

ジャイアントムーンブレイクによって撃ち抜かれたファンガイアタイプ・サバトは断末魔の悲鳴を上げ、黒い塵となって虚空へと消えていった。

巨大なキバEがキバEとキャッスルドランへと分離し、ムーンライトブリッジへと着地する。

『敵シャドウの反応消滅、お疲れ様でした』

キャッスルドランの咆哮を背中に受けながら奏夜は風花からの勝利宣言を受ける。

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