ペルソナ Blood-Soul   作:龍牙

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第六十七夜

「あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」

タルタロスから落下しBライジングイクサと対峙したキバはデスフォームへとその姿を変えると、拳を叩きつけ後退させると絶叫に似た咆哮を上げる。

(……何だ……これは? 意識が力に飲み込まれる)

四魔騎士(アームズモンスター)達の力を使ったフォームやエンペラーフォームとも違う感覚。キバと融合した力が奏夜の意識さえも飲み込もうとしている。それは今までに無い異質な感覚。屋久島の時に一度だけ変身した事があるが、その時のそれと違い今は辛うじて意識は飲み込まれずに居る。

(どうして皆と違う? ペルソナはもう一人の自分の筈なのに……何でこんなにこの姿の力は扱い辛……っ!? そうか、“もう一人の自分”だからこそ……)

僅かに理解しなおす。ペルソナが己の中のもう一人の自分だとするのなら、ペルソナの力を宿したこのフォームは今までの四魔騎士(アームズモンスター)の力を借りる方法と同じだ。

だが、残念ながら、ペルソナは奏夜で有るが故にキバットの制御の協力は無く、四魔騎士(アームズモンスター)の意識と違い協力的ではない。

寧ろ、隙有らば意識を乗っ取り、自分が主人格となろうとしている様な物だ。だからこそ、奏夜一人で御さなければならず制御し辛い。

(それに……この記憶は……ぼくやキバット達の忘れていた、父さんが死んだ日の記憶……なのか? どうして、そんな記憶が)

横に伸ばした手の中にタナトスの剣が出現する。そしてそのまま地面を蹴り、Bライジングイクサヘと肉薄する。

「迎撃」

抑揚の無い声でBライジングイクサはイクサライザーとガンモードのイクサカリバーをキバDeF(デスフォーム)へと向けて引き金を引く。

二丁の銃から放たれた光弾を避けながら近づいたキバDeF(デスフォーム)の斬撃を素早くソードモードに切り替えたイクサカリバーで受け止める。

「あぁ……!」

キバの声から出るのは獣の様な咆哮のみ、それに反して動きは今までと変わらない……否、今まで以上の冷酷さを持った攻撃が続けられている。

「おい、奏夜!」

『奏夜くん!?』

半ば暴走するように戦うキバDeF(デスフォーム)を止めようとキバットと風花の声が響くが、キバDeF(デスフォーム)は尚もBライジングイクサへと攻撃を続ける。

だが、攻撃を受けている側のBライジングイクサもまた幾月のコマンドを受けて暴走している様なものだ。下手に止めようものなら反撃を受けるのはキバDeF(デスフォーム)の方だ。

(ぐっ……)

まるで奏夜の中の負の感情を受けてタナトスの力は大きくなっている様にも感じる。そして、それに合わせてキバDeFの暴走も激しくなっている。

(……ペルソナとしてなら扱えるのに……)

ペルソナとして扱うのとキバの鎧に宿らしているのでは全く勝手が違う。だから今は力を上手く扱えずにどれだけ制御しようとしても暴走させてしまう。

(なんで……こんなに、がっ!?)

キバDeFの攻撃を避けたBライジングイクサの向けたイクサライザーの光弾がキバDeFに直撃する。Bライジングイクサは暴走状態にあるキバDeFの動きに対応したのだろう。だが、

「…………っ!? ……お蔭で目が覚めたよ……」

「おい、奏夜! 目を醒ましたのか!?」

『奏夜くん、大丈夫!?』

その衝撃によってタナトスの暴走が収まったのか、奏夜の意識が表へと戻る。

「一体どうしたんだお前、急に暴れだして……」

「……タナトスの暴走に振り回されてた……」

キバットの言葉に簡潔に答える。キバの鎧を媒介にしたペルソナの力を使うのは、より強力な力になるのは間違いないだろうが、その分ペルソナの自我が強化されるのか危険も大きいと言う事だろう。

「それより、時間が無い……少しでも早くあのイクサシステムを破壊する」

「おう!」

「……風花さん……そっちは?」

『桐条先輩のお父さんが……』

風花のその言葉で自分とアイギスが落下した後、あの場所で何が起こったのかを完全に理解する。

「どうして」

キバがBライジングイクサを連れてタルタロスから落下した後、拘束から開放された美鶴が動かなくなった武治にしがみ付いていた。

「こんな……」

其処に居る全員が始めてみるであろう彼女の泣き顔。背負う必要の無い罪を背負い、今まで戦い続けていた彼女の涙。

「以前……お父様は言っていた……。私達の代までリスクを負わせた責任は、命に代えても果たすと……」

零れ出る言葉。現当主としてシャドウや影時間を生み出してしまった先代の罪を深く、強く感じていたが故の言葉なのだろう。だが、美鶴は……

「でも私は……お父様に生きていて欲しかった……」

それは彼女の願い。彼女がペルソナ使いになった時に定めた決意。思い出すのは8年前の記憶、

選択の余地の無かった力。

それでもそれを受け入れたのは、武治を助けたかったから。

美鶴にとっての“ビギンズナイト”、ペルソナ能力に最初に目覚めた力を使った反動から倒れた彼女を、抱きかかえながら慟哭する父を守りたかったから。

愛する父を失いたくなかったから。

それなのに……

「私は……この人を守りたくてペルソナ使いになったのに……」

美鶴の静かな慟哭の言葉がその場で響き渡る。

「くそっ!!!」

タナトスの剣でBライジングイクサのイクサカリバーを弾く。

(ぼくは……無力だ)

過去へと旅立った兄を差し置いて父から黄金のキバを受け継いだと言うのに、未だに誰も守れていない。荒垣も、武治も……守れなかった。

(何がキバの後継者だ……。此処に居るのがぼくじゃなくて、兄さんなら、父さんなら、叔父さんなら……守れたかもしれないのに)

浮かぶのは己の弱さ故の後悔だけ。同じ『キバ』の名を受け継いだ者達なら、守れていたかもしれない。

何故、こんなに弱い自分がキバの後継者なのか?

黄金のキバを受け継ぐべきは兄じゃなかったのか?

過去に旅立つべきは自分であるべきではなかったのか?

『そんな事ない!』

「風……花?」

キバDeFの脳裏に響く風花の声。

『奏夜くんは私を助けてくれた! みんなを守る為に頑張ってたのは……私が一番良く知ってる!』

彼女の優しい言葉は奏夜の心に響く。

『だから、自分を責めないで。もう、一人で抱え込まないで。私は奏夜くんの味方だから』

「って、おいおい、フーカちゃん。オレ様達の事を忘れんなよな。おい、奏夜! お前にはオレ達だって付いてるんだぜ!」

「……そうだね、ありがとう……キバット」

キバットや風花に感謝の言葉を告げ、タナトスの剣を握り直す。

「……助けよう……アイギスだけでも」

あの光景の意味は分からない。だが……それでも……

「これ以上……何も、失わせない!」

決意を込めてそう叫んだ瞬間キバDeFの動きが変わる。

―ブレイブザッパー!―

横凪に振るう事で放たれるタナトスの物理スキル。その一撃によってBライジングイクサの体が後退する。

「ハンパな攻撃じゃ通用しない……全力で、行くよ……キバット!」

「オッシャー! ウェイク・アップ!!!」

フエッスルをキバットに噛ませると鳴り響くフエッスルの音色。キバDeF(デスフォーム)の足の(カテナ)が砕けヘルズゲートが開放されるとそのまま上空までジャンプする。

キバDeF(デスフォーム)が上空で片腕を振ると上空に浮かぶ月が影時間の禍々しい満月へと変わる。そして、月とキバの紋が重なり、キバの紋が刻まれた月を背景に地面に居るBライジングイクサへと飛び蹴りを放つ。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

―デスムーンブレイク!!!―

Bライジングイクサへと直撃するキバ・デスフォームの必殺技『デスムーンブレイク』。直撃を受けたBライジングイクサの装甲に罅が入っていく。

全身に広がるとBライジングイクサの装甲が砕け散りアイギスの姿が露になる。そして、

「……奏夜……さん……」

「アイギス!?」

技を使った本人の予想よりも必殺技の破壊力は上回っている。完全にイクサシステムから開放されたアイギスだが、それでも技の破壊力は止まらず。

「……ありがとう……ございます……」

アイギスのボディにキバの紋を刻みつけ、そのまま後方へと吹き飛ばす。

「ごめん、アイギス」

それ以外方法が無かったとは言っても……本人の望んだ事だと言っても、仲間であるアイギスを破壊するしかなかった。幸いなのはボディもまた武装の一部として取り替えると聞いていた事だけだ。それが慰めになるかは分からないが、少なくとも『精神』や『魂』の部分だけは守られたのだろう。

「……キバット……なんて言うかな……これって」

「……奏夜……」

キバットにはかける言葉が無かった。

全ての大型シャドウを倒しても何も終っていなかった。それどころか、幾月の裏切りや武治の死、そして……今目の前ではキバの紋を刻まれてボディを破壊され機能停止となったアイギスが倒れている。

「……最悪の……気分だ……」

確かに運命は前へと進んでいるのだろう。全ての大型シャドウを倒したのは確かに終わりへと近づいた、だが、それは……最終章へと進んだだけなのだ。

11/5(木)

祝勝会の後日の夜……寮の作戦室にこの寮に居る者達全員が揃っていた。既に幾月の部屋にあった物は全て回収されているが、作戦室の設備は今も問題なく使える。

「新聞やニュースは盛んに騒いでますね」

乾がそう話を切り出す。

「桐条グループ総帥急逝。病死って事になってましたけど……」

「ああ……。いつも真実とは違う」

影時間の中での武治の死は、表向きはそんな風に処理された。確かに日本と言う国で銃で撃ち殺されたと報道されては問題が有るだろう。影時間と言う時間よりは現実的だが、受容れ易いだけに余計に拙いのかもしれない。

「桐条先輩……大丈夫かな?」

「一人娘だからな……。葬儀から後継問題まで全て矢面に立たされる。むこう一週間は強行軍だな」

彼女の立場と桐条グループの規模を考えれば、それは無理も無い話しなのだろう。

「オレ等、これからどうしたらいんスかね」

「分からん。だからこうして集まっている」

「アイギス、どうなったんだろう」

S.E.E.Sの面々の中に不安は尽きない。今までまとめ役を勤めてくれていた美鶴の不在、何処まで演技だったかは分からないがムードメーカーでも会った幾月が居ないのは、余計に不安を駆り立ててしまう。

「それに……紅もだ」

あの後、アイギスを機能停止させた後、奏夜もまた姿を消してしまった。

「あの人がキバだったなんて……」

「あいつ、なんでオレ達に何も言わなかったんだよ!」

乾と順平がそう言葉を続ける。

「ってか、最初は理事長の言葉で『オレが倒してやる』とか言ってたじゃない、あんた。言える訳無いでしょ」

順平の言葉にゆかりが呟く。

「アイギスの事で皆さんと顔を合わせ辛いって言ってたから……」

「え? 風花、もしかして……紅くんが何処に居るか知ってるの!?」

「う、うん……今日も会って来たばっかりだし」

思わず風花に詰め寄ってしまうゆかり。

「おい、教えてくれよ! 何処に居るんだよ、あいつは!?」

「えっ、えっと……多分、紅くんはまだ会いたくないだろうし……会いに行っても、会ってくれないと思う」

「それでも、オレ達はあの時……結果的にアイギスの事を全部アイツに押し付けてしまったんだ。あいつに会って……何を言えば良いのか、まだ分からないがな」

「ってか、風花にだけは会ってるんだよね、紅くん」

「う、うん」

実際、あの時はアイギスの事を結果的に全て奏夜に押し付けてしまった。そして、奏夜はアイギスの願い、アイギスを助ける為に……その手にかけてしまった。

「頼む、教えてくれ……あいつが居る場所を」

そう言って明彦は風花に向かって頭を下げる。仮にも先輩に其処までされて教え無いと言うのは気が引ける。

「い、今奏夜くんが居るのは……」

そう言って風花から告げられるキャッスルドランの事と其処に案内された時の事を説明する。それを聞いたS.E.E.Sの面々の反応は……

「スゲェー! 秘密基地って奴かよ、おい!」

「すごい、一度ぼくも行ってみたいです」

乾と順平のある意味では大き過ぎる反応。一種の秘密基地と言えるキャッスルドランを所持していると言うのは、二人にはちょっとだけ羨ましいのだろう。

「ってか、お城って……」

「あの時のがそうだったんだな……」

スケールが大きすぎて何処か付いていけない思いの明彦とゆかり。微妙に明彦は納得していたが。

「ってか、なんであいつ風花だけ」

「えっと……私、皆に助けられた時に紅くんが変身する所見ちゃったから……」

付け加えるなら、フォームチェンジには風花の力が必要だと言うのも有る。

実際、奏夜からは正体をバラした以上言っても構わないとは言われていたが、風花としては自分と奏夜の二人だけの秘密をバラすのには思いっきり不満を感じていたりする。

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